勇戦のアルヴヘイム   作:葵衣なつ

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第37話『なんで』

 星歴10017年10月2日午後13時4分、『カルマ帝国』廃墟・地下トンネル。

 

「白炎さーん、こっちです!」

 

「すまないメイ、少し足止めされててね」

 

 ボクたち月下竜団の面々はあの放送の後、今は廃棄され一切使われていない地下の廃トンネルに集まってきていた。

 

「そうですか…追っ手はいましたか?」

 

「あぁ、すぐ撒いたからここはバレてないだろうが」

 

「ですがそれも時間の問題ですよね…」

 

「…だな」

 

 街中にいないことがバレるのはそう遠くない、そしたら廃墟は近いうちにあらかた調べられるだろう…隅の廃墟エリアであるここも。

 

「…あ、そういえばボクたち以外にも一人捕縛の指定が出てたけど彼女は?」

 

「アリスさんですね。偶然、共に行動していたのでそのまま連れてきてますよ」

 

 メイ曰く、ルナと昼ごはんを食べに行く途中に路地裏で追われていた所を保護したそうだ。

 

 その後ルナが倒れ白髪の少女が何処からか現れた時にあの放送が流れ、路地裏経由でこの廃トンネルに通じる廃墟を見つけたらしい。

 

「ですが不思議ですよね、ユークリッド家は西の大陸で名を馳せていた研究者たちの家庭でしょ?なんで東の大陸に来ていたのでしょうか」

 

「そういえばユークリッド家はここ数年ほど表舞台に出てなかったな、もしかして何者かに幽閉されていて…とかか?」

 

 それにユークリッド家は『魂魄起動機兵(ゴーレム)』の研究をしていると噂があった。

 

 それが本当で、もしラヴクラフトに幽閉・研究を強要されていたとしたら世界樹祭での一件にも納得がいく。

 

 そして、兄さんが生きていた理由にも。

 

「…まぁそれは後で考えよう、今はどうするかが問題だ」

 

「ですね」

 

 ◈◈◈◈◈

 

 あの後トンネルの奥で皆と合流し、作戦会議を始めた。

 

「今はアルトランドとそこの白髪…月詠命(ツクヨミ)は顔が割れてない、てことだな」

 

「ああ」

 

「…そうじゃな」

 

 月下竜団の面々で唯一、アルトランドの存在がバレていないのは世界樹祭で仲間になったのがバレていない…ということだろうか。

 

 月詠命は…そもそもこの少女は何者なのか問い詰めたいところだが敵意は感じない、後回しでいいだろう。

 

「…で、敵はクトゥルフの連中としてだ。アルの情報によると奴らは神具というものでしか攻撃を通せないらしい」

 

 今、ボクたちの中で神具を所持しているのは現在気を失っているルナの『木葉菜咲鎖成陽芽(コノハナサクナヒメ)』『月詠命(ツクヨミ)』と、アルトランドの『神槍ロンギヌス』のみ。

 

「…あれ、君の名前も月詠命だったよね?」

 

「そうじゃよ、神じゃから」

 

 …一旦後回しにしよう、頭がこんがらがってきた。

 

「…えっと、ルナは」

 

「おはよう…」

 

 ルナを起こしてもらおうと思いメイに話かけた時、目を擦りながらルナが起き上がった。

 

「うん、おはよう」

 

「おはようございます、ルナ様。こちらコーンスープです」

 

「ありがとう…メイ」

 

 ルナがコーンスープを飲み終わり会議の続きにはいろうとした時、ルナがアルのいる反対側へ移動し始めた。

 

 そしてアルの目の前に立ち、口を開く。

 

「アル…なんで隠してたの…?」

 

 ◈◈◈◈◈

 

 ずっと、聞きたかった。

 

 あの路地裏での出来事から、なんとなく感じていたこと。

 

「私は…何、なの」

 

 アルは何も言わない。

 

「私って、アルの何なの」

 

「…」

 

 アルは何も言わない。

 

「黙らないでよ…っ、私だって何となく分かってるの!」

 

 一呼吸おいて続ける。

 

「いや、分からないふりをしていた…が正しいのかな?カザエラムでのあの時から、何となく分かってたけど分からないふりをしていた」

 

 それは私の原典。

 

 アルと私が出会ったあの日から、いや…もっと前から始まっていた運命。

 

「私は、ラヴクラフトって人の娘…そう、なんでしょ?」

 

 知りたくなかった、だけど分かってしまったんだ。

 

 それはきっと、決まっていたことだから。

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