何となく書いてみた短編小説。
実は私、海上自衛隊に入隊することになっています。
平和を護りたいという気持ちと共に、大和の艦名を受け継ぐ護衛艦にいつか乗れるならば……と淡い恋心を彼女に抱いていたり。

今回の小説はそんなお話です。

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おかえり、僕の恋人

「……君の名前を知ってから、もう何年経つのかな」

 

一人の男性が高い塔の上に立っている。

岸には多くの鉄の城が浮かび、桜が咲き誇っていた。

庇の付いた白い軍帽、白のダブルスーツ。

胸には多くの徽章を付けている。

肩には一等海佐、つまりは大佐の階級を表す章がその存在を目立つものにしていた。

 

「もしかしたら、ある意味恋なのかもしれないね……。僕は、君に恋をしていた。あの時、君を知ってから」

 

波風が彼のスーツを揺らす。

それと共に、海辺の公園から流れてきたのか、桜の花びらが彼の周りを舞い踊る。

まるで、彼を待っていたかのように。

まるで、彼がこの場所に立つのを待っていたかのように。

 

「……もう、君にとっては一世紀前のことだね。君が、この世に生を受けたことは……」

 

小皺が少し目立つ唇を小さく動かしながら、静かに、まるで恋人に愛を囁くかのように呟く。

どこかしら、歓喜に打ち震えるように声が上ずっているようだ。

 

「一世紀経って、この国に戻ってきて……感想はどうかな?君が……そしてあの人たちが護りたかった国があるかな?」

 

何処か寂しそうに、目を細めて言葉を紡ぐ。

 

あの戦争……彼は経験していないが、かつて国難を撃ち破る為に世界と戦った大戦争に想いを馳せる。

今ではあの戦争ではこの国は悪だ、と罵られている。

確かに、結果としては悪だったのかも知れない。

現にあの時の政府の、多くの人間は愚かだった。

しかし、国難を前に彼等は戦うしかなかったのだ。

この国を護るために、大切な人を、郷土を護るために……そして、未来の子供達を護るために。

そして彼等は陸に、海に、空に散って逝った。

作戦能力が低度だったが故の過ち、大局を見なかった故の惨たらしい犠牲……。

 

この国ーー日本は今、彼等が守りたかった国になっているのだろうか。

心豊かに、自然豊かに……笑顔溢れる礼節の国になっているのだろうか。

彼にはわからない……しかし、彼は今、この国を護るが為にそこにいた。

 

「君に出会ったのはーーそう。小学生の時だったな。図書室で読んだんだ。君についての物語を」

 

かつて、世界最強と謳われた鉄の城があった。

かつて、不沈と呼ばれた巨大な海の女王がいた。

しかし彼女は、命懸けの突撃によりその身を崩し……坊ヶ岬に眠っている。

1945年4月7日……ちょうど、桜が咲き乱れる季節だった。

 

「僕はとてもカッコいいと思った。美しいと思った。君が例え……人を殺す兵器だとしても、僕は君を美しいと断言するよ」

 

ふふっ、と肩を震わして微笑しながらハッキリと宣言した。

その目は、宝物を手に入れたかのように、恋人と結ばれたかのように輝いていてーー

 

「……<やまと>。おかえり。そしておはよう。そして初めまして……僕が君の、新しい司令官だ」

 

「君はまた、この国の海に蘇った。また、この国を護れるんだ。この国の、平和を」

 

「……ずっと、憧れていた。君のことを。君が再び生まれることを信じて、僕は海上自衛官になったんだ」

 

「君と共に……この大好きな日本を、大好きな人達を護りたい」

 

「……さあ、行くか。これが君の……始まりの朝日だ」

 

彼が手を挙げると、それと同時に汽笛がなった。

それと共に軽快なマーチが響き渡る。

 

「イージス護衛艦やまと。進路そのままぁ!」

 

先ほどとは打って変わり、怒声のような声を張り上げて艦橋内の部下達に指令する。

しかしその顔はとても明るくて……。

 

「進路そのまま!ヨーソロー!」

 

 

日本が誇る最高の軍艦、大和。

その生まれ変わり、やまと。

 

彼女の止まっていた歯車は再び回り出す。

 

その巨躯で波を乗り越え、この国を護るために。

 

20○○年。4月7日。

護衛艦やまと、就役。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『再びこの海に戻って参りました。やまと型護衛艦一番艦やまと!推して参ります!』

 




如何でしたでしょうか?
私の予想では、彼女の名はイージス艦に受け継がれるんじゃないのかなぁとおもっています。
その期待、恋心のようなものを表現したのが今回の作品です。


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