ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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シャーロック・ホームズ実装!

 

 気づいたらシャーロック・ホームズが実装された。

 

 本日は休暇なので買い物がてら本屋に来ていたのだが。

 ふと見たら、「シャーロック・ホームズの全て」というタイトルの本が歴史書籍の棚に並んでいたのだ。

 他にも「ホームズから見る探偵の歴史」とか「シャーロック・ホームズ伝記」とか。

 人気ジャンルであるようで、沢山の本が並んでいるのが見えた。

 

 思わずまじまじと見てしまう。

 

 たしかニャル野郎がコナン君監修の元で実装しているはずだから、かなり詳細に小説通りになっているとは思うのだが。

 コナン君のホームズ好きは異様の一言だからな。

 

 英語版に加えて翻訳者別の各レーベル日本語版を全て集めて並べてたし。

 定期的に読み比べてニッチな書評とともに延々晩ごはんの席で解説してくれたし。

 漫画版も児童書版もパロディもドラマもホームズならなんでも嗜むようで、どの話題でも凄まじい濃度の解説を提供してくれた。

 

 ただ、残念ながら俺は推理の速度感的にホームズは趣味に合わなかったのだ。

 何もわからないままホームズがゴールまで突き進んでしまうから置いていかれる感じがしてな…。

 アガサ・クリスティの方が読めるかな、と言ったらコナン君は物凄くしおしおになってしまった。

 すまんて……多分コナン君の推理速度ならホームズでいいのだと思う。

 

 手にとってふむふむと眺めていると、後ろから声がかかった。

 

「おや、黄衣さんじゃありませんか。ホームズに興味があるんですか?」

「沖矢さん、どうもです。コナン君がよく話してくれるので、興味が湧いて」

 

 振り返れば、そこには食材のたくさん詰まった買い物袋を下げたやけに生活感のある沖矢さんがいた。

 よくお隣に生煮えのシチューなどを提供しているらしいし、そのための準備だろうか。

 

「ホームズなら、僕は怪異シリーズが好きですね。推理シリーズとはジャンルが異なりますが、悍ましさの中に光るホームズの頭脳が魅力的で」

「怪異シリーズ?」

 

 そんなんあったか?と首を傾げると、沖矢さんは苦笑して丁寧に解説してくれた。

 

「推理シリーズはコナン・ドイルがホームズから聞いた実際の事件をモデルにしたものになりますが。怪異シリーズは晩年、コナン・ドイルが描いた創作となります」

 

 「これを受けて来月新設される『警視庁公安部怪異対策課』の名前の元になったんですよね?」と言われて、俺はへぇー、と間の抜けた吐息を漏らした。

 

 どうやらそういうことになったらしい。

 

 今回の過去改変はかなり慎重を期して、丸ごとの挿げ替えがないように慎重に慎重を期した。

 というかニャルラトホテプにそうさせた。

 

 だが、流石のニャルラトホテプとはいえそのような神懸かり的な魔術行使には時間がかかったようで、実施が今までずれ込んでしまったわけだ。

 

 一応関わりのある人物にはあらかじめ保護魔術をかけて挿げ替えが起こらないようにはしてある。

 ホームズは現在に生きるものではなく昔の英国の人間であるため、現在にたどり着くまでに適度に辻褄合わせをする余地も多かった。

 それでも多少の挿げ替えは起こっているし、怪異による悲劇の防止の意図がなければ取りたくない手である。

 

 俺が難しい顔をしていると、沖矢さんが「ふむ?」と首を傾げたようだ。

 

「浮かない顔をしていますね。どうかされましたか?」

「いやいや。せっかくなので怪異シリーズ買おうかな、と思っただけさ。そういえばなんだけど、沖矢さん…の中の人って妹とかいる?」

 

 俺の藪から棒な質問に、沖矢さんは片目を開けて答えた。

 

「居ますよ。彼女とどこかで会いましたか?」

「本当に妹本人かは分からないんだけど、それっぽい人と最近事件現場で会うから。目元がよく似ててさ」

「ほー、それはそれは」

 

 面白そうに微笑んで、沖矢さんはメガネを上げた。

 

 全然関係ないんだが沖矢さんの声と顔と赤井さん由来の怪しさが加わって、どうにもこう、激しく腹黒っぽく見える御仁である。

 

 ぶらぶらと二人連れ立って小説コーナーに移動して、シャーロック・ホームズ怪異シリーズのある棚へと向かう。

 結構巻数があるようで、邦訳の文庫本がずらりと並んでいる。

 

 目次をめくると、タイトルに幾つか覚えのある怪異が載っていた。

 おお、アレ対処してくれたのか。これもか。

 善きなり、と頷いて本を閉じ、全巻抜き出してレジへと向かう。

 

 沖矢さんがパチクリと瞬いた。

 

「おや、全部買うんですか?」

「ホラーは意外と好きなんだ。せっかくだし読んでおこうかなとね」

 

 ニャルラトホテプにテコ入れされた、コナン君監修の超有名探索者の冒険譚だ。

 これは読まねば損というものだろう。

 

 後先考えずどっさりと買った本がレジ袋をミチミチと言わせているが、まあ仕方あるまい。

 あ、と遅れて気付いて、俺は話を世良さんの件に戻した。

 

「今は探偵やってるらしいよ。兄妹揃って頭良いなぁ。沖矢さんの中の人も凄い切れ者だし」

「いえいえ。『中の人』なんて弟に比べればまだまだですよ。真の天才というのは彼のようなものを指すのでしょうね」

「……三兄妹?」

 

 沖矢さんは「はい」と穏やかに頷いた。

 しかも弟さんは赤井さんに輪をかけて凄まじいINT(知性)の持ち主のようだ。

 人類の限界、18とかだろうか。

 もうそのぐらいになってくると全てがつまらなく感じそうなものだが、よく人間やってて苦しくならないものだ。

 

 ともかく、俺はぐっとレジ袋を掴み直し、沖矢さんに振り返った。

 そろそろ家に帰って夕飯の支度をせねばなるまい。

 

「じゃあ俺は帰るよ。妹さんについても、たぶん今後どこかで会うかもな」

「なら、会う時を楽しみにしておきましょう。その妹らしき人物とね」

 

 軽く手を振りあって別れる。

 俺は一階まで降りて、そのまま外へと出た。

 マンションまでは徒歩だ。

 片道20分ほどかかるが、車だと混雑してそれ以上かかってしまう。

 

 てくてくと道を歩くと、夕方の犬の散歩がチラチラと見える。

 この辺りは高級住宅街だからか、高貴そうな立派な犬が多い。

 

 スマホが鳴ったのでレジ袋二つを片腕に寄せて、ショルダーバッグからスマホを取り出した。

 ちなみに黄衣ハスタは右利き設定だ。

 どっちも所詮触手なので等しく動かせるが、意識して右を使うようにしている。

 

「はい、黄衣です」

『僕だ。来月から正式に運用開始される怪異対策課のメディア向け説明について相談がしたい。明後日にでも警察庁に来られるか?』

「オーケー。調整しとく。何かあったか?」

 

 軽く聞くと、降谷さんはクソでかため息をついた。

 

『頭の硬い連中が「正気か?」だとか「おかしな噂話に流されてるんじゃないか」だとか喚いてな』

「良いことじゃないか。それだけ怪異とは無縁の生活だったってことだし」

『そんなのがメディアで権力握ってもらっては困る。こっちは在らん限りの資料を提出してるんだぞ。白馬警視総監もすぐに納得してくれたし』

 

 降谷さんはポコポコと怒っている。

 どうやらかなり色々苦情やら疑問が寄せられたようだ。

 警察組織内でも話を通すのにかなり苦労したようだし、前途多難ではあるのだろう。

 

『それと3日前の過去改変で国内の怪異総数が変化した。内容も微弱に変化しているし、再確認が面倒この上ない』

「それなら明後日会う時に齟齬分のインストールをしようか。俺も忘れてたし、魔術ですぐできるぞ」

『助かる。君は海外事例のデータを集めておいてくれ』

「了解」

 

 短くやりとりして通話を終了する。

 

 今夜はハイパーボリア風ハンバーグだ。

 美味しいといいのだが。

 

 そのようにぼんやり考えつつ、俺はマンションへと歩を進めたのだった。

 





・シャーロックホームズ
実装された。コナン君大満足。
ホームズ関連書籍が鬼ほど増えて舞い上がっている。
なお、今回ごっそり黄衣さんが買った怪異小説は既にコナン君が全巻購入済み。
家で被って黄衣は悲しい思いをするが、コナン君は「黄衣さんも読むんだ!!!」とめちゃくちゃ嬉しそうな顔をする。


・ジンニキ進捗
池を覗き込むと、神と相見えることができるという。
ジンが覗き込んでも、特に何も起こらなかった。
諸伏高明が「行方不明者も毎年出ているようです。怪異の発動する条件はわかりませんでした」と静かに言う。
「しかし、事例では皆『朝起きたら布団はもぬけの殻だった』と言っています。夜を待つ必要があるのかもしれません」
「……チッ、分断されると厄介だ。近場の宿で一泊するぞ」
「そう言うと思いましたので、宿を手配してあります」
「フン」

夜。念のため交代で夜を明かそうとした。
しかし午前1時を回ったあたりで、視界がブラックアウト。

目が覚めると、見覚えのない四角い部屋にいた。


・降谷さんのコメント
ヒロのお兄さんと仲良くやってんじゃねーよクソ。
………ではなく。ごほん。
今回はクローズドシナリオです。
殺意低め(当社比)、謎解き多め。
木彫り仏以外のクリア報酬もあり。
また、隙を見てジンを殺して行こうと思います。
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