《急成長》スキルから始まる異世界人の《技能樹(スキルツリー)》が何かおかしいんじゃが!? 作:天都ダム∈(・ω・)∋
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全員がサンドイッチを平らげ、ちょっとした雑談を交わし、
「では、そろそろ失礼しますね」
「うむ、サボるでないぞーそなたらー」
アンゼリセとオルレアが腰掛けていた切り株から立ち上がった、ちょうどその時。
「………………おいイツキ、ちょっと来い」
防壁上のティックが、よく通る声で言った。
「へ? どった?」
「いいから早く昇ってこい!」
「何よ何よ! どうしたって言うのよ!」
『ど、どうぞ』
鎧を着直したワーブがかがんでくれたので、背中、肩と踏み台にして、防壁上によじ登る。簡易的に作られているせいか絶妙に狭く、ティックの体躯ならまだいいが、イツキが直立すると高さも加味してちょっと怖い。
「遊んでる場合じゃないんだよ! あれ見えるか!」
ティックが指差す先は、遥か遠くまで続く一面の草原だ。
「えー……?」
元々目の良い小人族の特徴に加えて、《鷹の目》スキルを持つティックと違い、イツキの視力は極普通だ。目を細めて見るものの、何か変わったものがあるようには見えない。しいていうなら、せいぜい風で草がそよいでいるような……。
「いや、別になんも…………うん?」
よくみたら、草が枯れているか? いや、なんか動いてるか?
……少し待てば、その違和感はどんどん大きくなっていった。
絵画の中に、ぽつんと垂らした絵の具の雫が、じわじわと滲んでいくような違和感。
「……………………なにあれ」
数秒考えて、イツキはポケットから
「カメラ起動の、ズームっと」
当時最新式だった支給品の軍用スマホは、デジタル補正をかければ何と驚きの一〇〇倍ズーム。流石にこれぐらい引き伸ばすと解像度は高くはないが、何が動いてるかを見るぐらいであれば充分だった。
「……………………地面が動いてる?」
ように、イツキには見えた。ティックが横から画面を確認し、ちっ、と舌打ちをした。
「蟻だ」
「……へ、蟻?」
「僕の見間違えじゃなければ…………あれは
個体によるが、小さければ全長三〇センチ、大きければ一メートルを超える個体もいて、硬い甲殻もさることながら、高い咬合力を持つ顎に備わった、切れ味鋭い頑丈な鋏のような牙で、軽金属製の装備ぐらいならバリバリ噛み砕いてしまう。
「…………なんで
「知らねえよ! だけど現実問題として……
そうだと認識してしまえば、もう見間違える余地はなかった。
大量の
遠すぎる事もあって正確な数は測れないが……あれは、群れ、と呼んで差し支えない。
「女神アンゼリセ!
「なんじゃと!?」
ティックの大声に、アンゼリセが目を丸くした。
「この進行ルートだと……ちょうど南部の先端の方だ。あの辺りに門はない」
【ランペット宝樹迷宮都市】は東西南北にある、外部からの出入りを想定して作られた大門と、イツキたちが開拓地に出るために設けられたような小門があり、その全てに見張りをつける決まりになっている。
しかし
このまま進行しても、ただ防壁にぶつかるだけだ。
「…………おい、ちょっと待てよ」
にも関わらず、イツキは焦りの滲む声を漏らした。
「アイツら、壁も天井も這って登れるぞ」
かつて迷宮で戦った際、何が厄介だったかと言えば、硬さ強さもさる事ながら、蟻の足を持つが故に壁や天井も自由自在に移動するその機動力だった。
都市を囲う防壁の高さは場所によってまちまちだが、
「…………そのまま進んだら、どうなっちゃうんですかぁ?」
ワーブの疑問に、ティックは少しだけ考えて告げた。
「恐らく壁を乗り越えて、都市の中に入る。七〇階層の討伐にあたって、ほとんどの探索者は迷宮に潜ってないはずだが……」
しかし、自分たちを含めた見張りが伝令を飛ばしたとして、準備を整え、すぐさま迎撃に乗り出せる者がどれくらいいるか。
三〇階層を攻略できるような中堅探索者ならば、正面から戦って勝てるかもしれないが、あれだけ数がいるとまた話は違う。
何より、どうしたって人口のほとんどは、非戦闘員なのだ。
今はまだ群れで動いていても、建物などの障害物が現れれば分散していくだろう。そうなれば被害規模がどうなるか、想像もつかない。
「…………都市に入られたらおしまいだ、少なくとも南地区は無事じゃ済まない」
その考察は、恐らく間違っていない。もうカメラのズームがなくても、視認できるほど、蟻の群れが接近してきている。この速度なら、もう十分もしないうちに、都市に入ってくる。
「あ、あの、イ、イツキ様」
オルレアの、震える声。
その意味をイツキはよく――わかっている。
「…………やべえ、アイツらの進行ルートに、