【CLATTANOIA】黄昏の超越者(オーバーロード)‐ファイナルファンタジーXIV‐   作:ウルトラナポリタン

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第9話 神の領域

 

 ――ブレイン・アングラウスは、神の存在を信じていない。

 

 辺鄙な村の農家の息子として生まれ、父を倣い、物心がついた頃には畑仕事を手伝っていた。本当に小さな村だったため村人全員が家族のようなもので、父を継ぎ、自分も農夫になるのだと信じていた。

 

 しかしブレインが11歳の時、野盗により村は焼き払われたのだ。男はその場で殺され、女は犯されたのち殺され、子供はそういった趣味の人間へ売り渡すために連れ去られた。

 弱肉強食。この世の真理であり、誰もがすべからく平等に相対する悲劇と喜劇。倉庫の床下収納に隠れていたブレインは、全てが終わったのちに救援に来た王国兵士たちによって助け出された。

 

 この件についてブレインは傷を負っていない。体にも、心にもだ。

 弱いとこうも簡単に殺される。強くなれば全てを手に入れられる。熱心に何処かの神を信仰していた家族と村民たちは、慈悲を受けることなく蹂躙された。

 その事実だけが、ブレインの心に残った。

 

 助けられたのち、ブレインは農具ではなく剣を取った。王都で弟子を取る戦士たちに弟子入りし、その秘奥を全て吸収して己を高めていった。

 幸い高い剣の才能が有り、師はそんなブレインを一目で強者の器であると判断し、喜んで迎え入れられた。

 

 15になったころには、毎年バハルス帝国とカッツェ平野で行われる戦争に傭兵として参加した。

 帝国の兵は酷くノロマで、本当に命のやり取りをしているのか疑問に思うほどに退屈なものだった。人を斬った感触も、特に感想は無い。あの時と同じように、弱い奴から順に死んでいく。

 

 幾度も戦いを経験していく内、ブレインの中にとある感情が芽生え始めた。

 

 ――強くなりたい。誰も到達したことの無いような高みを知りたい。

 

 家族が死んだ時も、生き残った時も、師たちから称えられた時も、人を殺した時も、ブレインは何も感じなかった。根底にあったのはあの日、両親に隠れ場所へ押し込まれた際に抱いた、死にたくないという本能のみ。

 感情が本能を上回った瞬間、ブレイン・アングラウスは個として確立した。産まれたと言っても良い。あの日以来モノクロだった世界に色が付き、人生の道筋が定まった。

 

 王国中を放浪し、貴族たちの小競り合いに雇われ邪魔者を叩き斬る。そうすれば、1年を待たずにほぼ合法的に戦闘経験を積むことが出来る。

 冒険者になるという選択肢は無かった。ブレインが欲していたものは人間との戦いであり、モンスターなどというのは眼中に無い。ただひたすら、顔も名前も知らない者を斬り倒していった。

 

 弱いのが悪い。ただ、その一言に尽きる。

 

 そんな血みどろの生活を続けて10数年経った頃、ブレインの耳にとある噂が入ってくる。

 

 リ・エスティーゼ王国国王、ランポッサ三世の名のもとに御前試合が行われる。

 

 それは吉報だった。王国の兵たちの中には志願兵のみで構成された"戦士"たちがいる。ブレイン自身、毎年行われる戦争で明らかに動きが違う兵がいるのは知っていた。

 その中でも群を抜いて強いと言われている男……ガゼフ・ストロノーフ。そのガゼフも、試合に出場するという。

 

 まさに僥倖。ブレインはガゼフを、剣に生きるようになって初めての壁であると理解した。奴を倒せばブレインの名声が国中に広がり、多くの者が足元にひれ伏すだろう。

 それに名声が広がればきっと……もう、何も奪われない。

 打倒ガゼフを掲げ、ブレインは変わらぬ日常の中ひたすらに牙を研ぐ。

 

 そして御前試合当日。ブレインは、本当にあっけなく敗北した。

 

 いや、善戦したのだ。試合は1時間にも及び、双方が全力を振るった戦いだった。出し惜しみなどなく、ただ武と武がぶつかる果し合い。模擬試合だというのに、ブレインは込み上げる興奮に笑顔を隠しきれなかった。

 

 ――四光連斬!

 

 そう思っていたのはブレインだけだった。次の一撃で勝敗が決すると見て繰り出した渾身の一撃は、ガゼフが初めて見せた武技によって打ち砕かれた。

 本当に……本当に、つまらない話だ。死力を尽くしていたのはブレインだけだったのだ。ブレインが知らないあの武技をさっさと使っていればもっと早く決着がついていたはずだ。

 しかしそんなものは敗者の論。きっとガゼフも全力で、ブレインを侮っていた訳でもない。

 ただ、負けた。

 

 全てを打ち砕かれたブレインは失意のまま数か月引き籠ることになったが、目標は変わらない。

 再び傭兵へと身を落とし、ガゼフを打ち倒すためにただただ己を鍛え続ける。

 

 ブレインにはそれしか無い、それしか残っていない。弱ければ奪われる。弱ければ――

 

 

「……っつぅ」

 

 酷く懐かしい夢を見たようだった。板材の上に敷いた藁へ布を巻いただけの粗雑なベッドの上で、ブレインは目を覚ます。

 サイドテーブルの蝋燭に火を灯し、立て掛けている鞘へ納められた刀を手に取る。

 

 夢の続きではないが、ガゼフに敗北してからブレインは多くの努力を積み重ねた。

 剣の修練はもちろん、筋力と肺活量を鍛えるトレーニング、戦術や身体そのものについての座学、精神を強固にするストレス負荷、装備の厳選。

 この刀も、その一つだ。王国から遠く南方にあるという都市、そこから流れ着いた逸品である。貴族でさえ金額を見て目を丸くするであろうこの刀と呼ばれる武器は、素の状態で魔法による強化を受けた武器以上の切れ味を誇る。

 その他に身を護るマジックアイテムや防具、ブレインの目利きで採用したポーション類。どのような敵であっても一切の油断無くその頸を斬り落とすための備え。

 

 まさに万全。このまま強さを追い求め続ける。

 

 しかし、武器を取り完全に覚醒したブレインを待ち受けていたのは、異常なまでの静けさである。

 この時間帯であれば他の傭兵たちが酒を飲みながら談笑しているはずだ。カーテンのみで仕切られているこの部屋であれば、彼らの話し声が嫌でも聞こえてくる。

 まるで誰もいないかのような違和感。今日はブレインを抜きにして何かを襲う予定など無い。

 

 ブレインは息をひそめ、可能な限り無音でチェインシャツと革ベルトを身に纏う。

 本当に何かがおかしい。異常事態があれば大声で叫ぶように言い聞かせているため、何者かによる襲撃というのも疑問が残る。

 となれば、傭兵たちがブレインを裏切り何かを企んでいるか、声を上げる暇すらなく一掃されたか。

 ブレインは彼らに徹底的に上下関係を叩き込んだ。仮に裏切るのであれば、このような露骨な真似ではなく少しは無い頭を使うはずである。

 しかし後者であったとしても、傭兵集団 死を撒く剣団の構成員たちは手練れ揃いだ。そう簡単にやられるとは考えにくい。

 

 最近は少し派手に動き過ぎた。邪魔に思った王国が手を打ってきたという線はある。

 ブレインは王国兵士たちの戦力は大方把握している。王国は徴兵制であり士気も練度も低く、基本的には束で掛かってきても問題ない。戦士……ガゼフ・ストロノーフが来ているのであれば逆に幸運だ。

 だが、それは無い。たとえガゼフたち戦士であったとしても、70名超の男たち相手に無音で仕留めることは叶わないはずである。

 

 であれば冒険者の線。隠密を得意とするメンバーがいる蒼の薔薇であれば、可能性はある。

 今の蒼い薔薇は五人組。全員で来ているならば勝つことは不可能だろうが、やるだけやって逃げるだけならブレインには自信があった。いかに野伏が居たとしても、この洞窟に仕掛けられた不可視のトラップを全て見破るのは至難の業だ。

 

 刀を左腰に下げ、ブレインはカーテンを越えて部屋の外へ出る。この瞬間、ブレインの側頭部にチクリと痛みが走った。

 これらすべてが、ブレインの心配性という結果だけで終わることも考えられる。しかし――ブレインは、心中にうごめく不安を拭いきれない。

 兵士でも、戦士でも、冒険者でもない。全く別の何かが、根城に侵入したと勘が告げている。

 

「起動一、起動二」

 

 ブレインがそう呟くと、キーワードに反応して指輪と首飾りに秘められた魔法が発動する。目の保護とバフを行う瞳の首飾り(ネックレス・オブ・アイ)と、任意のタイミングで属性ダメージを軽減する魔法注入の指輪(リング・オブ・マジックバインド)

 続いてすかさず革のポーチから取り出した3本の磁器製小瓶の内2本を煽る。下級筋力増大(レッサー・ストレングス)下級敏捷増大(レッサー・デクスタリティ)のポーションだ。

 残りの1本は武器魔法化(マジック・ウェポン)のオイル。刀を抜き放ち、刀身へと流すと青白く光ったのちに吸い込まれるように消える。

 ブレインがこれ以上行える前準備は無い。

 

 踏み出す足に力が入る。魔法の明かりで照らされた通路に闇は無い。それでもこの先には何かが居ると、久しく忘れていた本能が囁いている。

 

 ブレインは土を踏みしめ歩み続ける。そして20歩ほど進んだ先で、それが現れた。

 

 

 ――白金と蒼を基調とし、金の装飾が施された美しい全身鎧。羽を模した意匠が見られる、流麗なロングソードとカイトシールド。そんな重量装備を着こんでいるというのに、目の前の何かからは足音どころか、金属の擦れる音すらしない。

 それらの、この世のものとは思えない品々に身を包んだ男は、一切の感情も感じさせない冷たい瞳をブレインへと向けたまま、ゆっくりと歩みを進めている。

 

 ……刀を握る右手がカタカタと震える。アイツは、化け物などではない。

 もっと違う別の何か。本来自分たちが認識する事すらできない、神話上のナニカが、人の姿をしているだけ。

 刃を交えずともブレインは理解できる。見た目――特に装備の質は使い手の力量を量り易い、一つの判断基準。他にも所作や目線、呼吸法なども材料となる。

 

 だが、目の前の男は、そんなモノで量る必要すらない。ただその存在に世界が耐え切れず、悲鳴を上げている。ブレインの肉体を通して世界が、居るはずが無いと叫んでいる。

 しかし同時に……苦痛を噛み殺して、居ても良いのだとブレインに優しく語りかける。

 

 神々の声が聞こえる。いや、神など居るはずがない。しかし――この男を目の前にして、まだそう思えるだろうか。

 

「は、あ」

 

 ブレインの肺から空気が溢れ、情けのない声と共に口から漏れる。神経が耐えきれていないのだ。

 そんなブレインの状態を知ってか知らずか、男はブレインと十足ほどの距離で歩を止めた。

 

「お前が、野盗団の頭か」

 

 男は感情の籠っていない言葉を紡ぐ。そのたった一言で、ブレインには空気が軋み空間が歪んだかのような錯覚を覚える。

 右手のロングソードに血は付着していない。しかしブレインは、自身を除いた全員が既に殺し尽くされているという事実を容易く受け入れることが出来た。

 あとはブレインのみ。隠れ家の一番奥で陣取っているという状況証拠から、ブレインが死を撒く剣団の頭であると判断したのだろう。

 

 団長はとっくにアンタに殺されてるよ。そんな軽口を挟む余裕などブレインには無い。ただ、男の言葉に震えながら首肯することしかできなかった。

 

「そうか」

 

 変わらない、魂が凝固してしまうほど氷の様に冷たい声。男の右手のロングソードに、少し力が入ったかのように見える。

 

 殺される。

 悪行に手を染めたからには、自身の死は人々の誇りによる裁きを以て為される。ブレインは常にそう考えていた。司法、復讐、私刑。今まで踏みにじって来た者たちの善性に依って、いつか罰を受ける時が来ると。

 だが蓋を開けてみればあっけのないものだ。まさか自身が唾を吐いた、神による天罰で一生を終えることになるとは。

 

 一歩。男はブレインへと踏み出す。

 死が近づいてくる。逃げても無駄であると脳が理解している。今立っている足のどちらかを後退させた瞬間、ブレインはこの世には居ないだろう。

 男がこの森に入った……いや、ブレインたちを始末すると決めたその瞬間、既に手遅れだったのだ。

 刀を持つ右手の震えが止まらない。

 

 二歩。

 ブレインの震えが酷くなる。いざ死を目の前にすると、身体が震え上がる。

 これまでいつ命を落としてもおかしくない環境に身を置いていた。死は常に身近にあり、ふとした手違いで首が飛んでも可笑しくない戦場にいた。

 それでも、死ぬわけにはいかなかった。強くならなければならなかった。強さとは無縁の私怨で殺されなければならなかった。

 こんな所で死ぬわけにはいかない。しかし、目の前には死そのものが迫ってきている。

 

 三歩。

 もう両親の顔すら思い出せない。ブレインは、剣をその手に取った時に生まれ直してしまった。

 金にも、食事にも、女にも興味が無かった。ブレインが求めるのは剣の極致のみ。

 それがどうだ? 生娘のように震え上がる体は既に制御が利かない。これまで奪ってきた者たちと同じように、ブレインは恐怖に支配され――

 

「私はブレイン・アングラウス!」

 

 ブレインは刀を鞘に収め、背を正して声を荒げる。ブレインの突然の行動に警戒したのか、男は足を止めた。

 戦場での咆哮よりも、ガゼフとの死闘での号哭よりも、何よりも大きな声を上げた。全身の緊張はほぐれ、ブレインの頭の中が透き通っていく。

 

「犯罪に身を落としたつまらない男だが、恥を承知で貴公に願いを請いたい!」

 

 恐怖? ブレインは不思議と恐怖を感じていなかったのだ。

 身体の震えは武者震い。星の高さに居る存在に出会えた歓喜。

 人生をかけて積み上げた自身の強さが、天災が如き暴風に蹂躙されて崩れ落ちる。ブレインという個の尊厳を完全に破壊する行為。事実、ただただ踏み躙られたのであればブレインは立ち直れないだろう。

 

 しかし――そうだ。まだ、何も試していない。

 ブレインは、自分が何のために強くなりたかったのかを思い出した。

 始まりは生きる為だった。弱ければ奪われる。奪われないようにするには、強くなるしかない。

 

 今は違うはずだ。

 お前はどうして高みを目指すんだ。勝ちたいんじゃないのか。もう一度対等の土俵で刃を交えたくて、何もかもを敵に回したんじゃないのか。

 

 求めていた強者が目の前にいる。

 強者という言葉では生温い、絶対者とでも呼ぶべきだろうか。そんな男が、光栄にも自分を殺そうとしている。ブレインには、戦って抗うという選択肢が残されている。

 胸を借りよう。究極の頂を見せてもらいたい。大手を振って地獄へ落ちるために。

 

「……■■■」

 

 男は剣と盾を収め、名乗った。先ほどまでの絶対零度ではない、少し、人の心が込められた声色。まるで……自身を敵として認めてくれたかの様だ。

 口の中で彼の名を反芻し、ブレインは頭を下げる。ガゼフとの御前試合以来初めての、互いに敬意が込められた戦い。ブレインの思い上がりかも知れないが、少なくとも彼の中ではそうなのだ。

 

 この時、男の視線がブレインの腰へと向いた。

 帝国や法国ではどうかブレインはわからないが、少なくとも王国で自分以外の担い手を見たことが無い。理解の埒外にある装備を身に着けている男から興味を買ったことに、ブレインは少し自分が誇らしくなった。

 

 そうブレインが一瞬の感慨にふけっていると、突如目の前の男がまばゆい光に包まれた。次の瞬間には光が晴れ、男の姿が視認できるようになる。

 

 ブレインは本日何度目かわからない驚きに目を奪われることになる。

 男の姿――装備が変わっている。騎士然とした面影は見る影もない。鎧は上は赤、下は黒い胴着のようなものに変わっている。帯や胸元部分の龍の刺繡からどこかの国の正装のようにも見えるが……これらは先ほどの鎧と変わらない、途轍もない装備であることは一目でわかる。

 両腕には小手。そして左の腰にはブレインと同じ武器、刀のようなものが佩かれていた。

 

 いや、比べるのもおこがましい。あれは正しく神が作った武器である。

 

 しかし、当然の疑問が残る。何故男は武装を変えたのか。ソードアンドシールドであっても、ブレインなど容易く殺せるはず。

 そこまで考えて、ブレインには雷で撃たれたかのような衝撃が走った。

 

「……感謝するっ!」

 

 つまるところ、ブレインの叫びは真に聞き届けられた。男はブレインと同じ様相の得物を以て、叩き斬ると言っているのだ。

 それは身に余る喜びだ。ブレインは再度深く頭を下げ、その眼には涙が浮かんでいた。

 

 

 茶番はここまでだ。頭を上げ、ブレインは左足を少し引いて腰を落とし、右手で腰の刀の柄を握る。

 

 ガゼフが四光連斬を編み出したのと同じように、ブレインにもオリジナルの武技がある。

 極限まで高めた集中力を間合いにのみ張り巡らせ、範囲内の全てを知覚し攻撃の命中精度と回避力を高める"領域"。二の打ちを排除した、急所への一点特化の速攻で斬撃を放つ"神閃"。

 狙うは人体の急所、頸。故に秘剣・虎落笛。

 

 男は、ブレインの準備を待っいるようだ。ブレインの動作一つ一つを観察し、沈黙を保ったままピクリとも動かない。

 

「武技・能力向上!」

 

 加えて、武技による身体能力強化。先のポーションの効果も併せ、今のブレインは過去のどの自分よりも強い。ブレインの記憶に残るガゼフであれば、なんの抵抗も許さずに切り捨てられるほどには。

 

 集中力の残りは無く、これで打ち止め。もう一つ武技が使えていれば――自分の至らなさに、目の前の絶対者に対して恥ずかしくなる。

 

「……待たせたな」

「いや、待っていない。お前のその覚悟、大したもんだ」

 

 男の浮かべた笑みは、人懐こいものだった。もし、違う形で出会えていたら。そんなたらればが脳裏によぎるほどには、本当に気持ちの良い笑顔。

 

 ――さらば、ガゼフ・ストロノーフ。

 

 男は刀を抜き放ち、下段脇構えのまま進む、ブレインが敷いた絶対の領域に。神ですら斬り捨てられると確信していた、ブレイン・アングラウスの秘奥に。

 

 ――三歩、二歩。

 

 一歩。

 

 必殺を誓う一撃が、鞘から解き放たれる。銀色の閃きを纏いながら男の頸へと延びていく。

 

 キン。

 

 そんな一閃は、男の持つ刀の頭によって、いともたやすく受け止められた。

 金貨同士がぶつかったかのような、軽い音。その感触はゼロ。金属が衝突したというのに、ブレインの右手に響くものは何もなかった。

 

「――満足だ」

 

 ブレインの心に万感の想いが広がっていく。届かなかった。それでも、全てを出し尽くしたのだ。

 

 胸に落ちる刃の衝撃。暖かくて心地の良い感覚に身を任せ、神の域を知ったブレイン・アングラウスは意識を手放した。

 

 




「刀のようなもの/侍」
FF14におけるMelee DPS(近接物理火力)ロールの一つ。近接でありながら詠唱技を持つ珍しいジョブ。とある魔法職よりも詠唱時間が長い。
味方の火力が上がる技を一切持たないいわゆるピュアDPSであり、自己リソースを管理しながらスキルを回す。
作内の見た目は暁月AF。
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