ナザリックレ○プ!至高の"元"御方と化した先輩!   作:ニコラス―NICORUTH―

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真夏の夜の妖夢(ヨーム)

 その晩は人生で特に特別な夜だった。あのスモッグに覆われ濁りきっていたはずの空は墨のような漆黒を湛え、闇色のキャンバスを星々が彩っている。いつか見たプラネタリウムとはわけが違った。それとは比べものにならないほどに美しい。元の世界では、これは一生見られなかっただろう。夜空とは、かくもきれいなものなのか。

 

 そしてこの地上では、青い月明かりの照らすもとに、そよ風が私の頬を伝っている。

ガスマスクをせずに、この大地に私は立っている。

 生まれて初めて本物の空を見た。本物の月を見た。一世紀前の人たちが聞いたのならば、耳を疑うかもしれないが、私はこの上なく感動していた。

 

 しかし、これを共有できる者が、この場には居ないというのが、少し残念である。

 自分たちと同じように、あの色褪せた世界からこの地に来たもの、いうなれば別のプレイヤーがいないかと期待していたが、それらしき気配は感じられず、影も形もない。

 

 ユグドラシルのサービス終了の瞬間を、一つの青春の終わりをしかと刻もうというときに、偶然か否か、いやきっと必然なのだろう。何処とも知らぬこの地に、私たちは飛ばされていた。その時に過ごしていた拠点ごとだ。それまでいたムスペルヘイムという炎の世界とはまるで違う、なにもかもを知らぬ世界に私たちはいた。

 

 さながら神隠しにでもあったかのように。

 

 なにかの間違いではないかと周囲を見て確かめようとこうして外に出てみれば、この光景が広がっていたのだ。人工臓器がデフォになるほどに浸透した世界では喪われて久しい、この花鳥風月が。

 

 こういうのは、うちのギルドマスターが好きだよな。あの人は縁側とかで鹿威しの音をつまみに茶を飲んでみたいとかいっていたし。タドコロさんの古い知り合いにも、こういったものが好きで、拠点の1フロアに夜空を再現してみせた人がいるとも聞いたことがある。

 あの地下墳墓に、そんな場所があると聞いた時は驚いた。なにせそのギルドはPKやら鉱山独占で悪評が立っていたから、当時の私にはそんなイメージの方が強かったというのがあったからだ。やはり彼らも、自分と同じ人間なのだと実感もした。まさか、本当に化け物になってしまうとは思いもよらなかったけども。

 もし、その方がこの景色をみたならば、大いに喜んだだろう。ユグドラシルの過疎りぶりとあのギルドの衰退を考えると、おそらくいないだろうことが悔やまれる。

 

 そう思うと、やはりこの星空を、織姫と彦星の逢瀬を遮る天の川を一人で見るのはどこかもの寂しく、そしてこの上なく勿体ないような気がする。

 

 そんなことを考えながら、夜の獣道を歩いていると、人の息づく声。どうやら一緒に空をみてくれそうな人がいるらしいが、あちらはどうもそれどころではないらしい。

 酷く息を荒げている。なにかに追われているのだろうか。

 

 気になったので、その声に近づいてみると、一緒に足音も大きくなっていき、やがて人影が現れる。

 

 

「 なにか、あったのですか? 」

 

 私を見てはっとなった表情を浮かべた次の瞬間には、その杖を構えてこちらを威嚇する人は、綺麗な女性だった。黒いカチューシャをした下をバッサリと切ったショートヘアの下から、透き通るように青い瞳を覗かせている。服装は桃色のスカートのついた服に質素な印象のマントを羽織り、ソックスを覆うように隠す長い靴を履いている。のだが、そこらかしこがボロボロになっているのをみるに、よほどひどい目にあったらしい。

 こちらを敵だと思っているのか、警戒を解いてはくれない。

 

「 貴女を取って食ったりはしませんよ。 」

 

 敵対の意思はないと伝えようとした時、遠くからウォーンと獣の遠吠えが聞こえてきた。彼女はそれを耳にして酷く怯えはじめた。

 

「 あ、あぁ・・・ 」

 

 どうやら彼女の恐怖の原因は、この遠吠えの主らしい。いかなる理由かこの女性は獣に追われているのだろう。

 さて、どうしたものか。

 彼女はおそらくなにかを知っている。私たちはこの世界についての情報が欲しい。

 

 女と獣、どちらの方が話しが通じるかなど一目瞭然。

 ここは、彼女を追い回す畜生を斬り伏せるとしましょう。

 

「 この先に私たちの街があります。そこに逃げ込んでください。 」

 

「 え? 」

 

「 早く。 」

 

「 ・・・ありがとう。〈 飛行 〉。 」

 

 私にそう言われた女性は軽くそう言って、シモキタザワの方面に飛び立っていった。ここからそう離れてはいないので害獣がいるかどうかは今のところわからないが、モンスターの類に襲われる心配は薄いだろう。

 タドコロさんも快く彼女を受け入れてくれる筈だ。なにせこの世界について知る手がかりなのだから、なおのこと。

 しかし、彼女さっき〈 飛行 〉を使っていた。ということは、この世界にも、ユグドラシルの魔法が存在するということかな。とすれば、この近づいてくる獣らしき者たちも、ユグドラシル由来なのか?はたまたこの世界固有の生物なのか。いずれにせよ、これから来る彼女の追っ手を殺ることには変わりない。

 

 がしかし、何処までゲームの中と同じだろうか。この姿は自分のアバターと瓜二つ。いや、それそのものになっている。ではあるものの、身体能力までステータスと同じなのか。

 

 人斬りなんて呼ばれたこともあるくらい、剣には自信がある。この背に負った刀で、幾人ものプレイヤーやモンスターを斬り捨ててきた。

 今回も同じだ。同じように、畜生を斬る。

 婦女の肉を貪らんとする、その獣性を断つ。

 背中から竿を下ろし、左手で持って、右手で取っ手を握る。

 この感覚、いつもと同じだ。

 

 であれば、恐らく問題ない。なにも考えない。ただ無心、明鏡止水。雑念を払い、この一刀に集中を乗せる。

 段々と大きく、間近に近づいてくる、飢えた声。

 普通ならば、不安になりそうだが、自然とリラックスできていた。鋭利な爪と牙を備えているであろう獣が迫っているというのに、まるで、というより実際に大したことなく感じていて、次の瞬間には、目と鼻の先に来た影たちに一閃していた。

 

 それらはものの見事にスパッと両断されて、大地には赤い花が咲き誇る。

 鮮血を噴き出して伏す獣ども。

 対照的に一寸たりとも朱に濡れぬ、月に照らされ、白銀に輝く我が刃。

 現実に動物を殺めるなど初めての経験の筈が、やはり既視感に近いものを感じる。

 

 やはり、この身体は見た目だけでなく、中身までユグドラシルでのアバターそのもののようだ。

 魔法の方も、KMRさんが実証済み。

 この魔法戦士のビルドも、問題なく100%フルに活用できるだろう。

 そう確信すると、私の胸のうちに、なにかが訴えかけてくるような気がした。

 ゲームのスペックが反映されているなら、取得していたスキルもそのままということになる。

 これはきっとその影響なのだろう。

 私の中のもう一人の私が、来る獲物との闘争に備え、刃を研いでいるのがわかる。もちろんこれはただの比喩だが。

 

"幾千幾万の修羅を屠り、我らが武を示そうぞ。"

 

 戦車のアルカナは吠える。闘いたい、と。

 直に、その望みも叶うだろう。

 

 後ろから、なにかが飛翔してくる。暗闇に紛れて分かりにくいが、蛇体が夜空を泳いでいる。

 影が高度を低めるほどに、それは現実では決してあり得なかった存在だと知れた。ユグドラシルではさして珍しいモンスターではなかったが、こうして見ると、なんとも神秘的な生き物だろうか。

 

 その東洋龍の背には、見知った顔が二つ。

 

 この手の龍の専門家と、ギルドの仲間の魔法詠唱者だ。

 

「 探したぜ、ヨーム。 」

 

「 無事でなりより。・・・それにしても。 」

 

 あるじぇんとさんに釣られるように、私とマリッサさんは私が仕留めた獣に目を向けた。

 さっきの既視感のもう一つの要因がその時にわかった。

 よく見ると、それらはどれもユグドラシルで出くわしたことのある"魔獣"と呼ばれるモンスターたちだったからだ。

 どれも見た目はバラバラ。オッサンみたいな面のカエル、強そうな黒い犬、ドラゴンと巨人の間の子みたいなの。

 そして、肉食恐竜を思わせる虹色の背をした大型爬虫類。

 

 ドラゴンテイマーというテイマー職を修めている都合か、それなりに魔獣にも精通している彼は、それらをジッと見ていた。

 

 ゲームの中と同じモンスターとはいえ、まったく別種の生物が群れるとは考えにくい。

 こんなことができるのは、ビーストテイマーくらいなものだろう。つまるところ、あの女性を狙った魔獣の背後に、プレイヤーがいる可能性があるのだが。

 

 

貪欲蛙(ガガルップル)ドラゴンの近縁(ドラゴンキン)精霊狩猟団の猟犬(ハウンドオブワイルドハント)に、虹の暴王(イーリスティランノスバジリウス)か。

 ビーストテイマーの手持ちにしては、ゴミ以下だな。 」

 

「 おや?酷い言いようだな。猟犬あたりはレベル高かったろうに。 」

 

「 他が雑魚なんだよ。カエルは58、ドラゴンキンはタフなんだがそれでも55、そしてこのクラスのイーリスはせいぜい70クラスの低レベルよりはまだましな個体。タドコロならあと10、12レベルは高いクラスの個体を持ってる。さっきすれ違った女をこいつらが追ってた、であってる? 」

 

 あるじぇんとさんの問いかけに、私は首を縦に振って答えた。

 

「 はい。間違いないです。 」

 

「 とすれば彼女、運が良かったな。 」

 

「 どういうことですか? 」

 

「 こいつらは空を飛べない。だから彼女は〈 飛行 〉でここまで逃げ切ることができた。仮に羽あるヤツが追ってきてたら、とっくに食われて腹に収まり、ウンコになってブッチッパとでてたろうさ。 」

 

 いわれてみれば、そうだ。魔獣の中には翼のあるものも当然いるし、ビーストテイマーは幅広いモンスターをテイムして従わせられる。彼女を確実に仕留めるならば、そのあたりをけしかけるべきだ。だが、そうはならなかった。その点で、彼女はラッキーだったのだろう。

 そういえばだが・・・

 

「 彼女がプレイヤーという可能性は? 」

 

「 それならば、お前が斬るまでもなく、魔獣どもは撃退されている。サービス終了間近でご新規様が来るわけがないし、なにかの拍子でレベルダウンしたとも考えにくいからな。他の魔獣を対処していて、MPが切れて逃げざるを得なくなったとも考えられるが、そうかどうかわかるかは彼女を預けたKMRさんの働き次第だろう。今はそれより・・・ 」

 

 女性や魔獣たちの来た方角から、暗闇の中のその先から、無数の獣の気配がするのを感じると、納めていた刀に手が掛かる。

 マリッサさんも懐から取り出したマジックアイテムの八卦炉を手に持った。その場一面に、緊張感が走る。

 

 そんな中でも、あるじぇんとさんは焦る様子を見せていない。相手がどんな奴なのかも分からないのに。

 

「 軽く考えるべきではないが、そう焦るものでもない。

 焦りとは、自分にとって身近な敵だ。己を急かし判断力を鈍らせ、時に過ちを導く。

 手の内を知らないのはあちらも同じ。たとえ件のテイマーがレンジャーとの兼業のビルドだったとしても、スキル構成まではわかるまい。

 ここは、相手の出方を窺いつつ、畜生どもの脚を止めるか。 」

 

 あるじぇんとさんが十字のドラゴンを象った杖を振り上げ、魔法を唱えた。彼はシャーマンも兼ねたビルドを組んでいて、召喚魔法をはじめとして幾つかの魔法を使用できる。

 

「 〈 魔法広域化 茨の壁(ワイデンマジック・ウォールオブソーン) 〉! 」

 

 地面から、刺々しい茨が大量に発生し、それが大きな壁を形成した。

 

 その昔、中東なんかでは、日本のものよりはるかに恐ろしい獣を寄せ付けない為に、ボマというトゲだらけの柵を設けていたらしい。まさにそれのようだった。

 

 第1〜10まで存在する、ユグドラシルの魔法。そのうち第5位階に位置する信仰魔法だ。

 見ての通り、茨の壁を作成する。

 これで、この茨を直接壊そうとしない限りは、ここを通ろうとすると、足場が制限され、刺さればダメージを受けることになる。

 魔獣は獣である以上は、夜目が利くので避けそうなものだが、その為の〈 魔法広域化(ワイデンマジック) 〉だろう。これによりこの茨の壁はより広く展開される。獣の進路はこれで塞がれた。

 

「 これで魔獣は容易く通り抜けできない。あちらが魔法詠唱者と兼任か、それとも仲間がいるか。いずれにせよ、こちらから仕掛けることに変わりはない。 」

 

「 仕掛けるって上からか? 」

 

「 ああ。あのラインナップをみるに、あちらの手持ちの魔獣は飛行能力持ちは少ないと見た。あれがこちら側に偽情報を掴ませる為のブラフで仮に一定数いたとても、もうこっちに来てる筈だしな。それが起きていないということは、あれは正真正銘の敵戦力の一端。ならば制空権を握て有利に戦況を推めるとする。マリッサ。 」

 

「 なんだ? 」

 

「 お前たちは地上から頼む。オレが打ち漏らした奴とプレイヤーを叩け。一人とは限らないからな。

 ・・・あと、少しガバッたか。 」

 

 あるじぇんとさんはうっかりしたとばかりにそう漏らした。

 ・・・そうか。そもそも相手が何人いるかを想定しなくとも、敵戦力を知れる手段があるじゃないかと私も気づいた。

 

「 最初から、これ使えば良かったな。 」

 

 そうして、〈 ポケットスペース 〉からなにかの本のような物が取り出される。あるコラボイベントから実装された、モンスターカードと呼ばれるコンテンツだ。

 悪魔合体という、モンスターやペルソナを製造する為の手法に利用されたり、そのままカードに描かれたモンスターを召喚したりできる。

 カードの絵柄はユグドラシル開始時にプレイヤーが貰えるユグペディアのものが参照されるので、出会ったことのあるモンスターしかカードにできない。

 ま、私たちくらいになれば、そんなもの誤差ですが。

 

「 よし、コイツだ。わざわざコイン叩いて高級のブランクカードを補充して作っといて良かった。こちら14万3000円となっております。 」

 

「 14万!?うせやろ? 」

 

「 嘘だよ。( 肯定 ) 」

 

 あるじぇんとさんがカードを掲げると、それが光って、その場に宙に浮いた桃色のデカい肉塊が、無数のギョロ目を覗かせていた。見れば見るほど、おっかない見た目だ。

 その昔見た映画の悪の天才科学者の嫁のギョロ目宇宙人とはどこか似ているようで、印象は大きく違った。

 

集眼の屍(アイボールコープス)か。 」

 

「 コイツでこの先にいる魔獣どものホストを見る。さぁ、やれ。 」

 

 そのアンデッドはその眼を血走らせ、茨の向こう側をジッと見つめる。視界ジャックによって、このモンスターのホストであるあるじぇんとさんもその景色を見ることができた。

 はてさて、なにが映るか。鬼がでるか蛇がでるか。

 

「 どうだ?見えたか? 」

 

「 子どもだ。 」

 

「 子ども? 」

 

「 ああ、金髪にオッドアイのダークエルフ。こりゃ双子かな?おかっぱの女の子の方が〈 炎の嵐 〉とかで茨を焼いてる。ということは信仰系。ドルイド辺りか。

 もう片方の少年がビーストテイマーで間違いないな。高レベルの魔獣を複数体確認。彼があの女を追い回したのか。 」

 

「 なんでだ? 」

 

「 さあな。今はそれより、向こうもこっちに気づいた。こりゃやっぱりレンジャーか。手に弓があるということはアーチャーでもあるらしい。

 ・・・そろそろ仕掛けるか。 」

 

 ドラゴンテイマーが杖をかざすと、何体ものドラゴンたちが現れ、空を舞う。どれもが彼の乗っているものと同じ、東洋龍だ。

 

「 遠距離攻撃を主とする以上は、こいつらでいいな。本当はもっと呼びたかったが、ヴリヒルドリアは転移してないらしく、呼べなかった。あとは・・・ 」

 

 

「 あとは? 」

 

 

「 オレ自身が、ドラゴンになることだ。 」

 

 

「〈 巨竜化(ドラゴラム) 〉!」

 

 その姿は次第に大きくなり、その腕は翼膜ができて翼となり、その首は伸びて、第二第三の首も発現し、龍らしい顔となった。

 

 ドラゴラム。その名の通り、対象をドラゴンに変身させる魔法。発動中は強力なブレス攻撃をノーコスト無制限に放つことができ、接近戦もこなせる。しかも自由に解除可能。

 

 巨龍は天へと翔び、雷を落とす東洋龍たちを従えて、魔獣の群れに自らも雷のブレスを放つ。

 魔獣たちは空からの強襲になすすべがなく蹂躙される。テイマーらしき少年も、矢を放って抵抗するが、まるで刃が立たない。

 同時にブレスで引火したか、茨の壁が炎に焼かれていく。

 炎属性耐性があるので、ここを進める。

 

「 テイマーの方はあいつに任せて、私らは言われた通り、残りをやるか。 」

 

 炎の中には、小さい人影が見えている。あるじぇんとさんの言っていた通り、白いスカートのついた上等な服を着たダークエルフだ。その手には木彫りの杖らしきものが握られており、確かに魔法詠唱者であるようだ。

 

「 あ、あの・・・ 」

 

「 なんだいお嬢ちゃん。どうしてあの女の人を追いかけたんだい? 」

 

 相手が子どもだからだろう。マリッサさんは物腰柔らかく、彼女にそう聞いてみることにした。

 相手は高レベルの魔獣を引き連れたテイマーの仲間。かなり腕の立つドルイドであろうことは確か。故にそんな優しい口調で問いかける口とは対照的に、目は至って真剣な眼差しを向けている。

 

 

 

 その時だった。急に二つの影が私たちの前になんの前触れもなく現れる。転移魔法か。

 しかし、その姿は見覚えがあった。

 たまに転移前と同じように、連合でシモキタザワに集まった時によく見た、NPCたちだ。

 

 

「 この中に、()を逃したものがいる。 」

 

 その半裸の中年姿のNPCは言葉を発した。さも心があるように。まるで・・・

 

「 名乗り出よ。 」

 

 

 私もマリッサさんも、思わず、指を差した。その先には、あのエルフの少女がいた。

 

「 そなた、名はなんという。 」

 

「 お、教えなきゃだめですか? 」

 

「 名乗り出よ。 」

 

 少女は変わらず、おどおどとしながらもそのNPC、確か子種王といったか。なんとも酷い名前でよく覚えている。

 もう片方は、なんだっけ? とにかく、子種王に女の子は名前を教えた。

 

「 マーレ。マーレ・ベロ・フィオーレ、です。 」

 

 その内気な雰囲気の内側から、どこか恐ろしさのような、わかりやすくいえば、邪気を感じる。

 聖書なんかじゃ、人間を羊に例えて、子羊とよぶことがあるが、これはさながら、"羊の皮を被ったライオン"である。

 やはり、兵か。

 

「 そうか。よくぞ参った、我が奴隷マーレよ。 」

 

「 ど、奴隷じゃない、です。 」

 

「 褒美だ。 」

 

 子種王が手をかざすと、その場に土でできた異形が現れた。大地の精霊、エレメンタルの一種だ。

 ということは、召喚魔法〈 大地の精霊召喚 〉を使用したのか。そういえば、前にこのNPCも、ドルイドだと聞いた事があった。が、次の瞬間には、そんなことはどうでもよくなった。

 

 

 

「 余の子種をくれてやろう・・・! 」

 

 ・・・え?

 

「 え? 」

 

 突然の爆弾発言に、あちらも私も困惑していた。

 

「 今、ド直球にいったよな?子種をやるって。 」

 

「 子種って、アレの事ですよね? 」

 

「 あぁ、アレだな。あの白いやつ。読んで字のごとくなのか、アイツ? 」

 

 

「 今確かにそう言っただろう。我々は、彼女に子種を授与すべく参上した。これより本作戦の指揮を執り、目前敵に子種を授ける。 」

 

 もう片方の軍服にサーベル持ったイケダンディなNPCも頭おかしくないですか? そのいかつい顔が台無しになってしまっている。

 

「 名前なんでしたっけ、こっちのオジサマ。 」

 

「 アナルアサシン大総統だ。気楽に大総統でいい。 」

 

「 これ、作ったやつ、なにを思ってたんだろうな。 」

 

「 野郎しかいないので、性欲を持て余してたんじゃないですかね。 」

 

 もう、タドコロさんたちはなんでこんなん作ったんだ?別にいいんだけれども。

 

「 とにかく、私たちも戦闘を・・・ 」

 

「 ああ。 」

 

 そして、私たちの戦いが始まる。

 

「 ペルソナ!"カゲミツ"!! 」

 

「 ペルソナ!"ララアンセム"!! 」

 

 目には目を、歯には歯を、オッサンにはオッサンをとばかりに、私は使い慣れた"戦車"のペルソナ、渋かっこいいお侍様を降魔した。

 

 

 

 

 

「 これもうわかんねぇな。 」

 

 タドコロもまた、困惑していた。

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