勇戦のアルヴヘイム   作:葵衣なつ

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第22話『メイ・クロスフォード-追憶II-【きっとこの命に意味は無かった】』

 メイ・カトル、9歳。

 

 死んだと言われていた父があの日、目の前に現れて全てが変わった。

 

 あの頃の私はまだ純粋無垢で父が何故私を引き取ることにしたのか、分からなかった…いや、分かりたくなかったのかもしれない。

 

 きっとあの頃の私は父が成り上がる為に利用されているという事実を受け入れたくなかったんだと思う。

 

 だから…。

 

 ◈◈◈◈◈

 

 母の葬式が終わった翌日、父に連れられて着いた場所にあったのは何やら大きなお屋敷だった。

 

「メイ、今日からここが君のお家だよ」

 

 庭には花々が咲き誇り、玄関へと続く道は綺麗に舗装されている、想像したような貴族の家だった。

 

 父について行き中に入る。

 

 そこにはたくさんのメイドに4人の私と同じくらいの年齢の男女がいた。

 

 彼らをジーと見ていると父が私の肩に大きな手を置き話し始める。

 

「彼女はメイ、今世代の『重力(グラビティ)』覚醒者だ」

 

 その言葉と同時に周りがガヤガヤと騒ぎ始める。

 

『重力』。

 それがこの家でどんな意味を持っているのか、すぐに分かることになる。

 

 ◈◈◈◈◈

 

 私がクロスフォード伯爵家に迎えられた理由。

 

 それはクロスフォード伯爵家当主となるための絶対条件であり、この家で代々受け継がれてきた超能力である『重力』を発現させること。

 

『重力』、それは触れたものを軽くすることのできる能力。

 

 完全覚醒前は己の二人分の重量のものを軽くすることができるらしい。

 

 だが私は超能力がある自覚がなかった、だから父に問う。

 

「お父様…私は」

 

「これが証拠だ」

 

 私の言葉を遮って父は続けた。

 

 やっぱり私のことは出世するための道具としか思ってないらしい。

 

 わかってはいた、父は母が死んだことに悲しみもせずずっと出世のことばかり話していた。

 

 私の事なんてどうでもいいんだと。

 

 けど、私は心を殺すことしかできなかった。

 

 何も出来ない、なし得ない自由もない年齢で私には『ここ』以外に行く宛てがない。

 

 だから、私は私を殺し続けた。

 

 私が私であるために、私を守るために殺し続けたのだ。

 

 ◈◈◈◈◈

 

 私がクロスフォード伯爵家に引き取られてから早4年が過ぎた。

 

 当主としての立ち振る舞いや知識を日々詰め込む毎日で疲れ果てていた…いや、もう疲れなんて感じなかった。

 

 今の私は私じゃないから、私は疲れてなんかないからと日々己に言い聞かせる毎日。

 

 逃げ出しても行く場所なんてない、だからこの家で父にいいように使われて死んでいくんだと思っていた。

 

 それと母の葬式以来、もう一人の『メイ』は姿を表さなくなった。

 

 きっと幻覚だったのだろう。

 

「…死にたい」

 

 本心を吐露できるのは部屋でだけ、周りの人間は信用できないから。

 

 私は私を慰めるように己を傷つける。

 

 それ以外に私があり続けられることなんてないと知っているから。

 

 私は…何なんだろう。

 

 ◈◈◈◈◈

 

 目覚めると私はどこかのホテルで寝ていた。

 

「…あれ」

 

 起きたばかりの脳を働かせて思い出す。

 

 そうだ、昨日『兄様』が逃げろっていって金を持たされて…。

 

「ん?紙がある」

 

 部屋の机の上に置いてある紙を手に取り見る。

 

 そこには兄様が偽装するようの設定?のようなものを書いていた。

 

【メイ・クロスフォードは伯爵家とは関係ない人間である。

 ここ最近は仕事を探してくるまで家に帰ってくるな、と言われ数日は面接漬けの生活だった。

 全て落ちたが。

 元々人と関わるのが苦手で家に引きこもっていたのでここ最近までは外を出歩くことはほぼなかった。】

 

「なんだこれは…」

 

 でもあの家に戻らなくていいのは都合がいい。

 

 とりあえず覚えておこう。

 

 その後朝食を食べてホテルを出た。

 

「ここはカザエラム…伯爵家からはそこそこ近いのか」

 

 そうなるとバレて捕まるのも時間の問題だ、どうにかして誰かに雇ってもらい、ここから逃げなければ。

 

 そうしてフラフラすること3時間、疲れ果てたので近くにあったベンチに座る。

 

「お恵みぃ…誰かぁ…」

 

 設定通り運動してなかったのですごい疲れているアピールをするとある少女が近寄ってきた。

 

「大丈夫…ですか?」

 

 それが、ご主人様であるルナ様との出会いだった。

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