勇戦のアルヴヘイム   作:葵衣なつ

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Prequel-I-『少年少女』
第1話『名前』


 星歴10017年7月7日午後16時37分、王国城下町・郊外。

 

 ピーンポーン…

 

 誰も出てこない。

 

「う〜ん、留守なのかな…」

 

 私、ルナは数分前から何回もチャイムを鳴らしているのだが誰も出てこない。

 

「…まぁいいや、宅配を玄関前に置いておけば」

 

 と思い両手に抱えていたダンボールを下に置き、その場を立ち去ろうとした。

 

 そして後ろを振り向くと…

 

「ひぇっ」

 

「どうしたんだいそんな顔して」

 

 気配を隠していたのか全く気づかなかった。

 

「ヤムおばあちゃんいつからいたの!?」

 

 と驚きながら聞くと

 

「あんたが『誰かいませんか〜?』とか言ってチャイムを押しまくってた辺りからだね」

 

 ひぇっ、最初からいたの!?恥ずかしい…

 

 なんて私が恥ずかしさのあまり赤くなった顔を隠すように屈むとヤムおばあちゃんがその手に持っていた袋を突き出して

 

「はい、ルナあんたもう食糧尽きただろう」

 

「あ!ありがとうおばあちゃん!これで1週間は生きていける…!」

 

「はぁ…あんたちゃんとご飯食べないとそのうち餓死するよ…?」

 

 まぁそれは…そうなんだけど…。

 

 私、ルナは小さいうちに義理だけど両親を亡くしている。

 

 死因は餓死だった、というか私のせいで死んだ。

 

 その当時両親が住んでいた村、もう廃村になってるけど、は数年以上不作に見舞われ、食べ物を買う金も移住するほどの金もなく、どんどんと住民が死んでいっていたらしい。

 

 そんな中両親は村外れの森林で放置されてた私を拾ったと聞いている。

 

 何故そんな時に私を拾ったのかは未だに分からないが、私が今生きているのは義理とはいえ両親のおかげだからあまり深くは考えていない。

 

 それに本来は私は死んでいるはずの人間だし、スラムに住んでいる以上もう未来に希望なんてないのだから死んでも後悔はない。

 

 なんて考えていると空が暁に染まり始めていた。

 

 …帰るか。

 

「…じゃあね、ヤムおばあちゃん」

 

 と長々と説教をたれそうな雰囲気を醸し出していたので話を切って駆け足でおばあちゃんの家を出た。

 

「でもこれ大丈夫かな…めちゃくちゃ暗い…」

 

 夜道が怖いのはあるのだが寝床があるスラム街に戻るにはおばあちゃん家の前にある森のけもの道を通らなければならず、たまに魔獣が出たり山賊が出るので本来は一人で通ってはならないのだが夜じゃなければ滅多に遭遇しないうえ、昼間は空を王国の偵察ドローンが飛んでいるので襲われてもすぐに警察がくるので山賊は出てこないのだが、もう偵察ドローンは飛んでいない時間帯だ。国に守られる保証がない。

 

 なので早めに森を抜けるため駆け足で森を進んでいると後ろから3人ほどの足音が聞こえてきた。

 

「嘘でしょ…」

 

 十中八九山賊だよね…、しかも手馴れてるのか足を私に合わせてる。まずいね…。

 

 と全力疾走しようとした瞬間に足元に落ちていた木の根に転んでしまった。

 

「うげぇっ」

 

 あーあ終わったよ、私の人生…いや、元々スラム街に住んでる時点で終わってるか…。

 

 と諦めのムーブに入っているとなんか山賊の反対方向から猛ダッシュする音が聞こえてきた。

 

 …と思ったら山賊の方向から凄い音がしたので振り向くと頭の右側に角を生やした少年が山賊らしき服装をした男性3人を座布団にしてその上に立っていた。

 

 そんな状況に唖然としていると少年が聞いてきた。

「大丈夫か?」

 

「あ、はい大丈夫です」

 

 と唖然としつつ返答すると少年が

 

「俺の名前はアルだ。お前は?」

 

 と聞いてきた。

 

「ルナ…」

 

 アル。

 その名前を聞いて私は何故か…懐かしい感じがした。

 

 ◈◈◈◈◈

 

 翌日。

 

 あのあとアルとスラム街に戻り、アルに帰らないかのと聞くと「宿とってない」と言うので仕方なく家に連れていった。

 

 ダンボールで作った四角い空間を家と言えるのかはさておき…。

 

 でなんやかんやで家でくつろいでいると外から何やら騒がしい声が聞こえたので外に出る。

 

 すると山賊の頭領ぽい人と昨日、アルが座布団にした3人組がスラム街にきていた。

 

「まずいまずいまずいまずい!私の人生今度こそ終わったー!!」

 

 私はおもわず物陰に隠れこの場を凌ぐために限界まで頭を回す。

 

 まだアルは寝てるし頼りにするのも違う、それに山賊が私を探しにきたという確証もない。

 

 だから静かにしてればきっと…。

 

 なんて現実逃避しようとしていると山賊の頭領らしき大柄の男が近くにいたスラム街に住んでいる痩せ細った中年の男に写真らしきものを見せながら

 

「この女と男を知らねぇか?」

 

「うーん、男の方は知らねぇがこの嬢ちゃんはルナだね。このスラム街の女の子はあいつしかいねぇよ」

 

「ご協力感謝する」

 

 終わった!今まで応援ありがとうございました!完結!!

 

 なんてしてるといつの間にか後ろに昨日の3人組が立っていた。

 

「昨日はよくもやってくれたなぁ…嬢ちゃんよぉ…?」

 

 えぇぇ…やったの私じゃなくてア…。

 

 …いや、アルがやったとはいえ元を辿れば私が悪いんだ、あの人を売るのは違う、それにあの人は一般人であいにく彼らに素性はまだ知られていない。

 

 ならやることは1つ。

 

「私を好きなようにしたいならすればいい、だけど代わりにあの人は見逃して。」

 

 そう、これでいい…これで…。

 

「仲間外れはよくないぜ、ルナ」

 

 なんできた!?アル!なんできたんですか!?

 

「いやだって俺がお前助けたのはお前を探していたからだぞ?」

 

 読心された!?ていうか私を探してって…

 

「まぁそういうことだ。それよりお前がやりたいこと言ってみろよ、叶えてやる」

 

 えぇ…唐突ですねぇ…、うーむ、私がやりたいこと…。

 

「…自由になりたい」

 

 と不意に言葉にしてしまい口を塞いだが聞かれたのかアルがニヤッと笑った。

 

「よしわかった、俺がお前を自由にしてやる。こんなスラム街を飛び出して、俺と旅に出ようぜ、ルナ!」

 旅。

 

 あぁ、何故か懐かしく感じる。

 

 彼と、私が遠い遠い昔に出会っていたかのような…。

 

「うん!行こう!…ドキドキワックワクできるような、そんな大冒険に!」

 

「あぁ!」

 

 アルはそういいながら3人組をなぎ倒し私の手をとって街の方へ走り出す。

 

 これが、私と彼、ルナとアルの冒険の始まりだった。

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