ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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幽霊ホテルの推理対決〈幽霊に救いはあるか〉

 

 目撃者三人を伴って屋上へ行ったコナン君は、まもなく収穫なしで降りてきた。

 

 どうやら屋上には上着の上に靴が置いてあったらしく、それは犯人によってあらかじめ置かれたものだと推察されるとのこと。

 つまり。

 犯人は何らかの方法でホテルから男を突き落とし、殺害。

 それを誤魔化すために靴を屋上へ置いたと思われる。

 

「どう思う、アンタ。有名な探偵なんだろう?」

「うーん困った」

 

 女性は世良真純と名乗った。探偵なのだという。

 本物の探偵さんに偽探偵の俺がご高説垂れるわけにはいかないし。

 ニヤリと世良さんが試すように見ているあたり、俺のポンコツさを確信しているようにも見える。

 

「それはコナン君に聞いてくれないか。俺は聞かれても『調査中』ぐらいしか答えることがない」

「ふぅん?そんなこと言っても良いのか?」

「探偵仲間の間では有名な話だよ。黄衣探偵事務所の頭脳はコナン君だって」

 

 茂木探偵とか白馬探偵とか槍田探偵とか。

 茂木探偵あたりなんかは「おっ、今日もちゃんと頭を忘れてなかったな」とか言ってコナン君連れを揶揄してくる。

 俺単体では何の役にも立たないことは事実なのでぐうの音も出ない。

 

 肩透かし、と言った様子で世良さんが肩をすくめた。

 欧米風の仕草だ。

 やっぱりどこかで見たような、不思議な感覚にとらわれる。

 

 しばらくしてやってきた目暮警部は俺を視認した瞬間「出た」とだけ言った。

 あまりに酷い言いがかりである。

 

「警部、運の巡り合わせは俺のせいではないんですが」

「分かっとる。分かっとるが、行く先々で先回りされる身にもなっとくれ。ストーカーじゃないんだぞ」

「それはそう」

 

 俺は頷いた。

 駄目だ、前提条件が俺に不利すぎる。

 

 ともかく、軽く俺が目暮警部たちに事情を説明するとしよう。

 

 今回の被害者は振り込め詐欺の首謀者として起訴中の男だ。

 恨みには事欠かない。

 死因は転落死で、他殺の可能性が高め。

 第一発見者は、この振り込め詐欺の被害者達三人。

 というところか。

 

 目暮警部は頷き、「高木、目撃者三人から話を聞いてくれ。ワシは鑑識の手配をする」と言って離れて行く。

 俺は高木刑事に近寄って軽く声をかけた。

 

「俺は少し気になる点があるのでホテル別館を調べてきても良いですか?」

「えっ、あ、待ってください一人じゃ…僕もついて行きます!」

「んー、まあいいか」

 

 流石に警察以外を一人で行かせるのは問題があったのだろう。

 目撃者の事情聴取を遅れてやってきた別の刑事さんへ頼み、こちらへ走ってくる。

 彼が付いてきても幽霊を見る事になる程度だし、特に問題はないだろう。

 

 コナン君がジロリとこちらを見上げてくる。

 

「ねぇ、本当に大丈夫?高木刑事びっくりしすぎて気絶しちゃうかもしれないよ?」

「それは流石に大丈夫だろ。たぶん」

「たぶんって言った」

「それよりあの世良って探偵さんがくると厄介なんだよな。今結界張って気配消してるから気付かれないとは思うけど」

「……そうだね。なんか僕の方をやけに気にしてたし」

「やっぱそうか」

 

 何を考えているかは現時点でははっきりしないが、悪意というわけではなさそうだ。

 だからと言って油断して良いものでもないが…ふむ。難しいところだ。

 

 高木刑事を引き連れて別館へと向かえば、そこは壁も床もそこら中がスプレー缶によって派手に落書きされていた。

 六階。正面のガラスが割れて風が吹き付けてくる。

 

 「うわっ、酷いな」と高木刑事が眉を下げる。

 

「被害者がやったらしいよ。押しかけてくるマスコミに癇癪を起こしたとか何とか」

「これは…別館が改装中とは聞いてたけど、そりゃ改装にもなるか」

 

 歩いて割れた窓ガラスへと近付いていく。

 魔術による霊体の可視化も忘れずに。

 暗いホテルの廊下に、窓から強く太陽光が差し込んでいる。

 逆光の中に映り込む、老人の姿が一つ。

 

 高木刑事が困惑して首を捻った。

 

「え、誰か居るみたいですけど、おかしいな。このホテルは今被害者しか使ってないって聞いたのに」

 

 「おーい、そこの方!」と高木刑事が近寄っていく。

 振り向いた幽霊は、しとどに泣いていた。

 ペンキ缶の上に座り込み、「うう、うう」と嗚咽を漏らす老人が、光に透けて外の景色を映す。

 

 肩を叩こうとした高木刑事が、遅れて凍りついた。

 

『うう、すまない、すまない…!ワシのせいでお前に罪を犯させてしまった、ワシが愚かだったから、死んでまで、死んでまでお前に負債を残して…!」

 

 高木刑事はあまりのことに声も出ないようだ。

 真っ青な顔のまま妙な体勢で固まってしまっている。

 コナン君が「言わんこっちゃない」と俺を責め立てた。

 いやでも意外と平気そうだよ。SAN値的に。

 

 ゆっくり、老人の幽霊に声をかける。

 

「ここで何があったか、話を聞かせてもらえませんか」

『っ!……私が見えるのかい?』

「ええ。声も勿論聞こえます」

 

 幽霊はゆっくりと涙を拭って、ぽつりぽつりと話し出した。

 

 老人の妻が振り込め詐欺被害にあったこと。

 妻はそのまま病死してしまったこと。

 老人も、その後を追って自死したこと。

 幽霊となった老人は、泣いてその娘に縋ったこと。

 娘が、殺人を犯したこと。

 

 それらを、涙ながらに語った。

 

『娘が私の姿を見えていたかどうかはわかりません。ですが、ですが私のせいで娘は罪を犯したのです!裁くならどうか私を…!』

「……残念ですが、その話が本当ならば娘さんの罪は消えません」

 

 答えたのは硬直していたはずの高木刑事であった。

 恐怖を振り払ったのか、それとも死者も生者も同じ人だと気づいたのか。

 高木刑事はそっと、真摯に老人の幽霊に語りかけた。

 

「どのような理由があろうと、殺人は重罪です。罪に向き合い、償うべきです」

『ですが…!』

「それに、貴方が今罪の意識に苛まれているように、娘さんも同じ罪に苦しんでいます」

 

 「誰にも咎められないって、意外とつらいんですよ?」と高木刑事が笑いかける。

 

 その声は優しく、思いやりに満ちている。

 警察官としての責務と誠実さに満ちている。

 

 思わず、老人は顔を上げていた。

 

「貴方と貴方の奥さん、そして娘さんが一緒にあの世で暮らせるように、憂いは少ない方がいいでしょうから」

『娘は……地獄に、落ちるのでしょうか』

「僕にあの世は知りようもないですが、それでも、真摯に罪を償うことが無意味とは思いたくありません」

『……すみません。こんなちっぽけな老人の戯言に、付き合わせてしまって』

 

 この世に地獄はなく、天国もない。

 あの世はないし救いはない。

 でも、それを言わない分別だけは俺にもあった。

 

 お爺さんは少しだけつられたように笑って、静かに目を閉じた。

 

『………すまなかった、利子』

 

 それっきり、ふっと霊体はかき消えた。

 おそらく急激に執着が解消されたことで、魂の維持が不可能になったのだろう。

 解けるように、外から差し込む太陽光の中で宙に消えたのだ。

 側から見ればそれは成仏したようにも見えたかもしれない。

 

 俺はそのまま踵を返して、エレベーターのボタンを押した。

 

「あとはトリックだけど、コナン君分かった?」

「うん。大体ね。あとは証拠を集めに2階に行くだけ」

「了解。寄って行こうか」

 

 会話に加わらない高木刑事を見ると、また真っ青になっていた。

 何故今更。

 

 若干涙目の高木刑事がギギギとぎこちない動きでこっちを見る。

 

「……僕、幽霊と会話しちゃいました…。夢とかじゃないですよね?」

「夢じゃないなぁ」

「せっかく高木刑事かっこよかったのに」

 

 コナン君がガッカリしたように口を窄める。

 そんな残酷なこと言ってやるなよ。

 

「僕いろんなグロい現場見たことありますけど、幽霊に会うのは初めてですよ!?そんな、居ないから大丈夫だって今まで思ってたのに!」

「その気持ちはスゲー分かる」

「コナン君がうっかり深く同情してる」

「ううう…これから現場に踏み込む時どうしよう…」

「コナン君頷きすぎて首もげそう」

 

 そうして雑談しながら2階に寄った後、エレベーターを降りると、下階で世良さんと鉢合わせした。

 

「あっ、酷いじゃないか!僕を置いて現場を見に行くなんて!」

「ああごめん、ちょっと野暮用でね」

「何か見つけたのか?なぁ、僕にも教えてくれよ」

「ははは。別に事件には関係ないことだったよ」

 

 バリバリ事件に関係あるが、正直にいうわけにもいかない。

 高木刑事も正気は疑われたくないのか、ブンブンと首を振って沈黙を守った。

 

 むすっと納得いかなさそうな様子の世良さんに纏わりつかれながら、俺たちは事件の捜査に戻ったのであった。

 

 

「コナン君、今回幽霊に全部バラされた形に等しいけど、よかったか?」

「……良くはない。良くはないけど」

「けど?」

「探偵なら、関係者の声も被害者の声もきちんと聞くべきだから。別にいい」

「なるほど」

 

 そのように、そっと俺たちはヒソヒソと会話した。

 その後、妙に怖がりになった高木刑事が涙目で現場を捜査することが増えたとの噂を佐藤刑事から聞くことになったが、別の話である。

 





・いつものジンニキ近況報告
絵巻物右端にある絵が、山梨県南部にある古い傾いた家だと特定した。
中は長く無人で廃墟だが、度々奇妙な音や人影が確認されるそうだ。
強い危機感を覚え、突入を断念。
下っ端に火をつけさせた。
下っ端は翌日風呂で焼死体で発見されたが、焼け跡から全く焼けた痕跡のない奇妙な木箱が見つかった。
開ければ、中には木彫り仏の一部と、古文書があった。
古文書には、不明な怪物を退散させるための手順が記載されていた。
しかし、途中で途切れているようだ。
安全のために分けて保管したとも記載がある。
全て集める必要がありそうだ。

・ニャル谷さん
ギミック燃やされておこ。

本体、こういうのはリワード(報酬)がないと中弛みする。
そう。小分けにして出すんだ。
あと日本風にじっとり陰湿な感じを出していきたいと思う。銃火器で対応不可能な要素を増やして。
ああ。日本でそんなバカスカ兵器をぶっ放されても困るし。
……いやそれは…アリと言えばアリか。
ようは羽虫が苦しむのを見るのが目的なわけだし。
うん。楽しみになってきたな。


・風見さんのコメント
降谷さん、独り言怖いです。
職場で何してるんですか。
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