元ロケット団のしたっぱは穏やかな暮らしを夢見ている。   作:瑠璃色砂糖月

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 ちょっと前回の後書きに書いているポケモンの設定を変えました。
 もしアーナム地方がポケモンシリーズで発売されたら、タイトルはきっと「クライム」と「パニッシュ」だと思う。


大体蟻地獄のせい。いや砂地獄?

 アーナム地方は地下にも広い空間が広がっている。

 元から地下が空洞になっていたのか、世界の「外」から来た何かから逃げるために、人間とポケモンが力を合わせて掘り抜いたのかは分からない。

 ただ、そこに残る廃墟の生活感からして、何者かが住んでいたのは間違いないらしい。

 

 毒の雨は土で濾過されて綺麗な水となり地下水として溜まっていき。

 地上の光を受けた特殊な植物が遥か地下にあるこの空間まで光を届ける。

 その光を使って苔を中心とした胞子で増殖する植物やその他きのみがなる木が成長していて。

 それを主な食べ物とする麻薬に犯されていないポケモンが多く存在している。

 また、無尽蔵の鉱脈があちこちにあり、宝石の他に“ほのおのいし”や“かみなりのいし”といったポケモンの進化に必要な石も眠っている。

 

 私達は地底世界を「ピュンゲン」と呼び、その自然の恩恵を少しばかり拝受している。

 

 ……で、まあ、なんでこんな話をしているかと言うと。

 

「すまねぇ。怪我ねぇか」

「ルーダが庇ってくれたお陰でね。ありがとう。助かった」

「気にすんな。男が女守るのは当然だろ。……にしても」

 

 どーっすかな、これ。

 遥か天井からパラパラと降ってくる土くれと地面の天井を見上げながら、コヘンルーダは呟く。

 

 仰向けに地面に倒れている彼に抱き締められる形で乗っかっている私も遠い目をした。

 

 長々と回想するまでもない。

 最近、コヘンルーダの故郷であり、彼が所属している自警団が拠点にしている町、ネムレスタウンに何度も地震が起きていた。

 そこまで強い地震ではないが、約1週間前から高い頻度で起こるため、その原因究明を自警団から依頼された。

 コヘンルーダと共に辺りの捜索とピュンゲンに何か異常がないのか確認していたところ、ジゴクアリの『すなじごく』に私が引っ掛かり、そのままピュンゲンまで落ちてしまったというわけだ。

 

「……砂漠の歩き方、マスターしようかな」

「ジゴクアリの『すなじごく』に引っ掛かってピュンゲンまで落ちるのはわりとあるあるだから気にすんなって。オレもたまに正規ルートめんどくなってする時あるし」

「……地上と地底世界(ピュンゲン)の距離、一体何十キロあると思ってんの?」

「ポケモンってすげぇよな」

「それで済ませられないよ???」

 

 ネムレスタウンは砂漠地帯にある町である。

 その周囲に棲んでいるのはじめんタイプのポケモンが多く、その中でもジゴクアリというポケモンは厄介だった。

 全長10メートルもある長い体を砂の中に隠して、砂地にすり鉢状の穴を掘り、罠を作る。そして、獲物がかかるまで微動だにしないため、ただの砂丘と勘違いしてしまう人も多いらしい。

 縁がなだらかかつ滑らかなため、その穴に落ちてしまった獲物は這い上がることができずに、逆に踠けば踠くほど穴の底まで落ちてしまう。

 そして、獲物が自身の射程距離までやって来た瞬間、ジゴクアリは穴の底から飛び出して、頭部に生えた立派なハサミで獲物を仕留めるという狩りをする。

 

 その狩りにまんまと引っ掛かったのが私である。情けない。

 そして、どう考えてもやはり分厚い地面をぶち抜くような『すなじごく』ができるとは思えない。

 どうなってんだろうなぁと考え込んでいたら、「そんなことより場所の把握と出口見つけんぞ」と声がかかった。

 コヘンルーダは既に立ち上がり、服についた土や砂を(はた)き落としている。

 

「ほら」

「ありがとう」

「おう」

 

 差し出された手を掴み、引っ張り上げられるように立ち上がる。

 

「場所どの辺か分かる?」

「分からねぇが、壁が青いからツァースであることは確かだな」

「いきなりヨースまで落とされることがあるの?」

「ある」

「こっわ」

 

 ピュンゲンは3つの層があり、それらを繋ぐ大穴がいくつもある。

 1層目は青色の世界、「ツァース」。地面や土壁、天上や廃墟まで青い成分が含まれている。地表に1番近く、浅い層。

 2層目は赤色の世界、「ヨース」。全てが赤く、ツァースで見られるものよりも劣化が進んでいる。この層では特に希少な鉱石が見つかりやすく、あちこちに鉱脈がある。

 3層目は黒色の世界、「ンガイ」。最下層であり、光の届かない暗黒領域。ここには「外」と通じている「門」があり、「外」から来たモノ達がうようよしている。そのため、腕っぷしと精神力に自信しかない人しか行くことはできない。

 

 下の層に行くにつれて、生息するポケモンも強くなるから、ツァースより下に行く人はあまりいないらしい。いない、というより、いたとしても帰ってこないから把握できていないのが正解。

 

「適当に歩いてたら上に上がるルート見つかると思う?」

「あるだろうなぁ。その時はアネデパミに乗せてくれ」

「勿論……お」

 

 ズズン、と地面が揺れる。天井から青い土くれがパラパラと落ちてきた。

 

「ピュンゲンでも地震かぁ」

「揺れが地上より強いから、やっぱこっちで何か起こってるっぽいな」

「なるほどねぇ……ん?」

 

 ふと視界に入ったものが気になった。この辺りで見かけないポケモンだ。いや、見かけない、というよりは、生息地が違うと言えばいいのか……。

 

「ルーダ、ディグダールってピュンゲンに生息してたっけ?」

「いや? ディグダはいるけど、ディグダールはいないな。地表の廃墟でマンホールに擬態してるやつ以外はそうそう見かけねぇし」

 

 ディグダールという、体はヘドロが滴り落ちる黒い泥の塊のようで、頭にマンホールを乗っけているようなポケモン。原種ディグダとベトベターを合体させてマンホールを乗っけたようなその子は、泥の奥で光っているつぶらな瞳を、迷子のようにキョロキョロと彷徨(うろつか)かせていた。

 頭に着けたマンホールのようなものは体毛で、とても硬い。子供くらいなら乗ってもびくともしない力持ちである。よくマンホールの上を歩いていたらディグダールだった、というのはよくある話。

 頭上を歩く人の足を引っ掛けて転ばせて、遊ぶことが多々あるので、「転んだ時に近くにマンホールがあったら、それはディグダールだ」とも言われているくらい悪戯好きでもあるのだ。可愛いね。

 

 とりあえず、目の前にいるディグダールはボールを投げて捕まえておく。

 ディグダールはじめん・どくの複合タイプ。下手したら飲み水にもなる近くの水場を汚しかねない。

 

「なんでディグダールがここにいるんだ……?」

「うーん……マッドリオ系列の主な生息地って下水道とかだったよね? 流石にピュンゲンまで繋がるところはなかったはずだけど……」

「そんな下水道が昔からあったらツァースはもっと混沌地帯になってるだろ」

「それはそう」

 

 ディグダールの進化形をマッドリオというのだが、彼らは基本、下水道に生息している。下水道も地下とはいえ、ピュンゲンのような地底までやって来ることはないのだが……。

 まあ、考えても分からないものは仕方がない。

 とりあえず地震の中心に近づけば何か分かるかもしれない。

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

 思っていたのとちょっと違う感じの争いが繰り広げられていた。

 

 ダグトリオとその群れの仲間であろうディグダが、マッドリオとその仲間のディグダール達に怒り狂った雄叫びをあげている。

 ここまではいいのだが、そのマッドリオとディグダール達はおろおろしていた。『じしん』を受けて、泥をかけられたとなっては流石に応戦していたが、……なんというか。混乱状態というか、困惑しているというか、そういう感情が読み取れてしまった。

 

 縄張り争いではなく、どちらかというとダグトリオの群れが一方的に怒っている感じである。

 

「ねぇルーダ、あれ通訳できる?」

「あいよ。じめんタイプならドンと来いだ」

「よっしゃアネデパミ『ケオヴ』で全員ぶちのめせ」

「バギャア゛ッ」

 

 ほのおタイプのくせにこおりタイプのわざが大得意なリザードンもどきことアネ゛デパミ゛が刺さる刺さる。

 アネ゛デパミ゛がダグトリオとマッドリオの群れを一網打尽にし、それを褒めている間にコヘンルーダが彼らの口に“げんきのかけら”をねじ込みながら話を聞いた。

 

 話を纏めると、まずマッドリオ達は地上にある廃墟の枯れた下水道に棲み着いていたらしい。しかし突然、その下水道に大穴が開き、そこからジゴクアリが現れた。抵抗空しく『すなじごく』に巻き込まれてしまい、目が覚めた時にはツァースにいたとのこと。

 周りの把握の前に、とりあえず近くの水場で一息つこうとしたところ、その水場を含む一帯を縄張りとしているダグトリオ達に襲いかかられた。

 ダグトリオはダグトリオで、マッドリオ達を縄張りに不法侵入してきた余所者かつ水場を荒らす連中だと認識していたようだ。縄張りから追い出そうとめったやたらに攻撃を繰り返していたが、中々向こうも倒れず引かずで長期戦になって、イライラしていたところで私達が現れた。ということらしい。

 

 これが、コヘンルーダ翻訳による事態の全貌だった。

 そうだね、とりあえず今回悪いのは全部ジゴクアリである。片っ端から砂地から引っこ抜きたい。多分今ならできる。

 

「……ルーダ、これさぁ、ネムレスタウンに起こってた地震も多分これが原因なんじゃない?」

「ぽいよなぁ。こんだけ数がいれば揺れるだろ。……んじゃあ、マッドリオの群れの方はオレが棲み処まで連れていってやる」

「んまぁっ!!!」

「それとも、ここに拘る理由があるか?」

「まぐまぐ」

「ダグトリオもそれでいいな?」

「だぐとと」

 

 交渉成立。

 マッドリオの群れは嬉々としてコヘンルーダの持つモンスターボールに吸い込まれていく。

 ダグトリオはその様子をしばらく眺めた後、地面に潜ってどこかに消え去った。

 

「んで、どこから上に行こうか」

「廃墟に扉があればアネデパミが『どこかしらドア』使えるけど」

「ギュワ゛」

「あんたのポケモン本当に有能だよな」

「褒めても何も出ないぜ」

 

 アネ゛デパミ゛は誇らしげだった。




・ネムレスタウン
 モデルは「無名都市」。
 ルヴァーハリ砂漠の中心にある町。自警団本部がある。アーナム地方では珍しくまともな人間が生活しており、他地方では当たり前の秩序が唯一保たれている珍しい町である。
 犯罪者や「外」から来たモノ達は皆自警団の連中に追い払われている。

・ピュンゲン
 地底都市「クン=ヤン」がモデル。ただし、内容は捏造と妄想。ポケモンと人間の憩いの場にしたかったのでこういう設定になった。
 唯一「外」から来たモノやドラッグに影響されていないポケモンが多く生息している楽園。ただし、最下層には正気を失うほど恐ろしい狂気が待ち構えていると噂されている。

・ジゴクアリ
 分類  :すなありポケモン
 タイプ :むし・じめん
 通常特性:ありじごく/わなつかい
 夢特性 :すなのちから
 オリジナルポケモン。ルヴァーハリ砂漠に生息している。よく蟻地獄の罠を作っては、それにかかった旅人やポケモンの体液を啜って暮らしている。また、地下にはジゴクアリの巣道があり、いろんな箇所に繋がっているという。
 何十キロも地下にあるピュンゲンとも繋がる巣道があるとかないとか……?

・ディグダール
 分類  :マンホールポケモン
 タイプ :じめん・どく
 通常特性:ぎたい/あくしゅう
 夢特性 :いたずらごころ
 オリジナルポケモン。廃墟や町中でマンホールに擬態している悪戯好き。よく子供達の遊び相手になってくれるが、体を構成している泥には毒が含まれているため、遊んだ後はちゃんと体を洗わないと体調を崩す。

・マッドリオ
 分類  :げすいどうポケモン
 タイプ :じめん・どく
 通常特性:よびみず/ねんちゃく
 夢特性 :いたずらごころ
 オリジナルポケモン。下水道を棲み処にしている。記憶力が良いので、顔見知りの人間がいたらひょっこり顔を出すこともある。穏やかな性質をしている子が多く、のびのびと暮らしている。
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