陸でもアビサルハンターを作ろう!(先史文明人監修)   作:最大の敵はウルピ

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カジミエーシュ旅行前編です。


カジミエーシュ旅行、あるいは謀略の相談

 騎士とネオンに彩られたカジミエーシュ。伝統というラベルに覆われた商業主義がこの都市の現代的な発展を促してきたことは、ビルの立ち並ぶ近代的な街並みが証明している。大騎士領からは銀槍のペガサスが去り、騎士の称号は栄誉ではなく娯楽のために消費される情報と成り果てた。

 

「やっぱり、それなりに目立ちますね」

 

「吾の服か。されど、このような服を着た者を攫わんと試みるのであれば、相応の成功体験があるであろう? であれば、この退屈な道中に添える出来事には相応しかろうて」

 

 移動都市プラットフォームを降りて少しすれば、多くのタクシーが止まっている。カジミエーシュであることからクランタが多いが、一部のタクシーはサルカズが運転手を務めていた。

 

「あれらは違法タクシーだな。とはいえ、あくまで個人が行っているものだ。より強大な力があれば、何ら変わらぬ。むしろ法外な値段を吹っかけてくれれば、あるいは大幅な値引きが叶うやもしれぬな」

 

 実力行使もやぶさかではないとしながら歩みを進める。お互いに歩くのは慣れているし、疲れを感じることもない。それに、ヘルガの持つ大型のケースは車に乗せるにも少し支えそうだ。

 

「そういえば、持ってきてるんですね。その……槍?」

 

「この()を、吾があのような家に置いておくと思うか?」

 

 ヘルガ自身に打ち込まれていた、5mをゆうに超える釘。巫術をまとうそれは、本来であれば投擲物として用いられる。それは彼女自らの武器であり、槍として振り回すのは膂力や体捌きがどれ程優れているかの証左だった。

 

『蒸気騎士殲滅戦において使われるものですね。本来なら投擲物のはずですが』

 

 規格外の大きさのそれを持ち歩くには、それこそ大きなケースが必要だ。彼女自身が特注したのだろう。楽器ケースに偽装したそれにはいくつもファスナー付きのポケットがあり、これ一つで十分に遠出できるだけの機能を有していた。相応のサイズと彼女自身の服装から、それなりに人の目を引いている。

 

「仮に騎士競技に出たのなら、血釘騎士とでも呼ばれるんでしょうか。あるいは釘騎士?」

 

「ふん、そのような名に価値を見出だす必要はあるか? 黒騎士然り、強き者ほど冠する名は短くなるのだろう? 魔族、あるいはティカズ。戦場にて死に逝く者が恐れと憎悪を込めて呼ぶこの名こそ、吾等を語るに相応しい」

 

 差別や偏見ではなく、血から及ばぬゆえの畏怖だろう。そう強者の視点で語る口調には一点の曇りもない。

 

「ああ、騎士というならば。最後の騎士。あれは面白かったな」

 

「最後の騎士ですか。SPCTがなにか言っていましたね。いずれ私達の敵となる者、でしたっけ」

 

『最後の騎士。……いずれ私達()の前に立ちはだかる者。私達の、敵』

『あと、普通に介護面倒でしたね。第二形態でロシナンテに乗ってブロック不可になるの、初見でびっくりしました』

 

 道すがら中央ジャーナルを一部買い、カジミエーシュの情勢を軽く知る。ついでに興味を持ったとヘルガが"最後の騎士"を扱った騎士小説も買って、多機能な楽器ケースのポケットに入れていた。

 

 

 そうして話していれば、ファイヤブレード競技場へ到着する。席について、服のポケットに入った石碑を起動。

 

「アクセス」

 

『ユーザー認証、ゴーティ・フラウィス。ログインを確認しました。ようこそ、SPCTへ』

 

 出場する騎士とフィールドの情報も把握できた。後は現実時間では数瞬のタイムスライスで演算を終了させることで。

 

「一位が灰嶺、二位が裂腕。三位が溶蝋ですね」

 

 三連単の予測が完了した。結果を伝えられたヘルガもすぐさま手元の端末で賭け、莫大な金が注ぎ込まれたことを示す引き換え画面が表示される。後は、結果を見るだけだ。ざわめきが増し、もう間もなく始まるのだと雰囲気が過熱する。煽るようにMCが高らかに口上を述べ、団体混戦に出場する騎士と彼らの所属する騎士団を紹介していく。

 レイジアン工業提供のドローンが各騎士の視点から中継していると宣伝も兼ねた説明をMCがすれば、ゴーティは僅かに反応を示した。

 

「レイジアン工業か。……あそこも、得体のしれない企業ですよね」

 

『あの刹那の間に鞘走るかよこと、竜殺しの剣──赤霄。あれの鞘の制作元もレイジアン工業ですからね』

 

 試合の始まりをMCが告げれば、周囲の熱狂はボルテージを増した。今であれば他者に聞かせられない密談もできるだろうと、ゴーティは話を切り出す。

 

「私達の使える時間には限りがあります」

 

「それは、起こり得る事項に関してのことだな」

 

「えぇ。前提として、私達の計画には"ファーストボーン"が必要です。あるいはエーギルの封鎖を突破し、SPCTの本体がある"庭園"の紺碧の樹を用いることも考えましたが」

 

 本来であれば、ゴーティ自身が自分を核として実行する予定だった。だが、エーギルを相手にするよりよっぽど軽く確実性の高いプランが取れるようになった。そう嬉しそうに少女は語る。

 

「ヘルガさんが加わったことで、より簡単な方法が取れるようになりました」

「ファーストボーンは、大雑把に言ってしまえばシーボーン化した巨獣と称することもできます。そして、あなたの王庭の主、ブラッドブルードの大君が討ち果たしたあれ。使えると思いませんか?」

 

「──ライフボーンか。今一度戦争が起き、軍事委員会が王庭軍を動かすのであれば。吾もまた鮮血の王庭に系する者として帰還するのも吝かではない。しかして、あれの簒奪は即ちサルカズを敵に回すことと同義であるぞ。そこは如何とする」

 

 ゴーティは問いかけに首をかしげる。ここは、"元サルカズ"と自身の在り方に拘りのない二者の違いか。

 

「……? 私達もまたシーボーンと同じようなものですから、亡骸の構造の情報を取り込んで進化すればいいだけでは? そのものを使わなくても、得た情報から私やヘルガさんがファーストボーンになればいいだけで」

 

 より人からかけ離れることをさらっと述べるゴーティだが、眼前の少女に動揺はない。そういうものだと分かっているのもあるが、自身がより高みへ至れる可能性に手を伸ばさないはずもなかった。説明されれば、すぐに納得に至ったようで。ヘルガもまた言葉を続ける。

 

「巫術により、骨骸の神経と繋がることは可能と聞いている。であれば、溟痕により神経束などを取り込むこともできよう。必要とあらば、共に時空を漂っていた術師の一人でも取り込んでしまえばよいな」

 

「この時までに、接部自動調整点の技術は完成させておきたいですね。取り込んで進化する過程で自我を失って大群の一部になり果てるのは、好ましくありませんから」

 

 カズデルにおける戦略上重要な秘密や、エーギルの技術にまつわる謀が飛び交う。周囲が騎士たちの戦いぶりで一喜一憂するのを壁として、遠くヴィクトリアとカズデルの戦争が起きることを前提としたプランが構築されていく。

 

「1094年のロンディニウム進駐までには、遺伝子嵌合研究及び接部自動調整点の技術を完成させて私とヘルガさんに施します」

 

「その後は吾が鮮血の王庭として王庭軍に参加し、ライフボーンに関連する部隊で骨骸の神経や生体情報を手に入れればよいというわけか」

 

「私との合流には支障がないですよね。例え大公爵たちがロンディニウムを包囲していたとしても、あの空間に干渉できるのは他に……」

 

『荒域に座すヘーアクンフツホルンのみ』

 

 組み立てた計略は荒く、されどそれでも実行できる程度に二人の少女は力を有していた。石碑による演算も、分岐を発生させる要因は未だ存在していない。ただ一点、1090年のあの人の目覚めを除けば。だけど、その分岐を気にかける必要はない。

 

「大丈夫です。きっとうまくいきますよ!」

 

『分岐は発生しますが……私は信じています。私がルゥ先輩を想って歩み続けてきたように』

 

「願いが、希望を導くんですから」『想いが、未来を導くのですから』

 

 歓声は、決着を迎えたことを示した。私達の演算した通りに。




かんたんなけいかくまとめ

0:このままだと人の形を保てなくなるので、アビサルハンターになりたい。
1:ゴーティがライン生命に就職して、アビサルハンター化の技術を完成させる。
2:アビサルハンター化の手術を、ゴーティ自身とヘルガに施す。
2.5:多分このあたりでドクターがケルシーによって強制起床。バベル時代のドクターがテラ文明のために源石計画を完全に投げ捨てると詰むので、プリースティスがEclipseのMVで見せた愛と絆の力を信じる。
3:ヘルガがカズデルに戻って、ライフボーンに溟痕を設置。
4:ライフボーン(巨獣)の生体情報をゲット! 溟痕を除去して、ライフボーンの力でゴーティの元へワープする。
5:ゴーティに得た情報を共有。

想いが未来を導く
「私がルゥ先輩を想って歩み続けてきたように、(プリースティスの)想いが、(バベルのドクターの)未来を導く」
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