【CLATTANOIA】黄昏の超越者(オーバーロード)‐ファイナルファンタジーXIV‐   作:ウルトラナポリタン

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第14話 名前

 

 

 何故か遅れてきた扱いで責められ、ぶつくさと文句を言われながら王都を出発した光の戦士とイビルアイ。エ・ランテルまではおよそ7日間の往路になる予定だが、互いに一切の荷物が無い手ぶら状態だ。

 光の戦士はアラグ産のインチキポーチを既に見せているので問題ないつもりだが、イビルアイも荷物無しだ。彼女も何か面白道具があるのだろうか。

 

 しかし、イビルアイは何故自分の馬を借りなかったのだろうか。股座に相乗りされると非常に邪魔なのだが。

 

「オイ、もっと後ろに詰めろ」

 

 加えてこの言い草である。驚異の馬リレーを行うので基本の移動時間から大きく削減できるとは言え、数日この傍若無人っぷりを味わうことになると考えると憂鬱な光の戦士。

 というか背中側に乗ってくれた方がまだマシなのだが、その辺りはどうなのだろうか。

 

「お前が邪魔で前が見えなくなるだろう。灰色しか見えないなんて気が滅入る」

 

 鬼か何かか? 光の戦士は心中で激怒した。

 

「私の体格だと一般的な馬に乗れないんだ。馬屋によっては小柄な馬を取り扱っている所もあるが……あそこには無かった」

 

 イビルアイは不満そうに溜め息を吐く。彼女としてもこの状況は不本意らしいが、光の戦士からすれば邪魔以外の何者でもない。それ以前に、何故この依頼に同行しているのかそろそろ教えて欲しいものである。

 光の戦士としては、レベル52の冒険者が同伴しても何も変わらないのだ。どちらかと言うと光の戦士が本気で対応しなければならない存在が現れた場合、護りながら戦うのは非常に骨が折れる。

 

「……組合から使いが来たんだ。暁の片割れが動けないから、数名応援に出して欲しいとな。蒼の薔薇は別の依頼中で、魔力系魔法詠唱者は役割が無かった。だから私が来た」

 

 甚だ不本意だがな。イビルアイはそう付け足して頭を搔く。リードの気配りには感謝しかないが、こと光の戦士には有難迷惑である。

 実際、パーティ構成としては非常にフラットな組み合わせだ。ヒーラーが居ないのは少々歪だが、元々2人で活動しているのだから何処かに穴はある。実際のところ前衛2人は余りにも滅茶苦茶ではあった。

 

 しかし、イビルアイは意外と暇なことが多いのだろうか。前回の会合の際も蒼の薔薇はカッツェ平野でアンデッド退治を受注していたとガガーランから聞いたが、イビルアイ抜きで何とかなっていた様子である。

 もちろん頭数は多いにこしたことは無いが、その辺りをイビルアイはどう思っているか気になるものだ。

 

「なっ……! 私が居なくてもアイツ等が何とかできるのは間違いないが、私も役に立っている! 詰めの甘いところをフォローしているのはいつも私だし、私が居ることでチーム全員が引き締まるんだ! 私は要らない子じゃない!」

 

 声を荒げて馬上で暴れるイビルアイ。普段のクール然とした雰囲気から一変、本気で怒っているのか頭の上に蒸気を幻視してしまうほどだ。お馬さんもコイツうるせぇなぁと不快そうだ。

 まぁ当然冗談なのだが、ここから数日間偉そうにされるのも不本意だった光の戦士。効きそうな言葉を選んだのだが、グッサリと刺さっているようで何よりである。

 この旅の主役は光の戦士なのだ。あまり調子に乗らないで欲しい。

 

「このガキ!」

 

 だがイビルアイは相当トサカに来たようだ。彼女は振り返り、光の戦士の喉元へと飛び掛かる。華奢な体躯からは想像できない程強い力に少しビックリする光の戦士。わちゃわちゃと顔をもみくちゃにされるが、手綱を握る光の戦士は右手でしか対抗できない。本気で張り倒すわけにもいかないので、目だけ死守しつつも為すがままである。

 

 光の戦士は、イビルアイが純正の人間ではないことに何となく気が付いている。何の根拠もない勘だが、人の寿命で到底纏えない老成した佇まいは間違いなく、長い生によって培われたものだ。

 この世界に長寿の人間種が居るかは不明ではあるが、顔を仮面で隠している辺り他人には悟られたくないのだろう。

 ……光の戦士も良い歳だ。もし子供が居たとすれば、背格好はこのくらいだったのかも知れない。髪の毛を引っ張られながらしんみりしてしまう。

 

 ある程度やり返して気が晴れたのか、イビルアイは大きく息を吐いて所定の位置へ戻った。

 

「いいか、私はお前を助けに来たんだぞ。あまり調子に乗るなよ」

 

 互いに馬に揺られながら暫くして、イビルアイは顔を上げて口を開く。仮面のせいで目線はわからないが、恐らく光の戦士の瞳を見上げているのだろう。

 光の戦士は少し考える。ほんの一瞬の思案のあと、イビルアイが何のことを仄めかしているのか気が付いた。

 

 アダマンタイト級に回された怪しい依頼。依頼主も依頼内容も調査場所も全てがきな臭い。人の生活領域から大きく離れたあの森に、いったい何が潜んでいるのか。非常に興味深いものである。

 

「組合長は頭数を揃えるために蒼の薔薇へ協力を仰いだわけじゃない、それは理解しているだろ? お前は凄腕の剣士だろうが、土地勘であれば私たちの方が上だからな。いざとなった時に逃げられるように、サポートしてやってくれということだ」

 

 ふふんと胸を張るイビルアイ。手伝ってくれるのは有り難いが、報酬に関してはどうするつもりなのだろうか。暁ではブレインとまるっと折半であり、今回ブレインは参加していないのでイビルアイへ半分渡すのは問題無い。冒険者組合としてどうなのか、という話だ。

 

「報酬は必要ない……ギブアンドテイクというやつだ。別に金に困ってないからな。もし蒼の薔薇が手を貸して欲しい時は、手伝ってやってくれ」

 

 言葉が続くにつれて、イビルアイの声が小さくなっていく。それっぽく言おうとしたようだが、肝心なところで照れるとは情けない。

 しかしこれ以上茶化すと噛みつかれるかもしれない。揶揄うのはこれくらいにして、光の戦士はありがとうと感謝を述べる。イビルアイは少し恥ずかしそうにうめいた後、この日はこれ以上の会話が行われることは無かった。

 

 長旅において会話の手札が切れるのは致命的だ。光の戦士は、きっとイビルアイも、明日は何について聞こうか考えながら、どこまでも続く地平線を眺めながらのんびりと馬に揺られていた。

 

 

 

♦♦

 

 

 

 馬を乗り継いで正味5日。件のモンスターによる被害に能動的なものは無いため、いつものような弾丸旅程ではない。光の戦士の提案によりエ・ランテルには寄らず目的地近郊に到着した一行は、目的の森の手前に馬を繋ぎ今後の動きを確認する。

 幸いにも光の戦士はゴリゴリの前衛で、イビルアイはバリバリの後衛だ。基本的に光の戦士が敵視(ヘイト)を取り、後ろからイビルアイが適当に魔法を打つ。この世界に来て初めてのパーティっぽい動きになりそうだ。一応ウンバス製の装備で臨むつもりだが、もしもの際はエオルゼアの物に切り替える。ナイトに拘る必要も無い。

 ナイトであれば回復魔法とアビリティを完備しておりユーティリティでは圧倒的な使いやすさを誇るが、火力に関してはDPS職の方が上だ。

 

 光の戦士がイビルアイへ回復魔法やサポートアビリティについて簡単に説明すると、彼女は少し考える素振りを見せた後、重い口を開いた。

 

「回復魔法は、必要無い」

 

 そう言って、イビルアイは仮面を時計回りに回転させて下部をずらす。露わになった口元には、人間には存在しない特徴的な牙が顔を覗かせていた。

 光の戦士はその個性に覚えがある。文献のみで実際に出会ったことは無いが、人間と似たような様相で夜にしか活動できないとされる血を吸う鬼。回復魔法を彼女に使えば、逆にダメージとなるだろう。

 

 

「吸血鬼か」

 

 

 光の戦士の呟きにイビルアイはビクリと肩を揺らす。彼女の心境を窺い知るすべは無いが、5日間共に過ごした仲だ。世間話もしたし、もう顔見知りの間とは言えない。少なくとも、光の戦士は彼女をささやかな友人程度とは認識している。

 彼女もきっと同じなのだろう。異形種――特にアンデッドに属する存在は、生者に対して憎しみを感じるという。それでも同じ焚火を囲った仲として、イビルアイは己の秘匿を晒したのだ。

 

 だがそれは要らぬ心配である。光の戦士は固定観念で物事を判断することは無い。光の戦士にとってのイビルアイへの印象は、お節介の人見知りだ。その認識が、種族が違うという一点で揺らぐことは無い。

 イビルアイが悪事に手を染めない限り光の戦士は味方だ。過去についてはどうでもよくて、光の戦士にとって大切なのはこれからのことなのだ。

 このカミングアウトは仕事上仕方のないこととは言え、イビルアイにとって非常に重要なもの。ただその誠意に感謝するのみである。

 

「ありがとう。お前からはどうにも――他の人間たちに感じる不快感が無いんだ。私としても、これからも普通に接してくれると嬉しい」

 

 言われるまでもない。なんせ、光の戦士は信仰している神とマブダチなのだ。今更吸血鬼の友達が出来たところで何の問題も無いのである。

 光の戦士の対応に胸を撫でおろした彼女は「そうか」とだけ呟き、光の戦士の背後へ回る。

 任務開始。この森は、多くの元冒険者が命を落とした死地である。50レベルを超えた強者のイビルアイであっても、警戒に値する危険地帯。

 

 光の戦士は彼女へ顔だけ振り向いて頷いたのち、剣と盾を抜き放って歩を進め始める。どのような奇襲であってもこのパーティの火力職である彼女を守り、文字通り肉の壁となるのだ。

 光の戦士が前衛(タンク)を務める以上、どのような攻撃であっても受けきって見せる。

 

 

 

 森の中へ足を踏み入れて約30分。昼間だというのに頭上で生い茂る木々によって日差しは遮られており薄暗い。粗雑な獣道しか無く、邪魔な植物を切り払いながら進んで行く。

 警戒は怠っていない。光の戦士は350mの近く範囲内へ徹底的に意識を張り巡らせているが、未だ引っかかる敵対存在は無し。背筋にぞわぞわと走るものがあるが、理由は不明。

 光の戦士の敵対感知は決して万能なものではない。あくまで、自身へ敵視(ヘイト)を向けてくる可能性のある存在を感じ取っているだけに過ぎない。

 もしこの依頼が意図して仕組まれたものであれば、光の戦士が目的としているモノは光の戦士をただ待っているだけなのだ。その在り様によっては感知をすり抜ける。

 周囲の気配に気を配りつつ、光の戦士は進んで行く。イビルアイも何かしらの魔法かアビリティを使用して索敵しているようだ。

 

 おおよそ、3kmほど進んだ地点。一行は不自然に拓けた広場へと辿り着く。鬱蒼としていた薄暗さは消えて無くなり、広がっているのは円形の平地である。木も草もまるで吹き飛ばされたかのように何も残っておらず、一切整地されていない土の地面が広がっているのみ。

 この場が、何らかの意図によって作り出されたのは明らかだ。本能に生きるモンスターがこのような真似をするとは考え辛い。依頼主である貴族の配下が襲われるまで作業していた跡であるかとも考えたが――あまりにも規模が大きすぎる。目測で半径800mほどもある、まるでミステリーサークルのような様相を呈しているこの場は、あまりにも不自然だった。

 

 光の戦士はこの広場へ足を踏み入れるか逡巡したのち、一度周囲を全て確認することにする。後方5m位置で追従してきているイビルアイへと視線を向けると、彼女も同じ考えなのか無言で首肯した。

 もし待ち伏せを狙っているのなら、このような地形は不向きにもほどがある。つまり自身の力に絶対的な自信があるか、または別の目的の線が高い。もしくは迂回して様子見することを読んだ罠の可能性もあるが……開けた地形への後入りは避けたい。

 光の戦士は広場の手前で右に折れ、外周を沿うかたちへ進行を切り替える。一周したのち、出来る限りの軽減バフを炊いた光の戦士が突っ込んで先釣り。イビルアイは光の戦士がかばえる距離である20mを維持して広域焼き払える魔法を使用。そのあと徹底してクリアリングだ。

 

 しかし、その思惑は早々に崩れることになる。歩み始めた光の戦士の耳に入る僅かな風切り音。何かが光の戦士に向かって超速で飛来していた。

 

 光の戦士は左手のカイトシールドで飛翔体の迎撃を試みる。あまりにも凄まじい勢いと大きな質量が鉄製のカイトシールドと衝突し、耳を劈くほどの轟音を撒き散らす。光の戦士の現在のレベルは70。その腕力を以てしても、その衝撃をいなしきれない。

 左腕に走る激痛を無視し、光の戦士はカイトシールドを少し下へと向ける。上へ逸らせばそのまま後衛のイビルアイへ飛んで行きかねない。"かばう"は対象のダメージを肩代わりできるが、今の光の戦士ではどこまで体力を削られるか予想できないのだ。

 一度地面に叩き落とし、相手の追撃の択を出来るだけ減らす。光の戦士の意図通り、不快な擦過音を上げながら下方へ逸れ、光の戦士はバックステップで後退する。何故か呆けているイビルアイを左脇へ挟み、光の戦士は可能な限りの速度を維持して広場へ向かって跳躍した。

 その際にチラリと、土へ突き刺さっている飛翔体を確認する。追撃の気配は無い。形状は光の戦士の背丈ほどもある巨大な両口の槌。光の戦士の目利きでは、実用性とは程遠い形状……観賞用の武具に見える。

 

 光の戦士の盾はもう使い物にならない。衝突部は大きくひしゃげ、その中心はひび割れて腕が覗いている。広場へと着地した光の戦士は腕へ固定している革のバンドを解除し、盾を後方へ投げ捨てた。

 ウンバス製の装備は、どれだけ素晴らしい出来と言っても、素材の質に依って30レベル前後の攻撃までしか耐えられない。加えて光の戦士がそこそこのダメージを負う一撃だ、並大抵の強さではない。

 

 そこでようやく気配を察知した光の戦士は空を仰ぐ。――白金色のフルプレートアーマー。その周囲には3つの武器が追従して浮かんでいる。長槍、野太刀、大剣、そして先ほどの両口槌が加わって4つ。鎧も含めてそれらはやはり、見て目で楽しむ趣向が凝らされたものだ。

 浮遊自体に魔法的な気配は感じられない。純粋なスキルか、もしくは他者からの支援か。

 レベルは――91。今の光の戦士を圧倒的に凌ぐ強者。イビルアイでは逆立ちしても勝つことが出来ない、エオルゼアを含めての屈指の実力者だ。

 

 

「あ、あ」

 

 ここにきて、イビルアイはようやく声を発した。しかしそれは言葉ではなく、疑念、驚愕、恐怖、様々な感情が入り混じった呻きだ。まるで見覚えのある絶望を目にしたかのような様子に、光の戦士はイビルアイへ知り合いかと尋ねた。

 

「その通りだ。私とキーノは知人……というよりも、協力者が正しいかな。初め君に彼女を遣わせたのも、君にも協力するよう言いつけたのも私だ」

 

 イビルアイではなく、白金の鎧が代わりに答える。キーノというのはイビルアイのことで、この場へ付き従ってきたのも鎧の差し金という事だろうか。その場合、光の戦士の警戒を少しでも削ごうという敵対行為に他ならないのだが。

 光の戦士がそう言うも、イビルアイはカタカタと震えているだけで何も言わない。彼女からの発言を許していないのか、はたまた話す気が無いのか光の戦士では判断できないが――

 

「いや、キーノがこの場にいるのは私も想定外だった。このことを話した記憶も無い。彼女の名誉のために断っておくと、君についてきたのは彼女の純粋な厚意だと思うよ」

 

 このまま脇のイビルアイの頸を落とすことも検討していた光の戦士だったが、鎧の言葉で一先ず踏み留まる。彼女は震えたままで使い物にならない。自身の鎧のマントを引きちぎって地面へ敷き、イビルアイをその上へちょこんと座らせる。

 

「あ……」

 

 先ほどから「あ」としか喋っていないが大丈夫そうだろうか。踵を返して鎧と向き直った光の戦士の背中に視線が突き刺さり続けている。

 

 それはそれとして、いったい何用なのだろうか。先ほどの一撃はとんだご挨拶だったが、光の戦士たちはこの地に現れたモンスターを討伐しに来たのである。……おおよそ検討はついているが、派遣されたきり戻らない調査員たちの行方も気になるところだ。

 道中にあった獣道は野生動物が通ったにはあまりにも高さがあり、刃物で作られたような形跡があった。依頼主の部下によるものかも知れないが、空飛ぶ鎧の存在からしてその線は無い。調査員が進んできたのだ。

 生きているのなら返して欲しいのだが。

 

「残念ながら彼らには死んでもらった。戻ってこない方が現実味があるし、何を見知ったか分からない以上生かしておく必要も無いからね」

 

 光の戦士はその回答に同感する。人質は効果的な相手、無意味な相手、逆効果な相手が居る。もし仮に光の戦士が同じ立場であっても殺しているだろう。言外に、この依頼は鎧によって仕組まれたものであるとも語っている。

 こちらの質問にばかり答えてもらって悪いが、光の戦士にはもう一つ疑問がある。恐らく光の戦士を狙い撃ちしたものだろうが、どうして会いに来なかったのだろうか。呼ばれたらコチラから会いにも行ったのだが。

 

「それについては私の我儘さ。君が……ユグドラシル以外の世界から来たという男が、どれほどのモノか見たくなったんだ」

 

 要するに、協力に値する猛者なのか知りたいということ。プレイヤーに対抗するにはそれなりの力が必要なのだろう。レベル91にもなる鎧が警戒に値する強さである以上、光の戦士の力量を量る必要はある。そうでなければ鎧側は情報を与えるだけで、光の戦士が役に立たないなどという歪んだ協力関係になりかねない。

 

 であればだ。ここで鎧をぶっ飛ばすことになる。相手も恐らくだが高HPの戦士職、折角なのでこちらも耐久寄りで行かせてもらおう。

 光の戦士の体をまばゆい光が包み込む。その瞬く間に、美しい鈍色の全身鎧を装備した光の戦士が現れる。イビルアイにも見せたことが無いので、背後で座る彼女の方から息をのむ音が聞こえた。

 レベルシンクも解除。目の前の鎧と戦うのであれば、レベル100であっても不足は無い。

 

「それが君の全力か。なるほど、少しとはいえ侮っていた事実を謝罪しよう」

 

 鎧は軽く頭を下げるが、光の戦士は必要ないと制す。この世界において自身に匹敵する存在と出会えたことは光の戦士にとっても幸運であり、同時に胸を高鳴らせるのだ。ここまで強く在れるのなら、ブレインもこの頂に届くかもしれない。

 

 光の戦士は剣と盾を抜き放つ。このまま戦いの火蓋を切ってもよかったのだが、肝心なことを忘れていた。

 これは血塗れの殺し合いではなく、イビルアイを見届け人とした試合なのだ。鎧も努めて威厳を保とうとしているようだが、その節々に喜びを隠しきれていないように見える。つまるところ、互いを認め合うための神聖な儀式である。

 

 鎧は知っているとは思うが……光の戦士は自身の信仰する戦神ハルオーネと、友人ヴェーネスのもとに名を告げる。これから訪れるであろうこの世界の試練への協力と、元の世界に戻る手助けをしてもらうと約束した仲間として挑もう。

 

「私はリ――いや、僕はツァインドルクス=ヴァイシオン。彼方の勇士、稀なるつわものよ。どうか君の力を僕に見せてくれ」

 

 これ以上の言葉は不要、ただひたすらに斬るのみ。光の戦士はツァインドルクスの誠意に笑みを溢し、その兜を剝ぎ取って顔を拝むため走り出した。

 

 




「吸血鬼」
エオルゼアにも居たようだが、光の戦士は会ったことが無い。吸血鬼の薬という超絶バフアイテムをガブ飲みして、とある平野で暴れまわったことはある。

「かばう」
ナイトのアビリティ。対象が受ける攻撃を肩代わりする。ただし、一部の攻撃はかばうことができない。
軽減バフでダメージを抑えることはできるが、範囲攻撃に対象と一緒に当たったりするととんでもないことになる。

「ヴェーネス」
光の戦士の友達。蹴り技が得意で、光の戦士に大きな影響を与えた淑女。
彼女の笑顔と優しい声は、未だに光の戦士の魂を灼き続けている。
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