プロローグですが、時系列は一学期中間テスト終了直後です。
中学も3年生となり、四月を終えたとある日の放課後。晴れた日には街全体を一望できる崖の上で、一人の少年がコンビニで買ったパンをモソモソと食べていた。
今まで少年一人だったはずの空間に、いつの間にか三メートルはある巨漢が現れる。それは人間の見た目をしておらず、球状の顔と無数の触手、黄色い皮膚を持ったタコのような見た目をしていた。
アカデミックドレスと三日月をあしらったネクタイを着用していて、コスプレにしては高度すぎる姿であった。
夜に見かければ化け物だと思ってもおかしくない人物?が、少年⋯⋯
通称殺せんせーは、景色を観ながらモソモソしている司に話しかけてくる。
「今日は春風が心地良い。こんな日には遅めの花見でもしたいですねぇ」
「先生は花より団子でしょ」
「バレましたか⋯⋯それよりどうです?最近の学校生活は楽しいですか?」
軽いボケをツッコミで返した司に、殺せんせーは本題を聞いてくる。一瞬食べる手が止まった司だったが、先程よりも小さめにパンをちぎりながら口に放り込んで答えた。
「別に、普通だよ。いつも通りの日常をいつも通りの気分で過ごしてる」
「君は全く暗殺を仕掛けてこないものですから、先生心配でして。磯貝君から誘われているのに、いつも断っているでしょう?」
「悠馬のやつは、俺がクラスに馴染めてないから気にかけてくれてるだけだよ。でも、意味ないことに時間かけたくないし」
「意味がない?」
殺せんせーに目を向ける訳でもなく、景色を眺め続けながら意味がないと断言した司に、殺せんせーは触手ではてなマークを作りながら疑問を浮かべていると、小さく溜め息をついた司が話し始めた。
「先生は最高速度マッハ20なんでしょ?」
「えぇ、調子が良ければもう少し速く飛べますよ」
「へーそれはすごい。でも教室でそんな速度を出したら、俺たちもれなく全員吹っ飛んじゃう訳で。だから先生はスピードを落としてエアガンを躱してる」
「当然です。生徒に危害を加えないという契約ですから」
「俺たちが全員で黒板前にいる先生をエアガンで撃ったとしよう。一秒に一発の玉が先生に向かって発射されるとして、先生に向かってくる玉はクラス全員で一秒三十発くらいか?仮にハンドガンじゃなくてアサルトライフルの方を使っても、精々数百発くらい。
仮定も多いし雑な計算だけどさ、どんなに頑張っても黒板前っていう限定した場所の先生に当てるのすら至難だ」
「確かに、毎朝行っている方式では先生に当てるのは難しいでしょう。でもね、暗殺の方法は一つじゃありません。罠や心理誘導、物量等など、様々な方法でなら殺せるかもしれませんよ?」
「想像出来ないやそんなの。
司は暗殺に詳しい訳ではないが暗殺者が標的を殺すなら、狙われていることを知っている標的よりも、狙われていることを知らない標的の方が殺しやすいに決まってる。
「君の言いたいことは分かります。確かに、いくら常に近い距離にいたとしても、先生の速さなら簡単に避けてしまう。しかし先生を殺さないと、来年には地球はありません」
「別にいいよ。死ぬのは怖いだろうけど、生きたくて生きてる訳でもないし、地球ごと死ぬなら最後には受け入れるんじゃない?」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
後ろに立っている殺せんせーには司の表情が見えないが、声色だけでわかる。彼は本気で言っていることに。実感が薄いというのもあるだろうが、本気で最後には自分が死を受け入れるだろうと思っている。
暫く沈黙の空気が続くが、殺せんせーは司に一つ提案をした。
「司君。先生とゲームをしましょう!」
「⋯⋯⋯何?いきなり」
突飛なことを言いだした殺せんせーに、これまでずっと景色を観ていた司が思わず振り返る。殺せんせーは触手の指?を一本立ててにゅやりと笑みを浮かべた。
「ゲームは簡単。毎日先生は君の前で一分間その場から動きません。君はその一分間で先生にダメージを与えれば勝ちです」
「そんなゲームをやったって、俺一人じゃ無理でしょ」
まだまだ殺る気が起きないのか否定的な司に、殺せんせーは立てた指?を左右に動かしながら、チッチッチッと音を立てて話を続ける。
「このゲームは先生を殺すゲームではありません。先生に攻撃を当てるゲームです。もし当てられたら、君の欲しい物をあげましょう」
「欲しいもの?」
勿体ぶった言い方をする殺せんせーは、マッハで着替えたのか探偵風の格好で、更に謎に声を変えて(某ギアスの人)探偵のような話し方に変え始めた。
「貴方はお昼に大きな弁当箱をもってきていた。食べ盛りの男子中学生であれば珍しくないですが、先生は引っかかりました。
君は運動部ではなく、弁当箱の中身も白米がメインでおかずも比較的安価で簡単なメニューで統一されていた」
「それが?弁当なんだからそんなもんでしょ。というか、その声なに⋯⋯⋯⋯」
司のツッコミも華麗にスルーした殺せんせーは、ノリに乗ってきたのか白熱の推理になってきていた。
「それだけであれば、大して気にするようなことではありません。だが、今の君を見て確信しました。ビニール袋に入っている食べ終えたパンの袋⋯⋯それは安価で量が多いパンばかり、更に先生の鼻は誤魔化せません。今日の弁当のおかずだった生姜焼き、そして貴方の左手から香る微かな生姜の香り!
貴方は毎日、前日の夜に弁当を用意し、出来るだけ食費を安価に済ませようとしていますね?」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
司に向かって決めポーズを決めながら指?を指す殺せんせー。少し唖然とした顔をしながら、司はゆっくりと口を開いた。
「先生⋯⋯⋯⋯⋯⋯ぶっちゃけキモい」
「にゅやぁ!?え、どうしてですか!?先生このために昨日の夜、鏡の前で決めポーズの練習もしたのに!司が読んでた推理小説と同じことやったら喜ぶかなって⋯⋯⋯」
「推理はすごかったけどさ、推理小説ならともかく現実でやられると凄いよりキモいが勝つわ。知りたくなかったよ、こんな事実」
「そ、そうですか⋯⋯⋯それは残念です」
あからさまに落ち込んだ様子の殺せんせーは、探偵風の衣装から元のアカデミックドレスの姿に戻り、いつもの調子で聞いてきた。
「それでどうでしょう。どこでも構いません、君が先生にダメージを与えたら先生オススメのご飯を奢りますよ」
「良いの?そんなこと言って。俺、結構食うよ」
「食べ盛りの子供が沢山食べるのは大いに結構。よく食べ、よく寝て、沢山成長しなさい」
「良いよ、乗ったその勝負。先生の口車に乗せられることにする」
薄っすらと笑みを浮かべて、若干声を弾ませながら司はゲームを受け入れる。そんな司を見て、殺せんせーは真ん丸な顔を綻ばせた。
「ようやく興味を示してくれましたね司君。君は何事にも興味が薄い。たった一度の短い青春を、たっぷり楽しみましょう」
「まぁ⋯⋯少しは明日が楽しみにはなったかも」
これは■■の才能がない1人の少年が、最高速度マッハ20の怪物?を暗殺するまでのお話。
キャラクタープロフィール
名前 近衛 司(このえ つかさ)
出席番号 11番
誕生日 11月10日
身長 178cm
体重 77kg
体脂肪率 10%
血液型О型
得意科目 体育
苦手科目 化学
備考
四月から暗殺に対しての熱意が薄い生徒。クラスメイトとの交流も薄く、学校では磯貝と多少の絡みがあるくらい。
暗殺教室を知っていますか?
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漫画とアニメを観てる
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漫画だけ見てる
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アニメだけ観てる
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どちらも見ていない