《急成長》スキルから始まる異世界人の《技能樹(スキルツリー)》が何かおかしいんじゃが!? 作:天都ダム∈(・ω・)∋
◆
「その、ありがとうございました。子供たちの相手をしてくれて」
最初は演技だったものの、次第に興が乗ってしまい、最終的には刀と盾による
……それだけ盛り上がってしまえば、全てが終わった後、疲れ果てて眠りについてしまうのも仕方ないことだろう。年長組と、あまり騒がずに観戦していた数名を除いて、今は修道院の中で昼寝をしていた。
「気にするな、ワーブは子供ウケがいいんだよ。大きいから」
「えへへ……それほどでも」
鎧を脱いだワーブが照れくさそうに頬をかいた。実際、鎧を着ている間はかっこいいと褒めはやされ、非常に上機嫌だった。
「つか、なんで二人ともこっち来たん?」
「ギルドに行ったらヴェルミーさんにお前がこっちに来たって言われたからだよ」
「あ、そっか」
「ま、事情はおおよそわかった。無理にオルレアを連れて行くわけにも行かないし、僕らもしばらく休暇だな」
「へ?」「え?」
イツキとオルレアの声が、重なった。
「潜らねえの? 迷宮」
オルレア抜きで迷宮探索に挑んだことだって当然ある、というか割合としてはそちらのほうが多いくらいで、稼ぎ時である事は間違いないのだから、イツキはてっきりこのまま三人で突撃するものだと思っていた。
「言ったろ。『いかなる事情があろうとも、準備不足で迷宮に挑まない』」
ティックは肩をすくめて、呆れたように言った。
「今の迷宮の熱気は普通じゃない。普通じゃない迷宮では経験上……
「で、ですが……」
向こう数年間訪れるかわからない、最大の稼ぎ時。
オルレアはそれを理解した上で、同行を断ったわけだが、まさか自分がいなければ迷宮に潜らない、とまでは思っていなかったのだろう。
表情に滲み出る申し訳無さを感じ取ったのか、ティックはひらひらと手を振った。
「これは僕の方針の問題だ、君が気にすることじゃない。謝られても返すものはないぞ」
「で、ですが……」
「まあいいじゃん、俺はリーダーの決定に従うぜ」
あっけらかんと言ったイツキは、ごき、と首を鳴らし、
「ビバ長期休暇ーーー! うおおおおおお! 趣味にうち込むぜぇぇぇ!」
両手を上げて、高らかに宣言した。子供たちが起きかねない大声だった。
「イツキさんの趣味ってなんなんですかぁ?」
「………………………………」
「な、なんで、そこで沈黙するんですぅ!?」
ワーブの素朴な疑問に、イツキはそのままシームレスに肩を落とした。躁鬱が激しすぎる動きだった。
「俺、暇な時って刀振り回すぐらいしかしてなかった気がする……ソシャゲは趣味っていうか惰性だったし……一番ハマってたゲームは
「よ、よくわかんないですけど、だ、大丈夫ですよ。『巨人に針を持たせるな』ってことわざも、ありますし」
ぐ、と拳を握りしめて、ワーブは力強く言った。
「…………ワーブ、それから得られる教訓は?」
「えっと…………誰にでも向き不向きはあるから気にしないほうがって……あいた」
ピシ、とティックが弾いた小石がワーブの額に直撃した。本日、相手を変えて二ヒット目だった。
「せめてちゃんと励ませ」
「ご、ごめんアニキぃ……」
「俺に謝ってくんない!?」
休日に特にやることがない事は、向き不向きの話ではないはずだ、きっと、多分。
そこでふと、イツキは何かに気づき、顔を上げた。
指を折ってはんー、ぬー、ばー、と悩んでるのか唸ってるのかよくわからん声を出してから、ちら、とティックに視線を向けた。
「…………なあティック、“
「僕らの攻略階層なら、もう少し早く資源が回復するとは思うが、まあ目安はそうだね」
「うーん、一ヶ月かぁ…………」
腕を組み、悩み始めたイツキを前に、ティックとワーブは顔を見合わせた。オルレアも首を傾げて、はて、という顔をした。
「何か問題が?」
「いや、その、お恥ずかしい話なんですがね……」
へへ、とどこか諦めの混ざった引き笑いと共に、イツキは告げた。
「………………一ヶ月無収入だと、家賃が払えないかも…………」
「「「あー…………」」」
絞り出すような告白に、全員が同時に納得の声を漏らした。
「その、イツキ様はどこで寝泊まりを?」
「ギルドが提携してる一番安い宿を借りてるんだけどォ……」
大きな迷宮都市であればあるほど、それこそティックやワーブのように他所の都市からやってくる者も多い。人の流動が常なので探索者向けの宿の数は多く、最低限雨風をしのぎ凍え死なない程度の寝床であれば、格安で確保することができる。
……とはいえ、流石に探索を始めて間もないイツキに、一ヶ月何もせずに暮らしていけるだけの蓄えはなかった。生きるためには飯を食ったりしなければならないのだ。
そもそも家賃でいっぱいいっぱいということは“
「ちなみにティック」
「僕もワーブも一人一部屋の安宿だから、お前を入れる余裕はない。というか僕の借りてる宿は
「駄目かァー! うーん、最悪、日雇いのバイトでもするかなぁ」
「イツキさんの人脈でぇ、当てはあるんですかぁ?」
「ヴェルミー姐さんに頭下げれば何かしら紹介してもらえるかも…………今さり気なく俺のことディスらなかった?」
「でぃす?」
「なんでもないでーす! くそ、時々通じない言葉がある!」
《
「ま、なるようになるか」
しばらく唸っていたが、最終的にはあっけらかんとそう言い放つ。良くも悪くも、異様に切り替えが早いのがイツキの性格だった。
「…………その、イツキ様」
「ん?」
「寝泊まりができれば良い、ということであれば……」
一旦、空気を飲み込んでから、ふぅ、と吐き出して。
オルレアは、意を決すように告げた。
「……うちの修道院を、使っていただいても構わないのですが」