ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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毒と幻のデザイン〈卑下するもの〉

 

「来てやったで工藤!!!」

 

 本日、突如襲来したのは服部君である。

 

 相変わらず大阪東京間の距離を感じさせない気軽さで出現する子だこと。

 コナン君は迷惑そうな顔をしながらも「んだよ、また来たのかよオメー」と言って満更でも無さそうにしている。

 

 うむうむ。その感覚には覚えがある。

 ニャルがゴロニャンと懐いてきた時の葛藤に近い。

 やることなすこと迷惑は極まれりなんだが、どこか味のある嬉しさというか。

 

 俺が内心共感していると、不意にじろっと服部君が俺を睨みつけた。

 

「なんやめっちゃ不名誉なこと考えてへんか黄衣サン?」

「気のせいっすね。うん」

「ほならいいけど」

 

 非常に勘のいい服部君に怒られてしまったので、ニャルのことを考えるのはここまでにしておこう。

 

 奥から茶を入れてくれた諸伏さんが出てきて、お盆からティーカップを机に置いてくれる。

 服部君が「おおきに」と言って頭を下げた。

 

 猛烈な勢いで公安の事務作業を終わらせていく降谷さんが、ぬっとPCから顔を上げた。

 

「それで、何かあったのかい服部君?」

「せやせや。ちょい気になる事件があったんで、工藤を誘いにきたんや」

 

 なんでも、知り合いのデザイン会社社長が軽井沢の別荘で殺されてしまった事件から話が始まるらしい。

 地元警察はそれを強盗の犯行と見て捜査しているようだが。

 

 服部君は先日、その殺された社長の名前で不可思議な手紙を受け取ったとのこと。

 

 文面は思わしげな内容と共に、「次の満月の晩、私が殺めてしまった家の前で待つ」と締め括られていたそうだ。

 当日現場に向かったのは諸事情で和葉ちゃんだったが、和葉ちゃんはそこでゾロリと髪の長い女の人を見たとか。

 

「んで、ホンマに幽霊やったら俺じゃ何もでけへんし、工藤の顔見るついでにここに寄ったっちゅーわけや!」

『まあ幽霊だから何かできるってわけでもないけどな』

「アンタ茶出しながら何言うてんねん。そんだけで人に毒盛るぐらいできるんやぞ」

『ははは』

 

 相変わらず明るい服部君のツッコミに心が軽くなる。

 いつも心の服部君に助けられてます。ナムナム。

 

 俺の魔術の助けがなくとも、幽霊単体で人のPOWを吸い取り殺すぐらいはできるからな。

 人間に憑依すればもっと手段は広がる。

 服部君の判断は実に正しいだろう。

 

「じゃあ、今からその社長さんの本宅に向かうのか?」

「せやで。行くやろ?」

 

 服部君の問いかけと同時にぐるんとコナン君がこちらを見た。

 気迫が怖い。が、今回は心配しなくとも幽霊はいない。

 

 俺は安心させられるよう微笑んで答えた。

 

「幽霊無し。周囲の魔術・神話生物の痕跡無し。なんか変な怖いことも無し」

「よし。行くぞ服部!」

「工藤、お前それカッコつかへんと思わん?」

「格好で恐怖は和らがない」

 

 コナン君がキリリと言葉を強くした。

 無駄にキメ顔である。それでいいのかコナン君。

 

 一応諸伏さんと降谷さんも来るようで、PCを畳んで立ち上がった。

 今日は公安業務のついでに黄衣探偵事務所の書類の一部を処理してもらっていたのだ。

 この事務所は俺の魔術によるセキュリティが万全だし、登庁するほどでもない仕事はよくここで二人で片付けている。

 

 一応、俺からも声をかけることにする。

 

「降谷さん達は大丈夫か?セキュリティ魔術はかけっぱなしにするし、別に残って作業をしてもらってもいいけど」

「構わない。そろそろ気分転換もしたくなったし」

『なにより少年が行く先で事件が起きそうだしな』

「諸伏さん、僕が起こすみたいな言い方しないでくれる?」

「いやその事件遭遇率は素直に異常やろ。なんで俺の解いた全部の事件足しても工藤の偶然出会った2ヶ月の事件数に足りへんねん。可笑しいやろ」

 

 それはそう。本当にそう。

 こっそり同意していたら、コナン君に爪先で足を蹴られるなど。

 言葉にしなかったのに責めるなんて酷い!思想統制を許すな!

 

 むすっとしながらコナン君が気を取り直して服部君に声をかける。

 

「ところで、オメー和葉ちゃんはどうしたんだ?ここのところ連れてこねーけど」

「和葉はこういう案件に連れてきて危険な目遭わせたないからな。できる限り待っててもろてるんや」

「なるほど、確かにな」

 

 イケメンのできる気遣いというやつなのだろう。

 もしかしたら和葉ちゃんの方はヤキモキしているかもしれないので、手厚いフォローは必須だとは思われる。

 

 

 

 とまあ、場面は変わって服部君の知り合いだと言う社長さんの本宅へ。

 

 大きな邸宅だ。

 立地もよく、土地代を含めるとかなりのお値段となることだろう。

 

 これまでなら「でも俺も黄昏の館持ってるし」と張り合えたのだが、今はニャルのお家になってしまっているからな。

 純粋な借金のみが残った俺は涙を呑んで歯軋りするのみである。

 

 それで外なる神ニャルラトホテプを封印できたなら格安の部類?

 それはそう。

 奴は黄昏の館を随分と気に入ったみたいで外に出てこないし、いい買い物をしたのはその通りである。

 

 さて。

 チャイムを受けて出てきてくれたのはこの家の奥さんだ。

 五人と言う大所帯で押しかけた俺たちを気にせず、中へ通してくれた。

 

 案内されてリビングへ向かい、そこでL字型の豪華そうなソファに座らせてもらう。

 お茶も出してもらって、今茶菓子のバウムクーヘンも出してもらうところだ。

 

 有名店のバウムクーヘンらしいが、食べたくない。

 

 ひとまず社長の事件の詳細を聞かせてもらうべく、服部君が口を開いた。

 

「んで、事件当時の話を聞きたいんやけど。当時別荘にいた全員がこの場にいるみたいやし」

「ええ。第一発見者はそこの家政婦の米原さんで、私もすぐにそこに駆けつけました」

 

 手元にはSの血文字があったらしいが、続きは被害者の手で隠れて見えなかったとのこと。

 他のメンバーは皆リビングにいたようで、外から侵入した形跡もあったので物取りの突発的犯行だろうと結論づけたららしい。

 

 不思議な点は、再び家政婦さんが見た時、手元にあった血文字は消えてしまっていたということ。

 警察では「見間違いだろう」となったらしいのだが、気になることではある。

 

 さて、そのあたりで立会人の一人、社長の息子さんが癇癪を起こした。

 

 「せっかくのバウムクーヘンが不味くなる!」と激怒して、足取り荒く取り分ける前のバウムクーヘンへとずんずんと近寄る。

 そのまま、奥のバウムクーヘンをむんずと掴み、口へと放り込んだ。

 

 止める間もなかった、と言えばその通りだが。

 俺はつい視線を落として俯いた。

 

 息子さんはにわかに苦しみ出し、泡を吹いて床に倒れ込む。

 妻の芹香さんが「育郎さん!?」と驚愕して立ち上がる。

 

 息子さんのHPが急激に低下し、二秒もすれば0となった。

 

 俺なら如何様にでも助けられたが、そのために大掛かりに魔術を使って人目を誤魔化すほどのことでもない。

 いつものようにそう判断して、俺はあえて助けない選択をしたのだ。

 

 ニャルの羽虫遊びとそう大差ない。

 あまり己を卑下しても仕方ないのだが、内心どうも暗くならざるを得ない。

 

 

 

 警察の到着はすぐだった。

 

 捜査一課が到着した時、ほぼその場にいた人間の位置は当時のままであった。

 俺たち探偵が立ち会ったからこそ、ここまで完璧に現場が保存できたと言うわけだが、それが幸運だったかは微妙なところか。

 

 コナン君が目を細めて顎に手を当てている。

 

「バウムクーヘンに毒を盛れたのは切り分けた本人である秘書さんと家政婦さん、位置的に近かった専務ってとこか」

「毒を手に付着させたなら離れた場所にいても問題ないが…ティーカップから見つかったカプセルは毒の保管に使っていたものの証拠隠滅か?」

『待てゼロ。たしか被害者は直前にトイレで手を洗ってる。それ以前についたものなら洗い流される』

「ほんなら、まず調べるのは食器とトイレのドアノブとタオルっちゅーわけか」

「なるほどわからん」

 

 俺は一言会話に混ざったような風を装って頷いた。

 服部君が胡乱な目でこっちを見てくる。

 

「なんでや、俺らまだ基礎的なことしか言うてへんかったやろ。探偵がそれでどないすんねん」

「いや俺は探偵じゃなくて自走式高性能スピーカーだから。音質もいい」

「胸張んなや」

 

 服部君の鋭いツッコミが胸を抉る。

 「公安の怪異対策中枢がポンコツスピーカーじゃ困るんだが」と降谷さんに睨みつけられて、俺は小さく縮こまった。

 なんでこんな袋叩きにされなあかんねん。

 

 コナン君が処置なしと言ったように首を振る。

 

「俺の方でも色々教え込んだんだけど、どうも黄衣さんってわざと思考停止する癖が抜けねぇんだよな」

「難儀なやっちゃ」

「いやだってさぁ、考えたら『見る』だろ、見たら答えがわかっちゃうだろ。どうすりゃいいんだよ」

 

 唇を尖らせてブーブー言えば、服部君に「カンニングはあかんで」とパシッと言われた。

 だから!どないすりゃええねんて!!!

 

 俺はため息をついて、チラリと視線を横に向けた。

 現在ぞろぞろと廊下に出ている。

 鑑識さん達が忙しそうに行き交い、廊下はやや騒がしい。

 俺ら以外で話を聞いている人物はいないようだ。

 

「………あのさ。俺犯人見たんだけど」

「はぁ!?ほんまか!!」

 

 おもむろに放たれた俺の言葉に、全員の視線が集中する。

 

「でも証拠にも証言にもならないから、ここだけの話にしてくれよな」

「ええてええて!」

 

 「それで、誰だったんだ!?」と諸伏さんが表情を険しく問いかけてくる。

 左右に視線を彷徨わせてから、俺はおそるおそる声に出した。

 

「秘書さんだよ、毒を奥の方のバウムクーヘンに振りかけたのは。俺見てたし」

「君の位置だと背に隠れて見えないはずだが」

「ハスターの瞳を起動してたから、見えてたんだよ」

 

 降谷さんの指摘は当然のことだったので、俺も正直に答えた。

 

 コナン君達は皆揃って考え込んでいるようだった。

 バウムクーヘンは二個あった。

 息子さんがわざわざ奥の毒のかかったバウムクーヘンを選んだのが何故なのか、まだ謎は残っている。

 

 加えて、やはり証拠がないのがネックなのだろう。

 真犯人である秘書さんのやり方は非常に上手かった。

 

 各々が思考を回して沈黙する中、コナン君が顔を上げた。

 そして「ねぇ、黄衣さん」と俺を呼ぶ。

 

「なんだい、コナン君」

「失敗したらごめん。でも、できる限りの力は尽くす」

 

 コナン君は俺に謝って、真っ直ぐに俺を見た。

 

 探偵なら当然、何故あの時俺が「ハスターの瞳」を起動していたのか気にするよな。

 俺の挙動がおかしいことも分かるだろうし。

 証拠不十分のまま犯人だけバラすような俺の言動も不審に思って当然だ。

 

 つまりまあ。

 連続殺人になるから止めてくれって話だが。

 

 連続殺人なんて今まで何件もあったのに、今更俺が言い出すなんておかしな話だ。

 模型の家ごと畳んで、潰されて見えなくなったニャルラトホテプの被害者達を思い出す。

 そんな俺が止めるなんて、虫のいい話だろう。

 

 俺はコナン君をガッと抱き上げて、猛烈によしよしした。

 

「よーしよしよしよしよしよし!!!」

「何何何何」

「おーーよーし!よし!」

「工藤噛みつきそうな顔してんで。やめたれや」

『ゼロ、俺らは先に捜査していようか』

「だな。傷心の黄衣君は君らに任せた」

 

 俺は耐えかねたコナン君に猫パンチを喰らわせられるまで、コナン君をよしよしし続けてたのであった。

 





・バーボンとRUM、雑談
RUMは既に調査の結果バーボンが警察庁に出入りしていることを知っている。
そして直接聞く。
「貴方は警察組織に入り込んで何を企んでいるんですか?」
「………僕がNOCだとは思わないんですか?」
「そんな穏やかな性質のものではないでしょう、貴方は」
「さて」
「それで、目的は?」
「単に、僕は自分のものをしっかり管理したいタチなので。群れは、時に愚かなものです。ならば僕自らしっかり管理統制しようかなと」
「なるほど。国家の支配が目的ですか」
「……そう言われると凄い典型的悪者みたいに聞こえます。やめてください」
「違うのですか?」
「違いませんけど。一昔前の漫画やアニメ感があってちょっとモニョります。なにより貴方に言われるとかなりつらい」
「言っておきますが、組織は国家支配など大掛かりな上に大した収入にならない事業には手を出しませんよ」
「僕の目的が非生産的活動と言われたみたいで腹立たしいので潰していいですか」
「大目に見てください」
「仕方ありませんね。今回だけですよ」
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