NOXIS   作:成道真生

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第2話 墜縁ーツイエンー

フィル「おやっさん!起きたよ、飯にしよう!」

 

フィルの元気な声が部屋に響いた。

 

ガンダス「んお?……おお!そうか。ん?」

 

少し遅れて、ノクシスが部屋の入口に現れる。どこか戸惑いながらも、静かに様子を伺っていた。

 

ガンダス「おお、よかったな青年。命があって何よりだ。……酒、飲むか?」

 

ノクシスの前に立つのは、体格の大きな男。鼻をつくアルコールの香りが、彼の酒浸りな暮らしを物語っていた。

 

フィル「ちょっと!おやっさん、やめてよ! 星に墜落してきて、目覚めたばっかりの相手に酒なんか勧めるなって!」

 

フィルが隣の台所から顔を出し、軽く怒鳴った。

 

ガンダス「なんだい、少しくらいいいじゃねえか。おい、青年、遠慮すんなよ。汚い所だが座んな」

 

ガンダスと名乗るその男は、顎で向かいの椅子を示した。ノクシスは少し戸惑いながらも、促されるまま腰を下ろした。

 

ガンダス「で、お前さん、名前はなんて言うんだ?」

 

フィル「ノクシスって言うんだって」

 

ガンダス「ノクシス、か。……ワシはガンダスだ。お前さん、どこの出身だ?何があった?」

 

フィル「ちょ、ちょっと!おやっさん、一気に聞きすぎ!」

 

フィルが笑いながらも止めに入る。

 

フィル「それに、記憶がほとんどないみたいでさ」

 

ガンダス「……なんと」

 

ガンダスの声が少し低くなり、ノクシスに視線を向ける。

 

ノクシスは黙ってうなずいた。

 

ガンダス「……そうか、それは悪かったな。だがまずは、何より飯だ。身体が資本だからな」

 

鍋から湯気が立ち上っている。ミートボールが煮込まれた濃厚なスープの香りが部屋に広がる。

 

フィル「ノクシスも食べるだろ?」

 

ノクシス「……た、べる?」

 

言葉の意味がわからないのか、ノクシスは小さく首をかしげた。

 

フィル「ハハ、そっか。まぁ、食べてみてよ。この鍋、絶品なんだ!」

 

フィルが取り分けた皿をノクシスの前に置いた。温かな香りに思わず──

 

ーーグルルル……

 

フィル「ぷっ……!」

 

ガンダス「ぬははは!」

 

フィルとガンダスが同時に笑い出す。

 

フィル「腹減ってたんだね!遠慮しないで食べて、オイラもいただきまーす!」

 

フィルが勢いよく肉団子を頬張る。

 

フィル「んん!やっぱうまい!」

 

ガンダス「おいフィル、ワシの分は?」

 

フィル「おやっさんは自分でつぎなよ!」

 

そんなやりとりを横目に、ノクシスは目の前の食事をじっと見つめた。そして、ゆっくりスプーンを手に取り──

 

肉団子をすくい、口へ運ぶ。

 

フィルとガンダスは言葉なくその様子を見守る。

 

──ごくり。

 

ノクシス「……うんまい!!」

 

その一言に、空気が和らいだ。

 

フィル「よかったぁ!」

 

ガンダスも満足げに酒を一口あおる。

 

フィル「まだまだあるから、たくさん食べてな!」

 

ノクシスは夢中で鍋を平らげ、ようやく落ち着いた頃──話は本題へと移る。

 

 

ガンダス「改めて、ワシはガンダス。あいつがフィルだ」

 

ノクシス「ノクシス……」

 

ガンダス「ワシらはな、この惑星ザハルダに出稼ぎで来ててな。母星はグリンデラって惑星で、職人の星さ。ワシはフィルの身元請負人だ」

 

フィル「オイラたちのことはそれくらいにしてさ、ノクシス。覚えてる範囲で、話してくれる?」

 

ノクシス「……記憶は……断片的にしか……。とにかく、うるさかった。焼け焦げた臭いがして、誰かが……やさしい声の誰かが俺の名を呼んで……助けようとしてた。それと、もうひとり……何度も……謝ってた……。その人が、俺を……何かに……乗せて……くっ……」

 

言葉を紡ぐたびに、眉が寄る。ノクシスは頭を押さえ、痛みに顔をしかめた。

 

フィル「無理しなくていいって!な?おやっさん」

 

ガンダス「ああ。きっと宇宙海賊か何かに船を襲われたんだろう。記憶にある人たちは、お前を守ってくれたんだな。実際、お前は空から脱出ポッドで落ちてきたんだぞ」

 

ノクシス「……脱出ポッド……」

 

フィル「そう。ポッドからはぐれて、少し離れた場所にお前が倒れてた。ワシがかけつけた時には、既に意識はなかったがな。一足先にオイラがお前さんを見つけておったが……」

 

何かを思い詰めているような表情のフィル。

 

ガンダス「なぁ? フィル」

 

フィル「あ!う、うん……ポッドは他の仲間が運び出して保管してるよ。……使えるかどうかはわかんないけどさ」

 

ノクシス「……くっ……すまない……」

 

フィル「無理もないよ。3日も寝込んでたんだから」

 

ノクシス「……3日……?」

 

フィル「うん、今日はようやく目が覚めたから、まずはそれだけでも大進歩だよ!」

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