NOXIS   作:成道真生

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第10話 繋光 -ケイコウ-

振り上げられた巨人の拳──

 

フィル「やめてよ!アニキ!!!!」

 

少年の叫びが、爆発のように響き渡る。

逃げ惑っていた人々も、絶望のあまりその場に立ち尽くした。

 

しかし──何も起こらない。

 

フィルはおそるおそる、閉じていた目をゆっくりと開ける。

 

──ピコン、ピコン、ピコン。

 

低く響く電子音とともに、ノクシスの胸部アークが紫色に点滅している。

そして──振り下ろされるはずだった巨人の拳は、もう片方の腕にがっちりと掴まれ、寸前で止まっていた。

 

フィル「はぁぁぁ…アニキ…」

 

その場に崩れるように座り込み、胸をなでおろした瞬間──

 

──バタンッ。

 

フィルは意識を手放し、その場に倒れ込んだ。

 

ガンダス「大丈夫か!!フィル!」

ノックス「早く運ぶぞ兄弟!みんなも今のうちだぁぁあああ!」

 

「うぉおおお!」「逃げろぉ!」

 

避難所へと走り出す人々。

その隙を逃さず、ガンダスとノックスはフィルを抱え、駆け出す。

 

 

⬛ 精神世界

 

巨人が拳を振り下ろそうとしている。

 

ノクシス「やめろぉおおおお!」

ノクシス(闇)「ふあっはっはっはっ!」

 

──ドクン!

 

ノクシスの左腕に装着された銀色のブレスレットと、胸部のアークが同時に光を放つ。

その光はやがて、暗く濁っていた精神空間全体を真っ白に染め上げていった。

 

ノクシス「身体がうごく…ん!?」

 

何かの気配を感じて振り向くと、白いモヤの中から人影が現れる。

 

ノクシス「誰だ!」

 

靄が晴れ、姿を現したのは──蒼き巨人だった。

 

ノクシス「あんたは…」

 

ドレヴァス「私はドレヴァス…君のバカな父親だ」

 

ノクシス「…父さん?」

 

ドレヴァス「ああ…久しぶりだな…ノクシス」

 

その声は優しくも凛とし、どこか耳馴染みがある。

 

──記憶の断片

 

???「……生きろ……ノクシス……生きてくれ……」

 

ノクシス「本当に…俺の父さん…なの?」

ドレヴァス「ああ!」

ノクシス「父さぁぁあん!」

 

泣きながら抱きつくノクシス。

ドレヴァスは、静かに、力強くその背を抱きしめる。

 

ドレヴァス「ノクシス、時間がないんだ。

私の光はわずかしかお前に与えられなかった…だから、さっきの闇を長く抑えておくことはできない!」

 

ノクシス「そんな…」

 

ドレヴァス「いいか、ノクシス。よく聞きなさい。

闇にのまれてはいけない。私はかつて闇にのまれ、自分を見失い、愛するものを不幸にした大馬鹿者を知っている。

そいつは、最後──後悔と共に消えた……。

お前には、そうなって欲しくないんだ!!」

 

ノクシス「でも…俺の本質は闇だって…」

 

ドレヴァス「違う!お前の本質は……だ!

しっかりと──お前には……の……が流れてい…だ!

自分…を…じろ! お前のその“守りたい”という思いを……信じるんだ!!!」

 

ノクシス「父さん!父さん!」

 

──声が、遠ざかる。

 

ドレヴァス「父さも…んも…お前…見守って…る…まえ…は…れっき…した…ト…ラ…士なんだ!」

 

ノクシス「父さぁぁあああん!」

 

再び──闇が精神を包み込む。

 

ノクシス(闇)「ドレヴァスのやつめ…余計な真似を。

なるほど…お前のそのブレスレット……それが光の元か。

お前の父親が開発し、母が身につけていたアイテム。

光を集め、エネルギーに変換できるブレスレット──“ノクス・グレイス”か。

ドレヴァスは最後に、お前にわずかな光を与えておいたというわけか……

どおりで変身時に微かに光が目にある訳だ……忌々しいやつめ」

 

ノクシス「くっ!」

 

ノクシス(闇)「だが、お前の中の光はわずかだ。

簡単に乗っ取ることが──」

 

ノクシス「そうはいかない!!」

 

ノクシス(闇)「なに!?」

 

ノクシス「俺はもう、何者かわからない“俺”じゃない!

ノクシスという名があって、父親と母親がいる……そして──」

 

ノクシス(闇)「ん?」

 

現実のフィルの姿が、精神の窓に映る。

 

ノクシス「俺には、新たな友……いや、“兄弟”ができた!!

はぁぁぁあああ!」

 

ノクシス(闇)「な、なにぃぃい! やめろ! お前は闇なんだ!こんなことがあってたまるか!」

 

ノクシス「光とか闇とか関係あるか!

俺は──俺が正しいと思った、俺のやりたいことをやるだけだぁぁぁああ!!」

 

──ブレスレットと胸の光が閃光となって弾け飛ぶ!

 

ノクシス(闇)「くっ…ふん!だが次はこうはいかない。

俺様はいつでもお前の前に現れる。

お前は“絶望の闇”であり、僕にとっての“希望の闇”なのだから!!

ぬぁぁあああ!」

 

 

⬛ 現実

 

──ピコン、ピコン、ピコン。

 

ノクシスの拳は、今もなお、寸前で止まっていた。

漆黒のオーラが消え、瞳の色も黄色へと戻っていく。

 

フィルはその場に崩れ落ちる。

 

逃げ惑う群衆の叫び声が、徐々に歓声に変わりつつあった。

 

ガンダス「お前さん……」

ノクシス「うん!」

 

黒い巨人は、力強く頷いた。

 

──ギギガガ!

 

背後から、機械の起動音が響く。

片腕を失ったレギオノイドが、再びエネルギーをチャージし始めたのだ!

 

ノクシス「ドゥワッ!」

 

──チュイン!

 

ノクシスは即座に構えをとる。

両足を肩幅に開き、両手を脇腹へ引き寄せると、黒と赤の雷、そして白い光が体に集まっていく。

 

──テュゥウウウウウウン!!

 

右足を弧を描くように後ろへ下げ、右手も同様に後方へ伸ばす。

左手は肘を曲げたまま、胸の前で並行に保つ。

全身のエネルギーが、両腕へと集中していく──

 

──ドゥフィィィイイイン!

 

敵が先にビームを放った!

 

ノクシス「ノクシウム・レイ!!!」

 

──カッ! ゴォォオオオオオオ!!

 

右手首を左手首に打ち合わせ、十字を形成した瞬間──

黒・白・雷が渦巻く三層の光線が放たれた!

 

その余波は凄まじく、後方の人々でさえ立っていられないほどの威力。

 

──ギギガガ……ボカーン!

 

光線がぶつかり合い、ノクシスの一撃が敵の砲撃を呑み込み、命中した!

 

──ピコン、ピコン、ピコン。

 

十字の構えを維持したまま、ノクシスの巨体がゆっくりと黒や白の粒子となって消えていく。

 

一瞬の静寂のあと──

 

ガンダス「よっしゃぁああ!」

ノックス「うぉおおお!」

「やった!」「よかった!」「俺たち生きてる!」

 

人々は、生き延びたことに歓喜し、巨人の消えた空を見上げた──

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