ナザリックレ○プ!至高の"元"御方と化した先輩!   作:ニコラス―NICORUTH―

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( 憎しみに身を任せて )暴れんなよ・・・暴れんなよ・・・

 

 「 アツゥイ、アツゥイ、アツゥゥイ!! 」

 

 その頃、トブの大森林は、炎に包まれていた。

木々が赤々と焼け、生命の色たる緑は、それを奪い去る死の紅蓮に染まる。既に焼け跡となっていた集落の建物も再び焼かれる憂い目に遭うこととなった。

絵に描いたような、地獄の如き光景である。

 

 そしてタドコロはというと、件の怪物と交戦を始めていた。

この怪物こそ、この炎の主。

ナザリックの罪の象徴そのものであり、この大森林に生きた心たちの、怨嗟の声の代弁者だ。

火球を放ち、このステハゲとその相方はそれをひたすら躱し、捌いていく。

 

この灼熱の業火たちは、そしてそれが橙に彩った燃え盛る大森林の有様は、このモンスターの心情そのもののようである。

蹂躙され、苦しめられ、無念の内に死んでいった。

あらゆるものを憎むしかなくなったそれは、まさに地獄から蘇った亡者のようだ。

 

かつて獣王メコン川と呼ばれていた男は薄々と、いやこれをみた時点で気づいている。

やはり彼もまた、被害者なのだ。

 

怪物と形容こそしているが、タドコロの中では、これは怪物(正体不明の不死身の化け物)ではなくなっていた。

この恐ろしくも憐れなモノは彼が宥めねばならぬものである。

故にこそ、この男は"炎の魔神"と対峙し、立ち向かうのだ。

この世に衆生を救ってくれる仏はいないのだから。

恐れ多くもこの場は己が、仏の役割を担う他ないのだ。

 

 

「 ペルソナ!! 」

 

 顕現する、黒い道化師。その憤怒の形相が灼熱地獄の中で光を帯びる。

 

「 ヴィシュヌ、ゴッドハンド! 」

 

 巨腕が放たれ、魔神の巨体を吹き飛ばそうとする。

しかし、手応えこそあれども、効き目自体はあまりない。

この程度ではまさに蚊に刺された程度なのだろう。

物理攻撃に耐性があるのだろうかと踏んだタドコロは間髪容れずに次の攻撃に打って出る。

 

「 次!ブフダインだ!! 」

 

タドコロが放ったのは、氷結属性魔法である。

マイナス数何度ともなろう冷気が、異形の巨躯を凍てつかせる。

ユグドラシルなどのゲーム上の経験であるが、こんな燃え盛ってる見た目の奴は大概水や氷属性に弱いものだ。

 

 

「 ■■■■■■■■■■■■!! 」

 

 朱色に焼けるその身に、青い結晶が纏わりつき、炎の威力を弱める。確かに効いている。やはり氷結の通りは良いらしい。

しかし、その程度で収まってくれるわけもない。

 

「 ■■■■■■■■■■■■■■■■――――!!! 」

 

 もはや言葉すらも忘れた怨嗟の叫びをあげると、魔神の炎が氷塊を溶かすと同時に凄まじい熱風を巻き上げる。

 

「 !? 」

 

「 アツゥイ!? 」

 

 タドコロはヴィシュヌを自分の前に移動させ、晴信はラウールを召喚し、ペルソナを盾にしてなんとかやり過ごすものの、それでも高温に身を焼かれてしまう。

遮蔽物を介してもこれとは、直に受ければと思うと恐ろしいことこの上ない。

しかし、二人には身悶えしている余裕も、戦慄している隙もない。

 

 魔神が、急接近してきたからだ。

 

「 ■■■■■■――――! 」

 

 まるで火山の中で煮え滾るマグマがそっくりそのまま纏わりついたような(かいな)

あんなものも、やはり受ければひとたまりもない。

 

「 ヴィシュヌ! 」

 

 黒い道化師が、その一撃を受けて、ひび割れていく。

消滅するわけではなく、召喚する前の状態、つまり本体の中に戻るだけだ。

しかし、この瞬間に一撃を見舞うこととするのだった。

 

「 〈万物流転〉!! 」

 

 最高位の風属性魔法。先の〈ブフダイン〉よりも階位は上だが、思ったほど効き目はない。

だいたい、同じくらいだ。

そうして敵対者にキズをつけてから、ヴィシュヌは砕け散った。

近距離で〈万物流転〉を放ったことで発生した突風により、タドコロと晴信は吹き飛ばされる。

しかし、これによって魔神との距離を取ることができた。

さらにここから、最大の一撃を叩き込む。

 

「 ラウール!〈 ランダマイザ 〉!さらに〈コンセントレイト〉! 」

 

「 伊邪那岐大神・賊神!! 」

 

 コンセントレイトによって、威力が高まった状態から放たれる、"世界"アルカナの奥義。

 

「 すべて晴らしてやる・・・〈幾万の真言〉! 」

 

 無数の白き光が、魔神の身を焦がしていく。

しかし・・・

 

「 ファッ!? 」

 

 タドコロは目を疑った。確かにその一撃は命中した。

仮にも"世界"のアルカナに位置するペルソナである伊邪那岐大神の固有スキル。これを喰らって、平気なわけがないのだ。

仮に倒せなくても、大きくダメージを受ける筈である。

しかし・・・

 

「 なんだと!? 」

 

 奴の傷が、癒えていく。焼かれた跡に炎が燃え盛り、元通りの形に戻っていく。

〈生命の精髄〉を使用していたタドコロの眼には、バケモノの生命反応が黄色から緑になるのがわかる。

 

―――自然治癒だ。それも尋常ではない速度の。

 

 ユグドラシルでもトロールなんかが有していた特性だが、トロールのそれとは比較にすらならない。

HPゲージが100から1になろうが、わずか2秒にして100に戻るような。

それを100LVプレイヤークラスのHPで行っている。

なにがなんでも、己らの仇を滅ぼさんとする執念の為せる業であろうか。

 

「 幾万の真言のダメージを、即座に帳消しにしただと!? 」

 

「 ・・・やりますねぇ! 」

 

 タドコロは思わず称賛してしまうが、彼自身そんな心持ちではなかった。

 

「 〈 LV10魔獣召喚 〉! 」

 

 シャーマンの本領、召喚魔法。第十位階に位置するこの魔法は、最高位の魔獣をこの場に呼び出す。

そのレベル帯80以上100未満。

 

 ネクロマンサーの呼び出すものでも、70程とレベルダウンが発生するスキル、アンデッドの副官によって呼べるオーバーロードの90台が限界であることを加味すれば、なんらの代償なしに、ここまでのモンスターを呼べるのは、破格である。

タドコロ自身はテイマー職でもあるので、普段は高レベルの魔獣を従えて戦い、魔法もこれよりランクの低い召喚魔法で充分な為この魔法を使うこともあまり無いが、今回はそうはいかない。

 

 今回は魔獣はそこまでの数連れてきてはおらず、それが仇となって、先の熱風で全滅してしまったのだ。

それに生きていたとしても、あんな高温の塊相手には、自律行動の取れるデコイ程度にしかならないだろう。

であれば、より強いモンスターをぶつけて、その横から自分たちも攻める、という戦法を取らざるを得ない。

幸い召喚モンスターは、テイムした魔獣より強力だ。

充分有効打になり得る。

 

「 来い・・・『 猿王 』!! 」

 

 こうして呼ばれたのは、見事な注連縄を巻いた大猿。

ゴリラのように頑強にして、全身を分厚い筋肉で覆われた恵体。その姿は力士を思わせる。

彼こそは、ユグドラシル最強の相撲取りである。

その名、その外見に違わぬように、猿王は力強く四股を踏み、それによって、踏んだ箇所の土壌がひび割れる。

 

 

「 ・・・! 」

 

「 ■■■■■■―――! 」

 

 目の前に現れた召喚モンスターを無視して、炎の魔神はタドコロに狙いを定めて、火球を放つ。

それに対し、猿王は魔神を見合って構える。

相撲の試合開始前のそれのままである。ハッケヨイ、と。

そしてノコッタといわんばかりに、疾風のごとき勢い、速度で以て魔神に突撃、その勢いで炎が散り、森林が裂け、勿論火球も掻き消される。

 

 猿王、魔神に組み付き、そのままそのボディを後方に下がらせる。

魔神はその勢い故に怯んでしまう。その隙に、その熱い腕が猿王の両腕に挟み込まれ、ガッチリとホールドされる。

そして、このまま猿王の攻撃が叩き込まれる。

それは・・・

 

 

 

 

 頭突きだ。その一撃の余波によって、周囲に衝撃波が発生し、辺り一面吹き飛ばすほどの威力の頭突き。

ユグドラシル史上最強の頭突きである。

 

それが、連続して繰り出される。

猿王が頭を打ちつける度に、世界が震撼する。

それほどの威力がこの一撃一撃に込められている。

ユグドラシルのタンク職の多くが、この猿王を恐れる。

その大半が、これだ。作中屈指の破壊力を持つ物理攻撃。

それがまさか、頭突きという原始的なものとは夢にも思わないだろうが、この猿王はこの神の如き一撃、否神をも打ち砕くような一撃によって、召喚モンスターの中でも密かに名を轟かせた強豪であった。

 

魔神は勿論、本来ならばそんなものを喰らって平気ではいられない。しかし、無限ともいえる再生能力が、頭突きによって大きく減少したHPを即座に回復させ、それによって持ち堪える。

 

「 ええぞ猿王!今のうちに横から攻めますよ〜、攻める攻める。 」

 

「 待て、様子がおかしい! 」

 

 晴信は、ある異変に気づく。魔神の身体が発光している。超高温によって、より明るい朱色に染まっていく。

 

―――不味い。

 

 本能的に目を見開いて危機を察知するトリックスター。そしてその異変は、タドコロも察した。

 

次の瞬間、猿王の上半身が、太い朱色の光に消し飛ばされる。光の発射源は、魔神の口部からだ。

自身に絶え間なく湧き上がる高熱を、光線として放っているのだ。

 

「 ルル、後ろに! 」

 

 咄嗟に自身の後ろに来るように呼びかけ、その通り晴信はタドコロの後ろに回る。

迫りくる光線の中、タドコロはもう一人の自分を呼び寄せる。

 

「 玉藻ォン! 」

 

『 これが、私の主戦力です♪ 』

 

 呪層・黒天洞。以前に丑御前の雷撃を凌いだスキルである。あらゆる攻撃を防ぐ、絶対防御の術。

しかし、前回のそれよりも威力が高いこの熱線に、押され気味である。

このままでは破られるだろう。

 

「 凌げぇ玉藻! 」

 

『 この程度の花火、私の意地と良妻パワーで押し返してやります!このサイコミュ搭載良妻狐は伊達じゃありません。

・・・あ、サイコミュはないです。』

 

 内なる自分のペルソナの冗談に構っている状況ではない。

実際、黒天洞だけでは防ぎきれないのか、層にひびが入り始めている。

やはり不味い。

召喚モンスターを呼び出して、二重に盾を貼っている状態にしたとしても、最上位クラスである猿王が容易く打ち破られる威力なのだ。

到底凌ぎきれない。

 

『 でも正直、これ受けるより避けた方が良くないですか? 』

 

いや、防ぐという発想自体が間違いだったか。

 

「 引っ付いてろぉ!〈 上位転移 〉! 」

 

 転移魔法で二人揃って違う位置に回避する。障害物のなくなった熱線は、辺り一帯を消炭にする。

集落は殆ど見る影もなく吹き飛んでしまっていた。

 

 

「 すまんなタドコロ、助かったぞ。 」

 

「 すまないのはオレの方ッすね。罪悪感のせいで、正常な判断を損ねた。

最初から〈 上位転移 〉で避ければ、手間は省けたんだけどよ。黒天洞でMPが潤いはしたけど。 」

 

「 それにしても、なんという破壊力だ。 」

 

「 奴ら、よっぽど恨みを買ったみたいッスね。

・・・そして、オレのことも。 」

 

「 どういうわけだ? 」

 

「 さっき、猿王を呼び出した直後にオレに攻撃を仕掛けてきたでしょう?

あそこ、普通ならオレより前方にいる猿王を攻撃するところ、それガン無視でオレに火球を撃ってきた。

確たる証拠はないが、おそらくオレがナザリックの関係者だとなにかで感じ取って、それでオレに狙いをつけてたんすねぇ。

召喚モンスターを呼ぼうが、オレをメインターゲットにしている以上、壁としての意味は薄い。

守りがダメなら、もう攻めるしかないです。

こっちの手が尽きる前に、アイツを仕留めきる。 」

 

「 しかしどうやってだ?如何に致命打を与えようが、即座に癒えてしまう。そんな相手をどう殺し切ると・・・ん? 」

 

 晴信は、魔神の大きくガバっと開かれた口に、またしても高熱のエネルギーが収束しているのを見る。

もう一度、あの熱戦を撃つつもりだ。

 

「 いかん!逃げるぞ・・・ 」

 

 そして、再び放たれる熱線。半ば焦土と化した大森林の中で、朱色の光がすべてを呑み込み、焼き尽くしながらワーカーたちに迫る。

 

「 〈 上位転移 〉! 」

 

 先と同じ、転移によって、熱線の射程から逃れることで難を逃れる。熱線が、家も緑もすべてを焼き払う。

一切合切が灰と化していく。

やはりなんと、恐るべき威力か。

生命の怨念とは、かくも恐ろしいことか。

 

「 ■■■■■■■■■■■■――!! 」

 

 魔神の悍ましい咆哮とともに、その全身から熱風が放たれる。先ほどとは比べ物にならない威力のそれを、二人はまともに受けてしまう。

 

「 ガアァアッ!? 」

 

「 クウゥッ! 」

 

 高熱からくる灼熱の風が、ワーカーたちの身体が焼け、激痛に身を悶えさせる。ボクシングでいえば、ジャブくらいの威力のそれで、これである。

プレイヤーですらも、まるで歯が立たない。なんという火力か。

いや、それによって誤魔化されがちだが、この炎の魔神を最大の脅威たらしめるのは、やはりその再生能力であろうか。

 

そして、三度目の溜め、三度目の熱線を放たんとする様を目にしたタドコロは、激痛を圧して召喚魔法を発動する。

 

「 〈 LV10魔獣召喚 〉! 」

 

 猿王に続き、呼び出されたのは、白く美しい、それでいて

力強そうな巨大な狼の魔獣だ。

ところどころに体表を氷塊が張り付いており、それが凄まじい冷気を纏っているのが見て取れる。

 

氷河の巨狼王(アイスエイジヴァナルガンド)! 」

 

『 ヴォォォォォオオオオオオオン!! 』

 

 顕現した狼の王は、即座に魔神と同じく口にエネルギーを集約させる。

魔神の高熱とは対照的な、触れるものすべてを凍てつかせる極低温の一撃だ。

この氷河の巨狼王は、ユグドラシル最強クラスの氷属性モンスターである。その息吹、もとい光線は、ヴィシュヌの〈ブフダイン〉を大きく凌駕する。

これでもって、ダメならば、いよいよ以て自分たちの明日はないのかもしれない。

 

 

「 ・・・やれ。 」

 

「 ■■■■■■■■■■―――! 」

 

『 ヴォォォオオオオオオオオン!! 』

 

 かくして放たれた魔神の熱線と、巨狼の冷凍光線が激突する。かたや100ならば、かたや-100。威力は同等かと思われていたが、魔神側が徐々に優勢になり始めている。

巨狼はその勢いに押され、脚が引き摺られ始める。

 

「 持ち堪えろよヴァナルガンド。持ち堪えろよ・・・

(切実な思い) 」

 

 それをみた晴信は意を決して、ペルソナを召喚する。

金色の仮面に素顔を隠し、三対の翼を有した、如何にも悪魔、魔王とでも呼ぶべきそれは、言葉では言い表せないような威厳を放っている。

愚者アルカナ最強クラス。伊邪那岐大神・賊神と並ぶ、彼の切り札の一つであり、アルセーヌの進化形だ。

 

「 奪え、サタナエル! 」

 

 名を呼ばれた魔王はその手に持った金の装飾のなされた銃を魔神に向け、今最大最高の一撃を放とうとしていた。

 

「 ―――失せろ。 」

 

 かくして放たれた〈 大罪の徹甲弾 〉。一寸の狂いなくまっすぐに朱に燃える巨躯のもとへ飛んでいき、その胸を穿ってみせた。

するとどうだ。魔神の熱線の勢いが弱まった。

これならば。

 

「 今だ!押し切れ!! 」

 

「 いいよ、いけよ!! 」

 

 巨狼は力を振り絞って、光線の威力を高め、一気に熱線を押し返していく。

魔神もまだまだ粘るものの、やはり先の一撃が効いているらしい。回復も間に合っていないようである。

 

「 いけぇぇええええええ!!! 」

 

『 ヴォォォオオオオオオオオオオオオオン!!! 』

 

 刹那、寒暖差による凄まじい爆発。

それによって、より広範囲の森林が吹き飛ばされる。

タドコロも晴信も、そのあまりの衝撃によって、立っていられない。

身を屈めてやり過ごす他ない。

巨狼は、その中で消滅していった。

 

 

 

 

 爆発が止んだ跡のトブの大森林。

その大部分はもはやその名に相応しい景観を保ってはいなかった。

木々は薙ぎ倒され、残り火に焼かれるなりして、地面の土が地表に露出してしまっている。

湖も、へし折られた木や木材が散漫している。

その辺りは超高温と極低温のぶつかり合いで±0とあいなったか、多少熱い程度の気温である。

その大森林に、飛来する巨影が一つ。

発達した四肢。角を有したトカゲのような顔。遥かに巨大な身体を空に飛ばす為のやはり巨大な翼。

ご存じ、ドラゴンである。しかし、ところどころ朽ちていて、その眼には生気が感じられない。

かつて、この世界最強の個と呼ばれていた威厳はない。そんなものはあの大墳墓の悪魔を道連れにする時に失った。

今やプラチナのように美しかった鱗も、色馳せて腐り始めている。

このドラゴンゾンビを知るものが見れば、なんともいえぬ感情を抱くことだろう。

 

世界の守護者を気取った末路がこれとは、と。

 

「 うわぁ、ひっどいなぁーッ。辺り一面目茶苦茶じゃんね。 」

 

「 よほど激しい接戦だったらしい。とにかく降りてタドコロたちを探さないとだ。 」

 

「 それじゃみんな始めちゃってー! 」

 

 それぞれ声色の違う声。このドラゴンのものではない。

それから降りてきた、二人の男女、いや男二人のものだ。

それに続くように、何人もの人らしきものも降りてきたが、これらはすべて、片方の男の使役するゾンビである。

生前と同じスキル、同じ魔法を扱う事ができる、生前とほぼ同じ、場合によっては弱体化した状態で運用できる擬似的な専属NPCとも言える存在にする。

 

ネクロマンサーの亜種、魔法戦士向け職業であるレッドウィザードの専売特許の一つだ。

 

こうしてものいわぬ、というより大半が知能そのままに自我を失ったゾンビたちは、主人である白改造軍服の女、いや男、ジジの命に従い、瓦礫類を撤去し始めるが、

探し物はあっさり見つかった。

 

薄く焼けたような獣人と、見目麗しい二枚目の男。

彼らの属する連合ギルドの長と、同じ同盟を組んでるギルドの長だ。彼に同行している呪術師ギルドの長とは、一応は同じくらいの立場にいる人物たちだ。

 

「 お~いステハゲー、生きてる〜? 」

 

 ジジの呼びかけに、彼らは応えない。どちらも、あの爆発の最中意識を失ったらしい。しかし息はきちんと生きていることを、二人は確認できた。

 

「 命に別状はないようだ。流石だね。

さて、君は何をみたかな? 」

 

 もう一人の男、ユーイチは久しぶりにみたその顔に手をかざすと、掌から魔法陣が展開される。

精神魔法、〈 記憶操作(コントロールアムネジア) 〉だ。これによって、タドコロの今日の活動を把握し、この場で何があったのかを確認する。

 

「 無人になった集落。リザードマンたちの遺体。

それに酷似した炎の怪物・・・

そうか、タドコロ。キミも、ボクと同じことを考えていたんだね。 」

 

「 はぁ、同じこと?ユーイチホモなの? 」

 

「 そうじゃないよジジ。彼は、タソの言っていた怪物の正体に気づいてしまっていたんだ。そのせいで、思うように戦えない、というよりも、強迫観念に駆られていたらしい。

"自分が責任を取らなきゃ"ってね。 」

 

「 責任?ステハゲが? 」

 

「 竜之助から聞いてないのかい?彼は元々、あのナザリック大墳墓のギルドにいたんだ。

折り合いが悪くなって抜けたらしいけれど、元々いた古巣だからね。

あそこのNPCが暴れだして、とんでもない被害をだしたことに負い目を感じていたらしい。 」

 

「 負い目?なんでやめたとこにそんなの感じる必要あるの?(素朴な疑問) 」

 

「 タドコロ自身、あそこの環境はあまり好きじゃなかったみたいなんだ。快適すぎて窮屈だし、メンバー間でのギスギスもあったみたいだしね。ただ、それなりに愛着みたいなものもあったらしくて、それで自分を追い詰めてしまったらしい。

もっと早くに抜ければ良かったってね。 」

 

「 早く抜けてれば、こんな思いしなくて済んだって? 」

 

「 その通り。楽しかった思い出もないこともなかったようだが、彼にとってナザリックとは、今も昔も自分を縛りつけようとする良からぬものなんだ。

一刻も早く、悪縁は断ち切るのが、本人の為だろうね。

・・・キミも、そう思うだろう? 」

 

 ユーイチが目隠し越しに見つめるさきに、それはいた。

人型のトカゲ。炎が燻るその身には、先ほどまでの悍ましさは感じない。

そのフォルムはジジにも見覚えがあった。

 

「 あれってリザードマン、じゃんね? 」

 

「 あれが、怪物の正体だよ。運悪くナザリックが彼らの集落近くに転移してしまったんだろうね。

それで彼らは為す術なくNPCたちに蹂躙された。

だが、それでも怨みだけは残った。

それが寄り集まって生まれたのが、怪物"炎の魔神"だった。

つまるところ魔神とは、リザードマンたちの怨念や魂の集合体だったというわけだね。 」

 

「 そう・・・だよ・・・ 」

 

 微かに聞こえた声、なにかが起き上がろうと動く音。ユーイチとジジが目を向けると、ホモの団の長は意識を取り戻して立ち上がっていた。

 

「 お前、悔しかったんだよな?あいつらに、好きなようにレ○プされてよ。

お前には家族もいたろうに、そいつらみんな、死んじまった。だけどよ・・・ 」

 

 タドコロはブランクカードを取り出し、回転を加えて魔神に投げた。突き刺さった部分から、なにかがカードに吸い込まれていき、残り火の状態となった身体の炎も消えていった。

カードが手元に戻った時、リザードマンは文字通りの燃え殻となって、塵になっていった。

 

「 荒ぶんなよ・・・荒ぶんなよ・・・ 」

 

 トブの大森林に繁栄したリザードマンは、こうして全滅した。タドコロはただ、物寂しそうにカードを見つめている。

 

あの怪物の歪んだ姿とともに、彼の誰かの名前らしきものが描かれている。

 

『 ザリュース・ シャシャ 』と。

 

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