勇戦のアルヴヘイム   作:葵衣なつ

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第33話『帝国へ』

 ボクは『九つの龍王』、その適合者達が計画遂行の為帝国へ向かったのを確認したあと地下に戻る。

 

 現状、適合者には『完全なる依代』を与えられていないが問題はないだろう。

 

 何故なら今のボクの手中には『魂の依代(ソウル・アーマー)』の製造術と『魂の連結術(ソウル・コネクト)』の儀式概要がある。

 

 それらはここ数十年で錬成術と魔術を合わせた新時代の技術を実現させた天才家系『ユークリッド家』が機密事項としてきたものなのだが、その現当主と家族を拉致し、吐き出させることによって得ることが出来た。

 

 尚、吐き出させたその後に隠し持っていた魂の依代『魂魄起動機兵(ゴーレム)』に己の魂を移し、娘ごと脱走したが。

 

 まあ『闇に棲みつく者(ニョグタ)』に捜索させているしその内見つかるだろう、問題ない。

 

「それよりも問題は『日本神話』共が干渉し始めたことだ」

 

『咲耶姫』が接触するのは想定内だったが、『月詠命』は想定外だった。

 

 やつは日本神話で唯一、現世でも問題なく活動が可能になるほどの力を持つ。

 

 今回は精神世界だけだったが、次がどうなるか分からない。

 

「そう簡単には取り返せそうにないかな?」

 

 まあ、ルナを取り戻すのは後でも問題はないが適合者たちを送った以上、やつらとは今回でケリをつけるつもりだ。

 

「ニャルラトホテプ、いるか?」

 

「はい、お呼びでしょうか」

 

 ニャルラトホテプ…闇の支配者の異名を持ち、『現状』の最強戦力。

 

 こいつが戦うと最悪ルナが死んでしまうが生き返らせる方法がないわけではないし、出し惜しみするのはもったいないものだ。

 

「お前には帝国でとある作戦を遂行してもらう」

 

「…承知」

 

 さあルナ、あと少しで君を取り戻せる。

 

 彼女との愛の結晶、そのものである君を。

 

 ◈◈◈◈◈

 

 星歴10017年10月2日午前10時24分、帝国へと続く街道にて。

 

 私たちはとある用事のため帝国を目指していた。

 

「そろそろ『ギルド』への定期報告をしないと金銭面がやばい」

 

 それは少し前のこと…ネプト王国で白炎が月下竜団の面々を集め、そう言ったことから始まった。

 

 今まで私たちが『ギルド』へ定期報告をしたのは1度、コハトで私とメイがヨナの手当てをしてる間に白炎が裏の者に頼み、改ざんした記録を提出した時のみである。

 

 そしてどうやらギルドには2ヶ月に1度、実績とその証拠をまとめた文章を提出しなければ金銭は支払われないらしい。

 

 それの期限が10月4日までで、それを過ぎて提出すると1ヶ月支払われなくなり、私たちの懐事情が寂しくなるらしいのだ。

 

 一応、影吾郎さんから貰ったお金をあるにはあるのだが、月下竜団の金銭担当を請け負っている白炎がそれに頼るのは緊急時として頑なに使うのを渋っている。

 

 まあスラム街で生きてた頃よりはいい暮らしができてるだけ感謝なので口出しするつもりはないんだけど、アルは帝国に行くのを躊躇っているのか、日々白炎と話し合いをしている。

 

「…でも」

 

 ここ最近のアルを見ていると何か、嫌な予感ばかりが脳をよぎる。

 

 この予感が当たらないといいのだけど…。

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