明日へ繋ぐ切先   作:Senritsu

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第22話 道を拓いた日

 

 それから先はまさに死闘だった。

 

 獣人の王の怒りの咆哮が空気を揺らす。

 その度にセンチネルたちが呼び出されて鬨の声を上げ、王自身の力も飛躍的に強化される。攻撃はさらに荒々しさを増し、全範囲技などの危険極まる剣技が解禁された。それはまるで残り少なくなった命を燃やし尽くそうとしているかのよう。

 

 

「また呼び出してきた!? くそっ! 僕たちを後ろに下げないつもりか!?」

 

「っあぐ! ……リオルナごめん! 受けきれなくなってきてる……!」

 

 わらわらと集まってくるセンチネルたちを捌きながら僕は思わず歯噛みする。ここにきてコボルドロードの筋力値が上乗せされているんだろう。現段階で下手して直撃でも受けてしまえば、僕はともかくユウキは一撃でやられてしまうかもしれない。

 強引にスイッチを挟んで僕が一気にソードスキルで責める手もあるけど、たぶん攻めきれない。今でさえ気力で戦っているようなものだ。後一発でもソードスキルを使えば起き上がれなくなると身体が僕に訴えかけている。

 

「あともう少しッ、なんだけどなあ……! 攻めきれないよ……!」

 

 ユウキ自身もかなり悔しそうだ。多少のリスクに目をつむってなら戦えていた相手が、今となってはその攻撃に逃げ惑うことしかできない。理不尽なまでの強化だった。

 しかし。センチネルの頭蓋を叩き割った僕は素早くコボルドロードのHPゲージ下のアイコンを見る。そこには『STRアップ』と『CRT(クリティカル率)アップ』のバフアイコンがついていた。

 防御力アップ系のバフは付与されていない。ならある程度削って隙を作ることができれば。

 

「『エグザストオンスロート』でスタン取って! 出し惜しみはなしだ!」

 

「――っ。うん!」

 

 虎の子のバトルソードスキルを使わせる。盾を持った腕を片手剣で強かに打ち据えられたコボルドロードは一瞬だけスタンした。その隙をついてユウキは距離を取る。

 退避だけに徹すれば話し合う余裕もできるだろう。ユウキが無事に両手剣の間合いから逃れたことを確認してから僕は話を切り出した。

 

「そのまま逃げ続けながら聞いて! ……さっき君はとっておきがあるって言ってたはずだ! それは、この戦いを決めるものだと思っていいのか!?」

 

「え? えーっと……」

 

 僕の問いかけにユウキは言葉を濁らせる。上手くいくかどうかがはっきりしないんだろうか。そもそもの有無かもしれないと一瞬思ったけど、ユウキはその辺りはちゃんと考えて喋っているはずだ。少なくとも今までの経験ではそうだった。

 らしくもない。ここで言い淀むなんてユウキらしくないと思った。こんな状況下だ。仕方ないのかもしれないけど、それでもユウキには前向きでいて欲しい。もう余裕なんてない僕が彼女の背中を押すためにはどうしたらいい?

 

「正直に言ってくれ……! 僕は君の切り札に賭けてもいい!! このまま力づくでやられてしまうよりかは、今ここで決めたいんだよ!!」

 

「――」

 

 結局、言葉で伝えていくしかないんだ。ユウキが僕に「ぶつからないと分からないこともある」と訴えたように。

 ユウキへの信頼をこめて贈る。ひりついてざらつく声で尚、声高に彼女を叱咤する。その上で彼女のあと一歩を埋める最大限の手助けをしたい。

 

「倒し切れなさそうなら言ってくれればいい! もう足なんてがったがたで声もこんなだしで説得力なんてないかもしれないけどッ……! ぎりぎりまで削ってみせるって約束する! だからユウキ……僕に()()()()()()()を尽くさしてくれ!!」

 

 これが、僕とユウキの二週間ちょっとの冒険を通して伝えたい想い。飾らないまっすぐな言葉だ。

 上手く言葉に出来ない気持ちを全部ひっくるめて無理やり言い表す。

 

「……うん、そうだ。そうだよね!」

 

 かくしてユウキは、それに応えた。

 

「あははっ! ごめんねリオルナ! ボクってばここでやられちゃったらどうしようなんて、そんなこと思ってた!」

 

 ボスの大剣の間合いから逃れ続ける彼女は、それでもなお笑う。今まで気付かなかったものを見つけたかのような、嬉しそうな笑顔だ。

 

()()()()! 最後まで負けないことを信じて、全力で明日に向けて挑んでいくんだ! ボクはリオルナと一緒にこのボスを倒して、もっと高いとこを目指す! やられたら明日はないんだもんね! うわぁ怖い! ()()()()()()! この痛さをボクは知らなかった! 一度きりのチャレンジ……そうだよ。ボクたちは全力で()()()()()()――!!」

 

 ユウキの中で燻っていたものが言葉となって曝け出される。それらの端々にはどこか常識離れした、危ういものも混じっていた気がするけど彼女はそれを気にも留めていない。

 でも、そんな危うささえ今のユウキの原動力となっているのならそれでいいんだ。あの村での最初の夜に聞いてしまった嗚咽から、彼女が何かを抱えていることはもう分かっているのだから。

 そんなことよりも今はするべきことがある。

 

「リオルナッ! この戦いで最後のお願い! センチネルたちをやっつけて、コボルドロードを引きつけて、キミのできるぎりぎりまで体力を削ってみせて! でも絶対にやられちゃだめだよ! やられたらボク許さないからねッ!! そしたら――ボクがとどめを刺す!」 

 

「了解。もとよりそのつもりでいたさ――!」

 

 ユウキから指示が飛び、即座に僕は動いた。内容的には指示と言うかお願いに近いものだけど、さっき宣言した以上、全力で遂行してみせよう。

 ユウキの言った事は単純明快。敵全員のヘイトを僕に集めてユウキから注意をそらし、そのすべてを巻き込む攻撃をぶつけるだけ。

 

 そしてそれをやってのけるにはちょうどいいバトルスキルを僕は今の今まで温存していた。

 

「今ここにいるのは僕だけだ。大きいやつも小さいやつも皆、僕を見てろッ! 決着がつくその瞬間までッ!! 『バトルシャウト』ォォ!!」

 

 びりびりと空気が震える。しつこくユウキを追いすがっていたコボルドロードが弾かれるようにこちらへと顔を向け、今まで僕の相手をしていたセンチネルたちも一瞬動きを止める。

 そして彼らは怒号を上げて僕へと殺到し始めた。

 今まで何度も用いてきたヘイト強制集中のバトルスキル『バトルシャウト』はボスとその配下にもしっかりとその効果を示した。

 

 より激しくなったセンチネルたちの攻撃にかろうじて対処しながら、僕はこちらに走ってきているコボルドロードに向け足を蹴り出した。

 その場で待っていてはまたあの踏み込みソードスキルの餌食になる。周りをセンチネルに取り囲まれていてかつ激しい疲労状態である今、ソードスキル迎撃は上手くいかないだろう。なら、こちらから出向いてやるまでだ。

 向かい合って走っていたせいか、コボルドロードとの距離はすぐに縮まった。もうすぐでやつの大剣の間合いに入る、というぎりぎりのラインで僕は急制動をかけた。

 

 僕を追いかけてきたセンチネルたちの打撃が僕の背中を打つ。がんがんっという重い衝撃に呻き声が漏れるけど、耐える。HP的には問題ないはずだ。

 要はこいつらを全員前に押し出してしまえばいいのだから。そして、今それは達成された。

 コボルドロードが剣を振り上げた。しかし、そこでやつの剣は目に見えて鈍る。ここで剣を振るって僕に当たるということは僕の前にいるセンチネルを必然的に巻き込まれることになるから。通常ではありえない状況に、ボスのAIが少しだけ逡巡する。

 

「今ッ……!」

 

 僕はその隙を待っていた。呟きの直前から初期動作に持ち込んでいた両手剣が輝きを増す。

 疲労で失われかけた力を振り絞って、ソードスキルを維持させることのみに全力を注ぐ。両手剣六連撃技『ファイトブレイド』。

 要求武器熟練度600。覚えたてのこのソードスキルの唯一無二の特長は……前方直線状にとても広い範囲攻撃を持っていること!

 

「落ちろ……落ちろおおおおおおおおぉぉぉーーーーッ!!」

 

 力の限り声を張り上げた。大振りを繰り返すその剣技は、センチネルを軒並み捉えたまま逃さない。

 二撃目で一番前にいたセンチネルが砕け散った。四撃目でその後ろにいたセンチネル二体がまとめて散っていく。

 

 そして六撃目。全ての斬撃による余波を受け続けたコボルドロードに向けて、僕は衝撃波という見えない刃を思い切り叩きつけた。

 ボスの隣に立っていた最後のセンチネルが光の欠片となる音を聞く。それでもう限界だった。荒い息をつきながらさっきこの剣技を放ったときと同じように、そのまま技後硬直に身を委ねて――

 

「剣を、振り上げてッ!!」

 

 それはもはや反射に近かった。硬直が始まるまでの僅かな間に、持てる力を振り絞って我武者羅に両手剣を振り上げる。

 刹那、とん、と。振るった両手剣に何かが()()()

 

「――ありがとう」

 

 ユウキの声。ばっと振り返ったところで技後硬直が発生した。案の定ソードスキル失敗判定となったのかいつもよりも強く身体が拘束される。

 でも、振り返ることはできた。それだけで十分だ。後は目で追うだけでいい。

 

 ――僕の剣を足場にして、宙に跳んだユウキの姿を。

 

「リオルナが繋いでくれた剣、ボクが引き継いで全部ぶつけてみせる!!」

 

 声高に宣言しながらユウキは空中にその身を躍らせる。こんなかたちで彼女を見上げるのは……二度目、だろうか。

 完全に意表を突かれたのはコボルドロードだった。あの巨体のことだ。まさか上を取られることになるとは考えすらしなかったんだろう。動きを止めた腕がその動揺の程をありありと物語っている。

 

「これがボクの……ッ とっておき!」

 

 そんなことはお構いなしに、ユウキは素早く空中で体勢を整える。片足をぴんと伸ばし、片手を大きく振ってボスの正面を向くように姿勢を制御。もう片足は自然体のまま、すうっと剣を持った腕を引いて静止した。

 あの構えは……ソードスキルの初期動作!

 

()()()()()()()ッ『マザーズ・ロザリオ』!!」

 

 ユウキが高らかに宣言したその瞬間、彼女の右手から青紫色の光が迸った。

 放物線を描き落下するしかなかったはずのユウキの身体が、剣技の光に誘われて宙に縫い止められる。

 

「いっけえええええぇぇぇーーーーッ!!」

 

 ありったけの気迫を込めた咆吼と共にそのソードスキルは発動した。

 コボルドロードの首筋から胸元にかけて、星形を描くように五連続の刺突が繰り出される。迅い。僕の目ではユウキの腕の動きを追いきれない。剣先がボスの喉元を穿っていくのを捉えるだけで精いっぱいだ。

 獣の王が苦悶の声をもらして後退する。一つひとつの攻撃力も高いのだろうその五連突きはコボルドロードのHPを一気に削り取っていく。だがまだやつの最終ゲージは一割近くの余裕を残している。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()。後ずさったコボルドロードに対し、逃がすものかと再び大きく腕を引きつつ全身を前へと押し出す。

 先の五連突きの軌道を逆からなぞるようにして再び剣が駆けていく。その剣に追従する光がまるで空気を押しのけるているかのように円錐状のエフェクトを形作り、コボルドロードとユウキをいっそう強く照らし出しては一瞬で火花のように消えていく。

 さっきと同じかそれ以上に速さで立て続けに放たれた刺突はまたもコボルドロードを正確に貫いていた。

 

 怒涛の十連撃。連撃数が二ケタを超える剣技をここで目にすることになるとは思ってもみなかった。

 

 しかし、しかしだ。最後の突きを見やると同時に僕はぎり、と歯を食いしばった。

 ボスのHPが目減りしていく。赤色のバーがぐんぐんと失われていき、とうとうゲージの左端へとたどり着く――その直前で留められた。残り数ドット。

 遠目に見ればもうゼロにしか見えないくらいのこまかさだけど、やつは確かに耐えた。持ちこたえてしまった。

 肥えた狼のような顔をしたコボルドロードが、獰猛に口角を釣り上げたように見えた。膝をつき、動くことができない僕と、とどめを刺しきれずに落下していくのみとなった少女。自らをここまで追い詰めた冒険者をやっと叩き潰せるとでも思ったかのように――

 

 

 

 ――三度、青紫色の光が蘇った。

 

 緩慢に大剣を持ち上げていた獣の王が目を剥いた。信じられないものを見る目。だが身の危険だけは本能で察知したんだろう。すぐにでも目の前に迫る片手剣使いを打ち払おうと剣を振り上げる。

 その迎撃までの一瞬の遅れが勝敗を分けた。

 

「やぁああッ!!」

 

 気合一突。限界まで引き戻された片手剣が、コボルドロードが彼女を打ち据える直前に解き放たれる。

 先の十連撃よりもなお苛烈で鮮やかな光が剣から迸り剣先に収束していく様は、まるで夜空に輝く彗星のようだった。

 

 

 ドンッッ!!

 

 轟音と閃光。インパクトの瞬間に花火のように爆発した剣技の光は僕の視界を一瞬覆い尽くした。

 

 数瞬後、とさっという音を立ててユウキが着地する。スキル硬直状態であるのか、着地姿勢のまま動こうとしない。

 さらにまた一秒ほど後に、閃光に埋め尽くされたコボルドロードの姿が露わになる。こちらもまたさっきまでユウキがいた場所に向けて剣を振り上げた体勢で微動だにしなかった。

 その頭上に浮かぶHPゲージに僅かに残されていた赤色のドットは……きれいに消し飛んでいた。

 ユウキの最後の一撃は、力の増強のみで僕たちを叩きのめそうとした獣人の王の執念を確かに打ち払っていた。

 

 間もなく、びきびきという音を立ててボスの体に亀裂が入りその内から光が漏れだしてくる。

 そこからはすぐだった。あっという間に亀裂は全身へ走り渡り、外に出ようとする光に押しのけられて形状を保っていられなくなって――崩壊。がしゃああん、という盛大な破砕音を響き渡らせながらコボルドロードは小さな光の欠片となって砕け散った。

 

「……たおし、た?」

 

 自然と口から呟きが零れる。息も絶え絶え、呂律さえうまく回っていない今の僕では言葉としての体をなしてないのかもしれないけど。

 それでも、目の前の表示は僕の呟きなんかよりもずっと明白に戦いの決着を表していた。

 

 

《Hollow Mission Clear!!》

 

》》バステアゲート浮遊遺跡エリアへの進入規制が解除されます。詳細はマップをご確認ください。

 

 

 僕たちの勝利だ。大剣を片手に持って猛威を振るった獣人の王は倒された。今この『荒くれ者の玉座』にいるのは僕とユウキだけだ。

 

「やっぱり……ユウキは、すごいな……」

 

 語り掛ける相手を求めないままに僕は独り言を続けた。いったい彼女はいつの間にこんな剣技を手に入れていたんだろう。

 

 とどめの剣技。想像をはるかに超える苛烈さと華やかさを併せ持った怒涛の連撃だった。あれこそが彼女がこの戦いの中で編み出した『固有剣技(OSS)』。

 スキル発動時間、ダメージ量共に他の剣技とは一線を画す必殺技級。それならまだしも11回連続で刺突を繰り出すなんて誰が想像しただろうか。というか連撃数が二桁に達する剣技なんてそうそうあるとは思えない。

 名前は『マザーズ・ロザリオ』だっただろうか。まさしくユウキだけの切り札と言っても過言じゃない威力――

 

 と、そのとき(瞬間)、僕の身体はふわっとした浮遊感に包まれた。すぐにドサッという音と一緒に背中に硬い床の感覚が伝わる。

 思いがけず呆然としてしまっていたみたいだ。寝起きのようにふるふると頭を振りながらぼやけていた目のピントを合わせると……

 

 

 目の前にユウキの瞳があった。

 

「~~~~ッ!!?」

 

 びっくりするどころの話じゃない。危うく心臓が止まりかけた。今までにこれほど驚いたことがあっただろうかってぐらいの衝撃が全身を駆け抜けた。

 ぱさりと夜色の髪が僕の首筋にかかる。明るい紫色の瞳が僕の瞳を覗き込む。それらひとつひとつの感覚が一気に押し寄せてきて、僕は硬直する以外何もできなかった。

 

「あははは……やった。勝った……勝ったよリオルナ!!」

 

 本当に、心の底から嬉しそうにユウキは叫んだ。言葉の端々から嬉しさやら喜びやらが伝わってきた。

 

「そ、そうっ……だね」

 

 その勢いに押されて、なんとか応えることに成功する。無論、頭の中は大混乱なわけだけど。

 今の状況を要約するとこうだ。とどめのOSS後のスキル硬直によって動けなかったユウキが体の自由を取り戻した途端に僕めがけてダッシュ。そのまま勢いで押し倒して僕の上に乗っかって至近距離で向き合ってる……ってああああ。改めて状況を把握したらますます恥ずかしくなってくる……!

 

 しかし、衝撃の展開はそれだけでは終わらなかった。

 

「よかったあぁ……。あー…つっかれたーー!!」

 

 あろうことかユウキは、とさりと僕に覆いかぶさるように倒れ込んだのだ。お互いの頭がぶつからないように少しだけ首を傾げて。こつ、と胸当てどうしがぶつかる音がした。

 今度こそ僕の身体が完全に固まった。頭が真っ白になってしばらく何も考えられなくなる。防具越しとはいえ物理的にゼロとなったユウキとの距離は、僕が許容できる範囲を思いっきり超えてしまっていた。

 

「……」

 

 ユウキは何も言ってこない。よってしばらくしてから本当に少しずつだけど思考が再開を始めた。

 心臓の音はさっきからうるさいくらいにばくばくと拍動している。それが聞こえてしまうんじゃないかと一瞬ひやっとしたけど、この体は仮想のものなんだから聞こえるはずがないわけで。少しだけ安心した。

 

 汗も流れず、返り血も浴びず。傷が残ることもなく。そう考えるとこの戦いを始める前と後ではなんにも変ってないように思える。

 

 でも。目に見えない部分――心の変化はあった。

 

「ああ……僕も、ほんとうに疲れた……」

 

 咄嗟の呟きじゃない。心からの気持ちを込めた言葉が口から紡がれる。

 一時間以上にわたったこの戦いで気付いたこと。いや、本当はもっと前から感じていたことではあるのかもしれないけど。

 ほう、と息を吐きながら少しだけ全身を弛緩させる。自覚してしまえば過度の緊張も解けるんだろう。

 

「ほんとうに、きつかったなあ……」

 

 

 

 ――僕はユウキが好きだ。

 

 

 それがこの仮想世界で最初に見つけた、偽りのない自分の一つ。

 

 青空にそびえ立つ大灯台の最上階で、僕とユウキはそのまま戦いの余韻に浸っていた。

 

 





念願のスキルコネクトとマザーズロザリオの描写。他のSSではあまり見られないこの二つは「明日へ繋ぐ切先」で書きたかった場面の一つでした。

また、ようやくリオルナが自分の新たな気持ちに気付きましたね。これからを楽しみにしていただけたらと思います。



【設定・用語説明】

・マザーズ・ロザリオ
 ユウキがエリアボスとの戦いで編み出した片手剣のオリジナルソードスキル。空中に星のマークを描くような軌道を描く五連突きを二度繰り出した後、その中心に渾身の一突きを放つ。片手剣最多の連撃数を誇るソードスキル。
 最上級剣技としてシステムに認識されているためとても長い技後硬直があるが、その威力は既存の片手剣最上位剣技を凌駕している。まさしく彼女のみが使える必殺技である。
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