フィル「おやっさん!起きたよ、飯にしよう!」
フィルの元気な声が部屋に響いた。
ガンダス「んお?……おお!そうか。ん?」
少し遅れて、ノクシスが部屋の入口に現れる。どこか戸惑いながらも、静かに様子を伺っていた。
ガンダス「おお、よかったな青年。命があって何よりだ。……酒、飲むか?」
ノクシスの前に立つのは、体格の大きな男。鼻をつくアルコールの香りが、彼の酒浸りな暮らしを物語っていた。
フィル「ちょっと!おやっさん、やめてよ! 星に墜落してきて、目覚めたばっかりの相手に酒なんか勧めるなって!」
フィルが隣の台所から顔を出し、軽く怒鳴った。
ガンダス「なんだい、少しくらいいいじゃねえか。おい、青年、遠慮すんなよ。汚い所だが座んな」
ガンダスと名乗るその男は、顎で向かいの椅子を示した。ノクシスは少し戸惑いながらも、促されるまま腰を下ろした。
ガンダス「で、お前さん、名前はなんて言うんだ?」
フィル「ノクシスって言うんだって」
ガンダス「ノクシス、か。……ワシはガンダスだ。お前さん、どこの出身だ?何があった?」
フィル「ちょ、ちょっと!おやっさん、一気に聞きすぎ!」
フィルが笑いながらも止めに入る。
フィル「それに、記憶がほとんどないみたいでさ」
ガンダス「……なんと」
ガンダスの声が少し低くなり、ノクシスに視線を向ける。
ノクシスは黙ってうなずいた。
ガンダス「……そうか、それは悪かったな。だがまずは、何より飯だ。身体が資本だからな」
鍋から湯気が立ち上っている。ミートボールが煮込まれた濃厚なスープの香りが部屋に広がる。
フィル「ノクシスも食べるだろ?」
ノクシス「……た、べる?」
言葉の意味がわからないのか、ノクシスは小さく首をかしげた。
フィル「ハハ、そっか。まぁ、食べてみてよ。この鍋、絶品なんだ!」
フィルが取り分けた皿をノクシスの前に置いた。温かな香りに思わず──
ーーグルルル……
フィル「ぷっ……!」
ガンダス「ぬははは!」
フィルとガンダスが同時に笑い出す。
フィル「腹減ってたんだね!遠慮しないで食べて、オイラもいただきまーす!」
フィルが勢いよく肉団子を頬張る。
フィル「んん!やっぱうまい!」
ガンダス「おいフィル、ワシの分は?」
フィル「おやっさんは自分でつぎなよ!」
そんなやりとりを横目に、ノクシスは目の前の食事をじっと見つめた。そして、ゆっくりスプーンを手に取り──
肉団子をすくい、口へ運ぶ。
フィルとガンダスは言葉なくその様子を見守る。
──ごくり。
ノクシス「……うんまい!!」
その一言に、空気が和らいだ。
フィル「よかったぁ!」
ガンダスも満足げに酒を一口あおる。
フィル「まだまだあるから、たくさん食べてな!」
ノクシスは夢中で鍋を平らげ、ようやく落ち着いた頃──話は本題へと移る。
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ガンダス「改めて、ワシはガンダス。あいつがフィルだ」
ノクシス「ノクシス……」
ガンダス「ワシらはな、この惑星ザハルダに出稼ぎで来ててな。母星はグリンデラって惑星で、職人の星さ。ワシはフィルの身元請負人だ」
フィル「オイラたちのことはそれくらいにしてさ、ノクシス。覚えてる範囲で、話してくれる?」
ノクシス「……記憶は……断片的にしか……。とにかく、うるさかった。焼け焦げた臭いがして、誰かが……やさしい声の誰かが俺の名を呼んで……助けようとしてた。それと、もうひとり……何度も……謝ってた……。その人が、俺を……何かに……乗せて……くっ……」
言葉を紡ぐたびに、眉が寄る。ノクシスは頭を押さえ、痛みに顔をしかめた。
フィル「無理しなくていいって!な?おやっさん」
ガンダス「ああ。きっと宇宙海賊か何かに船を襲われたんだろう。記憶にある人たちは、お前を守ってくれたんだな。実際、お前は空から脱出ポッドで落ちてきたんだぞ」
ノクシス「……脱出ポッド……」
フィル「そう。ポッドからはぐれて、少し離れた場所にお前が倒れてた。ワシがかけつけた時には、既に意識はなかったがな。一足先にオイラがお前さんを見つけておったが……」
何かを思い詰めているような表情のフィル。
ガンダス「なぁ? フィル」
フィル「あ!う、うん……ポッドは他の仲間が運び出して保管してるよ。……使えるかどうかはわかんないけどさ」
ノクシス「……くっ……すまない……」
フィル「無理もないよ。3日も寝込んでたんだから」
ノクシス「……3日……?」
フィル「うん、今日はようやく目が覚めたから、まずはそれだけでも大進歩だよ!」