【CLATTANOIA】黄昏の超越者(オーバーロード)‐ファイナルファンタジーXIV‐ 作:ウルトラナポリタン
西の森での掃討作戦を終えた後、現地で一夜を明かし、光の戦士はエ・ランテルの冒険者組合へと戻った。まさか一夜で終わるとは思っていなかったのかちょっとした騒動になったが、内輪揉めしていたので漁夫って全員始末したと伝えるとアインザックは気絶した。
現場はそのままにしているので後始末の方をお願いし宿を取りに組合を出ようとしたところ、意識を取り戻したアインザックに宿を紹介される。なんでもエ・ランテル一の宿らしく、王国の組合長が前もって数日分の宿代を支払っているとのこと。粋な男である。
黄金の輝き亭。名に違わぬ素晴らしい宿泊施設だ。いつも泊まっている王都の宿の主人には悪いが、天と地の差である。一泊の料金が十倍ほど違うので、比べるのも酷な話ではあるが。
美味い飯に美味い酒。一週間ほどの宿泊費と食費を受け取っているそうなので、何とも太っ腹な話だ。一応謹慎中という
光の戦士はあてがわれた一室で、尻に合わせて形が変わる柔らかなソファに座りながら酒を飲む。1本で一般人の3か月分の賃金が飛ぶと聞き恐る恐る飲んでいたのだが、半分ほど開けた時点でどうでもよくなった光の戦士だった。
現在2本目である。バカンス気分で、足が出たら自分で払うつもりである。
少しアルコールが回ってきた頭で、光の戦士は昨夜のことを思い出す。
ブレイン・アングラウス。光の戦士が野盗の頭か尋ねた際は肯定していたが、恐らく違うだろう。彼の体には仲間か判別するための赤い布は見当たらず、他のメンバーとは明らかに逸脱した実力を持っていた。食客か何かかと光の戦士は推察していた。
あの時相対した時に、光の戦士の目に映った彼のレベルは30。レベル27のガガーランとレベル29のラキュースを上回る強さだ。野盗でなくても飯のタネがあったはずだが、何故あのような真似をしていたのか。
まぁ身の上の話はともかく、ブレインは興味深いものを装備していた。そう、刀である。
地球で言うところの西洋的な文明が発達していると光の戦士は考えてきたが、あの反りと波紋と鍔や柄は正しく日本刀のそれ。少なくとも、日本刀を真似て作られたものだ。
つまるところ、この世界には日本刀を知っている存在が居る。エオルゼアにも刀という概念があったが、あれは日本に似た文化を持つドマが似た技術で作り上げたもの。当然同じ経緯の可能性はあるが……調べる価値はある。
不確定ながらも新しい情報を得られたのは幸運である。この酒はちょっとした祝賀会のつもりの光の戦士。良いことがあった後に飲むと非常に美味い。
そして、もう一つ。光の戦士は、恐ろしいものを見た。死の恐怖とは違う、得体の知れないモノが頭蓋の奥を揺らす感覚だ。
ブレインは30レベルだった、それは間違いない。ブレインが欺瞞のすべを持っていれば別だが、この世界の様子から見てその線は低い。そんな技術が出回るほどの技術があるとは考えにくい。
だがそれでは理屈が通らない。それでは意味が解らない。あらゆる死線、修羅場を潜ってきた光の戦士ですら理解が及ばない事態。
――居合いの構えをとった瞬間だ。あの瞬間、ブレインのレベルは30から35となった。なんの
あり得ない話だ。あってはいけない事実なのだ。そんな簡単にレベルが上がってたまるか。
タレントと呼ばれる、生来の特殊技能によるものなのか。光の戦士には皆目見当もつかない。
しかしながら、その異常事態をその目で見られたのは僥倖だった。今後、障害となる存在が同じケースを見せる可能性がある。やはり、圧倒的なレベル差の暴力はできるだけ抑えるべきだ。
光の戦士は、ベッドに横たわるブレインを見る。ブレインは光の戦士により袈裟の形で左肩から右腰までバッサリと背骨ごと叩き斬られ、薄皮一枚で辛うじて身体がつながっている状態だった。そんな中でも即死しなかったというのは、彼自身の強靭な精神力と生命力に依るものだろう。
血の海に沈んだ彼の体にエオルゼア産のポーションを数本ぶっかけ、捕虜の唯一の生き残りとして保護したことにした光の戦士。生殺与奪の権は勝者にある。文句を言われる筋合いは無い。
彼が眠り続けて1日になる。傷自体は完全に癒えているので生存に問題は無いが……目を覚ますかどうかは、彼の心次第だろう。
ブレインは、あの一撃を生き残った。明鏡止水による雪風の一撃。あれは、光の戦士の友人であってもまともに受ければただでは済まない。そんな攻撃を受けて、彼は生き残った。
ハルオーネは彼を殺さなかった、彼にはまだ役目が残っているのだ。
ワインが無くなり、部屋を出て空いた瓶を持ち1階のカウンターへと降りる。おかわり! と給仕の女性に言うと顔を引きつらせて同じワインを手渡した。まだ5本目なのにそんなにも引かれるとは、光の戦士は少しショックを受けた。
ルンルン気分でおかわりを――もし起きた時のためにブレインの分のグラスも貰って2階の部屋へ戻る。
扉を開けると、先ほどまで死んだように眠っていた彼が、上半身を起こしてうつろな目で辺りを見渡していた。どうやら目が醒めたようだ、なによりである。
「あ……」
死なれると困るので、ブレインが無事起き光の戦士は笑顔だった。心からの喜びを表していたのだが、ブレインは、まるで死神を見たかのような表情になった。
「何故俺を助けた……んですか?」
掛けられていた毛布をはねのけ、ベッドの上で足を正して土下座の様に頭を下げる。生きてるやったー! 程度の反応を期待していたのだが、どうも違ったようだ。
死ななかったのはブレイン自身の力であり、光の戦士はその後生き残れるよう助力しただけだ。
そう伝えると、ブレインはより畏まってしまった。
埒が明かないので、光の戦士は自身の心中を話す。
死を覚悟し、光の戦士と相対したあの瞬間、光の戦士が想定した実力を超越したこと。ブレインが扱う刀が、光の戦士の知る技術で作られたものであること。ブレインの魂を賭けた決死の一撃は、光の戦士が警戒するに値するものであったこと。
あの居合いは、光の戦士が60レベル以上離れていたからこそ反応できたもの。仮に同じ実力であれば――手痛いダメージを喰らっていただろう。
「そうか……俺の人生は、無駄ではなかったんだな……」
光の戦士の言葉を聞いたブレインは、毛布を握りしめて俯き震えている。
彼の気持ちは痛いほどによく解る。常に光の戦士も越える側だったが、その牙が何か跡を残すことが出来るほど、うれしいものは無い。
「でも俺は犯罪者だ。俺は取り返しのつかないことをしてしまった。貴方との戦いで……貴方による天罰で死ぬべきだった。俺は、許されない存在なんだ」
ブレインは力なく口を開く。今まで犯してきた罪の重荷が、彼を責め立てているのだ。
彼の独白に対する答えを、光の戦士は持ち合わせていない。彼は決して許されないことをしたし、死んで詫びるのが最低でも筋だ。奪われた命が帰ってくることが無くとも、せめて惨めに苦しんで死ぬべきだろう。
だがそれは、犯罪者の誇りのもとに成されるべきではない。自分だけが気持ちの良い終わり方で幕を引くべきではない。腹を切る、首を括るなどというのは、命が軽い世界では大した罰ではない。
「……俺に生きろと?」
そうは言っていない。ただ生きて、罪科の咎を背負うだけなど生温い。
光の戦士は現実主義者、弱肉強食賛成派なのだ。弱き者は食われる立場にある。
「だからこそ真に強き者は守らなければならない。強き者をも、全部纏めてな」
♦♦
大通りと言えど、魔法で灯されている街灯の数は少ない。頭上で輝く満月と星々の輝きの方が明るく感じてしまう。
「なぁ、本当に良かったんです……良かったのか?」
胸に下がった銅のプレートをいじりながら、ブレインは光の戦士に尋ねる。彼が目を覚まし色々と話したのち、閉まりかけの冒険者ギルドに駆け込んだ2人。
ちゃちゃっと続きを済ませ、ブレイン・アングラウスは晴れて冒険者となった。ミスリル級である光の戦士が連れて来たとはいえ規則は規則、銅級からのスタートである。
行動に移した時間が遅かったこともあり、組合から出るころには日はとっぷりと暮れてしまっている。
本日やるべきことも終わったので、黄金の輝き亭に戻り、自室に戻って今後のことについて話し合う予定である。そして明日には王都に戻るつもりだ。
ブレインには、光の戦士のサイドキックとして活動してもらう。
モンスターによる被害は、この世界において野盗とは比べ物にならない程大きなものである。人間種よりも遥かにレベルが高い奴らは、いとも簡単に誰かの命を奪う。
光の戦士は、いずれこの世界を去る。それは明日か数十年後かは定かではないが確実だ。
この世界で足跡を残してしまった以上、繋ぐ者が必要なのだ。光の戦士が居なくなった後、同じ形で人々を守る後継者が。
ブレインのポテンシャルは頭一つ抜けている。光の戦士のもとで経験を重ねればきっと、人間種の中でも屈指の強さを手に入れることが出来るだろう。
色々と試したいこともある。元々光の戦士一人では活動に限界を感じていたので丁度良かった。
「けれど俺、私は多くの人を殺した、ました。せめて彼らの家族に頭を下げなければ、筋が通らないと思います」
気持ち悪いので敬語は不要。そう言うと、彼は引きつった笑みを浮かべて分かったと答える。
遺族への謝罪……そう思うのならすればいい、光の戦士は止めはしない。しかし、高度な情報伝達手段が無いこの世界で、遺族を全て見つけることはできるのだろうか。
幸運にも連絡のついた人にだけ頭を下げ、許せないので豚箱にぶち込まれろ、その場で腹を切れと言われたら従うつもりなのか。
「それは……」
たとえ従ったとしても、その事実を他の全ての遺族が知るすべはない。道徳的に謝罪は当たり前の話だが、失われたものは帰ってこないのだ。
故に光の戦士は大罪人ブレイン・アングラウスを下した者として、死ぬまで働けと言っているのである。グダグダお気持ちを吐き出している暇があるなら素振りでもしていて欲しい。
詭弁だろうが奇麗事だろうが光の戦士にとってはどうでもいい。今までブレイン自身がそうしてきたように、勝者には黙って従ったらどうか。
「……ありがとう」
ブレインは立ち止まり、少し前を歩いていた光の戦士の背に向かって頭を下げる。
光の戦士はもちろん気づいていたが、歩みを止めることなく進み続ける。飲みかけのワインのボトルの蓋をキチンと締めたか心配だった。急いで組合に駆け込んだため記憶が定かではないのだ。
それはそれとして、ブレインは喋ることが好きでは無いのだろうか。先ほどから口数が少ないようが。
「えっいやっ。俺はそんなつもりじゃ……まぁアンタの前じゃ善人も悪人も一緒か」
急に饒舌になったかと思えば非常に失礼な男である。
少し離されたブレインは、先に進んでいた光の戦士へ速足で駆けよる。光の戦士は首を少し左に回し、ブレインの表情を盗み見る。
心なしか、先ほどまでより顔色が良いようだ。この調子なら明日からの地獄に耐えられそうである。光の戦士は師匠譲りでスパルタなのだ。
明日からのメニューを考えながらあと10分程度で辿り着く宿へ向かっていると、光の戦士の感知が騒ぎ出す。現在地から北西に300m、墓地の方角。そこに、100体ほどのモブが突然引っかかった。
場所的にアンデッド――になるのだろうか。エ・ランテル中心、つまり南へ行儀良く進んでいる様子で、感知の中へ入ってくるように刻々と数が増えていっている。
光の戦士は立ち止まり背後を歩いていたブレインへ振り返るも、きょとんとした顔で気づいていないようだ。光の戦士は、墓地に大量のアンデットが出現したことを伝える。
「アンデッド!? しかも100体以上……死者が何も無く蘇ることは無い、恐らくだが首謀者が居るぜ」
ブレイン曰く、第三位階の魔法ですらそのような数のアンデッドの召喚は不可能とのこと。ブレインは前衛職であるため飽くまで見聞で得た知識に留まるだろうが、判断材料は彼の言葉しかない。
そうなると第四位階以上の魔法の行使が前提となる。この世界において常人が辿り着けない境地の魔法と言われているが、光の戦士自身見たことが無いのでどれほど強力かわからない。
しかし、このままではアンデッドが墓地から溢れ出し住民たちにも被害が出るだろう。組合に報告し応援を募ることも考えたが、一刻の猶予も無い。
「行くんだよな? どんなアンデッドがいるかわからんが、俺ももちろんついて行くぜ」
どうやらブレインは準備万端なようである。左手に握っていた刀を左腰に佩き、ポーションを数本煽っている。元気になったようで何よりだ。
実際、見過ごすという選択肢は無い。ブレインがアンデッドに反応できていなかったということは、この街にいるミスリル級冒険者も気づいていないだろう。
いつアンデッドが召喚されたかは判明していないが、こういった大事が一波で終わるのは稀だ。悪意のある何者かが糸を引いているのであれば、本命を実行に移される前に叩く必要がある。
つまるところ善は急げである。出立前にウンバスに調整してもらった全身鎧を揺らして、光の戦士はブレインを伴い墓地へと
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銅級冒険者……漆黒の鎧を纏った戦士と美しい女性魔法詠唱者、そして屈強な魔獣が無数のアンデッドを蹴散らしながら墓地を突貫していった。
それが墓地の門を守っていた衛兵たちの
先日この街の組合で出会った、駆け出しの冒険者たちだ。本来の反応はブレインのものが正しいが、生憎彼らは20レベルを超える猛者。墓地の入り口付近で転がっているスケルトンの相手くらい訳ないだろう。
事実光の戦士の感知ではとてつもない勢いでアンデッドの反応が消失していっている。
「でもよ、アンタの見立てだと首謀者がいるかも知れないんだろ? だったら早く追いかけて援護、それか後退したほうが良いんじゃねぇか」
なるほど、自殺というのはそっちの方だったのか。光の戦士はブレインへの評価を少し上げる。
第四位階は英雄に近い者たちの技。つまるところ、この世界でも屈指の強さを誇るであろう人間、ブレインと同じかそれ以上の強者である可能性が高い。そうなれば彼らでも荷が重いだろう。
衛兵の1人に冒険者組合へ応援を呼ぶように伝え、他の衛兵たちには門の死守を命令する。ミスリル級のプレートは伊達ではないらしく、衛兵たちからは特に反論無く光の戦士の言葉に従った。
「さて、どうする?」
衛兵たちから受け取った地図によれば、門からまっすぐ行った先に霊廟がある。スケルトンの残骸もその方向へ続いていることから、彼らも同方向へ向かったようだ。
光の戦士たちもそれに続いて追いかけるのが丸くはあるが、それでは仮想敵の思うつぼになる可能性がある。
アンデッドの反応が現在も消えていっていることから先行組はまだ健在だ。そうなると。
「……解った。俺が先行して例の冒険者連中と合流、アンタは少し離れた場所から監視だな」
戦力の逐次投入は愚策だが、相手の手の内を知る必要がある上に光の戦士という札を出すのは危険だ。その辺りのモンスター相手とは違い、相手の正体は未知数でモモンとナーベという目がある。
相手が複数人いるという可能性も踏まえ、光の戦士は一旦
ブレインは防御と迎撃に特化した戦闘スタイルだ。相手の情報を引き出す、という立ち回りは得意だろう。
「アンタにそう期待されちゃあ裏切れねぇな。了解した、その二人組を援護しつつ、首謀者がいたらなるべく遅延するようにするぜ」
物分かりが良くて助かる。数10分前の雨の中拾われた犬のようだったブレインは何処かに行ってしまったようだ。期待しているので是非とも頑張って欲しい。
その前に、ブレインに渡す物がある。
「これは……タリスマンか? 細長い石の絵が彫られているが……」
光の戦士が彼女と一緒に作った護符だ。光の戦士が受けている寵愛と同じく、諜報系の干渉をシャットアウトすることが出来る。持ち合わせは少ないので貴重で大切な
ブレインはその言葉に光の戦士と目を合わせるが、ふっと笑って大切にタリスマンを腰のポーチへとしまい込んだ。
話はここまでだ。サッサと終わらせて、宿に戻って酒を飲もう。
♦♦
彼と別れたブレインは、件の霊廟へ向かって駆ける。道中に散らかっているスケルトンの骨の種類はブレインでは見分けがつかないが、男が言っていたように100体以上はいるのだろう。
……革ポーチに仕舞った、男から受け取ったタリスマン。なんでも無いように振舞っていたが、男の瞳には手放すことへの心の動きが見て取れた。
言葉を交わすようになってまだ数時間だが、ブレインはあの彼の人となりについて大方理解したつもりだ。喜怒哀楽がわかりやすく、おせっかいで、倫理観が壊滅している。誰がどう思うかではなく、自分がどう思うかが絶対的な指標。
そんな彼があのような眼差しを見せたのは、ブレインにとって予想外だった。懐かしさと慈しみ。そして――
ブレインが走り出して数分。魔法が迸る音、地響き、男の叫び声が聞こえてきた。
そして間もなく現場にたどり着く。奥に見える大きな円状の建物が地図にあった霊廟だろう。その門前では2体の巨大な骨の竜に守られた男と、それらと対峙するポニーテールの女性が戦闘を行っていた。
「あれは
魔法に対する完全耐性を持ち、アンデッド由来の斬撃や刺突攻撃に対して高い耐性を持つ新人殺しとも言われるモンスター。知識無く倒すことが難しいため、帝国ではよく駆け出しのワーカーが犠牲になっていると言われているらしい。
もちろんブレインは戦ったことが無い。
その相手をしているのが、彼が言っていたナーベという新人冒険者だろう。鞘が付いたままのブロードソードを正眼に構えているが、その佇まいとと雰囲気からブレインは彼女が魔法詠唱者であると予測した。
戦闘と……恐らく煽り合いに集中しているのだろうか。近づいているブレインに気づいていない様だ。
「剛撃! 能力超向上!」
ブレインは走りながら自身のステータスを底上げする。
「お、らぁっ!」
「は――」
「なんだと!?」
走る勢いそのままに、ブレインはナーベの隣を走り抜け跳んだ。空中で刀を抜き放ち、刃を返して峰に部分を右方の
「馬鹿な! ワシの
手駒の即死に狼狽えるも、男はすぐさまもう1体の
「即応反射!」
ブレインは武技で無理矢理体勢を立て直し、防御のため刀を体へ引き寄せる。尾による攻撃を刀の腹で受け止め、背後、ナーベの方へ吹き飛ばされた。
空中で一回転して体を安定させ、両足と刀を持たない左手で地面を抑え滑る様にナーベの隣へ着地する。
「お前は何者? モモンさ――んから命令されてこの場に来たの?」
1体だけとはいえ
この場において、ブレインは正体不明の闖入者だ。当然の反応だった。
「俺は、お前とモモンの顔見知りの冒険者と同じチームだ。ここでアンデッドが大量発生していて、お前たちが突入したと聞いて助けに来た」
「顔見知り……組合で不敬にもモモンさんと馴れ馴れしく言葉を交わしたあの男のことね」
ナーベを安心させるために彼のことを出したのだが、何故かより警戒させてしまったようだ。
一体アンタ、何を言ったんだよ……
恐らくどこかでのぞき見をしているであろう愉快な彼を思い、ブレインは大きな溜め息を吐いた。
「明鏡止水」
侍のアビリティ。一定時間、特定のウェポンスキルコンボを完走しなければ獲得出来ないリソースをコンボの最終技だけで獲得できるようになる。
「雪風」
侍の攻撃ウェポンスキル。ウェポンスキル2連コンボの最終技で、コンボ扱いで相手にヒットするとリソース"雪の閃"を獲得する。技自体は袈裟斬り→刺突の2連撃。
「光の戦士のタリスマン」
とある女性と一緒に作ったお守り。本当に短い時間しか一緒に居られなかったが、共に生きた証として彼女の提案で作成した。
無垢の雪のように白く、明るい未来を表しているかのように輝いている。