《急成長》スキルから始まる異世界人の《技能樹(スキルツリー)》が何かおかしいんじゃが!?   作:天都ダム∈(・ω・)∋

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アイキャッチその2

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第二話 イツキ・アカツキと二人の女神
【猛る王虎】 Ⅰ


 イツキたちのパーティが一〇階層を攻略した、と伝え聞いたのが、つい二日前のことだった。

 ランペット宝樹迷宮において一〇階層の攻略は新人(ルーキー)卒業の証である。なにせ探索者の五割はそこに至る前に命を落とすか引退を選ぶ、と言われているほどだ。

 

 なんの能力も持たない素人を一から鍛えてその領域にたどり着くまで、早くて一年、おおよそ二年が目安とされていることを考えると、イツキがランペットに現れてから三ヶ月でそれを成し遂げたことは驚異的な記録と呼んでよいだろう。

 

 とはいえ、別に驚きはなかった。ティック、ワーブの両名は他の迷宮都市からやってきた経験者であるし、イツキはまあちょっと常軌を逸しているし、本格的な攻略に乗り出す際は、神官として相応の実力を有しているオルレアが参加していたこともある。

 

 苦戦しなかった、とは思わないが……彼らが撃破したのは一〇階層の中でも、最もオーソドックスな《階層の主(フロアボス)》であるオウガ・クリムゾンだったと聞く。

 

 強力な攻撃を連発してくる難敵ではあるが、ワーブならば正面から耐えきれるだろうし、オルレアの治癒が間に合わないこともないだろう。加えてティックとイツキが後方からダメージを積み重ねていけば、勝利は必然だったに違いない。

 

 これで鍛冶師ギルドや細工師ギルドといった、迷宮探索に欠かせない製作職(クラフター)との繋がりも、正式に斡旋されることになる。彼らの冒険が活発になれば、また自分の仕事も増えるだろう……とアンゼリセは、ため息を吐いた。

 

 それ自体は嫌なことではなく、むしろわずかに楽しみですらあるのだが……。

 とはいえ、彼らは今日はオフだったはずだ。思い思いに装備を整えるなり、休暇を取るなりしているだろう。

 

 アンゼリセも今日はゆっくりするか、と都市の賑わいに反して、小さな欠伸をしたところで……。

 

「アンゼリセ様!」

 

 神殿にとび込んできたオルレアの声が、アンゼリセの耳を叩いた。

 

「んにっ!? ど、どうしたのじゃオルレア、そんなに慌てて」

 

 常におっとりとした姿勢を崩さないオルレアが焦っている、というだけでも相当に珍しいのだが、次に彼女の口から放たれた言葉は、女神のふわふわとした眠気を吹き飛ばすには充分な内容だった。

 

 

 

 

 

 

 

「イ、イツキ様が………………処刑されそうです!」

「………………………え、えぇ〜?」 

 

 ●

 

 さて、【ランペット宝樹迷宮都市】で最強のクランはどれか? と問われれば、おそらく八割の人間が【猛る王虎】と答えるだろう。

 

 七〇階層攻略に挑む最上位クランの中でも、総合力で言えば文句なしに一番だ。

 独自に築かれた他迷宮都市との流通経路を持ち、一流の専属製作職(クラフター)採集者(ギャザラー)を抱え込み、それらを十全に扱う猛者たちが集う。

 

 彼らの拠点は都市内にいくつかあるが、その中で最も大きく、最も有名で、最も由緒あるのは【虎の寝床】と呼ばれる総合施設だ。

 

 宿、酒場、工房、商店……探索者ギルド本部と変わらぬ規模の各施設を有し、その中央にはクランのメンバー同士が模擬戦を行うための武闘場すら存在する。

 

 そしてその武闘場の中央で、縄でふん縛られて処刑台に吊るされている男が居た。イツキ・アカツキである。

 

「お慈悲を~! お慈悲を~!」

 

 体を左右にブンブン振りながら哀れに命乞いをするイツキ。周囲でその様をめいめい眺めているのは【猛る王虎】所属の探索者だが、彼らも流石に困惑した様子だった。

 

 一方で。

 

「うるさい! 黙れ! ただじゃ殺さないのだわ! 爪を全て剥がして皮をミリ単位で剥いで、傷口に塩と唐辛子をまんべんなくすり込んでから酸の海に漬けて、死ぬ直前で完全回復薬(エリクサー)に漬け込んで同じ地獄を百回味わわせてから、細切れにして豚の餌にしてやるのだわー!」

「いくら何でもそこまでのことはしてないと思うんですけどォ!?」

「黙れ黙れ黙れ黙れ! こんな屈辱は生まれ落ちて初めてなのだわ!」

 

 イツキの眼前で、冷めやらぬ怒りで何度も地団駄を踏み、残酷な死刑宣言を言い放ったのは、まだ幼い少女である。

 見た目は十歳半ば、長い髪の毛を結んだ大きく結いた、特徴的な金色(こんじき)のサイドポニーテールが、足を踏み鳴らす度にぶらんぶらんと揺れる。

 

 それだけ見れば癇癪を起こした子供なのだが、心意気は本気らしい。

 

 なにせその背後で、異形の仮面に黒いフードマントという、どう見ても表舞台に立ってはいけない風体の何者かが、どう見ても痛みを与える為だけに創られたような形状の、錆びた金属製の器具を、カチャカチャと並べているからである。

 

「一応確認しますけど、マジでやります?」

「当たり前なのだわ! 見せしめなのだわ! 極刑なのだわー!」

「えー……気が乗らないなあ」

 

 フードマントの探索者はいまいちやる気に乏しい様子であるが、しかしやれと言われればやるのだろう、という感じではあった。

 

「公衆の面前での拷問は軍事法に触れませんかァー!?」

「ここでは! わたくしが! 法なのだわー!」

「横暴だー! 助けてくれー! 弁護士を呼べー!」

 

 再び体を左右に揺らし騒ぎ立てるイツキの下へ現れたのは、弁護士ではないが、見知った顔だった。

 

「すいません、通して下さい! ……アンゼリセ様、こちらに!」

「すまぬ、オルレア……こら! イツキ! そなた今度は何をやらかしたんじゃ!」

 

 人混みをかき分けて、アンゼリセとオルレアが現れたのだ。

 

「…………ア、アンさん!? オルレア! たぁすけてぇ!」

「しばし待て! あー…………」

 

 アンゼリセは少女とイツキが吊るされた処刑台に割り込んで……。

 

「…………久しぶりじゃな、グイネア」

 

 バツが悪そうに、少女に向かってそう告げた。

 対する、グイネアと呼ばれた少女は、更に怒りの表情を強め、ぎろりとアンゼリセを睨みつけ、言い放った。

 

「……今更、よくもわたくしの前に姿を現せたのだわ! アンゼリセ!」

 

 二人の視線が交錯する中、そそくさと処刑台の下まで駆け寄ったオルレアに、イツキは困惑しながら尋ねた。

 

「な、なあ、あのちっこいのって……」

「ご存知なかったのですね……その、あのお方は」

 

 向かいあう二人の童女は……髪型を除き、顔も体格も、鏡写しのように瓜二つだった。

「グイネア・ランペット様。【猛る王虎】の後見人であり、この【ランペット宝樹迷宮】の……()()()()()()()()()

 

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