勇戦のアルヴヘイム   作:葵衣なつ

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第35話『再会の黒少年』

 星歴10017年10月2日午後12時13分、『カルマ帝国』東区グルメストリート・その路地裏。

 

「はぁ…たくっ、これから昼食食べに行くところだったのに」

 

 今、私とメイは路地裏で女の子を追いかけていた男の人を捕まえたところだった。

 

 事の経緯は、お腹が空いたのでメイに良さげなレストランを探してもらいそこへ向かっている途中、路地裏の方で誰かが何かを追いかけている音がしたので少し気になって見たら…という感じだ。

 

「そういえば、そのご主人様が使った魔法のようなものは一体…?」

 

「ああ、このペンダントのこと?神様がくれたの。力になってくれるって」

 

 と言いながら私は首にかけていた、咲耶姫から貰ったペンダントに手をかける。

 

「神様…ですか、本当にいるんですね〜」

 

「ねー」

 

「神…様?」

 

 そんな会話をしていると男がペンダントを見ながらそう呟いたのが偶然耳に入る。

 

「ッ!」

 

「ご主人様…?」

 

 何か、何かその男から際限ない力の様なものを感じた。

 

「…あんた、名はなんという?」

 

 その男の質問に答えてはいけないと、直感が告げる。

 

 だがそれと同時に答えないといけないような、そんな世界の強制力も感じた。

 

「…ルナ。苗字は…知らない」

 

 気づくと口が勝手に動いていたことに気づき、すぐに口に手を当てる。

 

 それでも、既に手遅れだった。

 

「…はははッ、貴方がルナ様でしたか」

 

「…様?」

 

 突然、知らない記憶がフラッシュバックする。

 

『ルナ…。この子の名前』

 

『いい名だ。ヨハネ』

 

「ルナ様、貴方は自分のことを忘れているのですか?」

 

「嫌…、何…?」

 

 頭が割れそうだ、知らない人たちの記憶が一斉に叩きつけられたような…。

 

「うっぐ」

 

 痛い痛い痛い痛い痛い。

 

 嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。

 

「ご主人様…ッ!?」

 

 全て全て全て全て全て全て…壊す、壊れろ、死

 

「そこまでじゃ」

 

 そこで記憶はプツンと切れた。

 

 ◈◈◈◈◈

 

「たくっ…やってくれるのぉ」

 

「貴方…は?」

 

 ご主人様が叫び出すと同時に現れた少女に尋ねる。

 

 その私の問いに、白い髪に倭ノ国の着物を着た少女はこう答えた。

 

「日本神話が1柱。月を司る…あんたらの言う所での神『月詠命(ツクヨミ)』じゃ」

 

 ◈◈◈◈◈

 

 路地裏での出来事とほぼ同時刻、ギルド・帝国支部。

 

 ボク、白炎はギルドの手続きが終わり、外へ出る。

 

「寒いな」

 

 季節は10月。

 

 既に世界は秋へと移ろっており、冬へと近づく時期だ。

 

 

「冬はボクの季節…か」

 

 昔、冬が嫌いだったボクに兄さんが言ってくれた言葉。

 

「ボクのコンプレックスである白髪と冬がいい感じにマッチしてていいじゃねぇか、とか言ってたっけ」

 

 もう10数年前のことだしあまり覚えてはいない。

 

 それにもう兄さんは…。

 

「ッ…!?」

 

 今、隣を通った人の方向を思わず振り向く。

 

 見覚えのある髪型に色、ピアスの位置。

 

 そして…炎家の家紋が入った黒のコート。

 

「兄さん…?」

 

「…よお、久しぶりだな。白炎」

 

 その男性がこちらへと身体を向ける。

 

 そこに立っていたのはあの日殺したはずの、兄さん…黒炎の姿だった。

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