《急成長》スキルから始まる異世界人の《技能樹(スキルツリー)》が何かおかしいんじゃが!? 作:天都ダム∈(・ω・)∋
「いらっしゃいませ、二〇名様のご利用ですね。小学生の方は半額、幼児以下の方は無料となっております。また、本日よりスキルの成長に伴い、ご利用のコースに『わくわく満足コース』と『ドリンクバー』が追加されましたのでぜひご利用下さいませ」
「マジぃ? んじゃあ満足コースとドリンクバー行っちゃおうか!」
「かしこまりました。当店一二〇分制のラストオーダーは三〇分前です、ごゆっくりどうぞ」
「よっしゃあ! お前ら好きなもん食っていいぞ!」
「「「わーーーーーーーーー!」」」
子供たちがテンション高めに歓声を上げる中、隣に並んで座るアンゼリセとオルレアは、顔を見合わせながら。
「店内、広くなってますね」
「テーブル席が四つになっとる……」
「幼児以下無料って……良いのでしょうか」
「よくわからんがもう、好きにしたらいいのじゃ……」
皆傷も治ったし、馬鹿が打ち上げをしよう、とのたまったのがつい先日。
「そういや、チビ共は無料で食えるから連れて行こうぜ!」
なんて言い出すものだから、オルレアは流石に怪訝な顔をした。
流石にそんなわけがない、なまじ、一度あの場での食事を体験しているからこそ、無料で供されるなどというのは理屈が通らない、と思った。そんなもの、湧き出る清水を好きなだけに汲んでよいと言われているようなものだ、あり得ない。
「おいしー!」「うめー!」「やわらかーい!」「美味しいですぅうううううう!」
あり得てしまった、大喜びだった。クーガーを始めとした年長組は、オルレアがよくわからない、恐らく注文に使うのであろう光る板をもう使いこなしていて、勝手に食べたいものを頼んでいた。後、なんか一人違う声が混ざってた気がする。
「………………」
暖かい部屋で、わいわいと食事を頬張って、楽しそうにしている子供たち。
その景色を、どこか他人事のように眺めて、オルレアは息を吐いた。
あの女王蟻、“
オルレアの立場からすると、身の丈にあわない……と感じるほどの金額だった。
当面の生活の心配がなくなった、と実感した際には、急に体の力が抜けて、丸一日、立ち上がれなくなってしまったぐらいだ……あの時は、周囲にとてもとても心配をかけてしまった。
「どうじゃ。あの馬鹿は迷惑をかけておらんか」
その隣で、ひょいひょいと、慣れた手つきで肉を並べるアンゼリセ。
三度目じゃからな、と得意げにする姿がどこか面白くて、込み上げてくる笑いを表に出さぬよう飲み込みながら、オルレアは答えた。
「驚くぐらい……子供たちに懐かれてます。ちょっと嫉妬してしまうくらいに」
「そりゃ、あやつも子供みたいなもんだからじゃろ」
話題の渦中にいる馬鹿は、どりんくばー? なる謎の設備の前で、子供たちに使い方を説明していた。何やら不思議な色の泡立つ液体をコップに注いでいる。……あれは口にしていいものなのだろうか。
「いいかぁ、全部混ぜるとやばいことになっちゃうからなぁ。でも好奇心が弾けるのを止められないなら俺は許す! ただし全部飲み干せ!」
「はーい!」「よっしゃー!」「あまーい!」「酒は出ないのか、酒は」
……またなんか一人、違うのが混ざってたような。
「初めてお会いした時は、少し変わった方だな、と思いました……いえ、今でも思っていますが」
少し大きな子供のようであり、手のかかる弟のようであり、頼れる兄のようでもあり。
少なくとも……今日と、明日と、これからを考える時に、いつの間にか、当然のようにそこにいる存在。
家族、と呼ぶべきなのだろうか? 信頼、はしていると思う。
でなければ、過去も、途方もない馬鹿げた夢を、口走ることなどしなかっただろう。
「よーう、ふたりとも食ってるぅー?」
「そなた、本当に空気を読まぬのう……」
そんな事を考えていたものだから、飲み物片手にやってきたイツキに、なんと返そうか、少し悩み。
そうだ、まだ言ってなかったことがあるなと思い出して、時も状況も弁えず、言った。
「イツキ様」
「ん?」
だってもう、仕方がない。
彼ら以外の隣に、自分がいる姿を、想像できなくなってしまったのだから。
「私を、パーティに入れてくださいませんか?」
差し出した手を、取ってもらえるだろうか……なんて考える暇もないほどすぐに。
しっかりと握り返してきた《
「当たり前だろ、これからもよろしく!」
◆
二人が手を取り合う姿を見て、アンゼリセはふと、昔のことを思い出した。
この世界に生まれ落ちてすぐの頃。
右も左もわからない、あるのは本能的に抱いている使命だけ。
姉妹たちと共に、戸惑いながらも、誰かにそれを告げる為に歩き出し。
やがて、アンゼリセは、二人の人間と出会った。
まだ若い男女、初々しくも、自信と勇気に満ちた人の子たち。
伝えるべき言葉を告げようと、焦る女神に微笑んで、そろって手を伸ばし。
『――――――』
あの日の言葉、あの日の想い。それは、自身の私欲の為だけでは、決してなかった。
彼らと一緒に歩みたいと、力になりたいと、それが、一番最初の――――。
「……わかっておる。もう逃げぬよ」
ここは【ランペット宝樹迷宮都市】。
天高く聳える巨木の大迷宮に、心から欲する何かを求めて戦いに挑む、探索者たちが住まう場所。
彼らが繰り広げる冒険の数々を、今日も、心優しき女神が見守っている。