ナザリックレ○プ!至高の"元"御方と化した先輩!   作:ニコラス―NICORUTH―

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爆破オチなんて最低

 

「 集まったのは、これだけ? 」

 

「 はい。これが我々の持てる全戦力です。ほとんどが、奴らにやられて、戦えるものはこれ以上いません。 」

 

 スレイン法国。かつては人類の守護者とされ、そこらの亜人や異形種を寄せ付けないほどの武力を有した国家。

それは今や、見る影もなくなりつつあった。

その理由は、もはや語るべくもない。

 

 ナザリック地下大墳墓。かつて十三英雄に滅ぼされた魔神をも超える悪魔どもの巣の名だ。

おおよそこの墓場は、現れたからというもの、世界に害しか齎していない。

彼らは強烈な選民主義を振りかざし、己ら以外を下等な生き物として、殺戮し始め、リエスティーゼ王国、バハルス帝国は壊滅した。

勿論、この法国もその対象となったが、六大神の末裔たる神人を包する漆黒聖典をはじめとした英雄たちの奮闘により、なんとか大墳墓の悪魔たちを撃退することに成功した。

代わりに、保有していたワールドアイテムを奪われ、多くの要人、戦力が死亡という、大きすぎる代償を支払う羽目になったのだが。

 

 それによって、スレイン法国は国としてはほぼ機能していないも同然の状態になってしまい、領土も大半が、エルフ王国に奪われることになってしまった。

 

 そんな絶望的な状況を打破すべく、法国側は漆黒聖典を中心に、領土からエルフたちを追い払い、国土を奪還する作戦を決行しようとしていた。

臨時に張ったテントの中で、指揮官らしき女性が自分たちの戦力を確認している。

 

 

「 総戦力数1000人。本当に少ないわね。 」

 

 漆黒聖典番外席次、アンティリーネ・ヘランフーシェ。白と黒に二分された髪をツインテールに結った彼女は、常々自分を補佐してくれる部下からの報告に、憂いを感じていた。

 幼少の頃から厳しく戦闘訓練を施され、自身が最強であろうと努力し、ついにはこの世界最強クラスのレベルにまで上り詰めた。

そんな彼女をもってしても、この程度の戦力を残すのが精一杯であった。

それくらいに大墳墓の悪魔とは脅威であったのだ。

彼女はかの魔神たちがワールドアイテムを手に入れて満足してくれたのが幸いであったとすらも感じ始めていた。実際のところは最悪な状況であるが。

もはや、スレイン法国は、立て直したところで、衰退は避けられない。

しかし、なにもしなければ、このまま全員が野垂れ死ぬのを待つばかりだ。滅びか衰退か。たとえ弱っても、己の育った国であることに変わりない。それを未来に残せるならば、生命をかける覚悟はとうに出来ていた。

その為アンティリーネは持てる全戦力で以て、エルフ王国と戦うこととした。

残った漆黒聖典の者たちも、志を同じにしてくれるだろう。無限魔力は違うだろうが、力ずくで従わせれば問題ない。

さて、そうする以上は、あちら側の現状がどうなっているか、情報が必要になってくるものだ。

 

「 奴ら、エルフ王国はどうなってる? 」

 

「 王が代わったと聞いています。 」

 

「 なに?代わった?ということはあいつは・・・! 」

 

「 あいつとは、先王のことですか? 」

 

「 そうよ。それ以外誰がいるっていうの? 」

 

 彼女にとって、あまり興味があるようでない存在。それがエルフ王国の"元"国王デケム・ホウガンだ。

彼女にとって、母親から子として認められぬ、訓練漬けの幼少期を過ごすきっかけであるが、その母親がもうおらぬ以上、どうとでも成ればよいと思っていた。

それがまさか、死んだとはアンティリーネも想像してはいなかった。

伊達に先王は、八欲王の血を引いているわけではない。

その血統に見合った絶大な力を有していた。それ故にエルフ王国は、神人のいるスレイン法国と渡り合えていたのだ。

そのデケムが、崩御した。

一体誰にだろうか。

先世千里がいれば、すぐにわかるのだろうが、今のアンティリーネには、今のエルフたちの王が何者なのか、デケムを殺したのが、そのものなのかどうかはわからなかった。

 

 真なる竜王が、仏心を以ってエルフ王を処断したとは考えられない。奴らは自称世界のなんたらかんたらであり、よほどのことがない限りでてこないからだ。

評議国にいた白金の竜王も、悪魔の一体と相打ちになったと聞いている。他の竜王がでしゃばるなど、なおさら考えられない。

 

 とすれば、考えうる存在が一つ。

六大神や、八欲王と、同等の存在。それらは百年の揺り返しにより、一世紀ごとに現れる。

竜王の天敵とも呼べる存在、ぷれいやー。

 

 法国の中でも、一握りの権力者しか知り得ぬ、天より降り立った神々。

 

それならば、デケムを倒せる。

充分にあり得るのだ。

さしものエルフ王も、自身の父と同格の存在には敵わないのである。

では、彼の斃れた後に、エルフ王国は神によって統治されていることになるのか。

エルフ王国に送った斥候や、人間最強との連絡が途絶えたのも、それにやられたからなのだろう。

厳しい戦いになりそうだが、自身の奥の手ならば、神をも滅ぼせる。

そのぷれいやーさえなんとかなれば、まだ巻き返せる。

そう思った、いや思わざるを得なかった矢先だ。

 

 突如、爆発が起こりバァーッン!!と、轟音が鳴り響いた。兵士たちが吹き飛んでいくのをみたアンティリーネは、急いで兵たちのもとへと向かった。

混乱の最中を駆け抜けていると、人々の叫びが聞こえてくる。

 

「 こっちに怪我人がいる!だれか治癒魔法を!! 」

 

「 あっちの奴らはさっきのでみんなやられた! 」

 

「 お母さん!お母さん!! 」

 

 なんということだ。あの一撃で、ここまで被害がでるのか。

番外席次は考えるまでもなく、結論を脳裏に浮かべる。

一撃でこの規模の損害、だせるのはやはり・・・

 

 

 そして、彼女の前にそれは現れた。

 

おはよう(グーテンモルゲン)お嬢さん(フロイライン)。今日は素晴らしく、賑やかな朝ね。 」

 

 それは、女だった。ひと目みれば人間のよう。しかし、その歪な気配は、間違いなく人外、異形種のそれであると確信が持てる。

そしてこの威圧感はやはり・・・

 

「 オーディエンスが多いようだから、一つ、花火を上げさせてもらったわ。とても綺麗だったわよ、雑兵(ゾルダート)たちの吹き飛ぶ様は。

まるでサーカスのようだった。 」

 

白い革の、独特な、どこぞの軍のそれのような衣装に、帽子。黒い髪の少女の赤い瞳は、まっすぐにアンティリーネを捉えている。

 

「 キミ、プレイヤーなの? 」

 

「 キミではなく貴女、もしくは陛下よ、愚か者(ナール)。私はお前を対等には見ていない。

一国一城の主が相手とあれば、敬意くらいは示すのが礼儀ではなくて? 」

 

「 私はプレイヤーなのかって聞いてるんだけども。 」

 

「 そのアホ面、うんざりするわ。ウチのエルフどもと同じ。まいどまいど飽きもせず反旗を翻し、その度に破滅する。

まったく、呆れ返るものよ。

お前らの仇はもういないじゃない、てね。 」

 

「 ・・・私の質問に素直に答えてくれないかな? 」

 

「 自分を強いと思って強い言葉を吐かないほうがいいわよ。三下に見えるから。 」

 

「 三下? 」

 

「 そう。貴女なんか三下よ、ピエロ(ナール)。自分の身をわきまえたほうがいいわ。 」

 

 これが、今のエルフ王国の王なのか。傲慢不遜なその様に、アンティリーネはどこか苛立ちを覚え始めていた。

 

「 顔が引きつっている。なるほどムカついてるのね。ネズミの分際で。

・・・あぁ、そうだったわね。 」

 

「 ん? 」

 

「 アナタ、オレ(アタシ)がプレイヤーだかなんだとかとか言ってたわね。

その通りよお嬢さん(フロイライン)

低脳な猿の分際で言い当てたことだけは褒めてあげる。

それよりも思ったんだけども・・・ 」

 

「 なにかな? 」

 

「 貴女、デケムの娘でしょ? 」

 

「 ・・・! 」

 

「 何故わかったのか?顔にそう書いてあるわね。貴女みたいなの、ウチでしょっちゅうみるもの。

白い髪のエルフ。お笑いねぇ。エルフを奴隷にしていた連中の切り札とやらがこれまたエルフ、それも雑種とは。

いいように使わてるわね、貴女も。貴女の神も。 」

 

 神という単語がこの女の口からでてきたことを、アンティリーネは意外に思った。

この女がプレイヤー、六大神と同等の存在ならば、自分たちにとっての神、人類に仇なす邪神という位置づけになる。

 

 

「 なにを言ってるか分からないんだけども。 」

 

「 貴女は自分たちの神が、生前なにを思ったかを考えたことはある?貴女はスルシャーナの何がわかる?

貴女はねこにゃんのなにがわかる? 」

 

「 だからなにを言って・・・ 」

 

「 信仰とは憧れに近いものよ。憧れは、その者への理解から遠ざける。貴女たちは自分たちの神のことなど理解していない。貴女たちにできるのは都合の良い解釈。お前たちのエルフ王国へのそれは"僕たちは自分に都合の良いものしか受け入れぬ、浅はかなお猿さんでーすウッキウッキ♪"と言っているようなものじゃない。」

 

「 あれは、アイツが悪いのよ。アイツが・・・ 」

 

「 アイツ?貴女のパパよね?でもあれ、悪いのはデケムであって、他の連中ではないじゃない。なんだったら彼らも被害者よ?

六大神は亜人から人間を守るように立ち回り、あの八欲王ですら、進んで亜人や竜王を狩り続けたというのに、お前たちはその遺産を喰い潰して悪さ三昧。

正義(しょうもないエゴ)を振りかざして他者を虐げ、その方便に奴らというカミサマ(都合の良い他人)を使う。

まるでナザリックね、スレイン法国は。 」

 

 アンティリーネの内には怒りが募り始めていた。自分たちがあの悪魔どもと同じだといわれたのなら、無理もない。

これでも彼女は母国の為に尽くしてきたつもりだ。

人類の為に鍛錬を重ね、戦ってきたつもりだ。

法国こそが正義と信じて疑わない。

それを、エゴの二文字で片付けられた。

目の前の女を許していいはずがないが、そんな見え見えな彼女の心境など、見透かされて当然だった。

 

「 お前たちはつまるところ、プレイヤーを都合よく利用してるってだけね。死後も子々孫々の代まで。反吐がでるわ。

お前らみたいなのの為に死んだスルシャーナがかわいそうでならない。 」

 

 法国にて死の神、そして邪神として畏れられる六大神の一人、スルシャーナ。女はまるで彼を知っているかのような口ぶりで、その死を憐れんでいた。

この番外席次には、それこそが神への冒涜であるように聞こえた。

女への、今のエルフ王国の王に対する殺意を抱かせるに足りうるものだ。

 

「 ・・・ 」

 

「 ま、あいつらがどう思おうが今は今、過去は過去よ。今日この日を以てスレイン法国はおしまい。お前たちのこの500年、終わらせたげる。 」

 

 女が腰に差したサーベルの柄に手をかけたその時、

 

「 〈 疾風超走化 〉!〈 能力超向上 〉! 」

 

彼女の目の前に人影が急接近する。

 

「 へぇ・・・そういえば、貴女の"おはよう"を聞いてなかったわね。これが、貴女の挨拶かしら? 」

 

 大鎌と刀の刃がギシギシと凌ぎを削る。アンティリーネの不意打ちに対し、この軍服の女は瞬時にサーベルを抜いて防いでみせたのだ。

女の手にもつリッチかつオシャレな柄から刃にかけて、赤い葉脈のようなものが掛かっている。

気にはなるが気にかけている暇はない。

 

 即座に二撃三撃と斬りかかるが、どれも容易く受け止められてしまう。彼女は本気の力で大鎌を振るっているが、女は堅実にかつ、軽やかに弾き、捌いていく。

 

( やはりプレイヤー。一筋縄ではいかないか。 )

 

アンティリーネ自身は、近接職の要素を取り込んだ信仰系のビルドをしている。極めて非効率的なレベル構成であるが、レベル88ともなれば文句なしに全人類最強、脅威であることには変わりない。

そんな彼女の一撃が、容易く受け止められた挙句、それを挨拶などと巫山戯た見解をもされてしまう始末。

その時点でこの番外席次は、目の前の女が、それまで自分と戦ってきた誰よりも強いことを理解するに至る。

だが、まだ彼女には余裕があった。

 

 タレント。この世界の人間、亜人種の中に、極稀にそれこそ千人に一人ほどの割合の者が生まれ持つ、特別な力。種類は千差万別であるものの、どれもが常識を覆すような能力である。このアンティリーネのそれは、特に強力なもの。

彼女の二つ名の由来でもあるそれが決まれば、この女を容易く倒すことができるだろう。

 

「 なにかあるって顔ね、出してご覧なさいな。 」

 

 女が挑発している。いいだろう、いまにその息の根止めてやる。

相手が暫定格上であるならば、長丁場になれば、不利になるのはこちらである。ならば早期決着を狙うのが良いだろう。

 

「 スキル《 The Goal Of All Life Is Death 》発動! 」

 

 彼女の切り札、死の神スルシャーナの御業。その発動を宣言した後、背後に巨大な時計のオブジェクトが出現する。

この時計がでている状態で、即死魔法を唱えることによって、対象を確実に死に至らしめるのだ。

なるほど、確かに強い。アンデッドの最上位、オーバーロードのうち、ネクロマンサーを極めたものでなければ、このスキルに辿り着けぬのも頷ける。

まさに最強、無敵のスキル。神業と呼ぶに相応しい。

 

「 あら、オシャレな時計ね。 」

 

 女は顔色一つ変えない。これから死ぬというのに、呑気なことだとアンティリーネは内心憐れみながらも、静かに苛立っていた。

 

「 終わりよ・・・〈(デス)〉!! 」

 

 即死魔法。本来ならば、この世界の基準において並大抵の魔法詠唱者では至れぬ階位に位置するそれは、彼女のもつ大鎌から放たれ、見事に命中する。

その瞬間、背後の時計の針が動き始めた。

 

「 決まった・・・! 」

 

 番外席次絶死絶命は勝利を確信する。いまだかつてこの技を破ったものはいない。これが決まれば己の前に立つもの、すべてがものいわぬ骸と化すのだ。

 

「 あり得ない・・・ 」

 

 女は狼狽している。先ほどまでの彼女を舐め腐ったような顔は、大きく歪んでいた。

 

「 この・・・ 」

 

 アンティリーネは笑みを浮かべた。秒針は12(破滅)へと進んで刻まれていく。

 

「 私が・・・!? 」

 

 そして、12を刺したとき、辺りを眩い光が包み込み、それが止むと、あの白い軍服の女は消え去っていた。

 

「 ふ、ふふっ・・・ 」

 

 アンティリーネの、八欲王と六大神の末裔の口から思わず笑い声が溢れる。

あらゆるものに死を与える、スルシャーナの奥義。

これによって破られるとはつまり、六大神の意思によって破れるといっても過言ではない。

あのプレイヤーも、彼女の、漆黒聖典番外席次の敵ではなかったというわけである。

 

「 ざまあみなさい。身の程を知るべきはキミの方だったようだね。 」

 

 その場には、彼女以外の生命は存在しなかったが、戦力が尽きたわけでは無い。

別の場所にいる兵力を掻き集めれば、十分にエルフ王国を攻め滅ぼせるだろう。

あのプレイヤーらしき女も、デケム・ホウガンもいなくなった以上、彼女の敵はもういないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  「 ご満悦のようね、お嬢さん (フロイライン)。 」

 

 

 

 

 

 

「 ・・・!? 」

 

 その時、耳を疑った。自分の後ろから聞こえたのは、もうこの場には、この世には存在しないはずの声だからだ。

振り向くと、それはいた。

 

「 何?私の顔になにかついてるのかしら? 」

 

 白い軍服に、黒い長髪。間違いない、あの女だ。

 

「 なん・・・ですって・・・!? 」

 

 アンティリーネは次に目を疑った。あのスキルを、スルシャーナの力を受けて生きていられる筈がない。

 

「 どうしたのよ?そんな豆鉄砲を撃たれた鳩のような顔をして・・・あぁ、そうか。あれを受けてなんで死んでないのか、よね?

特性を把握していないのはよろしくない。

情報(ダーテン)は多いに越したことはないわよ? 」

 

「 ど、どうして・・・!? 」

 

「 あれを最強の技かなんかだと思ったんでしょ。だからそんなに驚いている。

あのスキルはね、実は躱す方法があるのよ。

それも、探そうと思えば、いくらでも思いつくくらいにね。

蘇生魔法、アイテムを使う。決まる前に相手を始末する。

その背後のオシャレな時計を破壊する。

そもそも相手に幻惑をかけて、自分に使って殺した、と誤認させる。

今回使った手段は・・・これよ。 」

 

 女の背に、赤く燃え盛る炎の翼が現れた。アンティリーネにとって、その光景は見たことのないものであったことは間違いない。なにが起こっているのだ。

 

「 〈 Lv9ドラゴン憑依召喚(ドラゴンインストールLv9) 〉。通常の召喚魔法と違い、召喚モンスターを術者の身に卸して召喚する魔法。

MP消費も普通の召喚魔法より安くて使いやすいのがミソよ。

これやるとみんなして完聖体(フォルシュテンリッヒ)だとか大紅蓮氷輪丸だとかって言ってきて楽しかったわね。 」

 

「 な、なにを言って・・・ 」

 

オレ(アタシ)が呼んだのは、不死なる龍凰。呼ばれた直後に、召喚者に蘇生魔法〈 不死鳥の炎 〉と同じ蘇生効果を付与する能力を持ったモンスター。

これでアンタのあのオシャレスキルを無効化したってわけ。

お分かりかしら? 」

 

「 ・・・ 」

 

 アンティリーネは驚きを隠せなかった。そんなバカな。

 

「 あぁ、そうそう、こっちも見せておきましょう・・・

ペルソナ! 」

 

 飛翔した女の身体から、また別の影が姿を現す。

赤と白に色が分けられ、ツインテールに結われた髪。赤いブラとミニスカの露出の高い服装に、へそピアス。

上着は白と黒の炎のような模様がなされている。

 

『 乱世の梟雄、爆弾ジョー現る〜!って誰が梟雄だっつーの!ww 』

 

「 な、なに? 」

 

「 ご存じない?ペルソナ。

まぁ、知らなくていいけれども。 」

 

 翼がはためくと、そこから炎が飛び散り大地に振りかかる。それが接触すると、その部分が爆発する。

アンティリーネも例外ではなく、炎そのものを回避しても、爆発に巻き込まれ、ダメージを負うことになる。

 

「 あぁ、もう一つ言っておかないとね。このペルソナの能力は自身の飛び道具を爆弾に変えること。

つまり、オレ(アタシ)はこのように空飛んで火球飛ばしてるだけで、貴女たちを殺しきれるってわけ。

最初に貴女とチャンバラごっこなんかしなくていいのよ。 」

 

「 う、うぅ・・・! 」

 

 地面に横たわっているアンティリーネは、なんとか立ち上がるが、それでもあるのは絶望だった。

この女を、プレイヤーを舐めてかかっていた。

必殺の奥義が、容易く破られるなど、思ってもみなかった。

奴に、傷一つ負わせられないなんて―――

 

「 それじゃ、御機嫌よう、お嬢さん(フロイライン)。 」

 

 こうして絶え間なく放たれる絨毯爆撃。無数の炎が爆裂し、大地を焼き尽くしていく。

こんな中では、もう一つの切り札、〈至高の勇者の魂(エインヘリヤル)〉も意味をなさない。

爆発によって、容易く吹き飛ばされる。

意識が消える直前、アンティリーネの脳裏をよぎるのは、自身を子とみなしてくれなかった母親のことだった。

彼女は自身より強い男と子を成すことを強く望んでいたが、

思えばそれは、デケムの奸計によって、自分という望まぬ子を産まされた母を否定したかったからなのかもしれない。

自身の鍛錬に費やした幼少期、国を守る為に尽くした今。

果たして、自分の生に、意味はあったのだろうか。

そんな疑問に結論をつけるまでもなく、彼女の視界は暗黒の中に沈んでいった。

 

「 我が名を讃えなさい。

『 爆龍卿 ヴァスタ=ヴァイン 』を。

・・・ってもう死んでるかしらね。 」

 

 その場に立っていたのは、エルフ王国の王、ただ一人であった。

 

いや、少し違った。

後からどこからともなく、彼女の兵たちが現れたからだ。

 

黒き森の猟団(イェーガー・デア・ドゥンケルハイト)たちよ。狩り尽くしなさい。

奴ら(私の敵、我らが敵)を、オシャレに殺すのよ。 」

 

「 心得ました、陛下。 」

 

 エルフ王国の現体制における精鋭部隊、黒き森の猟団。

文字通り黒衣に身を包む彼らは、残った法国の兵たちを女子ども問わずに殺し始めた。

命の通り、オシャレに。

爆龍卿に焼かれた大地は、兵の血によって朱に染められていった。

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