ナザリックレ○プ!至高の"元"御方と化した先輩!   作:ニコラス―NICORUTH―

15 / 31
三人はどういう集まりなんだっけ?

 

 シャルティアは狼狽していた。

無理もない。彼女をもってしても、今置かれた状況があまりにもカオスだからだ。

街を破壊しながら、双子を捜索していたところ、ようやく現地人らしき男を見つけ、それを捕まえたと思いきや、突然至高の御方が現れ、奇妙な力を発動してみせたのだ。

しかも、しもべである筈の自身に、同じ御方であるペロロンチーノによって創造された彼女に、敵対的な姿勢まで示しているときた。

頭が混乱しそうになるところだが

彼女はまず、どういうつもりか御方のご意思とやらを聞いてみる他なかった。

 

「 メコン川様、どういうおつもりなのですか!? 」

 

「 どういうってこういうことだとおもうんですがそれは・・・ 」

 

「 ナザリックに君臨する、至高の御方の御一柱たる御身が、何故私を攻撃するのですか!? 」

 

「 なにってそれはお前が敵だからってそれ一番いわれてるから。 」

 

 私が、メコン川様の敵?

メコン川、基タドコロへの認識が、"自分たちの創造主"であることに変わりないこの吸血鬼は、その言葉の意味を理解できない。

だが、その言葉が正しいのなら、御方はナザリックに仇なす者となったということになる。

いや、そんなこと、ありえない。あってはならない。

シャルティアはどうにか、目の前のそれが現実ではないと思おうとする。

至高の御方は、ナザリックの偉大なる支配者たちだ。

それが何故、そのナザリックに対して牙を剥かねばならないのだ。

必死にその理由と、タドコロへの言葉を頭の中で探す。

 

「 メコン川様、何かしらの精神汚染を受けておりんすね?そしてその元凶は・・・ 」

 

 シャルティアは先ほどまで追っていたあの男に目を向けた。黒い衣装に、仮面。如何にも怪しい。盗賊のように見えるが、奇術師のようでもある。

コイツだ。コイツが・・・

 

「 お前だな。メコン川を洗脳したのは!? 」

 

 気づいた時には、既に彼女は第十位階魔法〈清浄投擲槍〉を男に向かって投げていた。

この魔法は神性属性を有し、MPをより多く使用することで、必中性能を高める効果がある。

故にシャルティアの見立てでは、躱されることなくその肉を穿ち、地面に紅い血溜まりを作って、かの者を死に追いやる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・筈だったが、それはあくまで彼女の頭の中での話。

 

「 なっ!? 」

 

 シャルティアは再度目を疑う。

なにが、起こっているんだ?〈清浄投擲槍〉が吸収された?

 

 

「 これもうわかんねぇな。 」

 

「 そのような手を取った覚えはない。彼は彼の意思の下、このシモキタザワを築いた。

かけがえのない、仲間とともに。 」

 

 呆れかえるタドコロをよそに、その男はシャルティアの現実逃避じみた考察をバッサリ否定する。

築いた?この街を?ナザリックをないがしろにして?

シャルティアの混乱は深まりながらも、その思考は真実に近づいていた。

しかし、彼女はその事実を受け入れられない。

それは、シャルティアの、ナザリック階層守護者の、いやナザリック住まうすべての者たちにとって、最悪な事実であるのだ。

 

「 そういうことだ。オレはもう、獣王メコン川じゃ、ないです。

オレは野獣王タドコロ。

24歳(大嘘)、覚醒です。 」

 

 嘘だ。嘘だ。嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ。

そう呟きそうになるシャルティアは必死に冷静に状況を呑み込もうとする。

これまで、必死こいて探してきた方々が、

御方が、私たちの創造主が、裏切るなど、あり得ない。

あり得ないあり得ないあり得ない!

そんなことがあって溜まるか!

シャルティアはやはり、その原因を、この男にこそ見出す。

獣王メコン川様はこいつらに操られているんだ。いいように扱われているのだ、と。

みるからに怪しい格好なのだ、間違いないと、自分に言い聞かせ、なんとか理性を保とうとしている。

どこまでいっても、そんなもの、都合の良い思い込みに過ぎないのだが。

 

「 焦っているな。 」

 

「 なに? 」

 

「 わかるぞ。そういう張り詰めた表情は、切羽詰まった時にやるものだ。 」

 

「 ・・・焦る?私が。お前らのような下賤以下に・・・! 」

 

「 そうだ。大方お前は、こいつが自分たちに敵意を向けるなどあり得ない。とか思っていたんだろう? 」

 

 男はシャルティアを煽るように、こう続けた。

 

「 あのような真似をしておいて、自分たちの主人が帰ってくると本気で信じていたのか。 」

 

「 でなければなに?お前らに御方々のなにがわかんだよ? 」

 

 イラつき始めるシャルティアを、男はさらに責め立てる。

 

「 こいつはオレの友だちさ。曰く、あの大墳墓が窮屈でたまらなかったそうだぞ?

・・・そうだろ、タドコロ? 」

 

「 そうっすね。なんっていうかこう、息苦しさみたいなのがありましたな(懐古)。 」

 

「 息苦しい!?ナザリックが!? 」

 

「 そうだよ(肯定)。さらに付け加えればお前らいい加減気づきそうなものを見苦しいんだよ。

みんなそれぞれの現実、それぞれのいる世界にけぇったんだぞ。あの日にモモンガ辺りの他に3人来てたのが奇跡みたいなもんなんだよなぁ。

なんであいつらをほっとかないんすかね?

取って食うわけでもねぇのに人も不必要に惨たらしく殺しまくりやがってよ。

吸血鬼のクズがこの野郎・・・!(義憤) 」

 

 シャルティアは知るはずもない。アインズ・ウール・ゴウンが散り散りになったそれぞれの事情を。

彼女にとってはナザリックこそがすべてであり、至高の御方々に仕えることこそ最大のよろこびである。

だからこそ彼女は、何故いなくなったのかなど考えもしなかった。いつか、帰ってくる。いつか見つかると、根拠のない期待を寄せるばかりで。

 

「 何故人間などの方を持つのです!?御方のそのような御姿、ルプスレギナが哀しみま・・・ 」

 

「 あいつはもう、オレが殺したから。 」

 

「 ・・・! 」

 

 殺した?御方が、自身の創造した下僕を?ルプスレギナの、かつてメコン川の生み出した戦闘メイドの、いつか御方と再会した時のことを語らう姿を思い浮かべながら、シャルティアは耳を疑った。

みたところ、彼女にはなんの不足も至らぬ点もない。

なのに何故、そんな彼女を手に掛けたのか。

そして何故、人間なんかの味方をするのだ。

なにも知らぬが故に、この吸血鬼は一つの結論に至る。

 

 

―――こいつは、御方ではない。

 

 大方二重の影の擬態かなにかであり、自分たちが最も許してはならない部類の下等生物であろう。

それが御方の似姿を得て、戯言を宣うなど、反吐が出る。

 

「 もうさお前ら、潔く認めろよ。自分らは棄てられたってよ。こんだけ暴れて成果なしってことはそういう事だってそれ一番・・・ 」

 

「 黙れッッッ!! 」

 

「 ファッ!? 」

 

 タドコロは思わず怯んでしまう。シャルティアの凄まじいまでの覇気からくる一喝に。

しかしそれは半ば強引なそれ、いってしまえば空元気に近く、このステロイドハゲの諢名を持つ男には、圧などまるで感じない。

 

「 黙れ。私たちは棄てられた?それぞれの世界に帰った?そんなことはない!

必ず戻ってくるんだ。

至高の御方とあろう方がお創りになった私たちを棄てるはずがない。

お前は偽物だ。御方の姿形を偽った、紛い物だ!! 」

 

「 あ ほ く さ。 」

 

 恐ろしいまでの信心、いや、妄信或いは執着と呼ぶべきか。そうアレとデザインされたシャルティアは、どこまでも自分たちに忠実。否、自分たちを正当化する為に、ギルドメンバーを必要としている。

タドコロにはそう見えた。

それでそれまでの所業を非難すれば、今度は自分を偽物呼ばわり。

呆れ果てたタドコロの口からはその4文字以上の言葉がでない。

思えば、そんなものか。

アインズ・ウール・ゴウンは悪役ギルド。そこのNPCも、その大半が悪寄りの属性(アライメント)である。

カルマ値が0から遠くなるほど、―によれば寄るほど、おおよそ余人からみて最悪な価値観が基準になる。

そんな風に生まれた奴らに、人のなんたるかがわかるはずがないのだ。

それを今、シャルティアという歪な存在、基ペロロンチーノの性癖の結晶を目の当たりにし、思い知らされたタドコロは、自身がこのシモキタザワにて手掛けたNPC、子種王の属性(アライメント)を弄らず、0にしておいて本当に良かったと感じている。

他のNPCに関しても同様だ。

ギルドメンバー第一というのは変わりないものの、彼らはシャルティアやデミウルゴスのように、歪んだ感性を持ち得ない。

 

言動から勘違いなどの軋轢を生むかもしれないが、これから現地人ともそれなりに上手くコミュニケーションを取れる見込みがある。対してナザリックの者たちが同じように接することができるかといわれると、悩むまでもなく、その殆どはNOだ。ギルドメンバーは不在。そして彼らの在り方そのものが害悪であり、実被害まででているからである。所詮はデザインされた生命。

ハナから身も心も化け物として作られ、

生み出した己らを崇拝するばかりで、ナザリックの外におおよそ興味も視線も、まして敬意など向けようはずもない彼らが、

人間を蔑むように、あるいは無関心に創られた彼らが、その人間と仲良くなどできようはずがそもそもない。

そして、そんな彼らを統べるつもりなど、やはりタドコロにはない。

忠誠を誓っているが、所詮そんなものうわべだけ。

或いは、メンバーへの敬意すらも、作りもの。

動くマジックアイテムとでも評すべきか。

実質誰もいないナザリックに、もはや価値などない。

 

なにが主従だ。自分たちが安心したいから、崇拝対象が欲しいだけだ。

自分たちが存在するための、偶像、いってしまえばハリボテが欲しいだけなのだ。

それでそれを拒否し、敵になるとなったら、自分が偽物だ、御方はそんなこと言わない、という決めつけとは。

意地汚いを通り越して清々しくも感じる。

 

 目の前の吸血鬼の赤く鋭い視線。敵対者にそのおぞましいまでの暴威を振るう合図であるはずのそれに、タドコロはしらけたような眼光で返す。

 

「 その姿その形で、卑しい視線を向けるな紛い物! 」

 

 シャルティアは怒り心頭だった。自分たちの信仰する御方々を愚弄され(たものだと勝手に思い込み)、更には相手は自分たちの仲間までも手に掛けた。

到底許せるはずがないが、タドコロにとっては、そんな彼女の言動一つ一つがお笑いものだった。

 

「 紛い物もなにもオレがそのメコン川だっつってんだルルォ!? 」

 

「 黙れぇぇぇええええ!! 」

 

 これ以上、その声を聞きたくない。一刻も早くこの二人を始末してやりたいシャルティアは、その独特な槍、ペロロンチーノの与えたスポイトランスでもって、タドコロに殴りかかる。

 

「 ヴィシュヌ!〈ゴッドハンド〉! 」

 

 タドコロの傍らに侍るもう一人の彼は、手を突き出すと同時に巨大な腕を召喚し、吸血鬼に強力なパンチをお見舞いし、その5体を吹っ飛ばして、後ろのビルに叩きつける。

コンクリートにミシミシと赤い鎧が食い込み、本人も多少よろめいている。

アンデッドは基本、物理属性に弱い。シャルティアは吸血鬼真祖であり、鎧も炎耐性の物。弱点はこの物理属性と神聖属性となる。

対してタドコロが放ったスキル〈ゴッドハンド〉は物理属性最強クラスのスキルである。

効かないはずがないのだ。

 

「 お、大丈夫か大丈夫か?バッチェ顔赤くなってますよぉ~。階層守護者は短気で無能だってはっきりわかんだね。 」

 

「 タドコロ、そろそろオレも仕掛けていいか? 」

 

「 いいよ、来いよ!アイツの胸にかけて胸に! 」

 

「 ふざけるのも大概にし・・・ 」

 

「 〈ジオダイン〉! 」

 

「 ああああああああっ!! 」

 

 間髪容れずに今度は雷を喰らわせた。そしてこれにルルも便乗して仮面を外して素顔を晒しペルソナを召喚、攻撃に移る。

 

「 魅せて!ヴァナディース( YSZW )!

〈コウガオン〉! 」

 

「 ガァァァァァァアアア!! 」

 

 男ことルルは、何故か裏声で神聖魔法を詠唱した。

聖なる光に撃たれるシャルティアのHPがガリガリと削られていくが、まだ彼女には余裕がある。

なんといっても3度まで全開でき、〈不浄衝撃盾〉も3回残っている他、切り札たる〈死せる勇者の魂〉もあるのだ。

更にスポイトランスにはダメージを与えた分の体力回復もあり、自前で呼び出した眷属を攻撃することで回復までできる。

いくら弱点属性といえども、第九位階程度の神聖属性魔法一撃では致命打になり得ない。だからこそ、彼女は相手を殺さねばならないとは思いながらも、大したことはない。

MPが尽きればこっちのものと侮り、慢心している。

その前に殺しきられるだろうことも、ペルソナの魔法ではない攻撃スキルはMPを消費しないことなど知りようもない。

にしてもさっきの裏声、奴はやはりふざけているのかとシャルティアはイライラし始めていた。

 

故にここはこちらも魔法で攻めようと考える。

 

「 〈魔法最強化朱の明星〉! 」

 

 炎属性最強クラスの魔法。

・・・彼女の知りうる限りでは。

 

「 ヴィシュヌ、〈ブフダイン〉だ。 」

 

 黒の道化師が今度は氷属性魔法を放ち、紅蓮の炎を掻き消してしまう。

これは精神系の属性魔法の特徴。

五行使いのスキルで覚えられる魔法なんかに見られる、属性によって精霊属性攻撃魔法を打ち消す、という性質である。

面倒なのでこの辺りはよく、一世紀前の大人気育成ゲームの相性なんかで覚えられていることが多い。

 

 

「 おい、冷えてるか? 」

 

「 大丈夫っすよ。バッチェ冷えてますよ。しかし、冷え症とかはどうすかね? 」

 

「 問題あるまい。なにせもとより死体なのだ。

通ってる血ももとより死んでいる。 」

 

「 親の顔が見てみたいっすね。ペロロンの奴元気してるかな? 」

 

「 話を聞く限り、恐らく覚えてないだろ。こいつのこと。エロゲーの女の子でシコシコするのに夢中でな。 」

 

「 あり得ますねぇ! 」

 

「 フハハハハハハハ!! 」

 

 あいも変わらずおちゃらけた態度を崩さぬ二人は、身体中が冷えに襲われ、凍てついているシャルティアを嘲るようなやりとりを繰り広げる。

それは彼女の階層守護者としての誇りをみごとに踏み躙り、なにがなんでも殺すつもりにさせるには十分すぎた。

 

「 ・・・弄するか。 」

 

「 ん? 」

 

「 ペロロンチーノ様を愚弄するかぁぁぁああ!! 」

 

 我を失ったシャルティアは、体力を全快させて、憤怒のままタドコロに突撃するが、その一撃二撃三撃は、あの黒い道化師に阻まれ、防がれてしまう。

 

「 もっぺん〈ゴッドハンド〉いきますよ〜、イクイク。 」

 

 再び振るわれる神の拳。またしても吸血鬼をふっとばし、タドコロは更に追撃を加える。

 

「 ヴィシュヌ、〈万物流転〉。

・・・さらにコイツもぶち込みますよ〜。 」

 

「 おお、それか。 」

 

「 シャーマンの本領、見とけよ見とけよ〜。 」

 

 次にシャルティアに襲いかかったのは、第十位階クラスの風だ。

万物流転。紛れもない風属性最強クラスの魔法だ。

流石に不味いと思い始めたこの吸血鬼は、

〈上位転移〉によって、その中を脱出、回避して一撃を加えようとする。が・・・

 

「 (攻撃範囲に)入って、どうぞ。 」

 

「 があああああああああああ!!! 」

 

 躱した筈の突風、いや竜巻の中に巻き込まれ、大幅にHPをすり減らしてしまう。

 

おかしい。確かに転移でレンジから離れた。

なのにどうして?

その答えを、彼女はすぐに見ることになる。

 

「 ・・・!? 」

 

 嵐の中に、なにか小さなものが回っている。

モンスターだ。矮小なモンスターが、ケツを合わせて回転している。

アレが、これを生み出しているのか・・・!?

 

「 そいつらは第七位階召喚魔法で呼べる魔獣なんだけどよ、スキル使うと、第十位階位のダメージたたきだせるんだぜ? 」

 

「 やるなぁ、タドコロ! 」

 

「 ありがとナス! 」

 

 きっきからなんだ?この私が、至高の御方によって創られたシャルティア・ブラッドフォールンが、翻弄されている!?

これまでそんなことはなかった筈なのに。

おかしい。おかしい。

おかしいおかしいおかしい!

魔獣を一閃によって撃滅するシャルティアであるが、内心は先ほど以上に動揺を隠し得ない。

いや、それ以上に、そう、この状況で最もおかしく感じているのは・・・

 

「 こ、この・・・! 」

 

「 〈ダウンショット〉! 」

 

「 あぁっ!? 」

 

 相手を確実に怯ませる銃撃スキル。そしてその隙を、この

悪戯者(トリックスター)は見逃さない。

 

「 怯んだな・・・ペルソナ!! 」

 

 

 仮面を外すと、青白い炎とともにルルの身体から、それは現れた。

赤いスーツを着た、シルクハットの悪魔、とも呼ぶべき、もう一人の彼だ。

 

「 奪え、アルセーヌ!〈バスタアタック〉! 」

 

『 フハハハハハハハ!! 』

 

 ダウンしている相手に大ダメージを与える攻撃スキルが、吸血鬼に襲いかかる。なんだこれは?

こんなの私は知らない。

なんでさっきの物理属性攻撃よりも効いているんだ?

いや、それよりもなんで・・・

 

「 魔獣くんたち、オッスお願いしまーす! 」

 

 あの御方を真似ているだけの男に、こんなに違和感がないのだ?二重の影だからか?いやそれでもレベル差は拭えないはずである。何故、ここまで自分と渡り合えるのだ?

つい先ほど彼は獣王メコン川ではないと否定したはず。

だから、アレは偽物であるはずなのだ。

あれが御方であるなど、あってはならない筈なのに。

やはりタドコロが気になってしまうシャルティアは、それ故に彼の放った魔獣への対処が遅れてしまう。

 

「 ―――!? 」

 

 気づいた時にはその影はすぐそこまで迫り、その鎧の赤い鋼に牙が食い込み、爪が立てられる。

 

「 糞がぁぁぁぁぁあ! 」

 

 二度目の体力全快。回復した彼女は即座に魔獣たちを薙ぎ払った。

そこは腐ってもレベル100だ。

だが、そこに・・・

 

「 ラウール!〈ランダマイザ〉! 」

 

 ルルのデバフ付与魔法により、シャルティアの攻撃力、防御力、更には俊敏さまでもが一時的にとはいえ低下する。

魔獣たちはそんな彼女に再び襲いかかる。

ステータスダウンの弊害故に、最低80後半ほどの魔獣を倒すにも二撃必要となっており、徐々に疲弊していく。

そうしてタドコロの魔獣をすべて倒した頃に、この場を退くべきだと〈 上位転移 〉を使用しようとしたが、何故か魔法が発動しない。

いや、してはいる。だが、転移が阻害されているようだ。

 

「 な、なにが? 」

 

「 気づくのが遅いわ。 」

 

 混乱するシャルティアのもとに、赤い巫女服の女が現れる。口ぶりからして彼女もまた、敵のようだ。

 

「 アンタがバカの脳筋だったもんだから助かったわ。

お陰で、アンタを、大墳墓の悪魔をまた一人始末できるもの。 」

 

「 なん、だと? 」

 

「 アンタたちが創造主とやらどもを敬い、崇めていることは勿論知ってるわ。だから、そこを利用させてもらった。

そいつらが絡めば、アンタは穏やかじゃいられない。

アンタがバカ二人、特にタドコロに気を取られているうちに、結界を張って、逃げ場を失くす。 」

 

「 さっきの転移阻害は・・・ 」

 

「 そうよ。この結界はアンデッド、といってもNPCとかモンスターだけだけども、それらを通さない。

一度閉じ込められれば、私が行動不能になるか、任意で解除するまででられない。

たとえ転移魔法でも、ね。 」

 

 シャルティアの焦りはより一層強まった。

やられた。完全に退路を絶たれた。

 

「 アンタ、そいつが獣王メコン川の偽物だとかって本気で言ってたのよね?そいつが紛れもない本物よ。

ねぇ、タドコロ? 」

 

「 そうだよ(肯定)。 」

 

「 ・・・ 」

 

 シャルティアももはや言葉がでない。

ここまでいうのだ。やはりアレは、うっすら感じる後光の如きオーラを放つあの男は、本物の至高の御方なのだろう。

 

「 アンタ、なにをもってこいつを偽物だなんて思ってたの?こんなクッソ汚いフォルムを真似たがるのは、それこそパン(宝物殿のNPC)を除いてはまずいないわ。

こいつのファンの中でも、本当に稀よ。 」

 

「 うぅ・・・ 」

 

「 結局のところ、アンタたちは至高の御方々を自分たちにとって都合の良い存在とばかり思ってたのよ。

悪ければ偽物よばわりが、なによりの証拠。

アンタたちは神にしたがってるんじゃない。

御方々がいなければならない、その存在によって安心したいという、自分たちの欲に従っている。

自分たちの悪さ、存在を肯定してくれる、置物が欲しかっただけよ。 」

 

「 ・・・! 」

 

「 置物、ねぇ・・・ 」

 

 置物。タドコロ自身もハリボテという捉え方をしたが、女ことレイムのこの表現は、ある意味御方々への最大の愚弄であるようで、その実的を射た表現にもみえる。

仮に誰かナザリックに残っていれば、デミウルゴスやアルベドをはじめとした知恵者たちを中心として、そのメンバーに合わせて立ち回るだろうが、その性根、人間への嫌悪感、軽蔑は変わらないだろう。

そしてそれは何処かで必ずファンブルを起こす。

それがもとで、話に聞く真なる竜王辺りから壊滅的な損害を被ることだってあり得るのだ。

どれだけ説教垂れようとも、NPCたちは人間や亜人への見方を変えないだろう。

何故か?そういう風に創られた(かくあれかしと定められた)からだ。

こいつらの偶像という名の墓守、もとい置物の支配者など、タドコロはやはり御免だった。

勿論、他のメンバーをその席に座らせようという気にもならない。

彼らは自分たちの道、自分たちの生活を生きるために、ナザリックを去ったのだ。

そう、タドコロが窮屈に感じて、冒険を求めてギルドを去り、ホモの団を築いたように。

皆が生きる今を、ナザリックという過去の遺物に潰させるわけにはいかないのだ。

 

 尤も、そんな彼らの事情を、この吸血鬼が理解できるはずがないが。

 

「 貴様ァァァァォアア!御方々を愚弄するかぁぁぁあ!! 」

 

「 そういう見方しかできない。なんとまぁ、視野の狭いこと!! 」

 

 この女は、そんなこと考えも及ばない。御方々としてのペロロンチーノ、ナザリックの生みの親としてのギルドメンバーしか知らぬが故に。

やることとすれば、御方々を愚弄したかと猿のように怒り狂うことと、また猿のように、配下と盛ることくらい。

ヤツメウナギのようなモンスターのはずが、猿のようとはこれ如何なるものか。

 

ともかくシャルティアはこの狼藉者を始末すべく、切り札を切ることにした。

死した勇者の魂(エインヘリヤル)〉。自身のステータスをコピーしたコンストラクトを召喚するスキルだ。

これによって制約はあれど、シャルティアは実質二人になる。

しかし・・・

 

「 ペルソナ! 」

 

 彼女が最強だったのは、つい数年ほど前の話だ。レイムもまた、ペルソナを発動。彼女の海より現れるのは、三本の角を有した、金色の龍神。

その赤い瞳は、邪悪な夜魔をしかと捉えている。

これは彼女の、初期ペルソナ。

かつて中国の神話にて黄帝に味方し、武神蚩尤を打倒したという、五行において、土行を司る、伝説のドラゴンである。

 

「 コウリュウ!〈サイコキネシス〉! 」

 

『 キシャアアアアアアア!! 』

 

 そのペルソナ、コウリュウより、凄まじい念波が放たれる。またしてもシャルティアの知らないもの、念動属性魔法だ。

 

「 ガアァァアッ!! 」

 

 シャルティアはそれにより、身動きが止まり、また上からまるで重力が強くなったかのように、圧を受ける。

必死に堪えるものの、中腰の状態を保ちながら、地面にグイグイと押し込まれる。

そこに更なる追撃がくる。

 

「 〈 メギドラオン 〉よ! 」

 

 一世紀前の先人たちならば、身の毛もよだつような万能属性魔法が、惜しげなく放たれる。

如何なるものをも打ち砕く爆発に、容赦なく呑まれていく。

シャルティアもコントラストも、ギリギリ耐えていたが、

 

「 オッス〈 アカシャアーツ 〉お願いしまーす! 」

 

 タドコロの追撃により、なにもできずにコンストラクトは消滅、シャルティアも最後の全回復を切らざるを得ない。

 

「 こんな、こんなこと・・・ 」

 

 そう、こんなことあり得ないはずだと、シャルティアはこれが悪い夢だと思いたかった。

自分が地面に膝をつくなど、ありえない。

こんなどこの馬の骨とも分からぬ者に後れを取るなど、あり得ない。

御方が、自分たちを裏切るなど、あり得ない。

だが、この感覚は間違いなく、自分に起きている現実なのだと嫌でも自覚せざるを得ない。

そして、恐らくこの晩に、自分が死ぬことも。

こんな変な言動の御方に、面白おかしく殺されるのであろう。

それか、その新しい仲間とやらにか。

いずれにせよ、それは彼女の望む結末にはなり得ないだろう。

 

「 ルル、そろそろキメたほうがいいんじゃないすかね?

あるじぇんとの方が気になりますな。 」

 

「 お、そうだな。ならばここらで幕引きとしよう。

ラウール、〈コンセントレイト〉! 」

 

 次に魔法の威力を高める、精神系魔法。

宣言通り、次で、確実に、トドメを刺すつもりなのだろう。

そうしてルルが次に繰り出すペルソナは、機械的な人型だ。

鬼のような形相に、牛を思わせる二本角。

これが、彼女に引導を渡す力なのだろう。

 

「 いくぞ、アナト。私の怒りを思い知・・・ 」

 

 

 

 

 

「 私の怒りを思い知れぇええ!!! 」

 

「 ガアァァア!! 」

 

「 ファッ!? 」

 

「 えぇ!? 」

 

 

 裏声で魔法を唱えようとしたルル。しかし突然、何者かによって、バイクで轢かれてふっとばされてしまう。

あまりに唐突なことに、タドコロもレイムも動揺してしまう。

 

「 え、なに?またナザリック?またナザリックなの? 」

 

「 いや、あれはNPCじゃ、ないです。多分アレは・・・ 」

 

 その顔のついたバイク、いやそのように見えるペルソナを駆るその黒いライダースーツは、一目見ただけでは、彼女がゴリゴリのファンタジーRPGから飛ばされてきたとは思えないだろう。

そのポストアポカリプスとかでみるような身なりと、凛々しい顔立ちは力強さがあり、より魅力的に感じさせる。

 

「 ま、マコト・・・! 」

 

「 久しぶり。会いたかったわよ。 」

 

( やべぇよやべぇよ・・・ )

 

( ねぇ、どうしましょ? )

 

( 朝飯食ったから・・・ )

 

 その女、ギルマスの悪戯の被害者たる恋人の一人の、怒気を含んだ言い方に、修羅場を予感するタドコロであった。





 屋根裏のゴミレ○プ!世紀末覇者と化した先輩!
十五股は、やめようね!
次回、シャルティア死す!( 無情 )
デュエルスタンバイ!( 杏並感 )
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。