ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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命をかけた恋愛仲介〈伊達航という男〉

 

 本日は、少年探偵団の送り迎えのお仕事である。

 

 少年探偵団が、子供防犯プロジェクトのパンフレットのモデルに選ばれたと言うことで。

 高木刑事と合流する約束で、警視庁前で待っているわけである。

 

「ねえねえ黄衣さん!歩美達この間も事件を解決したんだよ!」

「博士とキャンプに行ったら、死体を埋めてる人がいまして。血だらけの斧持った犯人に追いかけられて大変でした!」

「ちょっとお出しされる大変さの格が想定を遥かに上回ってるんだけどそれマジ?」

 

 俺は思わず目を白黒させて聞き返した。

 コナン君がゲンナリした顔で「マジだよ」とだけ答えた。

 

 命懸けの追いかけっこの末、逃げ込んだ民家で犯人を罠に嵌めて返り討ちにしたらしい。

 ホームアローン、サイコホラーを添えてみたいな味付けである。

 俺なら怖くて泣いてたかもしれない。

 

 そのようにして異様に濃い武勇伝を三つほど聞いたあたりで、警視庁から出てくる二人組を見た。

 降谷さんと諸伏さんだ。

 

 子供達もそれに気づいて「あ、黄衣さんの事務所の人だ!」「お久しぶりですー!」とわいわいと両手を振る。

 降谷さんたちはパッと明るい顔を作って、こちらへと寄ってきた。

 

 子供好きにはとても思えないアクの強い性格をしているが、案外降谷さんは子供が好きである。

 たぶん「日本の未来を担う若者」という概念を箱推ししているのだとは思うのだが。

 子供を可愛がるニャルラトホテプの化身、という絵面に反射で身構えてしまう癖を俺もなんとかせねば。

 

 そんな降谷さんの笑顔の端々に、まだ暗い影がちらついている。

 先程までは二人して少々暗い顔をしていたが、一体何があったのやら。

 

「ああ、少年探偵団の子達か。元気だったかい?」

 

 子供達が一斉に話し出す。

 大変に小さくてこまかくて、健気かつ矮小で非常にかわゆい。

 

「はい!安室さんでしたよね!」

「なあなあ、最近俺うな重奢ってもらったんだぜ!」

「元太君また黄衣さんにたかっちゃダメじゃないですか」

「歩美、今度は美味しいケーキが食べたい!」

「いいとも。今度はみんなでケーキ屋さんに行こうね」

 

 わーいと歓声が上がった。

 降谷さんもニコニコで光彦君の頭を撫ぜた。

 

 これは小さくか弱い生命を外なる神ニャルラトホテプと旧支配者ハスターが寄ってたかって可愛がっている図である。

 良識ある魔術師が見たら悲鳴を上げるかもしれない。

 

 実は自覚はないものの頑張れば鉄道トンネルの怪異以上の強烈な呪詛を放つことが可能なポテンシャルの鬼、諸伏さんが子供達に目線を合わせて笑いかけた。

 

『そういえば今日の子供防犯プロジェクト、撮影は君たちだったっけか。凄いじゃないか』

「ついに僕たちの活動が認められたんです!」

「我ら!少年探偵団!」

「出発進行ー!」

 

 大人二人にヨイショされ、子供達は有頂天で胸を張った。

 こうして見ると絵面酷いな。

 恐ろしい怪異に今にも子供達がとって食われる様子にしか見えない。

 有識者に見られたらあらぬ誤解を受けること必至である。

 

 ちなみに子供達だが、実際事件時の咄嗟の機転などは俺を遥かに上回る。

 コナン君に英才教育され、推理もかなりしっかりしてるし。

 俺は銃持った犯人に迫られたらちいかわになるしか無いので、その点素直に尊敬している次第である。

 

 そうそう。気になると言えば降谷さん達の様子である。

 子供達の前もあるので、俺、コナン君、諸伏さん、降谷さんを軽く繋いで念話グループを作成する。

 

 聞くのはもちろん、二人がどうして暗い顔をしていたかである。

 

『二人して警視庁から私服で出てきたけど、なんかあったのか?』

『結構真剣な顔してたよね』

 

 俺とコナン君の質問に降谷さんが嫌そうに眉間に皺を寄せた。

 

『私用だよ私用。隠しても意味無いから言うが。亡くなった同期が、高木刑事に大切な物を預けていた可能性があって。それを聞きにきたんだ』

『高木刑事に?』

『ああ。同期の名は伊達航と言ってね。いい奴だったし、いい刑事だった。去年、交通事故で亡くなってしまったが』

 

 降谷さんは静かに瞳を閉じた。

 悼む想いがそこには溢れんばかりに籠っている。

 

『あんなことになったんだ。無念のあまり亡霊として彷徨ってないか探していたんだが。せめて高木刑事から指輪を渡してもらえれば…』

『……あんなことって?』

『伊達が亡くなってすぐ、恋人も後追い自殺したんだ。あの日、班長は恋人の両親に挨拶して、指輪を渡す気だったらしい』

 

 その目前に、交通事故死。

 悲しみは想像して余りある。

 コナン君もその言葉に静かに目を伏せ、痛ましげに口を噤んだ。

 諸伏さんも物憂げに遠くを眺めている。

 

 口ぶりからして降谷さんは伊達刑事に幽霊となっていて欲しかったようだが。

 本来、幽霊になることは不幸なことだ。

 果てには自らの魂が崩れる苦しみの中発狂するしか無いのだから、一度の死で楽になれるに越したことはない。

 

 ……しかし、降谷さんは指輪を手に入れて何をする気だ?

 降谷さんの声は静かな悲しさに満ちているが、一欠片の剣呑さが見え隠れする。

 

 考えても仕方のないことか。

 

 なお。

 念話ではこんなシリアスな空気なのに、外側では降谷さんは子供達の取り留めもない会話に親身に相槌を打っている。

 ものすごいマルチタスクだ。

 そして話を聞いていくうち、降谷さんの眉間に皺が寄った。

 子供達の武勇伝がマジの武勇伝過ぎる事に気がついたようだ。

 

 ジロッとコナン君を見て、目線だけで「監督不行き届きだぞ」と伝えている。

 コナン君は明後日の方向を見て「あ、珍しい鳥さんがいるー」とか言っている。

 全くしまらない感じである。

 

 諸伏さんがうーんと困りながら話を元に戻した。

 

『そんなわけで俺たちは班長が預けた指輪を高木刑事から預かろうと思ったわけだ』

『なるほど。で、高木刑事からは受け取ることはできたの?』

『それが高木刑事が不在だったんだ。昨日休暇をとって今日の午後には登庁する予定だったらしいんだが、まだ戻ってないと』

 

 え、とコナン君が顔を上げた。

 

 俺たちの待ち合わせの相手も高木刑事だ。

 彼はこの手の予定を間違える人物ではないし、もし突発の予定ができたなら捜査一課にもそう伝えるはず。

 

 子供達もいい加減やってこない高木刑事にぶうぶうと不満が噴出し始めている。

 

 考え込む俺たちの前に、男が一人。

 白髪に帽子を被る、老齢の男性だ。

 少し悪質で陰気な笑い方をして、俺たちへと近寄ってくる。

 

「君たちも高木刑事を探しているのかい?」

「おじさんもですか?」

「私は高木渉刑事から預かり物があってね。彼の恋人の先輩刑事に渡したいんだが、どうか君たちの方から渡してくれないかな」

 

 差し出されたのは緑の包装紙に包まれた菓子箱のようなものだ。

 

 代表して俺が受け取ったが、菓子にしては重めだ。

 一応預かって、メモ帳を取り出す。

 

「ではお渡ししておきます。貴方のお名前と連絡先を教えていただけますか?」

「ははは。私は高木刑事からの贈り物を渡しただけだから、名乗るほどのものじゃないよ。詳細は高木刑事に聞くといい」

「………」

 

 とても不審だ。

 それがわかっているのか、男性は「もし怪しいのなら渡さず捨てても構わないよ」と言って背を向ける。

 

「ああそれと、高木刑事から伝言ももらっていたんだ。『それは生モノだから、遅くとも明日明後日にはダメになってしまう』ってね」

 

 男性の後ろ姿が遠くなる。

 子供達が「なんか凄く怪しい人ですね」「毒入りお菓子かなぁ」「食いもんを粗末にするなんてひでーおっさんだぜ!」とコソコソ話している。

 

 ちらり、と降谷さんが諸伏さんに視線をむけた。

 諸伏さんはその視線に一瞬だけ目を合わせ、それから自然に子供達に笑いかけた。

 

『悪いな。そろそろ俺、用事があるんだ。高木刑事に事情を聞けるといいな』

 

 そのように言って、男と同じ方向へとゆったりと歩いていく。

 子供達がわいわいと諸伏さんを見送る。

 尾行するつもりらしい。

 

「じゃ、俺たちは代わりにご指名の佐藤刑事にでも連絡を入れるとするか」

「ん。頼んだコナン君」

 

 

 俺たちは毎度のこともありスムーズに捜査一課へと通された。

 佐藤刑事は俺たちの後ろに立つ降谷さんを見て、やや眉間に皺を寄せるようなそぶりを見せた。

 だが、追求はしないらしい。

 

 「怪しい毒入りお菓子、ねぇ」と言って胡乱な様子で緑の菓子箱を開ける。

 中はタブレット端末が一つ入ってるばかりであった。

 

 裏は何かを削り取ったように傷だらけ。

 佐藤刑事が真剣な顔で電源を入れる。

 

「……ッ!!!」

 

 そこに映ったのは、首に縄をかけられてどこかに縛り付けられた、高木刑事の姿であった。

 





・ニャルラトホテプの褒美
「降谷零」という名の化身は非常に優秀だ。
だから褒美を与えることにした。
【その親友というモノを取り戻したいんですね?】
甘く甘く、蕩けるように脳内に囁けば、化身はゆるゆると頷いた。
【なら、そのモノが大切にしていた品物を持ってきてください】
並行する過去から魂を組み上げて、品物を楔に固定化するのだ。
「……そうすれば、班長は戻るのか?」
【もちろんですとも】
どこかの並行世界は魂を取り上げられ、その整合性の喪失により緩やかに時軸ごと崩落するが。
そんなの、別に我々には関係ないので。

優しく化身の魂を撫ぜてやれば、化身は恍惚と吐息を漏らした。

・邪神会議リターンズ
なんかニャル野郎が企んでる気配を察したので。
旧支配者ハスターはとりあえず触手でべしっとニャル野郎を殴っておいた。
「僕何もしてないんですけど!?!?」
「嘘つけ降谷さんが露骨に様子おかしかったぞ!」
「え……お利口な化身だったのでご褒美をあげただけですけど」
「具体的には?」
ニャル野郎の言い分を全て聞き終え、人の神ハスターは深く頷いた。
「なるほどギルティ。完全に洗脳じゃねーか。今後一週間はお前んち行かないからそのつもりでいろよニャル野郎めが」
「えっ!?なんで…なんで……」(泣)
「あっえっ、いや、ちゃんと白紙撤回して降谷さんにフォロー入れれば明日は行くよ」
「はーい♡待ってますね♡」

・降谷さん
「やっぱあの話無しで」って言われる定めにある化身。
あの神は嘘泣きとか使うから注意したほうがいいと思う(化身談)

・察してたけど言わなかった諸伏さん
幽霊になるのは辛くて苦しいことだから、班長にそんな思いしてほしくないけれど。
幽霊が辛くて苦しいのだと、親友にだけは気付かれたくなて。
黙っていることしかできない、己を恨む。

・松田さん近況
そのころ、何も知らない松田さんは激務の事務仕事に従事していた。
業務内容は主に風見さんの補佐。
出来高に応じて降谷さんより阿笠博士作メカが差し入れされる模様。
よく風見さんと一緒にカップ麺啜ってる。だいぶ打ち解けた。
伊達班長の墓参りは警察学校組みんなで行く予定。
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