《急成長》スキルから始まる異世界人の《技能樹(スキルツリー)》が何かおかしいんじゃが!? 作:天都ダム∈(・ω・)∋
「裏切り者のアンゼリセ! もう一度聞くわ、今更何用なのかしら?」
アンゼリセに向けるグイネアの怒りは、イツキに向けていたそれとは違う。
もっと根の深い、強い感情からくる敵意に満ちている。
己へと向けられる、その怒りに晒されながら、アンゼリセは大きく息を吐いた。
「こやつが無礼を働いたのなら、わらわが謝ろう。この場はどうか、許してはくれぬか」
「嫌よ、ただでさえ許せないのに、アンゼリセが関わっているのであればなおのこと許せない! ナゾン! 寸刻みにするのだわ!」
指示を出された明らかにやばい風体の探索者、ナゾンはうーん、と頭をフード越しに頭を掻いた。
「いやぁ、落ち着きましょうよ、グイネア様。一体全体、そこの坊主が何したっていうんです? やるのは構いませんが、何か誤解があったら取り返しつきませんよ?」
「具体的にはどういうふうに取り返しがつかないんすかねェ!」
「僕のつけた傷って基本治らないんですよ」
「すいませんマジでやめてお願いします助けて下さい」
「助けないのだわ! …………っ、くっ! ううう!」
問われ、口をつぐみ、再びだんっ、と地面を強く踏み鳴らし、グイネアの癇癪が更に強まっていく。
「屈辱よ! 屈辱を与えられたのだわ! この、このわたくしに対して! あんな事、あんな事を!」
「…………一応聞くが、イツキ。そなた、グイネアに何をしたのじゃ?」
吊るされたイツキを見上げながら、アンゼリセ。
問われた馬鹿はいやぁ、と自嘲気味に笑った。
「昼飯どこで食おうかなー、って街をぶらついてたら、アンさんの後ろ姿を見つけてさ」
「うむ、それで?」
アンゼリセとグイネアは、
「普段と髪型が違ったから、おいおいアンさん何やってんだよー! って背中を思い切りひっぱたいてから、髪の毛を首にぐるぐる巻き付けて、腰を持ち上げてその場で三〇回転ぐらいしてから思い切り胴上げして、キャッチしてから軽く電撃マッサージを加えた後、ケツをひっぱたいて挨拶したんだけど」
うむうむ、と言葉を噛みしめるように頷いてから、アンゼリセは笑顔で告げた。
「よし、わかったイツキ、そなたはここで死ね」
「お慈悲を~! お慈悲を~!」
「そなた、それをわらわにやろうとしてたんじゃろ!? なぁおい!」
「ほんの出来心だったんだよ~! アンさんだと思ってたからさァー!」
「わらわでもやられたら殺すわそんなもん!」
「許さないのだわ! 火炙りなのだわ! 公開処刑なのだわー!」
「まじかよ、迷宮の神にそんな事を?」「命知らずにもほどがあるだろ……」「俺だってグイネア様に触ったことないのに……」「あいつ《
周囲の探索者も、イツキの所業に若干引いていた。あとまた変な二つ名がついていた。
「そこをなんとか! なんとかアンさん! 助けてください! お願いします! 情状酌量の余地はあると思うんです! アンさんに姉妹がいるって知らなかったんです!」
「んなっ、この迷宮都市にいてわたくしの事を知らないわけがないのだわ! 重ねて侮辱するつもり!」
「あー……グイネア、その、こやつは、その、一応…………《
あまり見ない顔立ちと髪色ではあるが、知らなきゃわからんだろうな、というのも事実であるので、補足はしておく。
「…………《
「《
単なる命乞いの為に嘘を吐いている、とは思わなかったらしい。
グイネアはふうん、と目を細め、じろじろとイツキの容姿を無遠慮に眺め回した。
「そう言えば……確かに見ない顔なのだわ。この都市に《
やがて、じと、と睨みを聞かせながら、グイネアは問うた。
「わたくしに働いたあの無礼な行為は、お前の世界では最大限の敬意を示す儀式だったりするのかしら?」
「いや、マジで純度一〇〇%のただの悪戯っす」
「じゃあ死ぬのだわ!」
「しまったァアアアアアアアアアア!」
「なぁ、わらわさぁ、そなたの事助けないと駄目か?」
「かなり惨たらしい殺され方をする可能性があるのでできれば助けて欲しいなァー!?」
「ナゾン! あのすごい毒キノコあったじゃない、アレを持ってくるのだわ」
「あー、脳が溶ける奴でしたっけ」
「思ったより尊厳が考慮されない処刑がなされようとしてる!」
「うーむ……」
アンゼリセとグイネアは、過去にとある事情で決別してしまっていて、頼み事をしづらい立場であることは事実である。最後に顔を合わせたのも一〇年以上前だ。
イツキが不敬を働いた事はもちろん悪いのだが、しかし……かといって、流石に即処刑されるほどのことでも…………あるかなぁ、どうかなぁ、人の王にあれやったら殺されるよなあ。
なんとか説得の言葉を探してみるか……と口を開きかけた時。
「おいおい、何の騒ぎだこりゃ。まーたうちのお姫様がやらかしたか?」
低く、力強い、自信に満ちた声が武闘場に響いた。
さして大きくはなかったのだが、喧騒の中にありながら、彼の声ははっきりと通り、その存在を認めれば、周囲の探索者は揃って道をあけた。
なぜならば……。
「おお、誰かと思えばアンゼリセ様! 久方ぶりです、ごきげん麗しゅう」
彼こそが、このクランで最強の男、【猛る王虎】のリーダーだからである。