《急成長》スキルから始まる異世界人の《技能樹(スキルツリー)》が何かおかしいんじゃが!? 作:天都ダム∈(・ω・)∋
そして彼らは Ⅰ
七〇階層の主、巨人兵ズィーベンを撃破した英雄たちを讃える裏で、都市の存亡を賭けた戦いがあった。
ティックの予想通り、他の見張りも鋼鉄蟻の群れを発見し、その矛先が変わったことも、そこに誰が居たのかも、しっかり記録が残っていた。
報告を受けて駆けつけた【猛る王虎】の探索者たちが発見した、平原を埋め尽くす鋼鉄蟻及び“
しかも、それらを倒したのはまだ一〇階層を突破したばかりのパーティだというのだから、イツキたちの名は一躍、都市に知られた有名人に――――
ならなかった。
「なんでだよォオオオオオオオオオオ! あれだけ頑張ったのにさァッァァア!」
あの死闘から一週間、ランペットは予定通り“
魔法による治癒は即効性はあるものの、体にかかる負担も凄まじいらしく、大きな傷は治癒魔法で塞ぐとしても、それ以外は自然治癒を待つのが一番良い、とはオルレアの弁である。
とまあ、そういうわけで、探索者ギルドの酒場にはすっかり人がおらず、水を飲みながら管を巻くイツキに、文句を言う者も居なかった。
「荒れてるわねえ、イツキちゃん。ティック君、はいこれ」
「どうも」
隣に座ったティックは、ヴェルミーが差し出したナッツを口に含み、言った。
「まあ落ち着け。僕が女神アンゼリセに
「なんでェ!?」
「お前の《
既に
「えっ……あたいのせい?」
「当たり前だ馬鹿。《マリス・レーアの大洪水》だ? そんなスキルが存在するなんて事知れたらどんなことになるかわからないぞ」
この世界の根幹とも言える創世神話の、その一ページ目に載っているような伝説だ。
そんなスキルを覚えたイツキは何者だ? という話になるし、それが《
「そうなったら、もう呑気にパーティなんて組んでられなくなるだろ」
「そんな、アニキ、あたいの事をそんなに…………まってヴェルミー姐さんはいいの?」
「アンゼリセ様が事後処理を頼んだのが【猛る王虎】だもの、あたしはとっくに知ってるわよ。後はグイネア様と、ロック周りの口の硬い一部の幹部と……他の二人の迷宮神くらいかしらね」
割と周知の事実、みたいな感じで言っているが、ヴェルミーが【猛る王虎】の深いところまで情報を持ってこれるタイプの重要人物とまでは知らなかった。昔は何やってたんだろうこの人。
「結構知れ渡っちゃってるかぁ……参ったなぁ、でへへ」
「照れくさそうにするなクソバカ。これでも結構な大問題なんだからな……間違っても迂闊に【
「へいほーい、あ、でもさ。あれだけ
低階層に出てきた鋼鉄蟻の甲殻ですら、かなりの儲けになった記憶がある。それを一〇〇〇体近く、更には女王蟻まで仕留めたのだ。そりゃもうとんでもない金額に……。
「換金はしたけど、ほとんど残ってない」
「どうしてよォオオオオオオオオオオオオオオオ!」
本日二度目の絶叫に、ティックはうるせぇうるせぇと耳元で手を仰いだ。
「塩水ぶちまけてほったらかしたせいでほとんど錆びちまって、素材としての価値が落ちちゃったんだよ。それでもまあ、それなりの額にはなったんだけど……」
「なったんだが!?」
身を乗り出すイツキに、ティックは今一度、盛大なため息で答えた。
「僕らが見張りについてた場所、どこだか覚えてるか?」
「へ? 南西の開拓地だろ?」
「そう、増える人口を賄うために、
「それがどうかし…………………………あれ?」
農業地ということは、当然、開墾した後は、その土地に作物を植えて育てる事になる。
イツキはその場所に……仕方なかった、どうしても必要だった、そう、不可抗力とはいえ、海水を、
「……………………」
その塩は、水がひいても土壌に残り続け……植物の成長を大きく阻害する。
「ついでに、
恐らく、結構な時間と労力をかけてあの場所を開墾した皆さんの事を考えると、そりゃあまあ、心が痛む事態ではあるが、しかしだ。
「…………で、でもさぁ、それはさぁ、あれやらなかったら、ランペットそのものがどうにかなってたわけじゃん? 仕方無くない?」
「それは僕もそう思う……が、僕らの戦いを隠してもらうとなると、その辺りの責任も【猛る王虎】に取ってもらわなきゃいけなくなる。何かしらの埋め合わせをする必要があるだろ?」
「ぐうの音もでねえええええええええええええ!」
どしゃりとカウンターに突っ伏すイツキ。
「ただし」
「ただし!?」
「“
残りのナッツを口に流し込み……ティックはにやりと笑った。
「今回の一件で、各方位にコネを作れたことが大きい。名誉を優先して治安を乱さないだけの理性も見せた。僕たちの戦いそのものがなくなったわけじゃないんだ、伝わる所にはちゃんと伝わってる……後々効いてくるのは
確かに、都市の誰もが知る英雄にはなれなかった。
けれど、得るものはしっかり得ている。成果に見合う報酬は、何も現物だけとは限らない。
「ア、アニキ……頼もしすぎる」
「だから僕をアニキと呼ぶな」
言葉を交える二人を見ながら、ヴェルミーは笑った。
「アンタたち、いいわねー。仲良しで」
「でしょ~?」「どこが?」
噛み合わない返事は、更にその笑い声を加速させた。