体調悪いデス、だけど投稿はします。
暗殺修学旅行も終了して少し経ち、今日から通常授業に戻る日の朝。悠馬と司は旧校舎までの山道を登りながら、昨日届いた烏間先生からのメールについて話していた。
「にしても、転校生か。政府も露骨だな」
「修学旅行での暗殺も失敗したし、五月も終わるから焦ってるんじゃないか」
「その世界の命運を握ってるのが、俺たちっていう実感は欠片もないけどな」
「暗殺がなければ中学生だからな。そんなものだよ」
中間テストの際、殺せんせーは第二の刃を持てと生徒を鼓舞した。第二の刃は、必ずしも勉強のことを指している訳ではないが、E組の生徒たちは以前よりも前向きに勉強している。
「どんなのが来ると思う?俺は年齢詐称した自称中学生が来ると思ってる」
「流石にないと思いたいけどな。でも烏間先生のメールからして、暗殺者だと思うけど」
そう言ってメールを今一度見る悠馬に釣られて、スマホの画面を一緒に覗く。そこには短くはあるが、要約された簡潔な文章が添えられていた。
『明日から転校生が一人加わる。多少外見で驚くだろうが、あまり騒がずに接して欲しい』
「ランボーでも来んのかね」
「世紀末みたいだな⋯⋯⋯⋯」
ロケランを片手に画風の違う厳つい半裸の男のイメージをしながら、二人は旧校舎へとたどり着く。教室前には、何故か教室に入ろうとしない渚と杉野、岡島の三人がいた。
「どうした、そんなところで?」
「あっ、磯貝君⋯⋯それと司君も」
「おはよう」
「う、うん。おはよう」
少ししどろもどろになっている渚と、目を合わせようとしない司の微妙な距離感での挨拶を交わし合うと、岡島が興奮したように教室の後ろを指指す。
「お前らも見ろよアレ!」
言われた通りに教室後方の窓側、司の隣の場所に黒い箱らしき物が鎮座していた。
「なんじゃありゃ、四角いガンツ?」
「流石に政府もガンツを開発したりは出来ないだろ。とりあえず近づいてみよう」
悠馬の提案で全員が恐る恐る近づいてみると、前方にある暗転していたモニターが付いた。モニターに映るのはピンク髪に赤い目をした少女。司たちに気付いたのか、視線を向けて口を開いた。
「おはようございます。今日から転校してきた、自律思考固定砲台と申します。よろしくお願いします」
機械じみた片言で棒読みの挨拶を行い、画面はすぐに暗転する。あまりにも斜め上な転校生に、その場にいた五人は内心で叫んだ。
(((((そう来たか!!)))))
「皆知っていると思うが、転校生を紹介する。ノルウェーから来た
「よろしくお願いします」
(烏間先生も大変だなぁ⋯⋯)
(俺、あの人の立場だったらツッコミきれずにおかしくなるわ)
眉をピクピクしながら紹介する烏間先生に、生徒たちのほとんどが同情的視線を向ける。ビッチ先生ですら微妙な表情を浮かべる中で、殺せんせーはというと⋯⋯⋯
「プークスクスクスwww」
「お前が笑うな。同じイロモノだろうが」
マッハ20の黄色いタコと、自販機サイズの黒い箱。それが教師と生徒の関係だと言って、一体誰が信じるだろうか?少なくとも、司は信じる気にはなれない。
(てか、コイツ俺の隣かよ⋯⋯)
菅谷の後ろの席の司の隣に、自律思考固定砲台が設置されている。これからはこのガンツ擬きが隣人になるとは、司は自分の不運を呪った。
「言っておくが、“彼女”は
“生徒に危害を加えることは許されない”それがお前の教師としての契約だからな」
(顔っていうかモニターだけどな。というか、よくあの理事長が許したな)
あの理事長がAIを生徒することなど認めることに、司は多少の驚きを覚えながらも話に耳を傾ける。
「⋯⋯⋯なるほどねぇ、契約を逆手に取ってなりふり構わず機械を生徒に仕立て上げたと。
いいでしょう、自律思考固定砲台さん。貴方をE組に歓迎します」
その会話があったのが授業前の時間。今は一時間の授業が始まっている。あれから自律思考固定砲台に動きはなく、モニターは暗転したままだ。
いきなり隣になってしまった隣人を横目に見ていると、モニターが付いたと思えば箱の一部が開いて銃を展開。司が驚きで口をあんぐりさせたその時、銃口を殺せんせーに向けて一斉に銃弾が放たれた。
「ショットガン4門、機関銃2門。濃密な弾幕ですが、ここの生徒は当たり前のようにやっていますよ。それと、授業中の発砲は禁止ですよ」
黒板に体を向けていた殺せんせーだが、わかっていたかのように弾を躱し、最後には見せつけるようにチョークで弾いた。
殺せんせーの言う通り、弾幕を展開するだけで殺せるならとっくに司たちがやっている。
(つーかめっちゃうるせぇ!)
隣の席の司は実弾ではないとはいえ、毎秒につき数百発は放たれる発砲音を至近距離で聞き続けている。それは爆音が波打つように空気を震わして、司の全身を過ぎ去っていく。
「気をつけます。続けて、次の攻撃に移ります」
殺せんせーからの注意に雑な返事を返した自律思考固定砲台は、展開していた銃を全てマウントさせてガチャガチャと内部から音を響かせる。
「弾道再計算、射角修正、自己進化フェイズ5ー26ー02に移行」
(⋯⋯自己進化フェイズ?)
自律思考固定砲台は、確かに“自己進化”と言った。さっきは長すぎて気づかなかったが、名前には“自立思考”と銘打っている。
(武装が、少し変わってる?)
司はもう一度展開された砲門が一つ増えていることに気づく。他のとは少し小さめだが、確かに一つ砲門が増設されていた。
ただ撃つだけの砲台を持ってきたところで意味がないことなど、政府も承知済み。自律思考固定砲台は進化する、
「⋯⋯こりませんねぇ」
自律思考固定砲台は、再度銃を展開して弾幕を張る。先程とまったく同じ弾幕に殺せんせーは呆れ気味に同じように弾を避ける。
しかし、司にはそれが罠であるように感じた。機械なのであれば同じような弾幕になるのかもしれない。それでも同じ弾幕を張り続けるのは、意味がないことくらい一度やれば分かることだ。
所詮機械と言うのは簡単だ。それでも、この違和感が司の心に安心感を与えなかった。
そして、その違和感が正解であったと司はすぐに確信した。まったく同じ弾幕を張り続ける中に、明らか違う弾道の物があった。印象的なタイミングだからすぐに分かる違い、それは殺せんせーがチョークで弾を弾くその瞬間⋯⋯⋯⋯
弾けるような音が弾幕の嵐の中からも聞こえる。教室中の全員が、豆腐のように弾けた殺せんせーの触手を見た。
(
たった一度、たった一度の弾幕だけで自律思考固定砲台は殺せんせーの触手の一本を奪った。その事実はカルマ以外ろくに傷つけることを出来なかったE組に衝撃と共に重く降りかかる。
「右指先破壊確認、増設した副砲の効果を確認しました。」
“彼女”は暗殺対象の防御パターンを学習し、武装とプログラムに改良を繰り返し、少しずつ逃げ場を無くしていく。
「次の射撃で殺せる確率⋯⋯0.001%未満。次の次の射撃で殺せる確率⋯⋯0.003%未満。卒業まで殺せる確率⋯⋯90%以上」
(無理だろ⋯⋯前提条件が多すぎるわ)
確かに、自己進化可能なAIを搭載した固定砲台の凄さは伝わった。だがその確率にはいくつかの前提条件があるはずだ。授業中の発砲が可能であること・卒業まで同じような状況が続くこと・何より、他の生徒が妨害をしないという仮定に仮定を重ねた確率だ。
(AIが理解しているのは、先生が生徒に危害を加えないことと、卒業までがタイムリミットであることくらいか?)
コイツの親は、授業中の弾幕は駄目であるということを教えなかったらしい。これだけでもE組を蔑ろにしているとも受け取れなくもない。
「よろしくお願いします殺せんせー。続けて、攻撃に移ります」
転校生は張り付けた笑顔をモニターに表情させ、次の進化の準備を開始させる。その様子を見た司は、早々にこの暗殺が失敗することを察して、隣からの爆音から耳を守るために机に顔を伏せるのだった。
結局、その日は一日中爆音が止むことはなく放課後まで続いた。しかも、撃った弾を毎回片付ける素晴らしいサービス付きで。
「司、お前も片付けるの手伝ってくれよ」
「嫌、大体なんで俺たちが片付けるんだよ」
「仕方ないだろ。俺たちがやらないと、殺せんせーが避ける場所が少なくなるんだから」
「同じ暗殺対象を狙う暗殺者の発言じゃねーな」
授業が終わる度に皆で床に散らばった対先生BB弾を片付けていたが、放課後の時間を使ってまでやりたい生徒は少なく、悠馬が自ら引き受けることを提案して放課後まで掃除を続けていた。
流石に一人でやるには多すぎると片岡や前原辺りも手伝おうとしたのだが⋯⋯⋯⋯⋯
『司のやつ、ずっと片づけサボってたからその分やらせるんだ。だから監視役の俺一人で充分だよ』
そう言って他の全員を帰らせたのだ。そのせいで司まで居残りが決定していた。
「ちりとり持つだけでいいから、手伝ってくれ」
「ルンバみたいに動かねぇのかね。コイツは」
文句を言いながら、ちりとりを持った司の方に悠馬がほうきでBB弾を寄せていく。ちりとりに溜まったBB弾は、用意していたゴミ袋に入れる作業を繰り返す。
「それだと固定砲台にならないだろ?」
「砲台いらねぇから、今からでもルンバに改造してくれ」
「相当ストレス溜まってるな。いつ窓から転校生を放り投げるのかヒヤヒヤしたよ」
「このまま耳元で爆音を響かせるなら、そう遠くない内にやるわ」
司が真剣にあの箱を投げる方法を考え始めると、教室のドアが開く音がする。誰かと思って見てみれば、寺坂・吉田・村松の不良擬きトリオだ。
「忘れ物か?」
「ちげーよ。このポンコツガラクタに用があんだよ」
そう言って手に持ったガムテープで自律思考固定砲台をぐるぐる巻きにする寺坂たち。
「おっ、早速やったな。モニターが見えなくなるくらいまでやっていいぞ」
「そんな大量にねーよ!」
「良いのか、これ⋯⋯⋯」
「遅かれ早かれこうなっただろ。政府の無茶苦茶に付き合ってたら、足元見られるだけだぞ。我儘くらいで丁度いいんだよ」
「寺坂、授業が終わったらちゃんと解いてやれよ」
「どうせ機械なんだから、このままでいいだろ」
辛辣に吐き捨てる寺坂の言葉にも、自律思考固定砲台は反応しない。彼女は授業が終わると同時にモニターを暗転し、以後は物言わぬ箱となっていた。
「これが俺たちと同じ生徒ね⋯⋯⋯⋯大人は汚ぇな」
「司は⋯⋯何もしないんだな。てっきり手伝うと思ってた」
「今は様子見、まだ一日目が終わったばかりだからな」
「何かあったら、ちゃんと相談しろよ?」
「お前、俺の扱いが幼児みたいになってないか?」
「トラブル全般に司は危なかっしいからな」
自分でもトラブルに巻き込まれるか、首を突っ込んでいってる自覚があるので大した反論も出来ずに口を噤む司。その間に寺坂たちはガムテープを巻き終わり、ぞろぞろと教室を出ていく。
また二人だけになった教室で、悠馬は不安気に呟く。
「殺せんせー、どうするつもりなんだろうな」
「さぁな。そんな心配しなくてもいいだろ」
「でも、まだ一日目なのに、一ヶ月経った俺たちよりも追い詰めてるだろ?」
「カルマの時も似たようなものだったろ。最初はテンパってるだけで、その後は圧倒してた」
そもそも、教室内の射撃で殺せるほど殺せんせーは簡単な
(まぁ、教室内を絨毯爆撃でもすれば別かもしれないけど⋯⋯⋯)
寺坂も使ってた対先生BB弾の手榴弾での絨毯爆撃。普通はそんなことはしない。授業中にやったら誰かしらが怪我をしかねないし、寺坂たちでもやらないだろう。
「機械にはそんな常識ないんだよなぁ」
必要となれば、謎に搭載された笑顔機能をモニターに貼り付けて爆撃する可能性は高い。今日一日、自律思考固定砲台に対する司の予想だった。
(後は粉状にした対先生BB弾を散布するとかか?)
対先生物質が何で出来てるのかは不明だが、人体に無害とは限らない。粉状の対先生物質を吸い込んで体調が悪化でもしたら笑えない。考えたくはないが、想定しなくては対処に遅れてしまう。
一見大人しくしている司だが、その内心では自律思考固定砲台のことを警戒している。その時の彼女を見る司は、とてもクラスメイトに向ける視線ではなかった。
翌日、昨日の朝よりも静かな教室内で、全員の視線は自律思考固定砲台に向けられていた。
「朝8時半、システムを全面起動。今日の予定、六時間目までに215通りの射撃を実行。引き続き、殺せんせーの回避パターンを分析⋯⋯⋯」
ご丁寧に今日の爆音ライブの内容を読み上げる自律思考固定砲台だったが、すぐに銃の展開が出来ないことに気づく。彼女の体には巻き付けられたガムテープ。
自分の状況を把握したのか、彼女はマニュアル通りの要求をする。
「殺せんせー、これでは銃を展開できません。拘束を解いてください」
「⋯⋯うーん。そう言われましてもねぇ」
困った様子の殺せんせーに、彼女はAIらしく論理的な説明を始める。
「この拘束は貴方の仕業ですか?明らかに生徒に対する加害であり、それは契約で禁じられているはずですが」
「違げーよ、俺だよ」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯?」
聞いてられなかったのか話に割り込む寺坂。殺せんせーではなく生徒に妨害されたことが理解出来ないのか、彼女は黙り込む。
「どう考えたって邪魔だろうが、常識くらい身につけてから殺しに来いよポンコツ」
「ま、わかんないよ。機械に常識はさ」
「授業終わったら、ちゃんと解いてあげるから」
クラスメイト全員、彼女の拘束を解こうとしない。特に自律思考固定砲台の一つ前の席の菅谷と原は、司同様爆音による被害が大きい。菅谷は諦めたように拘束を解かず、原も授業が終わるまでは解くつもりがないようだ。
「寺坂って、常識解けるくらいの常識あったんだな」
「うるせぇよ!
「寺坂君、物は投げてはいけません!」
司の若干の驚きに、寺坂が持っていたガムテープを投げてツッコむ。神妙な空気が少しだけ笑いに包まれたところで、殺せんせーも拘束を解くことはないまま授業が始まり、そのまま自律思考固定砲台の転校二日目が終了した。
Q.磯貝君に質問です。転校生についてどう思いますか?
A.ちょっと驚いたけど、仲良くなれたらいいかな
Q.近衛君に質問です。転校生についてどう思いますか?
A.大人の都合を感じる。あと、隣になったせいで窓から外が見づらくなってちょっと不満。
暗殺教室を知っていますか?
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漫画とアニメを観てる
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漫画だけ見てる
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アニメだけ観てる
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どちらも見ていない