勇戦のアルヴヘイム   作:葵衣なつ

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第26話『同族殺し』

 今も夢に見る。

 

 親を殺した日、そして『彼女』を失った日。

 

 それから毎日己を傷つけ、死んでしまおうとも思った。

 

 だけど今は『君』がいる。

 

 だから俺は生きる。

 

 …それが『彼女』へ、そして彼女の娘である『君』へ対する俺なりの贖罪だと思ったから。

 

 ◈◈◈◈◈

 

 星歴10017年8月15日午前10時37分、ネプト王国・城下町『ユグドラシル広場』。

 

 俺、アルは突如広場に現れた森羅龍を足止めするために攻撃を開始していた。

 

「『|炎・二重・弾・複数+加速・変則《フィム・セカド・ダドム・レダ・タェス・スピ・ラダン》』…、第三下級龍魔術『数多なる火龍たちの弾遊び(サラマンダ・フレイムド・スパイク)』」

 

 魔術の詠唱と共に空気中に漂うマナニウムが赤く光り、魔法陣を形成。

 

 そこからマナニウムを詠唱した命令式によって魔術を行使するための性質に変動させ、魔法陣が炎の玉に変化した。

 

 そこから『加速』と『変則』の稼動命令式により炎を帯びた銃の弾へ変化、すかさず森羅龍に打ち込む。

 

 森羅龍ユグドラシルは木から成る龍、木やその草木が炎で燃えるようにユグドラシルも炎で燃える。

 

 だが油断してはいけない、森羅龍は『龍』である。

 

 龍は同じく龍の力、もしくは世界の創造主たる神の力でしか対抗できない相手なのだ。

 

「第三下級龍魔術…」

 

 森羅龍は足から土に生やす根っこで己の身体を癒す龍だ、根っこを生やす素振りに注意しつつ回復の間を挟ませないようにひたすらに龍魔術を打ち込む。

 

「…あれ」

 

 しばらく打ち込んでいると何か違和感を感じ、魔術行使を中止する。

 

 そしてユグドラシルのいたはずの場所、炎の煙が消えたそこには…。

 

「…森羅龍はどこに行った?」

 

 気づくと目の前にいたはずのユグドラシルの姿がなくなっていた。

 

「もう気づいたんですね」

 

 後ろから知らないようで知っている声が聞こえ反射的に身体ごと振り向く。

 

「…あんたら」

 

 そこには黒い修道服に身を包み、顔を数字の書かれた布のようなもので隠した女性たちが立っていた。

 

「私達は『宣告者(デクレアラー)』、ラヴクラフト様をこの世界の神にするために日々布教活動を続けている者の集団でございます。…『同族殺し』アルヴヘイム様?」

 

「ッ!」

 

 ラヴクラフト、そして同族殺し。

 

 その言葉を聞くと同時に俺の身体は宣告者に魔術を放っていた。

 

 ただ無我夢中に、過去の怒りと後悔が混じり合った感情をこの身体全体に巡らせながら。

 

「…やったか?」

 

 少しして魔術の行使を止める。

 

 そしてその煙が消えると奴らは地面に倒れていた。

 

「よし」

 

 倒したという安堵と同時に、奴らの身体が再生を始める。

 

「私達ラヴクラフト様ただ一人を崇拝す、敬虔なる信者をたかが一竜人に殺せる訳ないでしょう?」

 

 俺が恐怖を覚えているのを見て奴らはそう言った。

 

 そしてこうとも。

 

「あなたにラヴクラフト様の娘(ルナ・L・サンタマリア)を守れる力なんて、そして生きて贖罪だなんて、出来るわけないのです。…罪人風情で烏滸がましい考えだと思いませんか『妖精龍王アルヴヘイム』様?」

 

 ◈◈◈◈◈

 

 星歴10017年8月15日午前11時30分、ネプト王国『ユグドラシルの森』奥深く。

 

 気づくと私は少し開けた場所に立っていた。

 

「あれ…?」

 

 覚えてることはヨナと避難したこと、それまででそれ以降の記憶が飛んでいた。

 

「どうやってここまで来たんだっけ?」

 

 そう考え込んでいると目の前、何もなかったはずの所から声が聞こえた。

 

「彼の娘よ」

 

 思わず目を上にあげる。

 

 そこには小さな家のような物が建っていた。

 

 その家をしばらく見つめていると開けろ、と言われたような気がしてそこの襖を開ける。

 

 そこに何か石像が倒れていた。

 

「…えっと」

 

「彼の娘よ」

 

「わぁっ!」

 

 何もなかったので帰ろうと思い襖を閉めようとするといきなり石像が喋りひびる。

 

「私の子が泣いている。森羅を統べし私の子が泣いている。あの男にいいように操られ、己の愛す自然を他人の意思で壊そうと。そこに己の意思は無く、その先には大いなる悲しみと怒りと憎しみしか残らず。故に止めなければならぬ。貴方をこの社の傍まで招き入れたのは封を解いて貰う為。其処にある珠を割れ、さすれば貴方に力を授けよう」

 

 

 とその石像が何やら小難しいことを言い、珠を割れと言ってきたのでとりあえず割ることにした。

 

「えぇい!」

 

 下に思い切り叩きつけると割れ、そこから光が溢れ出す。

 

 その光が眩し過ぎたので目を少し覆いながら見ていると徐々に人の形を成していった。

 

「ありがとう、彼の娘」

 

「ええ、と…はい」

 

 光から作られたその少女は見たことの無い服装をしていた。

 

「あ!初めての人なんだから名乗らなくっちゃ!私は『咲耶姫』。日本神話の一柱『森羅万象』を司る神だよ☆よろしくね!ルナちゃん!」

 

「えと、はい…よろしくお願いします?」

 

 珠を割ったら何故か私の目の前に神が現れました。

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