ナザリックレ○プ!至高の"元"御方と化した先輩!   作:ニコラス―NICORUTH―

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ラーメン屋の屋台

 

「 ・・・ 」

 

「 ・・・ 」

 

 ・・・ん?なんだあのラーメン屋の屋台は?シモキタザワにあんなんあったか?

 

あんな、青一色の顔色が悪そうなラーメン屋の屋台は。

 

ノスタルジー、感じるんでしたよね?そう思いながら、オレはその屋台に接近してみる。

特には、変化はない。身体になにかしら不調がでるでもない。ただ、不思議と、どこか落ち着くような感覚を覚える。  

耳になにかの音、いや、音楽が静かにしっとりと響いてくる。

 

女の人の綺麗なコーラス。それも、一昔前のラジオみたいな音源だ。

前にルルが教えてくれた歌にそっくりだ。

 

オレの視線にその如何にもな白い服装から見てラーメン屋の店主らしき長身に長い鼻が特徴的な老人

 

 

「 ふむ。新たに目覚めた力は・・・

ふふ。このヴィシュヌ、なんとも懐かしい気持ちにさせられますな。 」

 

「 懐かしい? 」

 

「 あぁ、こちらの話にございます。

それと、申し遅れましたな。

ようこそ、ベルベットルームへ。

私の名は■■ール。お初にお目にかかります。 」

 

 

「 ベルベットルーム・・・? 」

 

 ■■ールと名乗る老人は、麺を湯切りながら続けた。

 

「 ここは、夢と現実、精神と物体の間にある空間にございます。 」

 

「 つまり、ここは・・・? 」

 

「 詳しいことは急を要しますゆえ、後ほどとさせていただきます。

・・・あの、怪物のことで、お伝えしたいことがございますので。 」

 

 上手く湯切られた麺が、出汁の満たされた丼の中に入れ込まれ、出来上がったラーメンがオレのもとに差し出される。

程よく熱したのだろう、湯気が顔にかかると、食欲がそそられる。

 

今、このシモキタザワがどうなってるのかすらも、忘れてしまいそうだが、そんな状況下においても、オレの精神は恐ろしく落ち着いていた。

目の前にラーメンがあるのだ。

あんな時代にいたオレだが、それでもこの麺料理には、一家言あるつもりだ。

ラーメンをだされたのなら、食すのが道理。

ラーメンと茹で海老。これらが好きな者に悪いやつはいない。

割り箸を割り、麺を啜る。

 

・・・やはり、美味い。

 

「 私どもの役目は、お客人を手助けすることにございますが、今回はなにぶんできることが限られます。それこそ、助言くらいしか、お力添えできることがございません。

どうかご容赦を。 」

 

 

 

「 あのお客人が丑御前と呼ぶ怪異。あれはペルソナ使いが、過剰な感情に囚われ、暴走した姿というのは、存じておりますな? 」

 

「 存じてますな。ウチの仲間もペルソナに乗っ取られたって。ジッチャマなんか知ってんのか? 」

 

「 私どもとしても珍しい事例にございます。私どももペルソナを扱っておりますが、それが宿主から肉体の主導権を奪うというのは前代未聞にございます。

・・・ペルソナでないものならば、幾分か覚えはあるのでございますが。 」

 

「 でも、可能性としてあり得なくないのか? 」

 

「 左様にございます。といっても、ペルソナとしては、そのようなことをすることはないでしょう。

ペルソナそのものが害を為してしまう。

これは恐らく、そのペルソナ成立の要因にこそ、原因がありましょうな。

・・・お客人、ペルソナを合体するときに、なにか魔力の籠った品物を扱っておりますかな? 」

 

「 魔力・・・?あっ(察し) 」

 

 なにかを察したオレは、ファイルを取り出して、モンスターカードの1枚をその老人に差し出した。

ユグドラシルでのペルソナ合体には、悪魔合体同様にこれを使うからな。

 

「 うーん、なるほど。そういうことですな。 」

 

「 どういう、ことすかね? 」

 

「 このカードを、素材とするのでしょう?

それではそうなってしまうのも、無理もないかもしれませんな。 」

 

 そしてその老人は続けた。

曰く、彼もまた、このモンスターカードに類似した物品でのペルソナ合体をしていたことがあるらしい。

はえ~、本当に有識者なんすねぇ。と何故か自然と納得することができた。

何故か初めて会うハズのこの爺さんの話は、妙に信憑性を感じられたし、すごく落ち着いた気持ちで聴き取れた。

 

「 それら、スペルカードと呼ばれたものは、悪魔の力の一片が含まれているだけのもの。

しかしながら、このカードには、悪魔そのものが入っている。

こんなものを使ってしまうのですから、その魔性を身体に取り込むこととなり、それに引っ張られてしまいますなぁ。

そうしてできてしまったペルソナは、文字通りの呪われた仮面となってしまうのでしょう。 」

 

 なるほど。ただ単に、丑御前、というより源頼光の性質だけに問題があるわけじゃないのか。

システムそのものが、悪さする原因になってしまったと。

これもユグドラシルから転移した際に生じた、弊害の一つというわけか。

 

「 といっても。 」

 

「 といっても? 」

 

「 このカードは、この事態を招いてしまう、きっかけの一つでしかないでしょう。素材の性質は、あくまでも呼び水にすぎないと私は睨んでおります。 」

 

「 呼び水? 」

 

「 集合無意識を、ご存じですかな? 」

 

「 集合無意識? 」

 

「 心の海、とも申しましょうか。 」

 

 そういえば、前に聞いたことあるな。人はみんな、見えない糸で繋がっている。

一見無関係な人とも、どこかでリンクしている、的なやつっすね。

世界中の神話にも類似点があるのは、そんな繋がりがあるからだ、とかとも聴きましたね。

 

「 人の中には、みな共通する認識、概念があるのでございます。あの怪物も、そんな集合無意識から生まれたのです。 」

 

「 え、でもあれ、ペルソナがどうとかって言ってなかったか? 」

 

「 ペルソナもまた、心の海より出でるのでございます。集合無意識を構築するのは、人の、"こういったものが存在するという認知"。その中核を為すのは、人類の時代を超えて受け継がれてきた、共通する心理の"原型(アーキタイプ)"なのです。これが、神話や伝承に少なからず類似点が存在する所以なのです。 」

 

「 はえ~。 」

 

「 あまりピンとこないご様子なので、一つ例を挙げましょう。お客人は、ヴィシュヌとは別のペルソナをお持ちのようなので、そちらで。 」

 

 ヴィシュヌと別のペルソナ?あぁ、さっき確認したっけな。

 

「 玉藻の前。大妖怪九尾の狐にございます。この九尾の狐は、広くアジアに言い伝えられておりますが、そのいずれにおいても、見目麗しい美女に化けて、悪事を働いたとされております。住む場所にも文化も差異があれば、時代も話す言葉も違うというのに、その点だけは共通しておりますな? 」

 

「 おりますねぇ! 」

 

「 それが、この集合無意識の面白いところでございます。生きた時代に隔たりがあれども、どこか似通ったイメージがある。

時の権力者に言い寄り、寵愛を受け、自分たちの悦を貪る害を為す。客観視すれば毒婦と呼ばれるものがいる。

そんな認知が遥か昔から存在していたということですな。 」

 

「 つまり玉藻の前は、九尾の狐はそんなやべー女のメタファーってこと? 」

 

「 そう定義づけられていますが、後年の創作などでは一概にそうともいえぬ立ち位置に置かれたりしますな。

これは、より遡って瑞獣とされていた時代の要素がでてきたものでございます。 」

 

「 曲亭馬琴の、里見八犬伝とかすかね? 」

 

「 そうそう。そして、お客人のペルソナにもなってるその玉藻の前。これは他に類を見ぬ認知によって成り立っていますな。"太陽"のアルカナとは。 」

 

「 そんなに、珍しいんすかね? 」

 

「 そうでしょうな。時として人間は、受け継がれてきたイメージを素に、これまでにないイマジネーションを働かせます。

この玉藻の前も、そしてあの丑御前も、そうやって成り立ちました。

倒すものと倒されるものの同一視。(頼光)(丑御前)は別の側面。二重人格に近い存在である。

・・・だからこそ、あの怪物は源頼光を、そのペルソナを宿す者を依代に現れたのです。 」

 

「 つまり、どういうことすかね? 」

 

「 集合無意識から現れるのは、ペルソナだけではございません。

多くの人々が望んだものを叶える為に、時折それらは"神"は顕現しるのです。 」

 

「 神?つまりあれは本物の神さまってことで良いのか? 」

 

「 あれは、人間ならば誰しもが持ちうる負の感情の化身。

気に入らぬもの、目障りに感じるもの、或いはすべてを壊してしまいたいという"破壊の願望"そのものでございます。

あの丑御前はその一柱。

魔性を孕んだ源頼光のペルソナ。そしてその本体の凄まじい執着。"歪んだ欲望"から来る他者への敵意害意。

これらの条件が揃ったが故に、あの場に顕現したのです。

これは別のペルソナでも起こり得るでしょうな。 」

 

 思ったより、ヤバい奴みたいっすね。あの丑御前は。

なるほど。確かに誰かに愛されたいというのも、生き過ぎれば憎しみに転ずると。

それに、その弱みにあの化生はつけ込んだというわけだ。

これはやはりどうにかしないと、不味い。

 

「 なんとかならないすかね? 」

 

「 例えるならば、あの状態は、コップに入った水です。

ペルソナ使いがコップ、怪物が水です。

コップから水を取り除くには、別の容れ物に移すのがよろしい。 」

 

 別の容れ物・・・ペルソナ・・・あっ(察し)

 

「 これっすかね? 」

 

 オレがそのカードを見せたとき、店主は深く頷いた。

 

「 先ほどのものと同じもののようですが、そのカードの中には悪魔は入っておりませんな。適度に力を削り、それに封じ込めるがよろしい。

・・・さて。そろそろ、お別れの時間となりましたな。

仲間の方々のもとにお戻りになった方がいいでしょう。

それではまた縁があれば。御機嫌よう。 」

 

「 え、ちょっ、ちょっと待って・・・ファッ!? 」

 

 気づけば、あのラーメン屋の屋台諸共に老人の姿が消え、オレはさっきまでいた場所とは別の場所に立っていた。

あれはなんだったのかを考える暇はない。

すぐそばの仲間たちに、丑御前の雷が振りかからんとしていたからだ。

 

『 ここは私の出番ですねぇ!

ささ、景気よく、名前を呼んでくださいまし!! 』

 

「 いいよ、来いよ・・・

玉藻ォン!アオォン!! 」

 

『 これが、私の主戦力です♪ 』

 

「 タドコロォ!

なにやってんだお前ぇぇぇぇええええ!? 」

 

 紫電を防いだオレの突然の登場に、予定と違うと知古からの怒りの声が降ってきた。

 

 

 

 

 

「 ・・・コロ。タドコロ。タドコロ!! 」

 

「 ・・・ん? 」

 

「 ふぅ、ようやく起きたか。 」

 

 目が覚めると、辺り一面は夜が明け始めていて、オレの側には火の消えた焚き火と、これまた見知った顔があった。

表向きワーカーチームとしてバディを組んでいる千年王国のギルドマスターだ。

どうやらオレは、あの晩の夢をみていたらしい。

あの濃すぎる、転移して二日目の夜の。

 

「 また、見ていたのか? 」

 

「 あぁ、そうみたいっすね。なんだったっけ?あの、

アーアーアーアー(美声)ってやつ。 」

 

「 すべての人の魂の詩だ。 」

 

「 それだそれだ。それが聞こえてきてよ・・・ 」

 

「 聞いた聞いた。ラーメン屋の店主がイ■ールだったんだろ? 」

 

「 あれ、なんだったんすかね? 」

 

「 さあな。だが、ただの夢ではないんじゃないのか?

現に丑御前はブランクカードで封印できたんだからな。 」

 

 この頃、オレは奇妙な夢をみるようになった。あの晩のあの出来事。

あれは、夢ではなかったのだろう。

だが、アレ以降あのイ■ールという老人と会ったことはない。本当に助言くらいしか、できることがなかったんだろうな。あの自然と落ち着くラーメン屋の屋台を、見れた試しがない。

 

 

だが、それがなんだったのかを考える時間はやはりない。

オレは今、連合国から遥か西のトブの大森林にいる。

ここは、文字通り、木々が生い茂り、その世界基準で凶暴なモンスターが生息していたらしいが、

その大半が焼けていた。

植物の多くが、黒く焦げた燃え滓になっている。

明らかな異常事態だ。

これを引き起こしたのは恐らく、他のワーカーがでくわしたという"炎の魔神"とやらなんだろうか。

 

その場を後にして、魔獣に跨り大森林の中を探索するオレたちの眼前に、段々と焼き跡の規模が広がっていく。どうやら、これを起こした奴は、もう少し奥にいるらしい。

 

「 これは、ナザリックの奴らがやったものだと思うか? 」

 

「 連中ならもっと酷くやりますねぇ。多分その化け物はナザリックのNPCとかじゃない。

もっと別のなにかじゃないすかね。

十三英雄とかって奴らが始末した魔神ってのは、六大神のNPCだったんだよな? 」

 

「 その線が強いというだけだ。だが、可能性としては大きい筈だ。プレイヤーがいない拠点の奴らの凶行を見るにな。 」

 

 ルルのその一言で思い返されるのは、バハルス帝国のあの惨状だ。

徹底的に破壊された建物の残骸。

焼き殺された人々。

そして中には尊厳を踏みにじられたものまであった。

あれが他の場所でも起こっているのならば、なおさらオレはナザリックを許せない。

許してはならない。

 

 そして、オレたちはそれを目の当たりにする。

焼けた建物群。材質からして木造建築。

ところどころに、壊された形跡。

そこら中、燃えた跡と、不自然に地面が湿っている。

 

明らかに、なにかに襲われた痕跡が色濃く残っていた。

認識が甘かったか?

やはり、悪魔の巣窟だ。

近くに絶好の狩場があるのに、野放しにしている筈がなかったか。

 

「 やっぱり、オレの認識が甘かったんすかね? 」

 

 炎の魔神がナザリック由来のものか、はたまた別のものなのかはまだわからない。

だが、なにかしら害を加えようとしたことは想像できた。

なにしろみんなそんな風に作られているんだからな。

 

・・・やっぱり、とっととナザリックをシメるべきなのかもしれない。

 

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