【CLATTANOIA】黄昏の超越者(オーバーロード)‐ファイナルファンタジーXIV‐   作:ウルトラナポリタン

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第6話 ケアル

 

 ギガント・バジリスク。蜥蜴のような全長十メートルの巨体を持ち、石化や毒といった非常に強力な状態付与能力を保有するモンスター。体とほぼ同じ長さの尻尾、人の頭ほどある鋭い爪。生半可な装備や実力では全く歯が立たない危険な存在だ。

 外皮はミスリルほどの硬度を持つという。難度的にもオリハルコン級冒険者パーティが命懸けで対応できるレベル。

 

 アダマンタイト級冒険者であるガガーランであれば――と光の戦士は目の前のガガーランに視線を向けるが、彼女の首筋には少なくない量の汗が滴っていた。

 

 ……光の戦士であれば、この程度のレベルのモンスターのデバフは効かない。そもそも当たらないのだ。直接的な判定において、レベル差は絶対である。

 それでも光の戦士の鉄製武器ではギガント・バジリスクに傷が付けられない。ガガーランに倒してもらう必要がある。

 しかし、流石は前衛職の天敵と呼ばれているだけはある。彼女の体躯と装備を以てしても、一人で――しかも光の戦士を庇いながら倒すのは難しいようだ。

 

「……色男、お前だけでも逃げろ。そんで組合に駆け込んで応援を呼んでくれ。出来れば、アズスのおっさんが良い。今日はいるはずだ」

 

 ガガーランは、落ち着いた声で光の戦士に告げる。死ぬ可能性があるとはわかっているようだが、恐怖は無さそうだった。

 逃げる選択肢はない、人里が近すぎる。倒しきるか、応援が来るまで足止めしなければ、近隣の人々が被害にあう。

 

 光の戦士が2日持つかと尋ねれば、彼女はわからないとだけ呟いた。

 ならばやることは一つだろう。

 

「――そうかい! じゃあ行くぜ、お前も死ぬんじゃねぇぞ!」

 

 剣を抜き、ガガーランの横に立つ光の戦士。彼女はそんな光の戦士を見て、ギガント・バジリスクに向かって走り出した。

 

 光の戦士もあとに続く。この世界に来て、初めてナイトの盾が役に立つかもしれない。

 

 

 

「オラァ!」

 

 ガガーランがギガント・バジリスクの首に向かって大槌を振りぬく。金属同士が衝突する甲高い音、ミスリルレベルの硬さは伊達じゃない。

 音に反してダメージ自体は通っているようだ。ギガント・バジリスクはすこし苦しそうによろめき、隙を晒す。しかしガガーランは追撃を行わず、バックステップで素早く距離をとった。

 

 ギガント・バジリスクがガガーランへ首を向けると、先ほどまで彼女のいた場所の草が一瞬で石に変わる。

 石化の魔眼、対策無しでは一発アウトの強力なもの。しかし距離は短い。前衛職はヒットアンドアウェイで細かくダメージを与えるしか無さそうだ。

 

 戦闘を初めて15分ほど。着実にダメージは与えられている。この世界において対象のHPゲージはマスクデータのようで光の戦士には見えていないが、ギガント・バジリスクの様子を見てそう判断できる。

 

 ギガント・バジリスクがガガーランへ注意を向けた瞬間、光の戦士が右側面へ盾で殴りかかる。ガガーランの時とは違う重い音。本気で打ち付ければ盾ではなく、腕力由来で殺せるだろうがそうはいかない。

 殺すのは論外。加えて盾が鉄である以上、力加減を意識しないと盾が使い物にならなくなる。剣を使うと下手すれば折れる。あくまでも、光の戦士の仕事は陽動(ヘイト管理)である。

 

 尻尾の攻撃が来る。光の戦士の少ない知識では毒は爪と牙にしかないはずだが、質量を活かした攻撃も十分脅威だ。反時計回りの薙ぎ払いを光の戦士は真上にジャンプすることで避け、ギガント・バジリスクの体を蹴って後方へ離脱した。

 

「まるで大道芸だな! そのすばしっこさ、羨ましいぜェ!」

 

 ガチガチの前衛職2人パーティ。構成ですでに負けているはずだが、ガガーランは心底楽しそうだ。

 光の戦士と入れ替わる様に、彼女は時計回りにくるりと一回転し、遠心力を利用して大槌を一文字に振るう。2本ある左前足の1本を狙った攻撃は、ギガント・バジリスクが狙われた足をひょいと上げることで簡単に避けられた。

 

「ッシャアラァア!」

 

 ガガーランの攻撃は空振りになったが、彼女はそのままもう一回転して頭上から大槌を同じ足の脛へと打ち付ける。

 耳障りな悲鳴、音からして骨が折れたようだ。大きく仰け反り隙を晒したギガント・バジリスクの首へと追撃を入れるため、ガガーランは大槌を振りかぶり一歩踏み出す。

 光の戦士は、いつでも自身へ注意を向けさせられるようギガント・バジリスクを観察する。

 

 しかし、ガガーランは少し緊張しているのだろうか。石化した草に踏ん張りが効かず体勢を少し崩してしまった。

 それにより追撃が遅れてしまい、石化の効果範囲内でギガント・バジリスクの瞳がガガーランを捉えようとしていた。

 

 光の戦士は危険を察知し、すかさず左手の盾をガガーランへと投げつける。鈍い音を立ててガガーランは横へ大きく逸れ、石化の効果範囲を脱したようだった。

 

 ガガーランの紫色の鎧は石化に対して耐性があるが、判定が絡むらしい。過信して安易に受けさせる訳にはいかない。

 

 ガガーランが姿勢を整える時間を稼ぐため、光の戦士は仕方なく剣での攻撃を試みる。

 強く殴れば折れる。自分にそう言い聞かせ、皮がたわみ易い右足の付け根へと斬撃を繰り出した。案の定効いている様子はない。折れることは無かったが少し刀身が欠けてしまったようで、光の戦士は内心冷や汗を流す。すまないウンバス。

 

「っぶねぇ、助かったぜ男前」

 

 攻撃を避ける知能はあるが、脳の構造自体は単純らしい。ギガント・バジリスクはダメージを与えたガガーランよりも、最後に攻撃してきた光の戦士を次の標的にしたようだ。

 

 ガガーランが緊張している理由は、恐らく光の戦士だ。前線で自分より弱い存在を守りながら戦うのは慣れていない様子である。実際、光の戦士を心配する必要は一切無いのだが、銀級がギガント・バジリスクと相対するのは自殺と同じだ。

 参戦を認めたことに後悔しているのだろうか。ガガーランのその不安だけでも払拭したいところ。

 

 

「武技・要塞! 武技・重要塞!」

 

 

 光の戦士はランパートとエクストリームガードを発動。爪による薙ぎ払いを、少し前に出てギガント・バジリスクの腕の付け根部分で両腕で受け止めた。そのまま押し返し、石化の視線を警戒するため背後へ跳ぶ。ガガーランの次撃まで時間は稼いだ。

 

「重要塞まで使えんのか! こいつは評価をカチ上げねぇと、なっ!」

 

 ガガーランは、両手に渾身の力を籠め、ギガント・バジリスクの骨が折れた足へと大槌を叩きつけた。とてつもない絶叫を上げ、ギガント・バジリスクは激痛に大きく仰け反った。

 その隙にガガーランは自身の足元に転がっていた盾を拾いあげ、光の戦士へ投げて寄こす。

 

 盾をキャッチし装備し直す光の戦士。追撃を狙うガガーランの横顔には先ほどまでの緊張はない。どうやら戦友と認められたようだ。

 

 この様子でスイッチを続けていれば、あと10分もかからず倒せるだろう。石化……エオルゼアではエスナか時間経過で解除される少し面倒なデバフだったが、この世界はどうなのか。効果時間は永続なのだろうか。

 

 などと考えながら、しばらくガガーランの援護を行っていたが――目の前のギガント・バジリスクがひと際大きな鳴き声を上げた。

 ダメージがかなり累積されてきているのか、目の前のギガント・バジリスクの動きは鈍くなっている。問題無く勝てる。

 

 しかし、この世界に来て初めて、光の戦士は額に汗が浮かんだ。

 

 ガガーランも異変を感じ取ったのか、ギガント・バジリスクから距離をとって辺りを警戒する。彼女の背中は大量の汗で濡れていた。

 

「不味い……二匹目だ」

 

 今のは、周囲の同族に助けを求める声だったのだろう。

 

 光の戦士の感知には、トブの大森林方面から迫ってくるもう一つの反応が検出されていた。

 

 

 

♦♦

 

 

 

 かなり不味い。非常に不味い。

 

 二匹目のギガント・バジリスクは、まさしく絶望的な存在となった。追加された相手のレベルは30。たかだか2レベルの違いだが、この世界においては大きな違いだ。難度が6も跳ね上がる。ガガーランにとっては地獄だろう。

 

 手負いのギガント・バジリスクは光の戦士、二匹目はガガーランが対応している。ガガーランは何とか隙を突いて反撃しているようだが、光の戦士はそうもいかない。

 ガガーランは幸い爪による攻撃と石化の視線は凌ぎきっているが、それらの攻撃へ意識が割かれており腕や尻尾の攻撃は被弾してしまっていた。

 本当に不味い、このままではジリ貧だ。

 

 ガガーランは既に肩で息をしていた、光の戦士の様子を伺う余裕すらない。

 光の戦士ではギガント・バジリスクは倒せない。この世界のものとは思えない力、武器、魔法、スキルを使わないと倒せない。使えば、この世界有数の人間に"異質な存在"と判断される。

 そうなれば、彼女が生き残ったとしても直ちに情報を共有され、目的の達成が困難になるだろう。イビルアイは特に秘匿されている存在、彼女への接触は難しくなる。

 レイドたちとガガーランでは発言力が違い過ぎる。仮に彼らが光の戦士のことを言いふらしていたとしても、虚言で終わっただろう。

 

 このまま静観し、ガガーランが死んだらギガント・バジリスクを倒す。二匹とも倒して一匹を焼却、光の戦士も怪我を負って戻ればそう怪しまれない。綻びは存在するが、それが最善の行動だ。

 

「ちぃ……! おい色男、まだ生きてるか!」

 

 ガガーランは、爪の攻撃を死に物狂いで受け流し叫ぶ。もう周囲が何も見えていないのだろう。汗一つ掻いていない光の戦士は、必死さを装い攻撃を避けながら大丈夫だと返すしか無かった。

 

 光の戦士はエオルゼアに帰らなければならない。帰って、彼らにただいまと言わなければならない。急ぎでなくとも、帰還の可否はすべてに優先する。

 

 だが、それはガガーランの命に勝るのだろうか。

 彼女は厚意で光の戦士を冒険に誘った。自身に直的な利益が無いというのに、光の戦士を思ってのことだ。

 

 良いのか? それは本当に良いことなのだろうか? 彼女を見捨てて、彼らに胸を張って冒険譚を語れるのか?

 

 ガガーランが地面に倒れる。どうやら、爪を受けたようだ。滝のように流れる汗、激痛と毒により過呼吸になっているのか目が酷く充血している。あの状態では、ギガント・バジリスクにとどめを刺されなくとも数分と待たず死ぬ。

 彼女が相手をしていたギガント・バジリスクも、自身の毒のことは解っているようだ。光の戦士が脅威にならないと判断したのか、傷ついた体を癒すために少し下がってうずくまる。

 

 そんな中、光の戦士はガガーランと目が合った。

 

 彼女の瞳は戦士のそれとはかけ離れた酷く穏やかで、慈愛に満ちたものだった。このままでは光の戦士も同じ末路を辿る――それでも今、彼が生きていることへの心からの安堵。

 

「よかった……」

 

 ガガーランはそう呟くと、死を受け入れるために静かに瞼を閉じた。

 

 

「グャッ」

 

 光の戦士は、目の前の手負いのギガント・バジリスクの首元を左足で蹴り上げる。ギガント・バジリスクは奇妙な断末魔を上げながら10mほど浮き上がり、地面へと墜落して絶命した。

 

 光の戦士はアラグ産のポーチに手を突っ込んでエオルゼア産の毒消しを取り出し、ガガーランへ投げつける。

 回復していたギガント・バジリスクが異変に気が付き顔を上げ、つがいの死に大きな叫び声を上げた。

 

「んなっ、これは……っ!」

 

 毒消しの効果が表れたのか、呼吸が止まりかけていたガガーランが目を開ける。HPが回復していないため未だ瀕死の状態だが、僅かな体力であっても意識を取り戻すのは、流石はアダマンタイト級冒険者である。

 光の戦士は起き上がろうとするギガント・バジリスクを一瞥し、ガガーランのもとへと駆け寄った。

 

 

「ケアル!」

 

 

 光の戦士は魔力を練り上げ、両手で正眼に構えたロングソードを天へ向かって突き出し叫ぶ。その瞬間剣先から莫大な魔力が溢れ出し、ガガーランの体へと降り注いだ。

 ガガーランの体内を魔力が駆け巡り、生命力を強制的に上昇させる。傷口を瞬時に塞ぎ、骨髄が歓喜して血液を量産し全身へ送り出していく。

 

「ぐああああぁあぁぁぁああぁあああっっっ!」

 

 ガガーランの最大HPの10倍に相当する回復量。まるで身体が別の何かに作り替わっていくような感覚に、ガガーランは海老反りになって絶叫する。回復しているはずのに、まるで内臓が焼けるであった。

 

「っっっっッシャア! 絶好調だァア!」

 

 反りを利用して飛び起きるガガーラン。そのまま流れるように、右手の大槌をギガント・バジリスクへ投擲した。ギガント・バジリスクの首へと突き刺さり、その衝撃と痛みにドスンと大地に沈む。致命傷ではないが、致命(クリティカル)ダメージになったようだ。

 

 ガガーランは死んだギガント・バジリスク、光の戦士の順に視線を送る。何を思ったかは――光の戦士はわかる。しかし彼女が、光の戦士が懸案する内容について何も言うことは無った。

 

「男前、気合入れていくぜ!」

 

 ガガーランが光の戦士に並び立つ。今、反撃の狼煙が上がった。

 

 

 

♦♦

 

 

 

 あの後全快になったガガーランは、まるで別人のような動きでギガント・バジリスクを屠った。光の戦士が出る幕が無いほどに素晴らしい動きだった。

 他のモンスターが寄り付かないようギガント・バジリスクの死体は処分し、ギルドの組合に提出するためにトサカの棘を持ち帰ったのであった。

 

 トロフィーとガガーランの証言に飛び上がったアリシアは、お淑やかさとは無縁の全力疾走で3階の組合長を呼びに行った。そして、2階の会議室へ通され今に至る。

 

「なるほど。ギガント・バジリスクと戦闘を行い生きて帰ったことは確かに素晴らしい。しかし、それはガガーラン殿が居たからこそでは無いのでしょうか」

「俺は一人だとギガント・バジリスク一匹にも苦戦、いや勝てない。こいつがもう一匹の注意を逸らしてくれた上に、大量のアイテムで俺を援護してくれたから、こうして帰ってこられたんだよ」

「ならば、何故ミスリル級なのですか? 貴女の言うような働きであれば最低でもオリハルコン、なんであればアダマンタイト級へ推すかと思いましたが」

 

 席に座るや否やこの舌戦である。光の戦士は出された水を飲みながら、組合長とガガーリンの言い合いを眺めている。

 ガガーランは光の戦士をミスリル級へと推薦した。推薦自体は約束なので特に思うところは無かったが、まさかミスリルとは。良くてプラチナ級ではと考えていた光の戦士であった。

 

「銀級が急にオリハルコン級になったと他の冒険者が聞けば、良い顔はしねぇ。しかも俺が付いて行ってたことは知られてる。こいつがしっかり人付き合いしながら生きてるのは、おっさんも分かってんだろ」

 

 ガガーランの言うことは最もである。第一の目的はイビルアイとの接触だが、叶ったとしても食い扶持は稼がないといけないのだ。共同で仕事をする可能性が少しでも残っているので、仕事仲間たちに良くない噂が立つのは勘弁願いたい。

 

「……わかりました。ですが正直な話をすると、彼の人となりで支援をしていただけと言うのは信じられません。本当に、彼は前衛で戦っていないのですね?」

 

 組合長の言い分はおかしい。光の戦士は勝てない戦いで前線に立つような男だと思われているのだろうか。

 納得いかないとばかりに光の戦士が組合長を見つめていると、目が合ってしまった。表情は大して変わらないがむすっとしたものだが、心なしか少し目元が緩んだ気がする。

 

「ああ。アダマンタイト級冒険者、ガガーランの名のもとに嘘は無いと誓うよ」

 

 大嘘だろ。

 光の戦士がバレないよう小さくため息を吐くと、振り向いたガガーランがにっこりと笑っていた。

 

 

 そうして、光の戦士はリ・エスティーゼ冒険者組合 組合長の承認を以てミスリル級冒険者と相成った。プレートは後日支給され、その際正式に昇格になるとのこと。人の口に戸は立たない……暫くはゆっくりとした方が良いかも知れない。

 

 組合を離れ、光の戦士は自身が身を寄せる宿に戻ってきていた。頭が少し疲れたので、いつものように一杯やるためである。

 いつもなら日の高い内は一人でちびちびやるのだが、今回は目の前に座るガガーランが奢ってくれるとのこと。

 

「っかー! 生きてるって素晴らしいなオイ!」

 

 乾杯の音頭も無く、ジョッキが届いた矢先に掻っ込むガガーラン。あんなことがあった上に依頼の帰りもノンストップだったが、行く前よりも元気そうだ。

 光の戦士が怪我は問題無いかと質問すると、ガガーランは笑顔で自身の胸をドンと叩いた。

 

「おう、何なら今まで生きてきた中で一番絶好調だぜ! 今ならおチビさんにも勝てる気がすらぁ!」

 

 そいつは良かった。ケアルをかけた時は相当苦しそうだったのでこの世界の人間には毒かと心配したが、上手くいって何よりである。

 しかし、大丈夫なのだろうか。組合長に堂々と嘘を吐いてしまったが。ガガーランは自身の名前を出してまで光の戦士の昇格をと説いていた。

 

 百歩譲ってガガーランはともかく、他のメンバーに迷惑は掛からないのだろうか。

 

「良いんだよ、蒼の薔薇の名前は出してねぇ。ガガーランってのも偽名だしな。それに……あのおっさんも嘘だってちゃんと解ってるよ」

 

 ガガーランは追加の注文を頼みながら小声で話す。

 実際そんな気はしていた光の戦士であった。組合長は光の戦士が前に立っていたかを気にしていたが、どちらかと言うと無傷で帰ってきたことの方がたまげたのだろう。ギガント・バジリスクはオリハルコン級が最低でも4人パーティを組む相手だ。銀級がピンピンしていたらそれは最早事件である。

 

「んでよ、どこまで話してくれるんだ?」

 

 ガガーランは笑みを消し、真面目な表情だ。光の戦士が話せるラインを頭の中で模索している間、彼女が急かすことは無かった。

 ガガーランが頼んでくれた光の戦士の分のおかわりも来たところで、光の戦士はゆっくりと口を開く。

 

 詳しくは言えないが、目が醒めたら知らない土地にいた。

 土地だけではなく、文化も技術も全く異なるものばかりである。

 とあるツテで、不思議な出来事を知っているかもしれないイビルアイを訪ねるといいと聞いた。

 アダマンタイト級冒険者であるイビルアイに接触するなら、冒険者で名を上げるのが近道。

 故郷に帰るのは大事だが、出来るだけ波風を立てたくない。

 

「ふーん……」

 

 丸く言えばこの程度だろうか。見せてしまった手前ガガーランに隠し続ける必要はないかも知れないが、どこに耳が立っているかわからない。今更だが出来るだけ慎重になるべきである。

 

 ガガーランも光の戦士の事情をある程度察したのか、神妙な面持ちで顎に手を当てて何かを考えている。再度お互いに沈黙が少し続いたのち、彼女は口を開いた。

 

「確かにイビルアイはいろんなことを知っている。んで、それ以上に知る奴もいる。ただ――あんたに教えるのは少し気が引ける」

 

 全くもってその通りだ。どこまで本当のことを言っているかわからない男に仲間を売るなど、光の戦士もお断りである。どちらかと言えば、イビルアイ以外にも何かを知る者が居ると判明しただけで光の戦士としては万々歳なのだ。

 

 まあ、地道にやっていくさ。そう光の戦士が呟くと、ガガーランは少し慌てたように口を開く。

 

「おいおい早まってんじゃねぇ、別に会わせないとは言ってないぞ! そうだな……ここで聞く話は墓場まで持って行くつもりで来たが、ウチの連中に話して、会っても良いって言ったなら場を整えてやるよ」

 

 ひゃっほう! 光の戦士は、ガガーラン様のお言葉に飛び上がってガッツポーズした。

 ようやくの進展である。これでもし早く帰ることが出来れば、ママの折檻が和らぐかもしれない。

 

「おいおい勘違いするなよ! あくまで聞いてみるってだけで、あいつらが警戒して会わないってんなら話はそれまでだ。……それに、もう一つ条件がある」

 

 小躍りする光の戦士に冷たい眼差しを向けるガガーラン。しゅんと椅子に座り直して小さくなる光の戦士を見て、やれやれと呆れた声で溜息を吐いた。まるで外食時に騒いでいる子供に対してうんざりしている母親のように見え、光の戦士は思わず。

 

 

「ガガーランお母さん……」

 

 

「…………今、何だって?」

 

 

「すみません」

 

 

 普通に怒られてしまった。

 酒が入って少し馬鹿になった光の戦士。本当にギガント・バジリスクを無傷で倒した男なのかと、ガガーランは改めて自分の目を疑う。しかし、少しイジけてジョッキをくるくる回して遊んでいるこの男が、自分よりも強い存在であると言う事実は変わらなかった。

 

 二度目の溜息を吐き、ガガーランは真っ直ぐに光の戦士を見据える。流石に真面目な雰囲気を感じたのか、光の戦士はガガーランの要望を聞き逃さないよう座り直して耳へと集中した。

 

「俺に、鍛錬を付けてくれ」

 

 

 




「デバフは効かない」
光の戦士がいたエオルゼアでは、相手とレベル差があると攻撃が当たってもデバフは別枠で外れる。また、光の戦士が特に信仰しているハルオーネと言う戦神の加護で状態異常耐性が大きく向上している。

「女神ハルオーネ」
エオルゼアで信仰される十二神の一柱。全員人間のことが好き。光の戦士のことは超大好き。光の戦士に名指しで信仰されているハルオーネは、他の神たちから少し嫉妬されている。

「HPはマスクデータ」
光の戦士は相手の情報や攻撃方法、攻撃範囲を視覚化する力を持っている。この世界では、情報についてはレベルと状態異常しか見えていない。

「ランパート」
タンクロールが共通で使える防御スキル。一定時間自身の被ダメージを20%軽減し、自身が受けるHP回復効果を15%上昇させる。
武技・要塞を偽るために使った。

「エクストリームガード」
ナイトの防御スキル。一定時間自身の被ダメージを40%軽減し、一定量のダメージを防ぐバリアを張る。バリアは不可視。
武技・重要塞を偽るために使った。

「ケアル」
幻術士・白魔導士の回復魔法。対象のHPを回復する。回復力は500で、MND(マインド)等のステータスに左右される。
大昔のFF14では幻術士のいくつかのスキルが、ナイトでアディショナルスキルとして使えた。ケアルもその一つ、現バージョンでは使えない。

「ガガーランお母さん」
ヤ・シュトラ(永遠の23歳)ママ。酒の席でシュトラママと懲りずに言った光の戦士は、照れて怒ったヤ・シュトラに丸一日口をきいてもらえなかった。
ちなみに、ヤ・シュトラにはヤ・ミトラという26歳の妹がいる。
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