《急成長》スキルから始まる異世界人の《技能樹(スキルツリー)》が何かおかしいんじゃが!? 作:天都ダム∈(・ω・)∋
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「あら、イツキちゃんじゃない」
カウンターに肩ひじをついて、暇そうにカードを並べていたヴェルミーが、イツキに気づいて顔を上げた。
最後の需要高騰を前に荒稼ぎしようと企んでいるのは、当然他の探索者も同じこと。
ギルドの受付前でごった返すのとは裏腹に、休んでる暇なんかねーよ! とばかりに併設の酒場は閑散としていた。まあ昼前というのもあるけれど。
「っす! 姐さん、こんちゃっす!」
「元気が良くてよろしい。アンゼリセ様は……どう? この前、グイネア様と顔を合わせちゃったんでしょ」
「あー、なんかちょっとネガ入ってましたね。まあ今は元気っすよ」
「ならいいけど……というか、あんた、やらかしたわねえ」
「へへっ、聞きましたぁ?」
ちょっと失敗しちゃいましたよ、へへ、ぐらいの態度で照れた素振りを見せるイツキに、ヴェルミーは静かに頷いて。
「イツキちゃん、そんな事言ってられるのも今の内よ」
「へ?」
「ただでさえ七〇階層攻略前でピリついてる【猛る王虎】の拠点のど真ん中で、ロックに前言撤回させて、レンディルまで抜かせて、その上アンゼリセ様にかばってもらって、新しい武器まで譲ってもらったんでしょ? ……ふふ、私は面白いからいいけど、若い衆がすごい盛り上がってるわよ。我らが女神を侮辱した馬鹿を許すな、アンゼリセ様を返せーって」
「滅茶苦茶目をつけられてる!」
「今はクラン全体が忙しいからアレだけど、“
「ええい全員相手してやらあ!」
いきなり知りたくなかった情報を知ってしまったイツキであるが、とりあえず本来の目的を果たさねば、と周囲を見回しながら、ヴェルミーに尋ねた。
「オルレアを探しに来たんだけど……今日はまだ来てない?」
臨時パーティ、というが、実際のところ、オルレアはほぼイツキたちのパーティの固定メンバーのようなものだった。
迷宮に入る前に酒場を覗いて、このカウンターの前に座っていたら声をかけて同行してもらう、本腰を入れて攻略する際は事前に声をかけて予定をすり合わせる、というパターンが多かった為、オルレアに用事がある時は、まずここを訪れるのが当然になっているのだった。
「あー……オルレアかあ、そうねえ」
すると、ヴェルミーはんー、と軽く唸り、言葉を探すように考えた後。
「多分、あの娘はしばらくこないと思うわ、それこそ“
「えェー!? マジで!? 稼ぎ時なのに!?」
かなり世話になっておいてなんだが、オルレアはかなり金勘定にうるさい。
治療一回五〇〇ディオールが適正価格なのかどうかはイツキにはわからないが、体験会で臨時パーティを組んだ際、堂々と徴収を宣言したオルレアに対し、周囲の空気がかなり冷えたことは覚えている。
分前は一ディオール単位でしっかり割るし、成果の主張をきっちり行う。今後に禍根を残すような要求はしないが、自分の損も絶対に許容しない。
イツキはしっかりしてるなあ、と思うぐらいだが、人によっては『金に汚い』と感じることもあるだろう。
だからこそ、ティックは稼ぎ時には積極的に参加するだろうと見越して、分け前を少し増やす、と
「んー…………アンゼリセ様はなにか言ってた?」
「流石に女子のことを他の女子に聞くのは抵抗があって……」
「あっはっはっはっは! かわいーとこあるわねえ。そーねぇ……あたしからは何も言えないけど、オルレアの居場所なら教えてあげましょうか」
「え、いいの? 後でヴェルミー姐さんが怒られない?」
「大丈夫大丈夫。あの娘、結構あなたたちの事、信頼してるのよ? ギルドを出たら南のナーヤ商店街に行って、真ん中の十字路を右に曲がって、ガロギア武具店が見えたら、あとは道を真っ直ぐ行くと、古い修道院があるから。……覚えた?」
「右に曲がってェ……真っ直ぐ行ってェ……武器屋で芋を買ってェ……」
「地図かいたげるわ。ごめん、イツキちゃん土地勘ないもんね」
「お手数おかけしゃーす!」