元ロケット団のしたっぱは穏やかな暮らしを夢見ている。   作:瑠璃色砂糖月

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 もう1話続くぜ!
 色々と書いてたら無駄に長くなってしまった。すまん。
 あと、見返していたらハスラマのいる迷宮の名前が違っていたので修正しました。


いあ! いあ! みどり!

 自分が住むべき世界が間違っていると感じたことはないか?

 感じたとしたら、それはいつだ?

 

 両親と仲違いした時か?

 友達にいじめられた時か?

 ポケモンに嫌われた時か?

 ポケモンバトルで負けた時か?

 

 僕がそれを感じたのは、相棒の入った状態のポケモンボールを踏み潰したことを咎められた時だ。

 

 踏み潰したことを責められた時、何を言われているのかよく分からなかった。

 自分のポケモンの命をどう扱おうともいいではないか。主人であり、ポケモンを捕獲した僕が決めたことならば別に構わないだろう。

 だって、ポケモンは僕のことを信頼している。どんなことをされたとしても、それは意味のあることだと信じている。

 そう、意味のあることなのだ。次に繋げるための。ポケモンバトルで負けるような肉体を持ってしまった彼らへの救いであり、チャンスなのだ。

 

 今の体を捨てて、次の体へ生まれ変わるためのチャンス。

 そして、別の肉体を得たとしても、きっと僕達は巡り会える。僕ならそれが分かる。

 

 出会えることを確信しているから殺した。

 それを懇切丁寧に説明したというのに、返ってきたのは化け物を見るような目だけだった。

 

 刑務所の中に押し込められ、僕はボールを取り上げられた。何故そんな真似をされるのか、意味が分からなかった。

 刑務所内で与えられる仕事をこなしながらずっと考えていた。一体何がいけなかったのか。何が間違っていたのか。僕が悪かったのか。

 考えて、考えて、考えて、結論が出た。

 

 僕は何も悪くない。間違ったこともしていない。

 悪いのは僕の意見を聞かなかった人間や社会で、間違っているのは僕以外の人間によって作られたルールだ。

 

 思考がスッキリしたので、自身のやるべきことが定まった。

 社会が間違っているんだから、僕が刑務所に入る必要もない。僕は自由になるべきだ。

 それを刑務官に伝えたら、返ってきたのはやはりバカと可哀想なものを見る目だった。それにムカついたので、針金で目玉を突き刺した。今日の刑務作業がハンガーの作成だったから、ちょうどよかった。

 目を押さえて倒れ込む刑務官からポケモンボールを奪い取り、中身を解き放つ。

 出てきたウインディが唸り飛びかかってこようとしたが、僕が刑務官の喉に針金を突きつければたたらを踏んだ。

 

「外に出るまで『フレアドライブ』。出来ないならこの人を殺すよ」

 

 唸り声が酷くなる。血走った目がギョロめき、欠けるほど噛み締められた牙が剥き出しになる。

 目を押さえながら「駄目だウインディ」と僕はいいとも言ってないのに、勝手に声を出した刑務官のもう片方の目も使い物にならなくした。悲鳴がうるさいし暴れるな。

 どうする、とウインディを見れば、ウインディは顔を背けて壁に向かって走り出していた。

 全身に炎を纏った全身全霊の体当たりは、壁を容易くぶち抜いていく。

 

 そう。それでいいんだよ。

 

 いいこだね。

 

 刑務所をウインディに乗って後にする。

 適当なところでウインディは刑務官を餌にしてボールに戻して踏み潰して殺して、刑務官は耳から針金を突き刺し脳味噌をぐちゃぐちゃにしてから捨てた。

 

 

 

 故郷から出て、警察に追われながらやって来たのはアーナム地方と呼ばれる場所だった。

 ここは犯罪者の温床。悪人の巣窟。弱肉強食の世界。分かりやすくて息がしやすい。

 

 僕はクリミナルシティという、アーナム地方の中心とも呼べる都市に潜伏している。

 そこで出会うのは、麻薬を買うための金を殺してでも集めるキチガイや、怪しげな宗教に勧誘してくるコスプレ集団。警察と出会った時は警戒したけど、彼らは大して働いてはいないようだ。目の前で行われる銃撃戦を酒の肴にしてヤジを飛ばしていた。

 

 ここなら落ち着いて羽を伸ばせそうだ。適当な空き部屋を無断で借りても誰も咎めないが、同時に部屋に誰もが出入りするということ。

 何度か部屋に入ってきて僕の集めた食料や道具を盗もうとしたアーナム地方の先住民を殺していれば、そのうち人は来なくなった。

 

 アーナム地方で生活して、はじめて「希望」を見た。

 

 空が裂けた。ひび割れのようなそこから溢れるのは真っ黒の空気。

 けたたましく鳴り響く警報が腹の奥まで振動を届け、住民が恐怖で歪んだ顔で大通りをバタバタと逃げていく。

 それを無視して、僕はただ空を見つめた。

 

 ひび割れた空間の奥から、この世界に顕現しようとしている生き物を。

 その歓喜の雄叫びを。

 全てを見下ろす歪んだ笑みを。

 相棒を踏み殺した時の自分と同じ表情をしている彼が、羨ましかった。

 

 いいなぁ。いいなぁ。

 

 「外」はきっと「狂気(希望)」で溢れている。

 

 

 

 

 

 僕はずっと、この世界と相容れない存在だと思っていた。

 それは正しかった。間違っていなかった。

 悪いのは全て、僕をこの世界に生み出したアルセウスのせいだ。

 

 僕は、あるべき世界へと帰ろう。

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

 真っ暗闇の世界へと降り立った。

 筈なんだけど。

 

「ぁぇ……ぁぅぁぅ……」

「ゔーっ、ゔーっ」

「あむ……んぢゅゔゔ……はぐっ、はぐっ」

 

 灯りが持ち込まれており、そこに小さなアジトができていた。

 

 ……見える範囲で全員発狂してるけど。

 赤ちゃん返りしているやつとか唸りながら頭を壁に叩きつけているやつとか同士の(はらわた)を貪っているやべぇやつとかいるけど。

 

 ニャルさんがひょこひょこと尻尾を振って愉しげだった。

 当たり(・・・)っぽいな。ここ。

 

 ちょっと安心したけど、アジトを見ながら少し不思議に思う。

 ここ、ピュンゲンの最下層「ンガイ」に棲むグレート・オールド・ワンは光や熱に敏感だ。だから、棲み処に降りてきた人間の熱や灯りの光に反応して近寄ってくる。

 

 ───しゅる。

 

「ふぉっ!?」

「んにっ!?」

 

 腹部に何かが巻きついたと思えば、体が宙に浮いた。

 咄嗟に巻きついたものを掴んでバランスを取ろうとして、顔をしかめる。ぬるぬる、かつ、ねっちょりしていて、変に生暖かい。

 

 ……誰が持ち上げたか分かってしまった。

 

 天井を見上げるが、元凶が黒に同化しているのか全く姿が分からない。

 

「……ボ、ボボッ」

 

 炎が揺らめく音が聞こえたと思えば、一気にンガイに光が満ちる。クトゥーガか。ありがたい。のだけど……。

 

 

 明るくなった途端に、私の視界一杯に映り込んだのは蠢く真っ赤な咥内(・・・・・・・・)

 

 

 天井に張りついた巨大な生き物。頭部は蟇蛙(ヒキガエル)とよく似ており、眠いのか瞼を半分眼球に被せている。

 ずんぐりむっくりとした体を天井の岩肌に押し付けているせいで、膨らんだ巨腹が背中からはみ出して見える。

 その背中はしっとりと濡れた、柔らかそうな短い体毛で覆われている。

 

 唾液が滴る舌で私を持ち上げているのは、ンガイに棲むグレート・オールド・ワン。

 

 くうふくポケモン、ツァトグ。

 

「アネデパミ、『ケオヴ』」

「ギュワ゛ッ」

「ゲコッ!?」

 

 ボールが弾けて現れたアネ゛デパミ゛が、凍てつく炎を生み出して攻撃すれば、ツァトグは身を強張らせて、私を放って天井から跳ねた(・・・)

 

 超重量級の体が着地すれば、振動でだらしない腹がだぷんと揺れる。

 私はアネデパミ゛の背中に上手く着地した。

 

「ありがとう」

「ギュワ゛」

 

「ゲロ゛ッ……ゴロ゛ゴロ゛ッ」

 

 ツァトグが喉を鳴らしてゴボリと腹から何かを昇らせた。

 

「ゲボッ!!」

もう1回(もっかい)『ケオヴ』!」

「バギャア゛ア゛ア゛ッッ!!」

 

 『マッドショット』と『ケオ゛ヴ』が激突。泥水のようなそれは凍てつき、威力の倍増した氷炎で押し返す。

 泥の塊がツァトグを滅多打ちにした。が、ツァトグは口から舌を垂らしてこそいるが、ピンピンしていた。

 うーん、効果抜群でも中々倒れないな。知ってた。

 

クトゥール(・・・・・)、『ハイドロポンプ(・・・・・・・)』」

「ヴるッ」

 

「ゲロォッ!?」

 

 ツァトグが「エお前攻撃するの!?」みたいな鳴き声をあげている隙に、クトゥールの『ハイドロポンプ』が突き刺さった。きみ達仲悪い癖に妙な仲間意識あるよね。なんで?

 

 急所に入った『ハイドロポンプ』と威力が更に上がった『ケオ゛ヴ』でツァトグは倒れた。

 

 

 

 

 

 ツァトグはグレート・オールド・ワンの中でも人間とコミュニケーションを取ってくれることが多いと言われている。

 その理由はこいつが食うこと以外では恐ろしく怠惰だからである。

 腹が減ってもベスティア秘密教団の人が供物を届けてくるまで動かないし、バトルだってほとんどしない。満腹の時は持ってくる供物にすら手をつけず、別のグレート・オールド・ワンの元まで送ることもある。

 その代わり、飢餓の時は動き始める。ベスティア秘密教団だろうがポケモンだろうが迷い込んだだけの人間だろうが関係ない。全てに食らいつき腹に納めてしまう。

 

 私を食おうとしてきたのは、小腹が空いている時に丁度良さそうな人間が来たかららしい。

 それはきのみを与えて満腹になったツァトグから聞いたことで、彼は私だと分かった瞬間、居心地悪そうに身を縮ませるものだから苦笑いした。

 

「別に怒ってないよ。それはきみの個性というか、性質のようなものだと思っているし。何より私は突然来たんだからしょうがない」

「……ゲコッ」

「うーん……じゃあ、代わりに1つ質問していい?」

「ゲコッ!」

 

 なんでも質問してよ、と姿勢を正すツァトグ。

 私は灯りのついたアジトを指差した。

 

「あのアジトで発狂している人達は誰?」

 

 小腹が空いているのにあの人達を食べないということは、おそらくツァトグの信者だろうなという予測はついているが、結局誰なんだろうか。ンガイに住む人間はいないと彼から聞いているんだけど。

 

「ゲコッ」

「え、信者じゃないんだ」

 

 食べ物をくれるからここにしばらく住まわせてあげているらしい。

 きみも意外と優しいところあるよね。

 

「ゲロゲロッ」

「……あー、なるほど」

 

 アザトボスを喚び出して、「外」で暮らせるように交渉したい連中らしい。

 ベスティア秘密教団の亜種みたいな人の集いか。

 

 ベスティア秘密教団はアザトボスを喚び出したのは、自分達を新たな世界へと導いてほしいという切なる願いがあったからだ。それは何しも、「神」と崇め奉っているモノが住まう「神域()」に行きたいという訳ではない。と、私は解釈している。

 あくまでこの嫌いな世界のモノ以外を信仰している自分達が、信仰している「外」から1番恩恵を受けるべきだと思っているというか……うーん、説明が難しい。

 まあ、要は「「外」の神様はベスティア秘密教団が信仰しているからぽっと出の連中は信仰しないでね!」みたいな外の世界強火同担拒否勢の集いみたいな感じ。

 

 一方でここにいる彼らは「外」の世界こそが自分達が帰るべき世界であり、生まれた世界が間違っていると思い込んでいる。という解釈をしているんだけど当たっているかな、これ。

 

 それならンガイに潜伏するのはある意味で正解だ。

 ここには「()と繋がる(・・・・)()の原型がある(・・・・・・)

 

「とりあえず、首謀者はまだ発狂してないらしいから、会って話をしてみるか」

 

 そこにアザトボスもいるだろうし。




・ンガイ
 地底都市ピュンゲンの最下層。真っ暗闇の暗黒世界であり、光を持ち込んだものから食われていくため注意。
 ンガイには「外」と繋がる「門」がある。壊れている、というより動力源が足りなくて動かないだけ。ンガイが暗闇でそう簡単に「門」は発見されないため、ここに置かれている。

・アセビ
 旧支配者コンプリート!

・ニャルテップ
 やっとアザトボスと会える。

・クトゥール
 ごめんよツァトグ。でもアセビがやれって言ったから……(お肌ツヤツヤ)

・ハスラマ
 ツァトグが倒れたところをゲラゲラ嗤っていた。
 ツァトグとも敵対関係のため、ここぞという時にめちゃくちゃ馬鹿にする。クトゥールよりツァトグの方が嫌い。

・クトゥーガ
 お前らアセビのこと手伝えよ。

・アザトボス
 やっと会えそう。

・ツァトグ
 分類  :くうふくポケモン
 タイプ :あく・じめん
 通常特性:みどりのきょうき
 夢特性 :???
 グレート・オールド・ワンの優しい温厚枠。ただし、空腹じゃない時に限る。暗闇の中でも自由に動けるが、お腹が空くから動かないというめちゃくちゃ怠惰な性格。人間とも交流がある唯一の存在。特にネムレスタウンの人とは顔見知り。
 ハスラマとは敵対関係にあるが、向こうから仕掛けて来ない限りは動かないし、馬鹿にされても大抵は受け流せる。まともに反応するだけ無駄だし。
 アセビから「門」の監視をお願いされている。まあ、来る人間も限られているし、「門」の前で眠っていればいいだけなので引き受けている。
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