元ロケット団のしたっぱは穏やかな暮らしを夢見ている。   作:瑠璃色砂糖月

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 まあまあ長くなりました。
 これにて1章終了とします。


いあ! いあ! どらっぐくいーん!

 全にして一、一にして全。

 

 ンガイにはアウトゲートの残骸がある。

 僕が憧れ望んでいた、あの黒い空気で満たされた世界へと繋がる扉。

 アウトゲートの本体とは、地面の窪みに溜まっている、光を当てると七色に輝く液体だった。

 

 門にして鍵、虚空の門。

 

 扉の正当な開け方は、グレート・オールド・ワンから漏れ出る狂気をアウトゲートへ注ぐこと。

 そのためには、グレート・オールド・ワンの棲み処にとある陣を描かなければならない。

 その陣を通じて門へと狂気を注ぐのだ。

 

 その作業は、僕の同士達が引き受けてくれた。

 そのおかげで、僕の目の前には今、アウトゲートがある。

 

 狂気を注がれたことで七色に輝く液体が蠢き始めて、絢爛な装飾のついた扉の形を象る。

 と、思ったら、次は鍵の形に変わる。ウォード錠。古い形状の鍵だ。突起の部分が常に変化している。

 

 そして、次に象ったのは……いや。

 現れたのは、小さく真白い、奇妙な生き物だった。

 

 似ているのはピカチュウやモルペコといった、各地に存在するねずみポケモンの系列だろうか。

 いや、触角や複眼があるからむしタイプなのか……?

 

 頭上に浮かぶ虹色に輝く球体。

 ぴょこりと動く、長い触角。

 頭部から背中、体躯を覆えるほどに垂れ流している、虹色に輝く平べったく四角い髪のようなもの。あれは翅か……?

 

 丸っこくて、つぶらな虹色の複眼を瞬かせて、生き物は僕を見た。

 

 

「─、─────。───?」 

 

 ───ああ、やっぱり愛し子ではなかったか。きみは誰だい?

 

 

 脳に直接文字が浮かぶような、音が響くような、不思議な声がして目を見張る。

 真白い生き物は首を傾けた。

 

 ───なんだ。口が聞けないのかい? ならば思うだけでもいい。ぼくは人の思考を読めるからね。

 

「ぁ、ぃや、喋れるよ……喋れ、ます。いきなり話しかけられて驚きまして」

 

 ───そうか。で? ぼくを呼び出した理由はなんだね?

 

「外の世界に僕を連れていってくれませんか?」

 

 真白い生き物は目を細める。

 見た目は可愛らしいのに、こちらを探るような無機質な複眼に背筋がゾワゾワした。

 

「この前、あなたの世界からやって来るポケモンを見ました」

 

 裂けた空。どす黒い空気。

 そこからこの世へと滲み出すように出てきた、コールタールのような液状のポケモン。

 

「僕はきっと、産まれる世界を間違えたんです。僕はきっとあなた達と同じ世界で産まれたらこんな苦痛を受けずに済んだ筈です。だから───」

 

 ───こちらの世界で平和に暮らしたいと?

 

 僕の言葉を引き継ぐように真白い生き物が言う。

 理解された。

 それが嬉しくて、言葉のトーンが跳ね上がった。

 

「そう! そうです! そっちなら僕はきっと、僕らしく、ありのままの姿で生きられる!!」

 

 ───……ふぅむ。

 

 真白い生き物は考えるように丸まって、宙でゆっくりと回転し始める。

 

 ───……この場所はツァトグの支配する領域。この場で生活してなおぼく達の発する狂気に侵されず、ぼくを喚び出した。何より、あの子が大丈夫だった訳だし……まあ、この人間も適応する可能性はあるか。

 

 くるり。真白い生き物は僕と向き合った。

 

 ───よろしい! きみをぼく達の世界に招待しようではないか!

 

「本当ですか!?」

 

 ───ああ、本当だとも。

 

 真白い生き物はにこりと笑った。

 

 ───で? いつ向かうかね。永住するつもりなら、きみはこの世界と別れる準備が必要だろう。

 

「今すぐにでも! この世界にはなんの未練もない! 今、行こう!」

 

 ───よろしい。ならばぼくの手を取りたまえ。我らが王、アザトボスの元へ向かおうではないか。

 

 真白い生き物は小さな手を……ではなく、虹色に煌めく髪のようなものを僕に差し出した。

 僕はその髪のようなものに嬉々として触れててててててててあががががががあがあががががが遥か昔我らが王アザトボスは誕生したそこは光が無い音が無い風が無い気配が無い色が無い空が無い建物が無い何も無い無い無い無い「まて」何も無い空虚で黒闇でひたすらに空間だけが存在する暗黒の世界であるアザトボスは当時そのことについて何も疑問を抱かなかったそれもそのはず何故ならその世界がアザトボスの全てであり比較対象が何もなかったからだその状態で途方もない時間を消費しながらアザト「まって」ボスはただ何もせず何も考えず何も起こすことも正すことも喜ぶことも泣くことも怒ることも楽しむこともなかったそれが当たり前だったそれはつまり世界に外的刺激を何も受けなかったことに相違ならないそこには何もなかったアザトボスはやはり何も思わなかったしかしある時アザトボスは気づいた世界にひび割れがあるこ「やめて」とをそれ「ください」の色が白であることも形がまるでガラスを割ったような波形であることもアザトボス何も分からなかった自分自身の形すら捉えていなかったため汁が流れているところが人間でいう目という器官であることも知らなかったし震える体の奥の中心点が心であることも知らなかったしひび割れから溢れて聞こえてくるものが音がであることもそれが己を讃美し崇め奉るものであることも知らなかったひび割れに手を伸ばしひびの隙間から体を捩じ込む「あたまに」ようにしながらはじめて世界の外側へと踏み出したのだそこで見たのは眩しい光の反射により色鮮やかな見知らぬ生き物や構造物でありアザトボスは大声をあげて泣いたそれは赤子がこの世に生まれたことを証明するためにあげた泣き声のようないや今まで見たことがないものへの感「ちしきを」嘆や感動と似ているものだったアザトボスは世界がこれほどまでに美しく煌めいていて常に動きがあり香り高いものであるとは知らなかった未知という外的刺激を受けたアザトボスはそれはそれは喜んだ赤子の泣き声のような嬉声をあげて世界を堪「これいじょう」能しようと顕現した自身を崇め奉る生き物を等しく愛で感謝を伝え力を渡したしかしその生き物達にアザトボスの力は劇毒と等しかったようで悉く狂い苦しみ始めたがアザトボスは感情にとても鈍感でまた他者との触れ合った経験がなかったいつも孤独だったため彼らは自分と同じように未知に触「つめこまないで」れて味わって感じて喜んでいるのだなと信じて疑わなかっただからもっともっともっともっともっともっともっと喜んでほしくて自分と同じように喜んでほしくてたくさん喜びを悦びを歓びを慶びを悦びを慶びを悦びを歓びを喜びを悦びを慶びを悦びを慶びを歓びを喜びを悦びを歓びを慶びを悦びを慶びを歓びを喜びを悦びを与えたくてもっともっともっともっともっともっと遊びたくていっぱいいっぱい皆に皆に楽しんでほしくて味わってほしくて味わいたくて血の味を濃厚でトロッとしてて少し黒の混じったとってもとっても美味しいそれは生き物の体内を廻り流れる生命の液体だと知って本当にこの世界は神秘で溢れていてそれでいて美しくてああもうなんて素晴らしい世界なのかとまた感動して泣いてしまったアザトボスは皆を幸せにしたくて優しく優しく愛でてまるでそれは玩具で遊ぶような気楽さで魔法を使って生活を楽にしてあげるような感覚で人間とポケモン達を争わせてお互いに血の味を覚えさせて終わらない闘争と破壊を殺戮を見物して皆愉しそうで楽しそうに遊んでていいなぁと思ったアザトボスは自分でも「ログさんちょっと待った手ぇ離して!!」遊んでみ「───?」たくなって。

 

 

 

 

 

 ぼんっ。

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

 私が到着した時、見たのは頭部が異常なほど膨れ上がった男性だった。

 あ、これヤバいな。と思って、ログさんに声をかけたが時は遅し。

 

 男の頭は弾けてしまった。

 

 あちゃあ。1歩遅かったかぁ……。

 死因は間違いなく知識の詰め込み過ぎによる脳のキャパオーバーである。

 

 じくうポケモン、ログ=ソトト。

 

 「外」の世界の副王。時間と空間、そして知識を支配する、アザトボスの次に偉くて強い子である。

 嬉しそうにくりくりおめめを輝かせるところやちみっこい外見はとても可愛いらしいんだけどね……。

 ログさんに触れると、ログさんが蓄えている無限の知識が脳味噌に流れ込んできて普通に死ぬからね。もしくは無限の知識のせいでありとあらゆる可能性を垣間見てしまって発狂するらしい。

 

 「外」の生き物(アウトレイダー)による発狂は基本的に各アウトレイダーの性質によって変わる。

 ツァトグによる発狂なら食欲に作用するし、クトゥーガなら暴力的で攻撃性がかなり高くなる。この辺りは分かりやすい。簡単に言えば破壊衝動が駆り立てられるってことだから。

 ハスラマは自身が識ることに重きを置くから、生き物を改造する工程や自身の中身を診られる光景で精神的に追い詰められて発狂する。

 逆にクトゥールは元からある負の感情を更に加速させたうえで新たな感情を植え付けるというか……うーん、憎悪という器に怒りや悲哀という真っ黒なガソリンを追加して唆すみたいな鬼畜じみたことをする感じだろうか。

 

 まあ、そんな感じでアウトレイダーそれぞれの発狂の仕方がある訳で。

 

 正直なところログさんの場合はよく分からない発狂の仕方をするということしか分からない。

 

 私? 私は知恵熱が出て3日くらい寝込んだだけだった。

 多分普段は使わない脳味噌の部分がめちゃくちゃ働いたんだと思う。

 

「さて、ログさん。何か言い訳は?」

「───!? ─────!?」

 

 ───エこれぼくのせいなのかね!? 喚び出されたから応えただけなのに!?

 

 ログさんが珍しく狼狽えている。

 まあ、きみのせいと言えばきみのせいだし、この頭が破裂した男のせいと言えばそうとも言える。

 

「というか、ここにアザトボスはいないの?」

「?」

「いや、アザトボスがここにいると思って来たんだけど」

「─。─────」

 

 ───ああ。彼ならここにいるよ。

 

 ログさんの言葉に「あ、いるんだ。よかった」と言おうとした時、もちっ、と両頬を寄せるように持ち上げられた。そのままもちもちと頬の柔っこさを堪能される。

 

「……あの、そろそろ離して貰っていい?」

「■■♪︎」

 

 いつの間にか私の目の前に真っ黒い何かが聳え立っていた。

 

 形状は逆三角が近い。頭部が異常に大きくて、体は細くスリムである。足はない。私に触れている手も頭部の顎下辺りから出ているように見える。

 頭頂部は真っ黒の王冠が同化しているような、尖った部位があっま。

 コールタールじみた液状の体はまるで巨大なベトベターのようだが、その体に含まれているのは毒ではなく、触れた瞬間精神が崩壊する程のどす黒い狂気である。

 私を見下ろすのは発光する黄緑色の白目部分と赤色の瞳孔で構成された目。生き物というよりはオーベムなどの無機質に点灯する灯りとよく似ているそれは、喜びや嬉しさで輝いているように見えた。

 大きな頭部が横に裂くように開く。蛍光色の黄緑のような体の中身が見えるそれは、裂け目の端が上がると新月で星も無い夜空に黄緑色の三日月があるようだった。その裂け目が口であり、黄緑色の中身は咥内である。

 

 彼がばんぶつポケモン、アザトボス。

 

 今日ずっと探していた彼が見つかってホッと息を吐き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ───アザトボスがぼくの図書館に来てね。暇だからアセビが教えてくれたテーブルゲームで相手をしていたんだ。

 

 ───そしたら、アウトゲートが開かれてね。それを知覚したアザトボスがすぐに出ていってしまったんだ。制止する暇もなかった。きっとアセビが……自身の愛し子が喚んでくれたと思ったんだろう。

 

 ───だけど……ほら、喚んでくれたのはアセビ、きみではないだろう? ぼくは時間と空間を自由に操れるから誰が喚んだのかなんて息をするように理解(わか)るけれど、アザトボスはそうではないから……。

 

 ───意気揚々と飛び出て愛し子じゃなかった結果、アザトボスってばちょっと拗ねちゃって……。ほら、ツァトグの領域で暮らしていた人達がいただろう? 彼らはアザトボスが壊したのさ。憂さ晴らしのためにね。

 

 ───で、ツァトグの領域の隅でいじけてたところで、きみが登場したって訳。

 

 ログさんの説明を受けて、なんとなくだが状況は把握できた。

 

 さっきの男が「外」との扉を開き、ログさんを喚び出した。

 アーナム警察(バカナスさん)が観測していた「外」の世界のエネルギーも多分これで間違いない。

 憶測だけど、頭パァンした彼は多分ログさんが出てくるとは思ってなかったんじゃないかな。ほら、扉ってあくまで出入りするための家具というか、飾り? だから、まさかポケモンを喚び出すものだとは思わないじゃん。

 

 で、各地に残っていた魔法陣は、その扉を開けるために必要な狂気を1ヵ所に集めるための触媒。

 同じ形状・効果を持つ特殊な魔法陣を複数個使うことで、自然と1つの魔法陣に集まるように設計してあるのだとか。

 そういう「全にして一、一にして全」を顕現できる場所ではないと彼は召喚することができないらしい。

 ……うーん、ログさんから直接説明されたけど、あまり意味が分からない。ハスラマはなんだか興味深そうに聞いていたけど。

 

 ログさんは結構特殊な存在である。

 

 全にして一。一にして全。

 門にして鍵。虚空の門。

 彼方のもの。空虚なる存在。

 原初の言葉の外的表れ。外なる知性。混沌の媒介。

 

 これは全てログさんを表すためにアーナム地方民(おそらくその内9割9分がベスティア秘密教団)が作った言葉である。

 

 ベスティア秘密教団の作成した聖典には、ログさんは「存在」という概念そのものであると述べられており、それは上記の言葉のうち「全にして一。一にして全」が当てはまる。

 要は「全ての存在を把握できる一つの個体であり、その一つの個体は全ての存在に接触・隣接している」という……いや要してもよく分からない存在である。本当に。

 時間と空間を支配しているから、時間と空間がある世界全てを知覚できている個体である、と捉えた方が簡単か?

 

 ログさんが普段棲み処にしている「無限図書館」も「全てに繋がり、どこにも繋がっていない場所」なんて言われているし。

 多分、そういう矛盾する言葉遊びができる場所じゃないと「個体」として存在ができないんじゃないかな。

 だって、ログさんにとって「全て」は「自分自身」だから。

 

 彼を調べようにも、調べる研究者が全員発狂するから、結局私以外調べられないんだよね。だから、多分とかおそらくで生態を推測するしかないとも言える。

 

 閑話休題。

 

 それで、喚び出されたログさんは先程頭パァンしてしまった男の願いを叶えるために、アザトボスのところに連れていこうとしたところ、男は知識による発狂で死亡した、ということか。

 

 うん。自業自得ですね。

 それ以外に感想がない。

 

「まあ、起きているアザトボスが地上で顕現しなかっただけマシだね」

「にあ」

 

 ───そうだねぇ。

 

 膝の上で寛ぐニャルさんとログさんを撫でながら呟くと2体共反応した。し、ログさんは私を見上げて私の目から視線を逸らさない。

 ……ログさんにじっと見られるとなんか落ち着かないんだよね。

 

「……顔に何かついてる?」

 

 ───いや? きみはぼくに触れても発狂しないからさ。不思議な人だなぁと改めて感じているよ。

 

「あー……なるほど」

「縺昴l遘√b諤昴▲繧ソ! 隗」蜑悶@縺溘>!」

「やめろ」

 

 ハスラマも黄色い衣で手を上げるように動かす。「解剖したい」じゃないんだよ。

 黄色い衣を蠢かせてこちらににじり寄るハスラマはクトゥーガに回収された。

 クトゥールがそれを見てゲラゲラ嗤い、ツァトグは可哀想なものを見る目を向けていた。

 

 その様子を眺めていると、ログさんの虹色の翅が首を巻きついた。

 ログさんが至近距離で私の目を覗き込んでいる。

 小動物のような、くりくりとした大きなつぶらな瞳。しかし、どこか冷たい恐怖を覚えさせる無機質な虹色の複眼の1つ1つに、私の顔が映っていた。

 

 ───何故きみは狂わないんだい?

 

「全部理解できるなら聞かなくてもよくない?」

 

 私という生き物の成り立ちからこれまでの人生、私の思考、更には手持ちポケモンまで全て把握しているだろうに、わざわざ聞く意味はあるのだろうか。

 という私の疑問を含めた言葉に、ログさんは首を横に振った。

 

 ───「理解できる」と「納得できる」は似ているようで違うのだよ。ぼくはありとあらゆる事柄を「理解」はできるが、だからと言ってその事柄を「納得」できるのかというのはまた別問題だからね。

 

 ───そして、「納得」するための近道はその事柄に「理由」を尋ねることだ。

 

 ───「アセビという生き物」を知識として「理解」するのではなく、「親しき隣人」として「納得」しておきたいのさ。どうでもいい存在ならいちいち「理由」なんて尋ねないよ。面倒だし。

 

「なるほど」

 

 ───それにきみ、あまり図書館に来てくれないだろう。折角きみにはわざの1つにどこでも繋がる扉を出せる子がいるというのに。

 

 どこか不貞腐れたようにぼやいたログさんにため息とジト目が出た。

 

「だってログさん、アネデパミと会うとすぐ逃げるじゃん」

 

 ───きみがいつもぼくがだらしない格好をしている時に来るからだろう!! せめて連絡してから来なさい!!

 

「責任転嫁されたし電波繋がらないじゃん、あの図書館。ニャルさんにもそんな私事なんて頼めないし」

「んにぃ?」

 

 ───寝てなさいニャルテップ。

 

「にあ」

 

 ログさんは意外にもアネ゛デパミ゛のことを好いているらしいのだ。彼の性質と似たようなわざを使えるからだろうか。

 会わせてやろうにも、図書館にいるログさんに声をかけるとすぐ逃げるのだ。だから、最初はてっきり私達と馴れ合いたくないのかと思っていた。本当は照れてるだけとか乙女が過ぎる。

 でもログさんってどちらかというとオス寄りじゃなかったっけ? 私のアネ゛デパミ゛は普通にオス……いや、恋愛にケチつける気はないけどね? お互いがつがいと認めたんならそれでもいいと思うし、いざたまごが欲しいとなったらけつばんがどうにかしそうだから心配はしてないけど。

 

 閑話休題。すぐに話が脱線してしまう。

 

 なんだっけ? ……あぁ、どうして狂わないのか、という質問だったね。

 ……うーん。しかし、質問されたからと言って答えられるのか、というわけでもないんだよねぇ。

 

「……例えば、ログさんの場合は触れるとほぼ強制的に脳味噌に知識が流れ込んできて発狂する、みたいな感じじゃん」

 

 ───うん。

 

「その外から流し込まれる知(・・・・・・・・・・)識を家の中からガラス(・・・・・・・・・・)越しに眺めてる(・・・・・・・)って感覚なんだよね」

 

 戸締まりが完璧にされた一軒家にいる私。

 家の外からやって来て、私を食い潰そうとする狂気。

 家の中に侵入(はい)ろうと、必死に突破口を探るそれを、私はいつも窓ガラス越しに眺めている。

 

「私の成り立ちを知っているなら分かると思うけど、私は元々この体の持ち主じゃないんだよね。小さい頃、「私」は「アセビ」という少女の人生を眺めていた」

 

 ───その少女を眺める感覚と狂気を受け流す感覚が似ていると?

 

「わりと」

 

 「アセビ」を眺めていた頃は今の逆で、家の中にいる「アセビ」の頑張っているところを外から眺めていた。

 気分は近所の子供の成長を見守るおばちゃんである。

 

 私の言葉にログさんは興味深そうに頷いた後、首を巻きつけていた翅をほどいた。

 

「納得してくれた?」

 

 ───うん。

 

「それはよかった」

 

 小さな頭を撫でると触角が揺れて、ログさんが気持ちよさげに目を伏せる。

 こうしていると可愛いんだけどねぇ。

 

 

 

 

 

 ちなみに放置されてまた拗ねてしまったアザトボスを必死に謝り倒した結果、「外」の世界に連れていかれて1週間ほどアザトボスの子守りをすることになった。

 

 それと、頭パァンした人の仲間……つまり、残党はジャノメさんが確保してくれたらしい。ココロモリ通信越しに見る彼らは上半身を皮膚ごと剥かれていたが、拷問でもしていたのだろうか。

 まあ、アザトボスが見つかった以上私から彼らに聞くことはないので、後処理はジャノメさん達に任せた。

 ジャノメさんの背後から命乞いの声が聞こえたが、私の知ったことではないので普通に通信を切った。

 来世でやり直せるといいね、と願うばかりである。




・頭パァンした男
 狂気に耐性はあったが、知識の狂気は体験したことがなかった。当たり前である。
 ちなみに「外」の世界に行けたとしても、1歩踏み込んだ瞬間発狂していたのでどっちにしろ移住は無理。来世で頑張るといいよ。

・アセビ
 1週間アザトボスのご機嫌取りのために「外」の世界に行った。

・ニャルテップ
 アセビの撫でテクは最高。
 1週間後アザトボスを全力であやして胃痛がする。

・ハスラマ
 「私はアセビを解剖しようとしました」という看板を首から提げて正座していた。

・クトゥーガ
 ハスラマの前で仁王立ちして説教していた。

・クトゥール
 ハスラマざまぁwww
 腹抱えて嗤っていた。

・ツァトグ
 何してんのあいつ……。

・ログ=ソトト
 分類  :じくうポケモン
 タイプ :あく・むし
 通常特性:そとなるちせい
 夢特性 :???
 でんきタイプにするかむしタイプにするかめちゃくちゃ迷った。選ばれたのはむしタイプ。理由はあくタイプに効果抜群狙えるのと、「全にして一、一にして全」という言葉は虫の集合体みたいなやつが意外と合うんじゃね? という作者のなんとなくの思いつき。
 普段は「無限図書館」で暮らしている。几帳面だがずぼらな性格。普段は本の整理をしながら、ぐうたら引きこもり生活を満喫している。だらけている時にアセビがやって来るので、いつも恥ずかしい思いをしている。だらけている所は他人に見せたくないタイプ。
 アネ゛デパミ゛のことが気になっているらしい。
 1週間後アザトボスを必死にあやして頭痛が起きる。

・アザトボス(めざめたすがた)
 分類  :ばんぶつポケモン
 タイプ :あく
 通常特性:おわりのはじまり
 夢特性 :───
 折角会えたのに放置されていた可哀想な「外」の世界の最強。
 周りからの扱いが雑なのはいつものこと。だって大体寝てるんだもん。仕方がないね。
 でも、起きていたらそれはそれで何かやらかすので周りから「寝ろ!!!」と全力であやされる。そのため、いつもスヤァしている。
 寵愛している人の子と1週間遊ぶことができてウルトラハッピー。1週間後に「もっと遊ぶの! まだ帰らないで!!」と全力で駄々をこねるしアセビをナイナイしようとする。
 ログさんとニャルさんが全力で足留めしてその間にアセビが逃げる。アセビが帰ってめちゃくちゃ暴れてふて寝する。ぐすん。
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