ノクシス「……侵略?」
生暖かい風と鋭い響きが、ノクシスとフィルの空間を包んだ。
フィル「そう、その侵略によってザハルダもグリンデラも大損害。他の星々もそうとうやられた…中には消滅した星もある。」
ノクシス「……」
フィル「でももう大丈夫なんだ。5年前に侵略者たちは、他所の宇宙から来た戦士たちに倒されたって。それからは平和なんだ。」
ノクシス「……そうか」
フィル「でもね、傷跡は凄かった。この星はさ、鉱山資源が豊富で色んなものが取れるんだ。だから1番酷くやられてさ…国も見る影もなかったんだよ、最初は…」
フィル「それを俺たち出稼ぎ組や、この星の生き残り、色んな星々の人達が助け合って、ここまで何とか復興してきたんだ。すごいでしょ?」
ノクシス「あぁ……」
優しく、でもしっかりと感情を込めて頷くノクシス。
フィル「それでさ、ある程度復興も進んで、次からは鉱山のもっと奥に作業現場が移動になるんだけど──オイラの年齢じゃ入れられないって親方が……。それで帰ることになってるんだ。」
ノクシス「そうか……」
フィル「ウチ貧乏だからさ……母星に母ちゃんと弟と妹がいるんだけど……俺が働かないといけないのにさ……」
ノクシス「お母さん……くっ……」
その瞬間、ノクシスの胸奥に、得体の知れないざわめきが小さく波打った。
フィル「ノクシス?」
ノクシス「いや……大丈夫だ……」
フィル「……そう?……」
短い沈黙が流れる。
ノクシス「フィル……」
フィル「ん?」
ノクシス「なぜ……なぜ見ず知らずの俺を、お前やガンダスは助けるんだ?」
フィル「え?」
ノクシス「俺にはわからない……得体もしれない、何人なのかも……記憶もない……ノクシスって名前も本当かわからない……そんなやつをなぜ助ける?」
フィルは少し考え、微笑みを返す。
フィル「オイラが正しいと思った、やりたいことだから……かな?」
ノクシス「……?」
フィル「オイラの父ちゃんと兄ちゃんはさ、グリンデラの戦士だったんだ。すっごく優秀な。いつかふたりみたいな、勇敢で強い戦士になりたいって思ってた……」
フィル「でも侵略者との戦いで、2人とも命を落としたんだ……」
ノクシス「……」
フィル「その戦いに行く前に、オイラは2人から2つ言われたんだ……」
──フィルの記憶
ロガン「お母さんと弟や妹をたのむぞ!」
エラン「お前は、優しい!お前の思う“正しい”と思えて“やりたいこと”をやるんだ!いいな?兄ちゃん達との約束だ」
ロガン&エラン「うおおおおお!!」
──現在
フィルの頬に、涙が一筋流れている。
ノクシス「……フィル?」
フィル「…んはぁ……なんでもないよ」
涙を拭うその姿は、やはり13歳の少年のものだった。
フィル「だからさ。理由がどうとかじゃないんだ。オイラがそれが“正しい”って思った、“やりたいこと”だったからさ」
ノクシス「……そうか」
フィル「あとは……」
ノクシス「ん?」
フィル「あの夜、ノクシスを見たら──兄ちゃんに面影が似てるなって思ったんだ。それもあるかもね……」
照れくさそうに笑うフィル。どういう顔をしていいかわからないノクシス。
フィル「ねぇ、ノクシス。“アニキ”って呼んでもいいかな?」
ノクシス「え?」
フィル「呼び方だけでいいんだ。なんか兄弟って感じがさ……」
ノクシスの中で、何かが反応するのを感じた。
温かいものが一瞬、ノクシスの中でほどけた。
ノクシス「(ん?い、今のは……)」
フィル「ねぇノクシス!」
ノクシス「……俺にはその気持ちはわからないが、フィルがそうしたいと思った“正しいこと”なんだったら、好きに呼んでくれ」
フィル「うん!!アニキ!」
これまでに見たことのないような笑顔だった。
その笑顔を見たとき、ノクシスの胸の奥で温かいものがまた、そっと揺れた。
⸻
一方その頃──作業現場の外れ、回収された脱出ポッド
ガンダス「こいつは……」
ノックス「兄弟の家の裏に落ちたっていう脱出ポッド、回収したんだがよ……。おい、お前ら。少しガンダスと2人にしてくれ」
作業員たち「あいよ」「了解」
ノックスはシートをめくり、無言でそれを見せた。
ガンダス「ぬぁっ!こ、これは……ありえん!」
ノックス「俺も目を疑ったぜ……。だがよ、これは……忘れられる訳ねぇ……。俺たちも散々、苦しめられた……」
ガンダス「カイザーベリアル……ベリアル軍のマークだ……」
ノックス「ああ……そうだろ? もしかしたらよ、残党がまだ残ってて、この星に落ちたんじゃねぇかって……」
ガンダス「(まさか……そんな……じゃあ、ノクシスは……)」
ノックス「なぁ!兄弟、聞いてんのか!?」
ガンダス「あ、ああ、聞いてる……」
ノックス「警戒した方がいいよな? これ」
ガンダス「んん……そうだな、それにこしたことはない……。もしかしたら無人の脱出ポッドで宇宙を彷徨って、墜落したのかもしれないが……な、ははは」
乾いた笑いで誤魔化そうとするガンダス。
ノックス「そうだがよ……もう5年も前だ。今さらまた……」
ガンダス「このことを知ってるのは?」
ノックス「ああ、俺と兄弟だけだ。ボロボロで削ったら出てきたからよ。運んだ奴らも知ってる風じゃなかったしな」
ガンダス「そうか……絶対に知られない方がいいな」
ノックス「そうだよな……」
ガンダス「あ! そういえば俺、忘れ物してきたんだった! ちょっくら家に取りに行ってくらぁ!」
わざとらしくその場を抜けるガンダス。
ノックス「ああ!? おい! 兄弟!? どこに行くんだよぉおおお!!」