元ロケット団のしたっぱは穏やかな暮らしを夢見ている。   作:瑠璃色砂糖月

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 クトゥルフ神話のタグはあくまでオリポケのモデルというか、一応関係あるかな?でつけているタグです。
 作者はクトゥルフ神話はにわかのため、あまり期待はしないでください。参考にはしていますが、詳しくはありません。


こんなリージョンフォームは嫌だ。

 早朝にて。

 

「コ~~~コココココココココッッッ!!!!」

「『ケオヴ』」

「ギャゥ」

「コギャッ!?」

 

 毛布にくるまって寝ていたところに、何者かが盛大に騒音を奏でた。

 眠気が一瞬で吹っ飛んだ。目を見開き飛び起きて、騒音の原因から距離を取る。

 アーナム地方では夜襲はあるあるなのだ。寝ている時でさえ気が抜けばコロリと逝くのはいつものこと。

 次手をどうしようかと考えていると、アネ゛デパミ゛が「ゲギャ」と一鳴き。どうやら騒音の原因は捕まえたらしい。

 辺りを警戒していたベアビヲ9も、アネ゛デパミ゛が捕まえた生き物以外の存在を確認できなかったようだ。

 単独犯とは珍しい。じゃあ潰して終わりだな、と思っていたら、なにやらポケモンの悲鳴があがった。

 薄暗闇の中に目を凝らす。アネ゛デパミ゛が片手で捕まえていたものはココロモリだった。

 

 ……ココロモリ?

 

 よく見れば、ココロモリの脚部に何か着いている。床に上体が着くほどの低い姿勢をやめて、立ち上がる。ベアビヲ9に目配せして、それを持ってきて貰った。

 手渡されたのは、警察章だった。

 その章には、アーボを咥えたバルジーナが、マラカッチを足蹴にしている姿が描かれている。

 

「……きみ、バカナスさんのところのココロモリ?」

「ころろっ!」

「なぁんだ」

 

 安堵のため息をつく。

 どうやら先程の騒音はココロモリアラーム(ココロモリが盛大に『さわぐ』ことである)だったらしい。それは誰だって飛び起きる。

 

 ここ、アーナム地方には通信整備があまり整っていない。故に、スマホロトムなど便利な機材が扱える場所は非常に限られている。

 理由は言わずもがな、外部からやって来る作業員を軒並み食い物にして売り捌くバカしかいないからだ。それを繰り返した結果、アーナム地方には電波系統だけでなくその他の整備員が来なくなった。当たり前である。どうして目先の欲望に忠実な犯罪者は、外部から作業員を呼び込んでいるのかを理解しようとしないのか……。アーナム警察だけじゃどうにもならないことを外部委託しているというのに、これでは本末転倒もいいところ。

 

 そのため、昔から遠くの地にいる誰かと通信する際に重宝しているのが、ココロモリだった。

 アーナム地方では珍しいエスパータイプのポケモンである彼らは、所謂(いわゆる)伝書鳩の役割を担っていた。

 対象までココロモリに『テレポート』で跳んでもらい、テレパシー能力で通信するのだ。

 

 危険が勘違いだったことで出てきたあくびを噛み殺して、大きく伸びをした後、アネ゛デパミ゛から解放されたココロモリの通信に応じる。

 ココロモリの鼻の模様であるドクロマークが輝くと、宙にテレビ板のような画面が浮かび上がった。

 そこに映っているのは、やる気の無さそうな顔をしたバカナスさんだった。

 

「おはようございます、バカナスさん。それで、どうしました? まだ朝の4時なんですけど」

『朝早くにすまんな、嬢ちゃん。ちょっと手を貸して欲しいんだが』

「はあ……」

 

 突然のココロモリアラームに驚いたのも束の間、どうやら都市に異変が起きているらしい。

 

『今、毒の雨が降ってるんだが、もう見たか?』

「毒の雨……?」

 

 首を傾ける。

 毒の雨はこの地方ではそこまで珍しい自然現象ではない。むしろ普通の雨が降る方が驚くくらいなので、バカナスさんが何故連絡してきたのかがまだ分からなかった。

 

「毒の雨なんていつものことじゃないですか。何が問題なんです?」

『あー、それはそうなんだがな……その様子じゃあ、まだ外の様子を見てないな?』

「外?」

『見れば分かる』

 

 バカナスさんの言葉に眉を寄せる。彼に促されるままに窓に近づき、閉めていたカーテンを開けた。

 

『腐蝕の雨が降っているんだ』

「わぁい大惨事だぁ」

 

 目の前に広がる光景に遠い目をした。

 

 簡単に言えば、あらゆる建物が溶け崩れている。チョコレートでできた建物にホットミルクを掛け流したら、きっとこのようにぐずぐずに溶けていくのだろう。こんな美味しくなさそうなチョコレートは嫌だ。

 

 なんとなく道路を見ると、道端に白骨死体がいくつも転がっていた。おそらく雨にうたれた麻薬中毒者のものだろう。ラリってハッピーな気分のままあの世へ逝けたのなら僥倖だ。モーマンタイ。

 麻薬はアーナム地方では普通に流通している食材の1つである。ギャングの運営しているショップに売ってあるシリアルなどの加工食品にも当たり前のように混ぜ込まれているので、そういうショップで買い物をする時には食品ラベルの原材料欄をしっかり確認する必要がある。もしくはアーナム警察が運営しているショップに脚を運ぶべきだ。あそこが1番安全安心である。少し値は張るが、薬物依存でパッパラパーになるよりかはマシってもんだろう。

 

 あちこちの建物が原型を失くしていく様を少しの間眺めた後、私はカーテンを閉めた。

 

「状況は理解しました。いつでもいけます」

『助かる』

「原因は?」

『最近ナイトメアランドで薬中鳥(ジャンキードリ)が大量発生していたのを確認したって報告が上がってる。多分そいつらが上空から腐蝕の雨を降らせているんじゃねぇか、ってのが手前さんの推測』

「オトシドリのこと薬中鳥(ジャンキードリ)って言うのやめません?」

『伝わってんなら別によかねぇかぁ?』

 

 やめるつもりないな、これ。

 

『嬢ちゃんだってアーナムルンパッパのことラリパッパって名付けて流行らせただろう?』

「やめてそれ私の黒歴史」

『大喜利でチューベローズの坊っちゃんを殺しかけたんだってな?』

「やめろ」

 

 暇だったからカルテル団とポケモン大喜利してただけなのに。「アーナムルンパッパにニックネームをつけるなら?」ってお題に対して真剣に答えただけなのに人殺しになるところだったとかイカれてる。

 カルテル団の連中が腹抱えて死ぬほど笑っていた当時を思い出させるな。チューベローズが笑いすぎてひんしのコイキングばりに死にかけたんだぞ。マジで酸素マスク使ったんだからな。

 その後マジでアーナムルンパッパの呼び名がラリパッパで定着したから頭を抱えたんだぞ。

 

「……ちなみに誰から聞いたんです?」

『コヘンルーダの坊っちゃん』

「くっそチューベローズだったら殴り込んだのに……」

 

 アーナム地方唯一の良心に殴り込みにはいけない。

 私は深いため息を吐くと、がしがしと頭を掻いた。

 

「話を戻しますけど、オトシドリを片っ端から叩き落とせばいいんですね?」

『そういうことだ。住民には外出禁止令を出していて、怪我人については自警団の連中に既に任せてる。町の復興は手前で受け持つから、嬢ちゃんは薬中鳥を頼む』

「了解です」

 

 衣装箪笥からパーカーを取り出してそれを着込んだ。

 アーナム地方に自生している植物とポケモンの吐いた糸を紡いで加工し、衣服に取り入れているので、毒に対する耐性が非常に高い。

 毒の雨でも動じないのはこういうことだ。……まあ、腐蝕の雨を防ぎ切れる自信は無いので、『しんぴのまもり』要員は必要だろう。

 

 私の手持ちで空でも活動できるのは限られている。

 アネ゛デパミ゛はほのお・ひこうタイプの複合。純粋な大空活動要員。

 それと、ベアビヲ9。彼はでんきタイプだが、常時浮遊しているおばけのようなものだ。アネ゛デパミ゛の動きに着いてこられるので彼も連れていく。

 あとはけつばん。……ただ、この子は最終手段にしておきたい。ステータス自体は手持ち随一なのだが、純粋に破壊と殺戮を愉しめる子なのだ。下手したら都市ごと吹き飛ばしかねない。

 

「さて、行こうか」

「ギュゲェル゛ア゛、ア゛」

 

 ベアビヲ9に『しんぴのまもり』を使って貰ってから、外へと出る。アネ゛デパミ゛の背中に飛び乗り、空へと飛び立った。

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

 薬中鳥(ジャンキードリ)ことオトシドリ。

 元々はあく・ひこうタイプの彼らだが、アーナム地方のあちらこちらで蔓延るドラッグを拾い食いしている間に、当たり前だが薬物中毒になってしまった。アホ過ぎる。

 そして、ドラッグが見つからない時は1人でも愉しめるようにと体内で毒を生成できるようになってしまったのだ。バカ過ぎる。

 ある意味でアーナム地方らしい最低最悪な理由でリージョンフォームを成してしまったポケモンである。こんなリージョンフォームは嫌だ。本当に嫌だ。穏やかじゃない。

 ちなみにタイプはどく・ひこうの複合である。

 

 そいつが上空にわらわらと湧いていた。

 

 羽根からキラキラとした紫色のものが振り撒かれ、だらしなく開かれた嘴からは紫色の唾液が滴り落ちている。

 焦点の合っていない、恍惚に見開かれた瞳は一体何が見えているのやら。

 

 あれで正常な個体なのだから、つくづくこの地方は狂っている。ポケモンに悪い影響を与えすぎ。

 ため息を吐いて、アネ゛デパミ゛に指示を出す。

 

「悪く思うなよ」

 

 オトシドリの群れに突っ込む指示を。

 

「……、ラッグ?」

 

 群れから少し孤立気味になっていたオトシドリに気取られた。

 だが、その時にはもう既にこちらの攻撃の射程距離内に入っている。

 パチ、パチ。アネ゛デパミ゛の手の爪先に火花が散り、雷を宿す。『かみなりパンチ』でオトシドリの横っ面をぶん殴りひんしにすれば、1体のオトシドリが甲高い鳴き声をあげた。

 何十もの視線が私達を貫き敵意を向けられる。『にらみつけられ』てアネ゛デパミ゛の体がぶるりと震えて、ぼうぎょが下がったことが分かった。が、ぼうぎょが下がったところで、物理わざは当たらなければ意味はない。故に、全て避ければ問題ない。

 敵認定されたのならば僥倖。私達を撃墜しようと追ってくるオトシドリから逃げる。都市の上空からただの荒野に移動するように誘導しながら、飛んでくる『アシットボム』や『ダストシュート』を避けていった。あっぶね目の前に『いわが落ちてきた』。

 

「『いわおとし』ならまだいいけど、『がんせきふうじ』が降ってくるのはきついな」

「ゲア゛ア゛」

「うん。都市から大分離れたね。反撃しようか」

「ギュワ゛ッ」

「『ケオヴ』解禁」

 

 パキ、パキ。

 空気が凍りつく音がした。

 こちらに向かっていたオトシドリを襲うのは、寒風に似た灰白色の炎。突然の冷気に「ギャ?」と1つ鳴いた時には、口から垂れ流していた唾液が冷たくなり、氷の粒になっていた。

 そのまま全身が凍りつき、翼を動かせなくなり墜ちていく様を眺める。

 地面に叩きつけられたオトシドリは、赤い液体の入った水風船を地面に思い切り叩きつけたような、そんな血溜まりを作っていた。

 

 『ケオ゛ヴ』というわざがある。

 アネ゛デパミ゛のモチーフはリザードンだが、ほのおタイプのわざはほとんど覚えず、レベルが低い時に覚えるのは『オーロラビーム』などの、ほのおタイプのわざ以外のものが多かった。

 『ケオ゛ヴ』はそんな彼が覚えるこおりタイプの特殊技の1つ。イメージは威力の低い『ねっぷう』。色の無い凍てつく炎で対象を攻撃しつつ、相手を高確率でこおり状態にするという技だ。

 

 それに加えて。

 

「もう1度『ケオヴ』」

「ヒュオオ゛オ゛オ゛オ゛ッ」

 

 このわざは連続で繰り返し使うことで威力が上がっていく。

 今の『ケオ゛ヴ』でひんしにならず、かつこおり状態にもならなかったオトシドリを襲うのは、先程の倍の威力と冷たさを纏う炎である。

 

 つまり、何が言いたいのかと言うと。

 

チート級の(バグってる)相手に喧嘩売る行為はやめときなよってこと」

 

 地面に叩きつけられたトマトみたいになったオトシドリを見て、アネ゛デパミ゛は「ギュワ゛」と得意気に鳴いた。




・ココロモリ(アーナムのすがた)
 分類  :きゅうあいポケモン
 タイプ :あく・エスパー
 通常特性:てんねん/テレパシー
 夢特性 :ノーてんき
 アーナム地方のリージョンフォーム。チャームポイントは鼻のドクロマーク。人間と上手く共存している。

・オトシドリ(アーナムのすがた)
 分類  :おとしものポケモン
 タイプ :どく・ひこう
 通常特性:ふしょく/するどいめ
 夢特性 :いわはこび
 アーナム地方のリージョンフォーム。人間が落としたドラッグを見つけるために地面を舐めるように見ていることが多い。

・ルンパッパ(アーナムのすがた)
 分類  :のうてんきポケモン
 タイプ :くさ・どく
 通常特性:すいすい/ポイズンヒール
 夢特性 :マイペース
 アーナム地方のリージョンフォーム。ドラッグハーブをもしゃもしゃしていたら漏れなく麻薬中毒となった。繰り返しハーブをもしゃもしゃすることでどくタイプが追加となり、ドラッグに対する耐性もついて麻薬の服薬量も激増した。
 麻薬を摂取した時の狂った動きとしばらく摂取できていない時の脱力感のギャップがえげつない。ドラッグをばらまくと音に反応してすぐさま駆け寄ってくる。むしゃむしゃ食べながら躍り狂う様は圧巻である。
 アセビから大喜利で「ラリパッパ」と名付けられ、現在それで定着している。ポケモン図鑑にラリパッパと載る日も近い。

・毒の雨
 イメージはえげつねぇ酸性雨。当たったら普通に肌が溶けるため、雨傘をさすだけでは対策としては不十分。毒耐性の高いレインコートなどの衣服タイプの雨具の使用を推奨される。アーナム地方ではよく降っているので特に珍しくはない。
 腐蝕の雨はこれの超強化版。人間は白骨化するし、建物だって溶かせる。シンプルにヤバいので早急な対策が必要。

・ただの雨
 アーナム地方では結構珍しい。
 みずタイプのポケモンが狂喜乱舞するらしい。
 どくタイプのポケモンがブーイングを起こす。

・ケオ゛ヴ
 タイプ:こおり 分類:特殊
 威力:40 命中率:85
 対象:相手全体
 アネ゛デパミ゛の専用技。連続で使用すると威力が倍増していく(最大威力640)。攻撃が外れたり連続で使用しないと威力は元に戻る。また、70%の確率で相手がこおり状態になる。
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