《急成長》スキルから始まる異世界人の《技能樹(スキルツリー)》が何かおかしいんじゃが!? 作:天都ダム∈(・ω・)∋
「ぎゃーーーーーーーーーーーーー!」
「きゃーーーーーーーーーーーーー!」
最初の悲鳴はついうっかり忘れててやっちまったイツキのもの、次の悲鳴は自らのクランが持つ資産が焼却処分されてしまったグイネアのもの。
一流の職人が作り出した、
「…………今のって確か
ざわざわと観客たちに動揺が広がっていく。そしてイツキの顔面にダラダラと汗が流れていく。
「………………………………えーっとぉ」
「…………お前、面白いスキル持ってんなぁ」
さすがのロックも呆気にとられていたが、やがて、はは、と小さく笑い。
「おじさんちょっと本気出しちゃおうかなぁ」
「くっそ結局素手かよぉ!」
ばっ、と身構えたイツキは、なにか使えるものはないかと、反射的にロックが広げた布の中身に視線を走らせ……
「あっ!」
「うん?」
イツキが指差す先をつられて、ロックを始め、全員の視線が
一見すると、軽く歪曲しただけの、細身の棒に見える。
柄のような持ち手はあるが、少なくともこの迷宮都市に慣れ親しんだ人間は居ないであろう形状。
「か…………刀だ! 刀だ! 刀だ!」
「……坊主、お前、この武器がなんだかわかるのか?」
ロックが向ける怪訝そうな顔に気づかず、イツキは興奮のままに叫ぶ。
「なんだかもなにも、俺の故郷の武器! なんでこんなとこに!?」
「故郷の武器、ねえ」
武器群の中から、ロックが〝刀〟と呼ばれた武器を拾い上げ、引き抜いた。
棒だと思われていた部分は、剣における鞘であり、本体はどうも中身の方らしい。
すら、と音を立てて現れた刀身は、銀と黒の二色に分かたれ、波のような文様が描かれている。
よくわからん武器を見つけた、と噂だけは聞いていたが、見たことのなかった者たちは、その見目の麗しさに、揃っておお、と声を上げた。
オルレアが、視線でアンゼリセに知っていますか? と問いかけるものだから、女神は静かに首を横に振った。
「こいつは先日、六五層の宝箱から見つかったモンだ。見たことのない武器だってんで鑑定に回してみたんだが、どうも正体がはっきりしなくてな」
完全に鞘から引き抜かれた刀身は、切れ味こそ尖そうなものの、普段、彼らが使う剣と比較すれば、驚くほど細く頼りない。
「どうみても《片手剣》じゃあねえ、かといって《両手剣》でもねえ。《刺突剣》でもないし、当然ながら《短剣》でもない。こいつを手にして発動するスキルがねえんだ」
「だからわたくしたちは、新しいカテゴリの武器が生まれた、と判断したのだわ」
グイネアが続きを引き継いだ、イツキはなるほど、と頷いてから。
「アンさん!」
「あー…………つまりじゃな、《片手剣》スキルが発動するのは、手にした武器が《片手剣》である、と定義されているからじゃ。創造神が『この武器は片手剣である』と定めたからこそ、武器と技能が一致し、効果を発揮する。他のあらゆる武器もそうじゃ」
「……それってつまり、見た目が剣でも創造神が斧だ、ってその神様が言い張ったら斧になっちゃうってこと?」
「当然、そうなのだわ? 確かあったわよね、あれ、なんだっけ」
「バーベキュー中に魔物がでてきて、ニーザがとっさに焼いてたカニで殴りつけたら《豪斧》スキルが発動した奴でしたっけ」
グイネアの疑問に、ナゾンがあーあー、と何かを思い出しながら答えた。
何してんだこいつら。
「……ま、まぁつまり、そのカニは《斧》としての属性も持っていた、と、そういうことじゃな」
「……えーと、じゃあ、この刀は一体どこから?」
「恐らくじゃが……」
アンゼリセは、ちら、と周囲に視線を走らせた。周りは【猛る王虎】のクランメンバーに囲まれて、何よりトップのグイネアとロックの前だ。下手に隠し事はできない、と割り切って、仮説を口にした。
「そなたが《
剣は剣、斧は斧、そうした武器としての『カテゴリ』さえ成立してしまえば、あとは迷宮が宝物を創り出す際、《刀》という武器ができてもおかしくはないのだ。
が、イツキは何か納得いかないのか、んー、と何かを考える素振りを見せた。
「………………それってさあ、今後、誰も使えない武器が生まれてくるってことにならないか? 大丈夫?」
「いや、一度カテゴライズされた以上は、それに対応するスキルも存在するか、新たに作られる。そして才能が合致すれば、どこかの誰かにそれが目覚めるはずじゃ。昔から、そうやって新たな武器は生まれ、受け入れられてきたわけじゃし」
「ま、かたっ苦しい話は抜きにしても、だ」
ロックはにや、と笑って、刀を鞘に納め直し、イツキに向けて突きつけた。
「坊主は、こいつの使い方がわかるんだろ? いっちょやって見せてくれよ」
「そうしたいのは山々なんだけど、俺ちょっと武器持つと燃やしちゃう体質で……」
「どんな体質なのだわ!? というかお前、水晶剣も弁償するのだわ!」
正当なグイネアの抗議であったが、イツキはとりあえず聞かなかったことにした。
「そいつは大丈夫だ。貴重品の可能性もあるし、あんまりに刀身が細くて怖くなっちまったもんだから……ちと手間をかけて《
《
勿論、大変希少かつ貴重な効果だが、相応の手段を踏めば、任意の武器にその特性を与えることもできるのだ。
もちろん、【猛る王虎】レベルのクランが持つ資金力や人脈あってこそ、ではあるが。
「…………マジ?」
「マジだ。条件はさっきと同じ。俺に一撃でも当てられたら、坊主の勝ちでいい」
刀を押し付けるように手渡し、改めて距離を取ると、ロックは木剣を肩に担いだ。
「なんなら、最初の一発は反撃も防御もしない。実際に振るうところを見たいしなあ」
「…………うむ?」
これは、なかなか悪くない流れなのでは? イツキが《刀》とやらに関して占有している知識は、これだけのギャラリーが居ることだし、あっという間に広まってしまうだろうが……この情報と引き換えに暴挙を許してもらえるのならば、釣り合いは取れる。
アンゼリセがそう思った時、イツキは刀をじっと眺めながら、呟くように言った。
「あー、おっさん」
「何だ、坊主」
「お言葉に甘えて思い切りやるけど…………し、死なないよな?」
表情からも見て取れる、心配の感情に――――――。
「……………………は、はっはっはっはっはっはっはっは!」
ロックは腹の底から、思い切り笑った。
周囲の反応はもう少しバリエーションがある、半数はどちらかと言えば身の程知らずを嘲る笑いであり、もう半数は生意気な口を聞きやがって、という怒りだった。
「……イツキ、そやつは間違いなく、この迷宮都市最強の探索者じゃ。そなたが逆立ちしても、絶対に勝てん」
「……いや、強いのはわかる、なんとなく」
「じゃから、それに関しては心配するな、思い切りやれ」
大前提となる事実、絶対に揺るがない現実。
イツキがどれだけ常識から外れた存在であったとしても、ロック・ロークに勝つことは、絶対にできない。
年季が違う、実力が違う、自力が違う、鍛え上げた《
恐らく、イツキ以外の全員が、それを理解している――――。
「オッケー、わかった、そんじゃ、お言葉に甘えて」
軽く腰を落とし、刀を鞘に収めた状態で左手に持ち、右手を柄にそっと添えて、
「行くぜ」
動いた。
◆
ロック・ロークが持つ最上位スキル《
彼にとって手強い相手であれば赤く、そうでないなら青く見える。この感覚は部位別に検分することも可能で、例えば
最も、今のロックが『脅威』として認識するのは六〇階層以降の魔物か、そいつらと渡り合える同レベル帯の探索者くらいのものだ。
実際、イツキとかいう《
スキル発動下の目線で見れば、全身が濃い青に染まり、右手だけがほのかに緑に近くなったかな? というぐらいのものだ。
逆の目線で見るなら、一〇階層突破したての新人が、ロックに『緑色』を感じさせるだけでもなかなかのものだ、と言えなくもないのだが……
イツキが何をしてこようと、後から対処できる。
それがロックの判断であり、実際、それは間違いではなかった。
イツキが刀を構え、右手を柄に添えて、軽く身を乗り出した、その刹那。
【
・武器としてのランクはC~B前後が多いが、世界に始めて出現した「新カテゴリ」の装備群に与えられる特殊効果。
・単体では特筆した追加効果はないが、使い込むことで何かしらの変化が生じる。
・一振りとは言うものの、多分世界単位でみると何百本かくらいは同時に出現しているはず。