ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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番外編ジョジョです。
100話記念箸休め。


100話記念与太話:杜王町に行った日

 

 迷子になったなり。

 事務所からコンビニへ出かけた帰り、いつもの道をショートカットしようとしたら変な通りに出ていた。

 

 どうにも様子がおかしく、事務所の近くにしては普通の民家が多い。

 先ほど一瞬感じた空間的異変も気がかりだ。

 スマホを取り出すも圏外。

 

 一番困るのは「ハスターの瞳」がこちらの位置情報を展開できなくて、肉眼で物を見ざるを得ないこと。

 繋がり自体は存在しているため、地球の守り自体は心配しなくてもいいだろうが。

 薄目でそーっと見ないといけないのが大変つらい。

 

 ふと見ると、犬の散歩をするおばさんの姿が見えた。

 仕方なく「道に迷ってしまって。駅はどっちに行けばありますか?」と聞いてみることにした。

 

 ご婦人は「あらあら。三つ向こうの道をまっすぐ行くのが早いですわよ」と親切に答えてくれた。

 一応駅も近場にあるらしい。

 良いことだ。

 

 てくてくと歩いて進めば、およそ10分ほどで駅に着いた。

 

 杜王駅。

 聞いたのことのない駅だ。

 求人広告のパンフレットがあって、そこにはここがM県S市の杜王町というところであることが書かれていた。

 

 捨てられた新聞によると、最近の日付は1999年5月22日らしい。

 見上げる空にヨグ=ソトースの時空異常はなく、そのまま1999年と捉えていいだろう。

 

 俺はいよいよ困って、来た道を歩き出した。

 

 無理やり「ハスターの瞳」の縁を辿って帰還する方法もなくは無いが、そのためには俺も気合を入れて本性を出さないといけなくなる。

 するとこの街の住人は当然発狂するので、なるべくならその方法は取りたくない。

 

 歩いて行くと、通り沿いにコンビニが見えた。

 オーソンという見慣れないチェーン店だ。

 

 財布の中をちらっと確認したが、少し考えて買い出しはやめておくことにした。

 本当にこちらの日本円が使えるか不明だし。使えても新日本円札とかが偽札呼ばわりされる可能性が高いし。

 

 はあ、とため息をついてオーソン横の壁にもたれかかると、ふと、その横に粗末な小道があることに気がついた。

 

 空間的に重なり合っているようで、半分非実体な小道だ。

 物珍しくて、ふらっとそこに入り込んでみることにした。

 

 もしかしたらこの道に入る俺の姿はオーソンの壁に溶け込んでいくように見えるかもしれないので、少々人目を気にしつつ。

 

 少々特殊なルールが敷かれているようで、黄泉比良坂を連想させる。

 

 わざと脱出の意図を持って小刻みに振り返れば、黒い亡霊の腕のようなものが無数に襲いかかってきた。

 どこに連れて行く気なのか気になって無抵抗で居たのだが、どうやら俺が重くて持ち上がらなかったらしい。

 黒い手はしばらく奮闘したあと、悪態をつくように俺を軽く殴って去っていった。

 別に俺のせいじゃ無いやろがい。

 

 まあそんなふうにして奥に進むと、家が数軒見えてきた。

 空間が閉じた、小さな小部屋のようになっている場所だ。

 

 そこに若い男と少年が何やら話し込んでいる。

 

 普通の人間がこんなところに長居するのはあまり健康にもよろしく無いだろう。

 

「おーい、あんたたち。ここは危険、」

「『天国への扉』───ッ!!」

「おわーっ!?」

 

 空中に描かれた絵が完成した途端、何らかのルールによるこちらへの干渉があった。

 

 どうやら驚かせてしまったようなので、大人しく干渉を受け入れることにする。

 こんな場所で背後から声をかけたなら、そりゃびっくりして攻撃行動の一つでもするわな。

 

 勢いに押されて尻餅をつく。

 肌がめくれていき、そこに文章が浮かび上がる。

 魔術ではなさそうだ。

 見たところ、対象の経歴を時系列に沿って抽出するルールの類のようだ。

 俺相手にそれを1発で通せるとは、凄まじい強さのルールだ。

 

 尻餅をついたまま倒れ込む俺を見て、男が眉間に皺を寄せた。

 

「見させてもらうぞ!何のために僕達をスタンド攻撃したのかッ!」

 

 ぺらり、ぺらりと俺の肌を直にめくって情報を確かめている。

 実際に文字を目で追う必要があるらしい。

 面倒だしルール成立と同時に直接情報を吸い取ればいいのに。

 

 男の顔色が変わった。

 もう一人の小柄な少年に、少しばかり焦ったような顔で言葉を紡ぐ。

 

「コイツ、スタンド使いじゃないぞ!おまけにこれは、魔術だと?これは一体ッ!」

「え、どういうことですか露伴先生!?この人がスタンド攻撃を仕掛けてきたわけじゃないなら、真犯人は……」

「おまけにコイツの本、分厚すぎる。捲っても捲っても終わりが見えない。しかも途中から黒いページが続いて何も読み取れなくなる」

 

 いい加減俺も発言していいかな、と思って、うっすら目を開けて息をついた。

 

「それは『時系列順に情報を並べる』という性質と、時系列の観念が現在と違う時代の情報を出力しようとしてエラーが出てるだけだよ」

「ッ!!!」

 

 鋭い視線が俺に集中する。

 この男のルールはあくまでこの宇宙のルールに沿った時系列順を守ろうとするため、ヨグ=ソトースのルール変更に対応しきれなかったのだと思われる。

 逆に言えばそこまで遡ることが可能ということで、本当に優秀なルールを敷いているという意味にもなる。

 

「で、俺の無実も証明できただろ。そろそろ解放してもらいたいんだけど」

「だが、これを読むにこの場所について何かしらの知識はあるんだろう?」

「それに関してはここの住人に話を聞いた方がいいと思うぞ。ほら、そこに幽霊がいるから」

 

 そう言って通りの影に指を差す。

 先ほどからこちらを伺っている、犬連れの幽霊さんが少しだけ息を詰めた。

 

 男二人組はそのままルールを解除せずに幽霊さんと話し込んでいる。

 別にいいけど、解除してから行って欲しかったな。

 このままでも動けるが、動いたらさらに警戒させてしまいそうだし、そのまま無力のふりをして時間を潰す。

 

 見上げる空には、神造のあの世が見える。

 ここの神が何を思っているのかは知らないが、随分と無慈悲な方のようだ。

 人を自由にさせておきながら、その実運命でガチガチに縛っている。

 これじゃ虐待だ。

 

 ぼんやり空を眺めていたら、その間に会話が終わったらしい。

 

 男が戻ってきて、胡乱げにこちらを見下ろしてきた。

 

「それで、なら君は一体なんなんだ?どういう事情があったって言うんだ?」

「道に迷って興味本位で来ただけだよ。君たちの持つ変なルールの力とも、ここのルールとも関係ないってば」

「スタンドを知らない…?」

 

 男が目を細め、隣の少年に何事か囁いた。

 同時に、頷いた少年がルールで作り出したと思われる力場を現出させる。

 

「これは見えるか?」

「うん。何らかの力場だね。音と概念に干渉するタイプのものかな」

 

 少年が鋭く息を呑んで、「コイツッ!僕のスタンド能力を!」と驚愕した様子を見せた。

 いやそんな丸出しなんだし、わかるに決まってるだろうに。

 男が少し考えてから、再度尋ねた。

 

「じゃあ聞くが、このスタンド像の色は何色だ?」

「………は?色って?空間の色?」

 

 何を聞かれたのか分からなくて、俺は思わず首を傾げた。

 何らかの力場があるのはわかるが、そんなの不可視だし色があるわけではない。

 

 男は「なるほど」と言って俺にかかっていたルールを解除した。

 俺は服についた砂を払い、立ち上がる。

 

「人に化けて暮らす怪物か。ベタだが、悪く無い情報源だな。いいネタになりそうだ」

「嫌な予感がする言い回しだなぁ。それで、何にも意味分かってないんだけど名前ぐらいはそろそろ教えてくれよな。俺は黄衣ハスタ。探偵をしてる」

 

 ニコッと微笑んで手を差し出せば、男はチラリと一瞥しただけで握手を交わそうとはしなかった。

 かなり気難しい御仁のようだ。

 横にいる少年が「露伴先生っ!!」と困り顔で叫んでいる。

 男が「フン」と鼻を鳴らした。

 

「僕は岸辺露伴。漫画家だ。こっちは康一くんだ」

「いきなりすみませんでした。僕らも動揺してて。広瀬康一です」

「構わないさ。こんな変な場所なんだ、そりゃ警戒して当然さ」

「ところで、道に迷ったって言ってましたけど…」

「おう。でもまあ、ちょうどいいところも見つかったしすぐ出て行くよ」

 

 この小規模空間はちょうどポケットのようになっていて外に影響を及ぼさないし。

 俺が魔術で足場を組めば、元いた世界に飛び立つぐらいはできるだろう。

 

「あっ、先住幽霊さん、あんたたち一回この人たちと一緒に外に出るんだろ?だったら外で時間を潰してきてくれないか?」

「え、どうしてかしら」

「俺が元の場所に戻るために足場を組むんだ。一時間ぐらいで終わるから、それまで危険だから離れててくれ」

「いいけど……」

 

 困惑する幽霊さんは、それでも一応納得してくれたようだ。

 あとは帰るだけ。

 変な状況ではあったが、いい刺激になっただろう。

 

 幽霊さんに連れられて帰ろうとする少年が、直前で振り返ってこちらに問いかける。

 

「あの!この街で行われてる殺人事件について知りませんか!?」

「んー……」

 

 探偵の領分だから、答えないわけにもいかないし。

 俺はやや迷ってから、こう答えたのだった。

 

 

 

「よくは知らないけど、吉良吉影って名前ではあるんじゃないかな」

 

 

 

 

 

 

「ってことがあってね。びっくりしたんだよ本当に。だから俺は寝坊したわけじゃなくてね」

「はいはい。急いで食べて黄衣さん。事務所開くの遅れるじゃん」

「全然信じてくれないの何…」

 

 朝。

 いつも通り俺は事務所の準備、コナン君は小学校への登校。

 諸伏さんは今日は公安の仕事のため、朝早くから出かけていて居ない。

 

 あの奇妙な場所が何だったのか、俺は語る言葉を持たない。

 

 ああした並行世界、異世界、別宇宙は数限りなく存在しているので、改めて究明する意味もない。

 でもまあ、袖触り合うのも多生の縁とも言うし。

 彼らが滅びのその時まで、元気にして居たらいいなと思う次第である。

 

 

 

 あの日。

 杜王町の住人は空に飛び立つ巨大な影を見たと。

 不思議な噂が立っていたのだとか。

 





・ハスター考察メモ
男達が持っていた奇妙な能力は、一部の怪異が持つルールの力に酷似している。
しかしその強度が桁違いだ。
何らかの巨大な存在にバックアップを受けて居た可能性がある。
あの世界には「神」がいる。
それは意思を持たないかもしれないが、そこに敷かれた確固たるルールを見た。

あの世界は、遠からず滅びる。
それはすでにルールで決まっていることである。
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