【CLATTANOIA】黄昏の超越者(オーバーロード)‐ファイナルファンタジーXIV‐   作:ウルトラナポリタン

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第8話 護るために殺すこと

 

 近頃、光の戦士は非常に機嫌が良かった。ご機嫌な光の戦士の手にかかれば仕事などお茶の子さいさいであり、案の定調子に乗って手当たり次第に依頼を受けまくった。

 ミスリル級に回ってくる仕事など、銀級と比べれば半分以下である。アイリスは何とか止めようとするも、ニコニコと満面の笑みで依頼書をかき集める光の戦士に対して何もできることは無かった。

 

 依頼達成率100%、平均日程1日、支払いで揉めること無し、バカ騒ぎ以外での乱闘騒ぎも無く他冒険者との関係良好、ガガーランのお気に入り。非の打ち所の無い異常な優等生であり、組合が依頼受注を拒否する理由は露ともない。

 

 しかしながら、だからと言って依頼を手当たり次第に受けても良いかと言えばそうでもない。光の戦士がアホなことをして依頼が消化され、上級冒険者は食い扶持が減れば当然王都を離れる。その後光の戦士も姿をくらませば、いずれ去った冒険者が戻ってくるにしても空白の期間が出来る。

 そうなれば当然、王都のモンスター関係の治安が著しく悪化する。当たり前の話だ。

 

 要するに、加減しろ馬鹿! と言うわけであった。

 

 馬に跨って鼻歌を歌いながら出発しようとしていた光の戦士のもとへ年甲斐も無く全速力で走ってきた組合長は、大声でそう叫びながら拳大の石ころを彼のこめかみに向けてブン投げた。

 当然ノーダメージな光の戦士がアホ面でどうしたのかと問いかけたところ、もう一投された次第である。

 

 金をやるからしばらく何もするな。つまるところ、光の戦士は謹慎になった。

 

 まさか自分が初日に危惧していた内容で怒られることになるとはと、正気に戻った光の戦士は己が身を恥じた。

 でも仕方のないことなのだ。この世界で多くの友達ができ、ついでに帰還の糸口になる可能性がある存在と会うことが叶うかもしれない。その喜びの先が仕事だっただけだ。決して悪気はない。

 

 しかし、アイリスと組合長に迷惑と心労をかけたのも事実。決定を甘んじて受け入れた光の戦士である。ガガーランの鍛錬や細かい情報収集に充てられるので、別に時間を持て余しているわけでもない。有意義に使わせてもらっている。

 

 そんな休業中の光の戦士だが……今彼がいるのは、どうしてか冒険者組合の組合長室だった。

 

 この部屋は裏口から入って冗談のように急な階段を上がりきれば直通で入室でき、部外者と顔を合わすことが無い。内緒話に最適ではあるが、光の戦士は何故呼ばれたか皆目見当もついていなかった。

 

 謹慎が言い渡されて1か月が経った今日、光の戦士が泊っているいつもの宿に使いが来たのだ。用を聞くも首を振られ急ぎとだけ。犬の様について来てみると、誰もいないこの部屋に通されたのである。

 

 打合せ用の長机に着かされ、光の戦士が心当たりのない理由に思案を巡らせていると、組合長がワインの瓶とグラスを三つ持って入室してきた。

 

「急に呼び出して済まない。だからそんな顔をするのは止めてくれないか?」

 

 こういった場では禄でもない事になるというのが相場は決まっている。

 グルルと警戒する光の戦士の様子に溜め息を吐き、組合長は光の戦士と対面になる様にソファへと腰を下ろした。

 

 組合長はグラスのワインを注いで光の戦士と自身に配膳し、残った一つは組合長の隣へ配膳する。

 

「まぁ、君の予想している通り面倒ごとだ。人を殺してほしい」

 

 聞く前に退散しようとワインを流し込んで席を立とうとした光の戦士だが、先手を切られる。

 本当に面倒ごとである、光の戦士はヒットマンではない。行為の良し悪しはともかく、そう言ったものはその道の人間がやるものだ。

 

 王都からの引っ越しも検討しつつ席を立とうとすると、光の戦士は部屋の外に妙な気配を感じた。数は4、全員武装しているようである。

 

「外の者は……保険だ。4人程度で君を抑えられるとは思っていない。受けるか受けないかは話を聞いてからにしてもらえないだろうか? 君がどちらを選択したとしても、一切不利益を被らないようにすると約束する」

 

 組合長は深刻な面持ちだ。

 光の戦士はヒットマンではない。聞くだけだぞと組合長に告げ、大きく溜め息を吐いた。そういったことはその手の人間に依頼すべきである。

 

 そもそも、冒険者に殺人を依頼するのはご法度だ。それは組合長が一番よく理解しているのではないだろうか。

 

「当然だ。そもそも組合としての依頼は別にあり、殺る話は私から君への個人的な依頼だよ」

 

 どうにもきな臭い話である。内容の如何を問わずさらに帰りたくなる光の戦士。

 組合長には借りがある。ガガーランの口添えがあったとは言えミスリル級への昇格を認めてもらえたし、"光の戦士が行ったことの無い場所の依頼"は優先的に回してもらっていた。

 加えてこれまでの待遇は非常に誠実なもので、光の戦士は彼をビジネスパートナーとして信頼している。今はそれが少し揺らいでおり、事が事ならバハルス帝国に逃げようかなとも考えていた。

 

「依頼主はリ・エスティーゼ王国国王、ランポッサ三世からのものだ。王家直轄領の城塞都市、エ・ランテル近郊の森に巣食っていると思われる野盗団の調査。出来るだけ詳細な情報を収集。派遣戦力の決定のため、出来るだけ詳細な情報を持ち帰って欲しいとのことだ」

 

 光の戦士は、組合長の言っている意味が一瞬理解できず数回のまばたきを挟んだ。

 国王からの依頼。国家運営に関わらないという規則は何処に行ったのだろうか。ものの数分で、光の戦士の中にあるこの世界の冒険者の在り方が崩れていく。

 

「そして私個人の依頼は、その野盗を全て排除。既にエ・ランテルのミスリル級冒険者チーム1つと金級が2つ全滅している……王室からは尻を叩かれており、冒険者の面子を回復しなければならない。偵察の際に相手からの急襲を受けたとして、全員始末してくれ。報酬は依頼分の280Gに加え600Gだ」

 

 そこまで言い切って、組合長は喉を潤すために……いや、緊張しているのだろう。グラスのワインを一気に飲み干した。

 破格の追加報酬。人殺しという行為を行うのだから高いのは当然だろうが、面子と言うのはそこまで大事なのだろうか。

 

「この野盗たちは獲物と目撃者を決して逃そうとしない。何人か逃げ切れた生存者はいるが、男はその場で殺され女は連れ去られる。金品だけではなく、襲うという行為が目的らしい。……エ・ランテルは俺の故郷だ。そんな奴らに町民たちが怯えているのは耐えられない。だから、今回の依頼に手を挙げたんだ」

 

 こちらが本心なのだろう。組合長の揺れている瞳が、光の戦士にそう告げている。光の戦士の目を見ているが、心が目を合わそうとしていない。光の戦士は彼の空のグラスに、体と手を伸ばしワインを注いでやった。

 

「ありがとう。……君が受けなければ、オリハルコン級のチームに調査のみを依頼する。冒険者に対人戦闘は難しい。先ほど言った通り、受けなくても君には何もない」

 

 あとは、光の戦士の解答だけだ。組合長は少し肩の荷が下りたようで、表情が和らいでいる。

 ソファに体を預けた彼を光の冒険者はじっと見つめる。一つだけ、疑問が残っていた。

 

 

「なんでオレに頼んだんだ。オレも冒険者、しかもミスリル級だぞ」

 

 

 ミスリル級は恐らく既に殺されており、組合長は冒険者は対人戦闘は向かないと言った。光の戦士がその二の舞になるとは思っていないのだろうか。

 

「君の強さはミスリル級じゃない。それに――あるだろう?」

 

 人を殺したことが。

 

 組合長はみなまで言わない。それでも、言いたいことは解る。

 

 この依頼は、光の戦士の運命そのものなのかもしれない。

 護るために殺す。それは免罪符であり、同時に真実でもあるのだ。

 

 

 

♦♦

 

 

 

 光の戦士は、依頼を受けてすぐに出立した。どうせ目撃者は全員いなくなる……であれば、アイテム等を使用する羽目になっても問題ない。エオルゼア産を使えばいい。

 直ぐ動かせる四武器というミスリル級チームを偵察段階まで同行させるという申し出があったが、隠密の心得があるということにして却下した。何かあれば寝覚めが悪いからだ。

 

 エ・ランテルまで馬で本来は6日かかる。しかし休憩はギリギリまで切り詰めたので、4日での到着となった。

 

 現在時刻は正午を少し過ぎたころ。光の戦士は通行料を支払ってエ・ランテルに入り、都市長と冒険者組合への挨拶に向かう。話は通っているが、周辺で人死にが起きるのだ。

 証拠が必要なため焼却するわけにもいかない。死体の処理はエ・ランテルの冒険者たちが担当することになる。筋を通しておく必要があった。

 

 都市長での話は終わり、次は冒険者組合。特に後ろめたいことも無いが、ここはアウェイの地だ。余所者が目立つ必要も無い。光の戦士は全身を覆う明るい色の外套で、全身鎧を隠している。フードは被っていないので、王都初日の様に、怪奇なものを見る視線は集まっていない。

 

 帰りに買う土産を物色しながら、光の戦士は通りを抜けて冒険者組合へと入った。

 

 王都の建物と比べて広さは半分程度だが活気はある。酒場は併設されておらず、ここにいるのは全員仕事目的の人々である。

 ミスリル級のチームが一つ減り、その後釜を狙っているのだろうか。受付が少ないとはいえ、王都の組合でも見ることの無い長蛇の列がカウンターの前に連なっている。

 

 しかし、光の戦士が気になったのは長蛇の列の中のとある場所。ガタイの良い者が多い冒険者達からでも目立つ、圧倒的な背格好。

 漆黒のフルプレートアーマに、真っ赤なマント。背中にはクロスされた大剣と思わしき武器の柄が一対見える。

背後からでは詳細な装備は把握できないが、恐らくは面頬付きの兜。

 列に並んでいないたむろしている冒険者達は、興味警戒畏怖嫉妬、様々な眼差しで鎧の人間を見つめていた。

 

 光の戦士は目を細める。あれらは、明らかにこの世界から逸脱した装備だ。いかにウンバス製の素晴らしいロングソードと光の戦士の膂力を以てしても、あの大剣の一撃を正面から受け止めれば鍔迫り合いにすらならずへし折れるだろう。

 しかし――エオルゼアの物とも違う。これは光の戦士の勘だ。恐らくは、この世界における秘宝に近い逸品なのだろう。

 

 そうなれば、少し関わりたくなるのが光の戦士の性質(さが)である。光の戦士は掲示板で依頼の管理をしている女性に近づいた。

 王都から来たミスリル級冒険者であることを女性に背後から伝えると、彼女は作業を止め光の戦士に振り向く。

 

「あ……王都の組合からお話は聞いております。随分とお早い到着ですが……」

 

 馬を飛ばしてきた。そう言うと、女性は少しひきつった笑いをして見せた。お話と言うのはどこまで聞いているのだろうか、彼女のぎこちない笑顔を見て思う光の戦士だった。

 

「それでは、組合長のアインザックを呼んできますので少々お待ちください。あと、組合内ではプレートが見えるようローブの前を開けておくようにお願いいたします」

 

 確かにそれはそうだ。当然の指摘に、光の戦士はローブの前ホックを外して中身を晒す。ミスリルのプレートを確認した女性は、ようやく笑顔になった。

 頭を下げて階段へ向かおうとする彼女に慌てて声をかける。

 

「冒険者の新規登録ですか? それであれば、あのカウンターではなく別の者が対応しますが」

 

 怪訝そうに頭をかしげる彼女の疑問はもっともだ。光の戦士は既に冒険者である。

 

 組合長への仲立ち、今の解答への礼と呼び止めたことへの謝罪の意も込めて、光の戦士は彼女に駆け寄って銀貨が数枚ほど入った小さな袋を手渡す。彼女は袋の中身を確認すると満面の笑みで再度大きく頭を下げ、パタパタと階段を昇って行った。

 

 光の戦士が女性の方へ向かう際、鎧の人間を正面から確認した。読み通りクローズドヘルムであり、加えてその胸には冒険者プレートが無かったのだ。

 恐らく冒険者登録を行いに来た新人。光の戦士もその際は律儀に列を並び、自分の番になりカウンターの隅に移動させられた記憶がある。そして、声をかけてくれれば別で直ぐに対応したとも言われ、損をした気持ちになった記憶がある。

 

 エ・ランテルでもそうなのではと思い確認したのだが、ドンピシャだった。

 これで鎧の人間に話しかける理由が生まれた。

 

「……なんでしょうか」

 

 声からして男性のようだ。声色に特に違和感はないが、その間や籠った感情から警戒しているように見える。

 また、近づいて初めて気が付いたが、小柄な女性が横に並んでいた。長い黒髪をポニーテールでまとめ、タンカラーの外套。その下には帯刀しているようだ。

 こちらは一目でわかる最高の警戒色。光の戦士への敵視を隠そうともしない。

 鎧の彼が主で女性がその臣下、と言うのがしっくりくる感想だった。

 

 ざっとステータスを確認したところ、鎧の男性は25レベルで女性は23。しかも、どちらからも並々ならない凄みを感じる。将来有望である。

 

 そんな2人の様子に光の戦士はニコリと笑い、冒険者の新規登録なら職員に声をかければできる旨を伝えた。

 

「なるほど、ここに並ぶ必要は無かったのか。この調子だと30分以上かかるだろうし、助言いただき助かりました」

 

 そう言って彼はぺこりと頭を下げる。すると、隣の女性の表情が驚愕のまま固まり動かなくなってしまった。石像の様だ。

 

 鎧の彼はモモン、女性はナーベと言うらしい。今日エ・ランテルに到着し、冒険者として旗を上げるとのこと。光の戦士はモモンの出身を尋ねたが濁されてしまった。

 

 エ・ランテルはトブの大森林が近い。光の戦士も以前エライ目にあったので、簡単な仕事であっても気を抜かないように忠告する。

 

「そうですか……なるほど、ありがとうございます。そういう貴方は、どうして王都から遥々?」

 

 モモンがそう尋ねると、丁度先ほどの女性から声がかかった。国王直々などと言えるはずも無いので、組合連携の仕事で伝えると納得したようだ。

 王都で居座っている宿の名前を教え、もし来ることがあれば一緒に飲もうと光の戦士は笑う。

 

「……はい! 是非ご一緒させて下さい」

 

 兜で光の戦士は見えなかったが、声色からして彼もきっと笑っていたのだろう。

 最後に別れを告げ、光の戦士はその場を離れた。

 

 

 

 エ・ランテルから西方面へ1時間ほど。つまり王都側へ向かう道沿を覆うように、大きな森がある。日が出ている時間帯でも少し薄暗く、丸腰での通行に忌避感を抱かせるだろう。

 そして、その感覚は正しい。1年ほど前から、この森を横切ろうとした者たちの多くが行方不明か、命を落としている。延べ17組、59名。もはや天災と言っても過言ではない被害である。

 

 被害者の多くは護衛付きの商団か冒険者、生存者はたった4名でいずれも形振り構わず逃げ出した者。何故か戦闘のプロである冒険者も襲われており、件の野盗団は金品だけが目的ではない事がわかる。

 

 つまるところ、襲うことが目的。抵抗できない女性は連れ去っているそうなので、欲の発散が主たるものであるのは間違いないだろう。

 

 5人で構成されていたミスリル級冒険者チームが帰ってこないことから、この世界において有数の強者がいるのかもしれない。モンスター討伐専業と言いつつも、実力は上澄みだ。

 エ・ランテルの組合長も50名以上いるはずと言っていたが、冒険者にとって数的不利はいつものこと。有能な軍師か、猛者がいる可能性が高い。

 

 この世界に飛ばされてきたのが自分だけであると、光の戦士は考えていない。自分よりも強い存在がいる。……それは、当然の警戒だ。

 

 あの後エ・ランテルで少し時間を潰し、日はとっくに落ち切っている。夜目が利かなければ何も見えない程の暗闇。

 

 光の戦士に対して、目視以外の監視の類は意味を成さない。森の入り口に立つ光の戦士は意識を内に沈め、外界を俯瞰する。

 ――自身を注視する存在、無し。森の中には、知覚できる範囲で12名の人間を確認。

 

 これらは見回りで、他は感知外のどこかに身を潜めているようだ。こういう時は首魁を落とせば統率が取れなくなり逃げ出すのが定石だが……今回に限ってはそうもいかない。

 光の戦士が一人で行ったと知られるのは具合が悪く、悪事が常習化した人間はそう簡単に足を洗えない。またどこかで徒党を組み、懲りずに同じ真似をするだろう。

 本来であれば法の下で裁かれるべきだが――光の戦士は、そこまで人間が出来ていない。

 

 不確定な事態を避け、確実に終息させるには、文字通り終わらせるのが確実だ。

 

 光の戦士はレベルシンクを解除し、ナイトの装備を本来の物へと変更する。

 

 剣と盾を抜き音を立てずに森へ侵入する。しばらく歩いていると、ランタンを持った二人組が見えてきた。武装は2人ともロングソードのみ、板金製の鎧ではなく鎖帷子のみ。

 モンスター相手ではなく対人間のみを想定した装備である。 

 

 光の戦士は、隠密を解いて2人の目の前に躍り出た。

 

「うおっ! お前何者だ!」

「王国の兵士か!?」

 

 その距離僅わずか10m。本来であれば、全身鎧を装備していれば聞こえるはずの足音に反応出来なかったことに驚いた1人が大きな声をあげる。ランタンを構えたまま剣を抜き、光の戦士へ正眼に構えた。

 彼らから見れば何もなかった暗がりに、ぬるりと人間が現れたのである。驚愕は当然のものだった。

 

 光の戦士は、この辺りを荒らしている野盗かと彼らに尋ねる。

 

「へへへ、俺たちも有名になったな。ただ少し違う。俺たちは死を撒く剣団、金さえ払ってくれれば何でもやる傭兵集団だぜ。今はこうして真面目に日銭を」

「おいしゃべり過ぎだ! こいつが正規兵の斥候だと不味いぞ」

 

 ランタンを持っていないもう1人は少し理性的なようだ。全身鎧を着ている光の戦士が斥候などあり得ないのだが、武器を構えたまま周囲に注意を払っているようだ。

 

 傭兵団で正規兵は不味い……となると、この死を撒く剣団とやらは有事の際王国に雇われる集団と見るのが確かである。国は上手く使っていたつもりだったが、仕事が無いと金稼ぎのために野盗じみた真似をするようになったのだろう。

 そうして、目の上のたんこぶとなったため始末する。それらしいシナリオである。

 

 彼らの腰部分を見ると、ベルトに赤い布切れが巻かれている。あれで味方を識別しているのだろうか。

 

「で……お前は入団志望者か? なら、お頭とブレインさんに会ってこの布をもらって来な」

「馬鹿少し黙れ! 何でそうやってこっちの情報を――」

 

 読みは当たり。必要な情報は全て勝手に話してくれたので、彼らにはもう用は無い。一足で距離を詰め、ロングソードで2人の頸を横に薙ぐ。頭がごとりと地面に落ち、バランスを失った身体は少し遅れて倒れた。

 返り血が掛からないよう少し丁寧に斬ったため、傷口から血は噴き出さない。頭側の断面からは残留した血が、身体からは斬られたことに気づいていない心臓の鼓動に合わせて、トクトクと流れる。

 10秒ほど流血が続き、心臓が止まって収まった。

 

 人を殺しても、その事実に何かを感じることは無い。唯一脳裏に浮かぶのは、彼らにも居たかも知れない大切な人が流す涙のみ。

 

 そう、護るために殺す。ただそれだけだ。

 

 光の戦士は残りの反応を全て消し去るため、森の奥へと歩を進めていった。

 

 




「四武器」
黒髪長髪の女性戦士をリーダーに据えるミスリル級冒険者チーム。今は王都を中心に活動中。

「目視以外の監視の類は意味を成さない」
光の戦士はとある"加護"により、外部からの諜報や精神作用などの干渉を無効化する。
かの淑女との、決して消えない、大切な約束。
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