ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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まったり音楽、時々導入。

 

 黄昏の館にいるニャルの様子を確認して、今日もいつものように帰宅する。

 

 ここのところの毎日の日課である。

 ニャルは見るたびに少しずつ部屋のレイアウトを変えているらしく、水族館は無限に拡張を続けている。

 入り口付近は普通の米花水族館なのが逆に不気味だ。

 

 昨日は2階に動物園を新設したらしく、俺も見せてもらった。

 中には檻に放り込まれたナイトゴーント(夜鬼)が心細そうに縮こまっていた。

 

 ニャルが「触ってもいいですよ!」と言うから、羽の先を少しだけ触らせてもらった。

 断ったらこのナイトゴーントが価値なしとして廃棄されそうだったからだ。

 すべすべのゴムのような羽だ。

 ナイトゴーントはますますしょげ返り、しおしおになった。

 

 まあ、人間で遊ぶよりマシだと思うことにしよう。

 

 帰宅してからはいつも通り、全国から送られてくるコールドケースの解決に奔走することになる。

 「門の創造」で直接事務所に繋げ、とことこと門をくぐる。

 

「ただいまー。ついでにお土産でどら焼き買ってきたから食べる?」

「おかえり黄衣さん!食べる!」

『お、美味そうじゃないか。なら温めるから貸してくれ』

 

 門を潜って瞬間移動したように見える俺の出現にも慣れたものだ。

 書類を突き合わせて推理していたらしいコナン君と諸伏さんが、のんびりと振り返った。

 

 諸伏さんにどら焼きを渡せば、電子レンジにセットしてくれた。

 その上で、軽くトースターで炙ってくれるらしい。

 その間に俺は茶を用意することにする。

 部屋の中に甘い匂いが充満する。

 

 コナン君が広げっぱなしの書類を端に寄せて、皿を置くスペースを作った。

 

 まもなく、焼き上がったどら焼きを持って諸伏さんがやってきた。

 美味しそうだ。

 ニャルの家で先ほど軽食を食べたばかりだが、あれは食事という括りには入らないからな。

 逃げ出した多足のパスタを一本ずつ捕えて食うまでが催しだったし。

 

 ともかく一口、どら焼きに齧り付く。

 甘くバターがとろけて大変美味しい。

 

 ついでにPCを開き、最新曲の投稿を済ませてしまおうと出来上がった曲の最終確認を行う。

 片耳だけイヤホンをつけて、変な不備がないか確認していく。

 

 諸伏さんもコナン君も興味ありげだったので、「聞く?」とイヤホンを渡す。

 

 コナン君と諸伏さんがイヤホンを片耳ずつ分け合い、曲を聴く体勢に入った。

 投稿予定の最新曲を再生する。

 

「へぇ、ボーカル入りなんだね。ポップでいい曲だね」

「ありがと。最近はボーカル付けることにしたんだ。その方が人気っぽいし」

 

 ボーカルが入ればそれだけ情報量も増え、込められる音楽魔術の幅も広がる。

 やはり人間の心を癒すことを大目的に掲げつつ、今は英語と日本語両方で楽曲を投稿している。

 

 収録は俺が作成した小規模空間で行っている。

 ここは高級で壁も床もしっかりしているとはいえマンションだし、防音の心配はあるからな。

 近所迷惑にはなりたくないし。

 

 この収録用小規模空間はDTM(音楽作成機能)を組み込んである特別品だ。

 立体的な音響となるほか、各種音楽収録に便利な機構が詰め合わされている。

 

 形式としてはマイク等は使わずそのまま空間から魔術的に音楽を抽出する感じだ。

 その後電子データに変換し、不備がないか確認後に投稿している。

 

 どら焼きをもぐもぐしながら、Y◯UTUBEの管理画面を開く。

 

 見ると、チャンネルの再生回数の通知が来ていた。

 チャンネル総再生数1億突破しました!みたいな文言がポップアップ通知される。

 思わず二度見三度見して画面を確認する。

 

 なんでや。

 先週見た時はいつもの低視聴数だったのに。

 

 チャンネルアナリティクスを開くと、先週末からグラフが直角に急上昇していた。

 

 この日は米国黄色の印の兄弟団の定期集会日だ。

 アメリカの各地に教会を持つ黄色の印の兄弟団は、毎月第三日曜に定期集会を行っている。

 そこで機関誌を配って情報共有した後、さまざまな催しをしているのだ。

 

 うーん、でもまだ黄色の印の兄弟団と決まったわけではないし。

 俺の音楽の才能がようやく世間に評価され出した可能性もあるし。

 

 見ていくと、人気なのはやはり最近投稿しているボーカル付きの楽曲だった。

 高アクセス地域は日本とアメリカ。アメリカの方が上だ。

 コメントを見ると「神よ!我々にお慈悲をくださりありがとうございます」やら「ついに降臨の時が来たのだ!」やら英字で書き込みが大量についていた。

 

 これは……完璧な組織票ですね………。

 

 自分で教えたくせに酷く物悲しい気持ちになって、俺はもそもそとどら焼きを口の中で無心で噛み締める作業に従事した。

 コナン君が俺の様子の変化に気づき、気遣わしげに見上げてくる。

 

「どうしたの黄衣さん。なんか悲しそうだけど」

「自業自得だから気にしないで。でもとりあえず今日は寿司にしよう。豪華なやつ」

「えっホント!?」

 

 とりあえず爆速で収益化の条件を満たしたので、設定だけはしておこう。

 

 癒しに広告は無粋なので投げ銭のみを登録しておく。

 お賽銭みたいな気持ちで使ってもらえれば、俺の懐も潤って美味しいものを食べることができるし、嬉しい限りだ。

 

 卑しい神でごめんね……。

 どうしても収入があると嬉しくなっちゃうんだ。

 

 でも破産するまで投げ銭しないか少し不安は残る。

 コメントの方に「できれば投げ銭は1ヶ月に一回までにしてね!」と記載を追記しておいた。

 デフォルトで一回の金額上限もあるし、これならヤバい献金も抑制できることだろう。

 

 言いようもなく不安になったので、注意書きは全部の動画のコメント欄、説明欄に追記した。

 まだ不安がおさまらないので、「健康のため、投げ銭は1ヶ月に一回!」とデカデカと記載した動画も魔術で作成し、ついでに投稿しておく。

 

 なんか怖くなってきたな。

 本当に大丈夫だろうか。

 

 ドキドキする心臓を抑え、昨日作った最新の動画も投稿する。

 その前に通知設定を直して、チャンネル登録者に新しい動画投稿の通知が行くように設定した。

 さらに連絡先として作ったSNSアカウントを載せる。

 レコードレーベルからの声掛け待ってますアピールである。

 

 本当に卑しい神ですよ俺は……。

 ぽちり。投稿完了。

 

 画面を閉じて、むしゃくしゃしたのでどら焼きの二個目を頬張る。

 

 TVでは迫る東京サミットの特集が行われていた。

 

 エッジオブオーシャンという統合型リゾート施設の国際会議場が使われる予定らしい。

 美しいホテルに加え、カフェやレストランなども併設されるそうで、どこも実におしゃれだ。

 

 そこまで遠くないし、今度観光に行くのも面白そうだなと思うなど。

 

 コナン君がぼんやりとテレビを見ながら口を開く。

 

「そういえば、公安で進めてるっていう怪異対策はどうなってるの?」

『それなら順調、とは言い難いが進んでるよ。前途多難だけどな』

 

 全国に数多ある怪異を全て洗い出し、危険度の判定と詳細資料はきちんと策定した。

 人員も固まって、俺による軽い研修も済んだ。

 あとは実践の数のみ、というところまで来てはいる。

 

『だが、やはりというべきか事故が多発していてな。幸いにも死者は出ていないんだが、入院者が出たり、早々にトラウマを負って休職した人員が出たり散々だよ』

「あー……、まあ、そうだよね」

 

 危険度の低い案件から調査と危険の除去に乗り出してはいるんだが。

 不測の事態は起こるもの。

 死者が出ていないだけ御の字と考えるほかないだろう。

 

 また、もうすぐ部署新設の承認が下りる見込みだ。

 怪異対策は正式に警視庁公安部の新しい課として成立する手筈となっている。

 

 怪異関連災害・事件はかなり多く、これまで放置されてきた分野ということで問題視もされ始めたし。

 だがマスコミへどうやって公表するかで上は頭を悩ませているらしい。

 

 実績の方もどうもおぼつかないのが現状だし、まだまだ問題は山積みだ。

 

 諸伏さんが奥の冷蔵庫からペットボトルのお茶を持ってきてくれた。

 俺たちにもに注いでくれたので、遠慮なく喉を潤す。

 甘くなった口に爽やかな苦味が通り抜ける。

 

『しかも多分予算足りてないよな。ドローン投入すれば無傷みたいな場面もあるのに、配備されてないだろ?』

「だろうなぁ。まだ怪異自体全然眉唾扱いだし。仕方ないんじゃないか?」

「難しいね。人口に膾炙されても事故が起こった時パニックになって困ると言えば困るけど」

 

 難しい舵取りを迫られているのだろう。

 もそもそもどら焼きを食べながら明日の日本を憂うなど。

 

 こういう時、「やっぱ俺が全部やった方が早いんじゃなかろうか」的ダメなリーダー思考が頭を過ぎる、俺なのであった。

 





・Y◯TUBEアカウント「テツチャプトル」
機関誌で一斉にアカウントが紹介された。
また、今月の定期集会は予定を変更して全世界一斉中継で教団当主より言葉があり、神が人に与えたもうた赦しの旋律として奨励された模様。
神は仰った。「皆と分かち合え」と。
我らはこの神の音色を人類種を通じて分かち合い、皆で神に心を捧げるべく邁進するのだ。
それと、神への献金は1ヶ月に一度までを厳守すること。
それ以上は隣人の加護を横取りすることとなる。

・黄衣氏
俺が悪かったです出来心だったんです勘弁してくださいお願いします(土下座)
その後すぐに怖すぎて投げ銭は止めた。
もうこれだけで黄昏の館分の借金は返せそう。

・諸伏さん&コナン君&降谷さん
時価の美味い寿司食べた。満足。
コナン君が突然「黄衣さんの触手って美味しいの?」とか聞いたので変な空気になった。
黄衣は「俺がとても痛いので食べてはいけない」と答えたが。
その時降谷さんの脳内に本体の記憶が流れ込み、「タコみたいで歯応えがあり旨みが濃厚。塩茹でにするとかなりいけると思う」などと呟き皆をギョッとさせた。
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