あなたがあの日、私をスラム街から連れ出してくれたから今があって。
あなたがいたから私は生きる意味を見い出せた。
だから…あなたに拒絶された私はこれからどうすればいいの?
◈◈◈◈◈
星歴10017年10月2日午後14時20分、カルマ帝国・西廃墟街。
「…アル」
私、ルナは先程までみんなと潜伏していた廃トンネルから少し離れた西の方へと移動していた。
一歩、一歩と周りを注意深く観察しながら帝国を囲む巨大な壁の近くに建てられていた倉庫の中へ入る。
「ふう…とりあえずここに隠れておこう」
メイたちが話していた内容的に私たちは今、人に見つかってはいけないらしい。
それならと、とりあえず壁の近くに建てられていたこの倉庫に隠れることにしたが正解だったようだ。
少し開けるのに苦労しそうだが食べられそうな状態の缶詰めが数個に、乾パン。
カザエラムに行った時に買ってもらってそれから常に腰に括りつけている小さめのバッグに十徳ナイフとミニサイズのカップ麺2個、温めの水が入った水筒。
「これだけあれば1週間以上はもつ!」
スラム街に住んでいた時と比べれば1週間やりきれる、それだけで十分すぎる幸せだ。
「…あ」
あの頃を思い出して改めて感じる、毎日美味しい食べ物が食べられる今の生活のありがたみ。
「…アル、私は」
何か、言葉が口に出そうになった時、突然倉庫の扉が開く音がした。
その音が聞こえると同時に反射的に近くに落ちていた細い鉄の棒を握り後ろを振り向く。
「探しましたよ、ルナ様」
「…メイ、何でここが?」
◈◈◈◈◈
メイ曰く、アルが心配で私のところに言って欲しいと言って探しにきたらしい。
「…アルは、怒ってた?」
「いえ、俺が悪いって逆に自分に怒っていましたよ」
「…そっか」
狭い倉庫に一瞬の、沈黙が流れる。
「…メイは、私のこと…どう思ってるの?」
「…そうですね、私の大切なご主人様です」
「…」
大切。
私にとってはアルがその言葉の対象で、メイにとっては私。
私は…メイのことを今までどう思ってたんだろう。
考えたこともなかった。
一緒にいて安心するとは思ったことはある。
だけどそれはきっと、大切ではなくて…もっと違う、あって当たり前のものに感じていたような気がする。
「大切って、何なんだろう」
「…そうですね、簡単には表せませんが…仲間だとか友達だとか、親友だとか家族、愛している人を頭に思い浮かべて見たらどうでしょうか」
「仲間…友達」
仲間…おそらくこの括りは月下竜団のみんな。
友達…分からない、親友も同様だ。
家族…分からない、私には物心ついた時からいなかったのだから。
愛している人…アル。
でもメイは仲間ではないような、そんな気がする。
強いて言うなら…。
「家…、族」
「…」
「…メイ?」
突然メイが立ち上がり、こちらへと歩きはじめた。
「…どうしたの?」
私がその言葉を発するとほぼ同時に、メイが私の目の前で屈む。
それと同時に私の横腹に何か、冷たいものが当たったのを感じた。
「…メ、イ…?」
横腹を見ると私の十徳ナイフが刺さっており、そこから赤いものが私の身体から溢れていた。
「さよなら」
気を失う直前、メイの左目には『人』の文字が入っていた。
◈◈◈◈◈
「ご主人様…?」
倉庫の奥で血まみれになって倒れているご主人様。
そして、私の姿をした化け物がご主人様を刺したと思われるナイフを手に持っていた。
「あなたは…何者ですか!?」
「あなた?あー…わたしのことかぁ。私は『人竜王』ミズガルズだよ本物さん?」
「竜王…!?」
「いや、厳密には竜王の魂を『
『
だとすると…。
いや、今はご主人様を救出して応急処置をしなければ。
「まずはそこをどいてもらいます!」
周りに転がっている小石だけを無重力に、そして私の思い通りに浮くよう重力に命令を入力。
手をミズガルズに向け、浮いた小石に当たるまで追従ホーミングするよう入力して飛ばす。
それと同時に私の身体中から重力を無くし、一瞬のうちにご主人様のところへ移動。
そしてご主人様を両腕で抱え、すぐさま離脱。
最後に砂に命令を入力、ミズガルズの視界を砂嵐で遮った間に廃トンネルへ離脱した。