《急成長》スキルから始まる異世界人の《技能樹(スキルツリー)》が何かおかしいんじゃが!? 作:天都ダム∈(・ω・)∋
「ちょ、待…………イツキ、待っ……」
「そりゃねえよアンさん……ひでぇ話だよ……遺された人たちが可哀想じゃん……」
「そこで責められたらわらわ本気で落ち込んじゃうじゃろ!?」
「慰めてほしかったの!?」
「誰かにちょっとは肯定してほしかった気持ちはあるかのぉ!」
同情を引きたかった訳では無いが、だからといって非難をしてもらいたいわけでもない、どっちかというと懺悔がてら、ただ口にしてすっきりしたかった、というのが本音だろうか。
「ごめん、俺、『仇は俺が討つ!』ってなるタイプだから、どっちかってとネアさん寄りだわ」
「それも絶対グイネアに言うなよ!?」
アンさん呼びを放置したツケが、じわじわ回ってきていた。
「ていうか、じゃあなんで俺の面倒見てくれてんの?」
「そなたが! 勝手に! わらわのところに! 来たんじゃ! ……オルレアはまあ、事情があるんじゃが、それにしたってギルドがわざわざわらわのところに人をよこすのは…………待て、そなた、そもそも誰から神殿の場所を聞いた?」
《焼肉食べ放題》の馬鹿みたいなインパクトに呑まれてすっかり忘れていたが、そうだった、イツキは確か、『ここに来れば戦う力が手に入る』と言われて、アンゼリセの住まう神殿にやってきたのだ。
特に口止めもされていなかったのか、イツキはさらっとその名を呼んだ。
「ヴェルミー姐さんっす」
「…………やっぱりのう」
酒場の女主人、ヴェルミーは元【猛る王虎】の主力メンバーだった女だ。イツキを《
「ていうか、別にアンさんのせいじゃないんじゃねーの? どっちにしても迷宮に入って魔物を倒さないと、連中は外にでてくるんだろ?」
「それは……まぁ、そうじゃが」
「俺だって、別に頼まれたからやってるんじゃないしさ。その死んじまった人たちの事は知らねえけど……別にアンさんに責任を感じてほしいとは思ってないはずだぜ」
「……グイネアにも、同じことを言われたわい」
「そのくせ、久々に顔だしたら、俺の面倒はちゃっかり見てたわけじゃん? ネアさんも怒るよなぁ」
「なんか他人事みたいに言っとるが、そなたが舐めたマネしたからどのツラ下げて行っていいかわからん【猛る王虎】の拠点に行く羽目になったんじゃろうが!」
「その件についてはあざーーーーっす!」
まったく敬意を感じない礼を勢いよくするイツキ。
どうしよう、なんだかどうでも良くなってきた。
「ま、安心しろよアンさん」
紆余曲折あって譲り受けた刀を手に、イツキは立ち上がった。
いつも通り、どこかヘラヘラとしているが、何故かその言葉は……心から、本気で言っているのだと、確信できる声色だった。
「俺が死ぬ時は俺の責任で死ぬ。アンさんの所為にはしねーよ」
「……そこは、そなた。俺は絶対死なないと言うところじゃろ」
苦笑するアンゼリセ。イツキも、同じ顔をした。
「そりゃ嘘でも言えねーよ。
イツキは煌々と輝く月に向かって、手を伸ばした。
「寂しがりやの女神様に自由を与える、ってのは、でっけぇ目標でいいんじゃねえの?」
「……馬鹿者め、そなたにできるものか」
まだまだ迷宮の浅瀬しか知らない、新人探索者の分をわきまえぬ宣言。
説得力も、実力も、足りてはいないけれど。
いくら規格外の変なやつだからとはいえ……そんな言葉、今更鵜呑みにはできまいが。
けれど、アンゼリセは、心のどこかが不思議と軽くなったのを感じた。
アンゼリセは、きっと、後ろめたさを肯定してほしかったのではなく――――。
「ま、やるだけやって駄目だったら、うん、ごめんな!」
そんな軽口を叩かれても、不敬だ、と思うよりも。
……ま、できる限りは見守ってやるか、という気持ちには、案外なるものだ。
「ところでアンさん。ここ、どうやって来たの?」
「…………秘密じゃ。降りるから目を閉じよ」
「えっ、ちょっ、いやん! アンさんったらエッチ……………あれなんかすげえ浮遊感が…………あああああああああああああああああ!」
でもまあ、生意気な口は生意気な口だ。ちょっと罰を与えてやってもよいだろう。
暗転した視界の中で数分間、イツキは自由落下の感覚だけを味わい続けた。