勇戦のアルヴヘイム   作:葵衣なつ

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第14話『そして少女たちは歩みだした』

 わたしはどうやったらご主人様のお力になれるのか、ずっと考えていました。

 

 でも、お力になるなんて無理だったようです。

 ご主人様は今まで一人で生きていて、それが当たり前だと思っていて、だからわたしには分かち合いたいと…そう伝えることしかできませんでした。

 

 そんなわたしの我儘をご主人様は受け入れてくて、少しでもご主人様の負担が減ればと思っています。

 

 いつか、力になれれば…と。

 

 ◈◈◈◈◈

 

「メイ!はやくこの人を…」

 

「はい!『重力操作』!」

 

 わたしたちがアル様が取ってくれた宿に帰っている時にそれは起きました。

 

 店から出てきた人の胸が一瞬のうちに撃ち抜かれ、倒れたのです。

 

 周りの人は気にしていませんでしたがその出来事を見ていたわたしとご主人様、白炎様で応急処置と搬送。

 

 アル様はスナイパーがいたと思われる方向に一目散に走っていきました。

 

 とわたしたちが応急処置し終わり、重力操作で軽くし、搬送を開始しようと白炎様に担架を『錬成』してもらっていると黒いスーツを着た男性が二人、こちら側に近づいてきました。

 

「私たちはその方のボディガードです」

 

 と名乗った男性たちにある路地裏から行くことのできる地下室に案内されました。

 

 そしてそこで彼女についての話を聞きました。

 

 ◈◈◈◈◈

 

「っ!はぁはぁ…」

 

 えっと、私は撃たれて…。

 

「あ!目、覚ましてしまいましたか?」

 

 私はいつの間にか潜伏していた地下室に戻ってきていた。

 

 どうやらこのメイド服を着たオッドアイの少女が運んでくれたようだ。

 

 だが、誰だ?何故ここを知っている、と私が訪ねようとすると私専属ボディガードの一人が説明をしてくれた。

 

「彼女たちは宿に戻る途中、お嬢が撃たれたところを目撃し応急処置と搬送をしてくれようとしてくれていました。敵ではありません」

 

 ホッ、と私が一息つくともう一人のボディガードが私にある提案をしてきた。

 

「あの、彼女たちと逃げたらどうでしょうか?」

 

「…は?」

 

「いえ、私たちはお嬢が危険な目に遭うのがもう…」

 

 彼らの言い分はわかる。

 

 だが、本当にそれでいいのだろうか?今ならまだお父様を止めることだってできるんじゃないか?

 

「…お前らはどうする」

 

「私たちはお嬢が逃げ切れるまで奴らを食い止めます。なので安心して…」

 

「安心っ!…できるわけなかろう!」

 

 二人は私が小さい頃から守ってくれて、一緒に遊んで、笑ってきたいわば家族だ。

 

 そんな二人を置いていくなんて、私にはできない…。

 

「お嬢に!生きていて欲しいからこう言ってるんですよ!…こいつは」

 

 といつも冷静な判断を下す方のボディガード、ボブが感情的に発言した。

 

「こいつは!自分に唯一優しくしてくれたお嬢の命が!何よりも大事だと言っていました!」

 

 そうなのか、ジョン?ともう一人のボディガードに目を向けると、彼は少し照れていた。

 

「だから!お嬢は…!」

 

「…わかった」

 

 この決断だけは、したくなかった。

 

 彼らが死んでしまうだろうから。

 

 でも、彼らがそういうなら…私は。

 

「マフィア『アゼフィン』がドンの一人娘、ヨナ・アゼフィンが命じる!」

 

 お父様、待ってて下さい。

 

 いつか、戻ってきます。

 

 なので今は…。

 

「…私のために死んでくれ!ただし、無駄死はするなよ…っ」

 

 非情な判断だと心の中で分かっている。

 

 だが、いつか…彼らの墓を作ると約束しよう。

 

 ◈◈◈◈◈

 

「…てことで『月下竜団』にお嬢の護衛をお願いしたいのですが」

 

「いいですよ」

 

「即答…ですか。報酬はお嬢に渡してある財産の半分でどうでしょう?」

 

「いいですよ」

 

「…では契約成立ですね」

 

 私とボブは契約内容を改めて確認した後、指に針を刺し、契約書に血を一粒落とす。

 

 その後ボブが血を落とし、しばらくすると契約書に「成立」の文字が出た。

 

「では、よろしくお願いします」

 

「…はい。任せてください」

 

 月下竜団として初めての依頼なので喜ぶところなのだろうが彼女…ヨナは命を狙われているのだ、そんな状況じゃない。

 

「あの、船もお願いしたいんですが」

 

 と後ろから白炎がボブに聞く。

 

「ええ、では隠し倉庫に置いてあるのを一つ。ついて来てください」

 

 と私たちはボブについて行く形でコハトの外れにある山小屋に連れてこられた。

 

「この中に私が昔使っていた水陸両用戦艦『ロード・オブ・アーカイブス』があるので是非使ってやって下さい」

 

 ロード・オブ・アーカイブス…は白炎曰く

 

「9945年に造られた60年前の大戦を象徴する戦艦で、戦争用自律型成長AI『LoA』が搭載された最初で最後の機体」らしい。

 

 その解説を聞いたあと私たちは動くか確認するために中に入った。

 

「『LoA』起動。権限者の譲渡を頼む」

 

 と操縦室に入ったボブが言うと電気がつく。

 

「『LoA』起動、完了確認。権限者の讓渡、確認。権限者の移行を開始します。指紋認証をお願いします」

 

 その言葉の後ボブは指を四角い板の上に置くと「完了確認。讓渡者は指紋認証をお願いします」と言った。

 

 誰が讓渡者になるか、と話し合おうとしたのだがどうやら私らしい。

 

 私は指を四角い板の上に置くと「確認、完了。新しいマスターに讓渡が完了しました」

 

 どうやら終わったようだ、と私がホッと息を吐くと外からジョンの悲鳴が聞こえた。

 

「くそっもう追ってきやがった!お嬢を頼む」

 とボブは言い残して外に行った。

 

「…行くぞ」

「そうしましょう」

 

 とアルと白炎が言う。

 

「でも…!」

 

 やっぱり、あの人たちを置いていくのは駄目なんじゃないか。

 

 ヨナさんの支えだったあの二人を置いていくのは…と私が言おうとするとアルは

「あいつらは俺らに依頼をした時点で腹を括ってんだよ。俺らはそれに答えなきゃいけねぇ」

 

 …私は、反論できなかった。

 

「…うん、行こう」

 

 その後に続けて私は『LoA』に言う。

 

「ロード・オブ・アーカイブス、発信準備!目的地は東の大陸『魔法国家』!」

 

「確認。ロード・オブ・アーカイブス、東の大陸を目的地に設定」

 

 すると変形を始め、甲板が出てくる。

 

「甲板、自動漁獲システム、ジェットブースター、確認。発信します」

 

 星歴10017年8月5日午前02時35分、ルナ一行、港町『コハト』出発。

 向かうは東の大陸『魔法国家』。

 

 そして、私たちは東の大陸で全てを知ることになる。

 

 この世界の真実、そして未来に起きる『厄災』を——。

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