ナザリックレ○プ!至高の"元"御方と化した先輩!   作:ニコラス―NICORUTH―

21 / 31
 申し訳ないっす。今回短めッス!


龍と獣

 

 指先から脳幹までが痺れるようや、あの濃すぎる夜より、しばらく。

その世界に白夜があるかどうかは定かではないが、その晩は、夜というには、度を超えぬくらいには明るかった。

夜の黒は変わらず粛々と沈黙を称え、星はあいも変わらず夜空を彩る。そして、見慣れた衛星も。

日中は太陽が。夜中は月が。この理は、この世界でも変わらないのだ。

丸々とした月輪は、隠れてしまった日輪に代わって闇の世界を青白く照らしてくれていた。

 

 

そう、それを酒の肴の一つとする、この二人も。

 

「 ぬわぁぁあん疲れたもぉぉおん!! 」

 

「 久方ぶりに聴いた気がするわ、それ。 」

 

 あるじぇんとと、野獣王タドコロ。

十年もの付き合いのある彼らは、シモキタザワのあのタクヤのバーから持ち出した酒で、久方ぶりに呑んでいた。

バーではなく外を選んだのは、偶には花鳥風月を味わうのも良いと考えてのことだ。

灼熱都市は元の様相を取り戻していた。

破壊された区画の修復も終わり、一連の騒動にようやく一息がつけたのだ。

ちなみにコインの支払いは、ナザリックから強奪したものを使用している。

 

 思い出話に花咲かせていたところ、近況の話題に移るというところで、タドコロが口にしたのは、この街を襲った女が如何様になっているかという疑問だ。

この頃、この人狼は帝国の惨状を目の当たりにしたというのもあって、近辺の調査で留守にすることが多くなった。

そんな中で、自分が討ち取った狼藉者が、どうなっているかが気になったのだ。

 

「 そんで、あれから、HAL姉貴はどうだよ? 」

 

「 あいも変わらず、愛想のないことでなぁ?

少しでもよくしてやろうと話しかければ、

『 近寄るな 』だの『 貴方なんかに興味がない 』だの同担拒否の一点張り。

取り合いすらせん始末やったの。

あん人、デカいところのお嬢やと聴いてはったがあそこまでとは思わなんだわ。

うちは太いのに、器は小さいとはこれ如何にって感じやね。

せやから仕方なしに、ウチと平野はんで"躾け"させてもろたわ。 」

 

「 躾け・・・あ、ふーん(察し) 」

 

「 前のNPCのときといい、結局こないな策を弄さなあかんと。ウチも小物やわぁ。

肝心なときにタクヤはんは女嫌いのせいで、手ぇつけられへんからな。

ちなみに本番はやっとらんで。

レンタルショップでいえば、ぎり18禁コーナーにあるかな?くらいのラインを攻めたわ。お利口さんにさせるんなら、それくらいで十分やわ。 」

 

 あるじぇんとは、そう言いながら、杯をぐいっと上げて、中の酒を口に注ぎ込んだ。

そうして二人の酒と会話は進んでいく。

そう、夜明け近くまで。

 

「 しかしその甲斐もあったみたいで、ようやくまともに話せるようになったわ。

縄で縛られて悶えとる時にな、アレもお胸もでかなってなぁ。

あん人も心地よいみたいどすなぁ。 」

 

「 しょっちゅう縛られてるから、そういう気がでてきたんじゃないすかね。」

 

「 それもあると思うけどな、やっぱり業者さんの腕やろな。

平野さん上手(じょうず)やもん縄の扱い。

やっぱウチなんぞよりよっぽどプロでいてはるわ。 」

 

「 それで、ルルはHALネキと話したのかよ? 」

 

「 ・・・ 」

 

 飄々とした京都弁が途絶え、一瞬口がだんまりとして、表情にはうーんとなんとも言えぬ顔色を浮かんだ。

 

「 その反応、ダメみたいですね・・・ 」

 

「 思いっきり縁切りを言い渡しおってなぁ。

ああなりはった以上仕方がないとはわかってはる。

晴信もお身体目当てで近寄られてえらい迷惑やったんもわかる。

それでも、啜り泣いてるところが可哀想で見てられへんかったわぁ。 」

 

「 それで?今どうしてるんすかね? 」

 

「 ほんでそれからは魂が抜けたように、うんともすんともいわんくなりはってな。その縁切りの言い渡しがトドメを刺しおったんやろね。

飯は食うがすっかり元気はなくなってもうたの。

あの分やと、時間に任せる他ないやろな。

立ち直れるかどうかはあん人次第。

ウチも明日から、エルフ王国に移るし。 」

 

「 やっぱり、行くのか? 」

 

「 まあな。あれみたいなんが他にもおる以上、晴信はしばらく身を隠さなあかんからな。

代わりにウチが、あそこを治めることになる。

ほんでアレはその間、冒険者とかいうのになるんやろ? 」

 

「 そうっすね。連合国にMURはんがツテを作ったからそれに便乗する感じになりますねぇ。 」

 

「 そういえば、そないなこと言ってはったね。

タクヤはんもそこで商売始めとるんやったな?

あれはどないなってんの? 」

 

「 思いの外上手くいってるらしいッスよ。 」

 

「 ほぉ。こないなエセ中世みたいな世の中で、ウリなどやってけるんか疑問に思っとったんやけども、問題ないみたいで結構やわ。

・・・ほんでな、タドコロ。 」

 

「 ん? 」

 

「 ウチな、あの化け物のことが、あの化け物の野獣先輩の次くらいには汚い色合いになりはった肌と神使くんのインパクトがこの2週間頭の中から抜けきらんのやけども、お前はどうや? 」

 

「 オレも、結構ド迫力がデカかったところがありますねぇ。実際に相対してみると、威圧感がヤバくてなぁ・・・

なんなんあれ頭おかしいよ・・・って感じでキツかったっすよほんとぉ〜。

毒酒が効いてくれて本当に良かったわ。

効果がなかったらと思うと、ゾッとすんぜ。 」

 

「 そうか。それは良かったわ。威圧感うんぬんはウチも感じたんやけどな、もうな、ウチらと同じ気ぃせぇへんのな。

ゲームの中のそれやのうて、

もう本当に神さまが出てきてしまったような感じがしはったわ。だから晴信の考察も信憑性、感じるんでしたよね?

だったわ。 」

 

 

 

 

 

「 ほんでアレみて、ウチ思ったんやわ。

もし、オレがああなってもうたら。

下手したら、死ぬ羽目になったりして、ってな。 」

 

「 ・・・縁起でもないこと、考えない方がいいぜ? 」

 

「 いや、可能性としてはないとはいえへんの。

なにしろ変わる現場にでくわしてもうたからな。

ペルソナの構成も大分変わったからな。

明日は我が身やも知れんと身構えてなあかんわけやな。

自分が自分でなくなるとか、おっかないやん。

お前もその野獣先輩ボディから田中角栄とかんなったらややら? 」

 

「 なんで例えが田中角栄先生なんすかね? 」

 

「 せやからオレは、これからこのペルソナを調べなあかん思うてる。

そないな目に遭わん為には、まずそれをよう知らんとあかんからな。

転ばぬ先の杖ゆうやつやね。

しかし、国を治めねばならん以上は、ウチは思うように動けん。

せやからタドコロ、引き受けてくれるか?

アンタさんは外を出歩く機会が多いから、なにか見つけられるかもしれへんし。 」

 

「 あぁ、イイっすよ。なんか分かったら教えっからな。お前によ。 」

 

 

「 おおきに。やっぱあんさん頼りになるわぁ。 」

 

 

「 それでなんだが、あるじぇんとよ。 」

 

「 次はお前から? 」

 

「 そうだよ( 肯定 )。マリッサの奴がよ、異種交配がどうとかっていってたんだけどよ、お前どう? 」

 

「 ほう。ええんやないの。子ども欲しい思うてはる人もウチらには居そうやし、なにより知見は多いに越したこともありまへん。まぁ、オレにもお前にも無縁な話やろがな。

んで、何を使うつもりやて? 」

 

「 ナザリックから誘拐した吸血鬼の花嫁とそこらから捕まえてきた魔獣、ていってましたな。

ていってもオレの魔獣くんたちよりレベル低いらしいけども。 」

 

「 え?あれ、アンデッドやろ?子どもなぞ作れんやん。 」

 

「 いや、スケルトンとかゾンビよりはできそうって。

その辺もどうにかするらしいが、あのマリッサすからな。 」

 

「 確かにあん人は腕のたつ錬金術師やけども、まぁ、これは今後に期待ってとこどすなぁ。

値は低いが。 」

 

 二人の月見酒は、こうして時間とともに進んでいく。

夜闇は黒というより、青に近い色合いである。

青は心の静寂の色。

まさにそのとおりに、タドコロとあるじぇんとの精神は、ナザリックのことも、晴信の15股騒動のことも忘れて穏やかにいられた。

その静かなる青も明け始めた頃、酒もなくなった辺りで、あるじぇんとは自身に〈毒治療〉を唱え、

自身の分身を呼び出した。

 

「 来い、スマウグ。 」

 

 ペルソナ、セトより派生したそれは、彼の原点に立ち戻ったような姿をしていた。

巨大な、赤い有翼の龍。誰しもがドラゴンといわれれば、大方こんなフォルムを想像するだろう。

それくらいにはオーソドックスな見た目だ。

 

「 ウチのドラゴンたちは置いてくわ。

向こうに連れてってまうとエルフたちがビビってあかん。

必要になったら呼び出しますさかい、よろしゅうな。 」

 

「 おう、お前も気ぃつけろよ。 」

 

「 おおきに。アンタさんくらいの縁は、あと一人しか思いつかんわ。 」

 

 

 旧友を乗せた赤い龍の飛び立つ様を、タドコロは見送った。

その大空へと羽ばたく姿は、彼の十年抱えたわだかまりに、ある程度の決着がついたことが察せられた。

 

 同じくして、ペルソナ"スマウグ"に乗り、エルフ王国を目指して飛翔するあるじぇんと、基、本名"天海谷竜之助(あまみやりゅうのすけ)"は何度目かの暁を目の当たりにしている。

その日のものはいつもより美しく、そして竜之助自身の心も、いつもより晴れ渡っていた。

ナザリックの呪縛より解放されたからか、折り合いをつけられたのか、定かではないが、今やこの男にとって、そんなものはどうでも良かった。

 

所詮は、過去なのだ。

 

 いつまでも過去に固執するより、激動の今を生きよう。

友がためを為し、己の見たいもの、求めるものを見出そう。

そしてそれは、この空の先に、或いは己の内にこそ、あるのかもしれない。

 

龍の求道者、その旅は始まったばかり。

 





天海谷→屋根ゴミ(ルル=晴信)の相方ということで、"明智"光秀と関係深い天海僧正から。
竜之助→読んで字の如く。ドラゴンが好きな男なので。
ちなみに竜之助はこっから暫くださない予定ッス。
オリキャラよりも野獣先輩の活躍が見たいからね、多少はね?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。