ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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工藤優作の未解決事件〈コナン君への誤解〉

 

 昴さんと工藤邸でお茶会である。

 

 今日は明美さんの定期健診も兼ねて、工藤邸にお邪魔している。

 正式に明美さんが我が家を出てからの初めての実施だ。

 少しばかり緊張するなど。

 

 服を脱ぐ必要はないので、リビングで赤井さんも同席する中普通に診察を始める。

 

 魂を「ハスターの瞳」でしっかりと目視確認。

 分析した数値は予定通りのもので、悪いところもなさそうで一安心だ。

 

「ん、問題無し。魂の劣化も防げているし、赤井さんの寿命ぐらいは十分過ごせるよ」

「ありがとう、黄衣君」

 

 明美さんが穏やかで幸せそうに笑ってくれる。

 その手を愛おしそうに赤井さんが取り、二人は指を絡めた。

 イチャイチャしおってからに。

 

 非業の死ではあるものの、彼女の魂自体は一般的なものだ。

 幽霊になってすぐに確保できたからこそ、魔術による保護でかなり保存状態も良好だが。

 そうでなければ1ヶ月以内には霧散していたことだろう。

 

 俺は二人をジロリと見てため息をついた。

 

「けど、それにしても赤井さんはタバコ吸いすぎ酒飲みすぎ。下手すると明美さんを残して先に昇天するぞ」

「前向きに検討する所存だ」

「政治家の答弁みたいなこと言わない。タバコからプールの更衣室みたいな匂いがするようにしてやるからな」

「頼むからやめてくれ」

 

 赤井さんは降参したように両手を上げた。

 

 加えて、酒は一律ゲロみたいな味になる予定の今考えた俺のスペシャル禁酒禁煙用魔術である。

 赤井さんの魂の強度は強くないし、本当に死んだら明美さんの霊を残して消滅しかねないからな。

 

 パチっと指を鳴らすと同時に、肺などに蓄積されたダメージを除去して、細胞を復元しておく。

 「胸が軽くなったな」などと驚きながら、赤井さんはまたタバコを咥えた。

 

 仕方なく先ほど考案した魔術を無言で発動する。

 ブボ!?!?と赤井さんが勢いよく咳き込んだ。

 

「本当にプールの更衣室みたいにするのは無しだろう!俺に死ねと言うのか!」

「死ぬなと言ってるんだよなぁ。そんなに吸いたいならこれ吸っててくれ」

 

 魔術でタバコ型の飴を作成して、赤井さんに手渡す。

 タバコケースを模した一箱だ。

 見た目はタバコにしか見えないが、舐めるとラベルの色に従ってパイン味からハッカ味まで、色々な味がするようになっている。

 

 飴の分子構造そのものが魔術式になっていて、舐める、もしくは咥えることで効果を発揮する形だ。

 

「舐めると離脱症状の除去のほかに、脳内の神経伝達物質の調整力を回復する効果がある。タバコと酒以外にも薬物中毒全般で使えるから持っててくれ」

「流石に便利過ぎないか?間違いなく億万長者になれるぞ」

「そうかな?」

 

 本来こんなん使わなくても魔術で一発で治るのだから、むしろまだるっこしい部類なのだが。

 

 流石に禁煙失敗して吸い出したら毎回魔術をかけ直すのは面倒なので作ったが。

 たしかに依存症に苦しむ人は多いし、どこかで流通させてもいいかもしれない。

 

 などとぼんやり考えていると、スマホにメッセージの着信があった。

 

 これからコナン君が工藤邸に来るようだ。

 しかも今蘭ちゃん、園子ちゃん、世良さんの女子高生三人組が工藤邸に向かっている可能性があるとのこと。

 

 明美さんは一応ここに住んでいることになっているからいいとして。

 まだ赤井さん丸出しなのは大問題だ。

 

 慌てて昴さんの格好をすべく、二人には洗面所に籠ってもらうこととした。

 

 俺はそのまま茶をまったりと啜っていると、すぐにコナン君が到着した。

 コナン君は「蘭達が来たら書斎に通してくれ」と言い置いて足早に書斎へと向かった。

 

 

 しばらく。

 それから5分ほど経ってから、玄関チャイムが鳴った。

 はーい、と言って時間を稼ぐべく俺が代わりに訪問者を迎え入れる。

 

 玄関扉を開けると、びっくりしたような顔の蘭ちゃんが目の前にいた。

 

「え、黄衣さん!?どうして新一の家に!?」

 

 後ろには園子ちゃんと世良さんの姿が見える。

 世良さんの目が疑うようにするりと細められ、視線が俺へと突き刺さる。

 

 若干居心地が悪くて、自然と俺の視線も脇へと逸れた。

 

「どうも蘭ちゃん。俺は昴さんとこに遊びに来てただけ。で、今昴さんがお風呂に入っててさ。代わりに近くにいた俺が出たんだ」

「あ……昴さんと親しいんですね」

「まあまあね。あ、どぞどぞ。書斎に通してあげてって言われてるから」

 

 世良さんがじろりと俺を見た。

 

「来客中に風呂なんて、随分仲がいいんだな」

「ははは。沖矢さんに俺が派手に茶をこぼしちゃっただけだよ」

「へぇ」

 

 探偵相手の会話はどうしてこうもやりづらいのか。

 俺は精一杯平静を装って彼女らを工藤邸へとあげる。

 世良さんの妙な様子を察してか、蘭ちゃんも園子ちゃんも少し困惑して世良さんを見ている。

 

「ところで、書斎に通せと言われてるということは、新一君も家にいるってことかな?」

「いやいや。コナン君がそう言ってただけさ。さ、どうぞどうぞ」

 

 書斎へと向かうと、コナン君がせっせこ作業中だった。

 3階まで吹き抜け天井の部屋に、壁いっぱいに本棚が並んでいる。

 コナン君はその2階部分からさらに階段状の足場を使って本を出し入れしていた。

 こりゃ子供には結構な重労働だ。

 

「あ、蘭ねえちゃん達来たんだ」

「よっ、コナン君!」

 

 困った顔でコナン君が口を曲げるのを気にせず、世良さんが片手をあげて上機嫌そうに挨拶した。

 

 なんというか、絶対世良さんってコナン君のこと相当好きだよな。

 子供好きとかじゃなさそうだし、MAX猫好きに恋愛を足した感じというか。

 子供がタイプの人なのかな。

 

 コナン君はため息をついて「今資料を出すから、キッチンでお茶でも入れて待っててよ」と言った。

 ふむ。ならばキッチンに案内するより他あるまい。

 

 ぞろぞろとキッチンへと向かえば、先回りしていたらしい明美さんが蘭ちゃん達を歓迎した。

 変装の手伝いもひと段落したらしい。

 

「こんにちは、蘭ちゃんに園子ちゃん、そっちの子は初めてよね?」

「宮野さんもこんにちは。この間いただいたマフィン、美味しかったです」

 

 蘭ちゃんが丁寧にぺこりと一礼した。

 人間関係がイマイチわからんが、明美さんと蘭ちゃんは知り合いのようだ。

 世良さんが少し動揺したように瞳を揺らした。

 

「誰だい?新一君の家族かな」

「彼女は宮野明美さんで、沖矢さんの彼女なんだって。隣の阿笠博士の家に住んでる哀ちゃんとは親戚同士みたいで、よく一緒にいるの」

「で、新一君ちで愛の巣を育んでるってわけ。うーん、罪な男女!」

「やめてよ園子ちゃんったら!」

 

 すっかり女子同士で盛り上がっている。

 俺は居た堪れなくてそっと気配を隠した。

 なお、「全然隠せてない。やり直し」とは降谷さんの言である。

 そんな公安のエージェント基準でものを言われても困る。

 

 世良さんは四方に視線を彷徨わせつつ、少し笑った。

 

「それで女ものの髪留めゴムとかシンクに長い毛があったのか。てっきり新一君が女でも連れ込んでるのかと思ったよ」

 

 冗談と捉えられたらしく、ははは、と和やかな笑いが部屋を満たす。

 

 でも幽霊に抜け毛はないので、その長い黒髪は明美さんのものではないのである。

 怖ぇよ誰だよ。有希子さんか?

 

 ひとまず話を聞こうとして、俺も口を開いた。

 

「ところで、事件って何があったんだ?」

「ん?工藤君から聞いてないのかい」

「俺は工藤邸に来たコナン君から『事件があって調べ物をしてる』ぐらいしか聞いてないな。工藤君とは連絡先交換したこともないし」

「へぇ」

 

 世良さんの様子は意外そうだ。

 実際、工藤君と会話したのも露店やってた時ぐらいだしな。

 あとはずーっとコナン君として会っているし。

 

 加えてコナン君になってすぐ新しいスマホを用意したので、地味に工藤君の電話番号すら教えてもらっていなかったりする。

 

「ならどうしてコナン君を預かることになったんだ?彼は工藤君の親戚だって聞いてるけど」

「え、そうなんだ。親戚だったのか」

 

 ぱちくりと、俺は瞬いた。

 その辺の設定は彼に任せていたからよく知らないのである。

 

 というか、工藤君とコナン君は親戚だったらしい。

 俺は縁もゆかりもない正体不明の子供を預かっている気だったのだが。

 というか普通にダメだなこれ。

 なあなあで来たが、この辺りで設定をきちんと煮詰める必要があるかもしれない。

 

 園子ちゃんが興味津々と言った様子で質問した。

 

「じゃあどうして預かることになったんですか?」

「夜中歩いてるコナン君を見つけて…保護してたら彼の両親にそのまま預かってくれって言われた感じ?」

「それで詳しい事情は突っ込まなかったのかよ」

 

 世良さんが胡乱な顔で突っ込んだ。

 言葉に嘘は一つもないのだがやはりちょっと無理があったか。

 たしかに凄まじく複雑そうというか児相案件っぽい香りがぷんぷんするし。

 

 俺は明美さんが入れてくれた紅茶を飲みながらゆっくり答えた。

 

「コナン君の両親は海外住まいだそうだし、俺は別に構わなかったからな」

「………」

 

 園子ちゃんがしみじみとを「ガキンチョも苦労してたのね…」などと呟いている。

 コナン君が妙な誤解をされている感じだが、これもまた仕方のないことよ。

 

 コナン君がキッチンに来た頃には、コナン君の架空の半生を思って女子高生二人がしんみりした空気を出していた。

 

 「何」とコナン君は資料を抱えてシンプルに眉間に皺を寄せている。

 

 まあともかく、そろそろ本題に戻ろう。

 事件の詳細を説明してもらうと、俺も概要が掴めてきた。

 

 始まりは今日の3時ごろ。

 路地裏で男が一人亡くなっているのが発見されたことに端を発する。

 

 死因は肝硬変による静脈瘤破裂のように見えたが。

 遺体の近くには「死」と言う不気味な血文字があった。

 

 また、同様の事件が10年前にもあったそうだ。

 それは工藤優作氏が「殺人事件ではない」と結論づけたもので、同様に遺体の前に死という血文字があったのだという。

 

 コナン君が俺へと怜悧な視線を向ける。

 起きた事件に怪異が関わってないか調べてくれ、という意味だ。

 

 頷いて軽く確認すれば、そこにはへぼい怪異がひとつ関わっているのみだった。

 

「大丈夫。うっすら怪異だけど無害だよ」

 

 怪異としてカウントしなくてもいいぐらいのレベルの話だ。

 因果系の非常に弱い影響力を持っていて、人や物の行動で、自然と死の文字が浮かび上がるというだけ。

 

 マジで字が浮かぶだけなので無害も無害。

 だがコナン君は俺の言葉に露骨に顔を青ざめさせた。

 

 慌てて俺も追加情報を投下する。

 

「『死』の字が浮かぶだけだけで怖いことは何もないよ。血文字タイプの「死」以外にも肌のみみず腫れとか、髪の毛の形とか色々あると思うけど」

「死の文字が浮かぶ段階でもう怖い。悪影響は?」

「まったく無いよ。死ぬ定めの人が死ぬ直前に現れる文字、みたいなものだからね」

 

 コナン君は難しい顔をして俺を睨みつけている。

 怖いだけだしいいじゃんかよぉ。

 

 その背後からかかる声が一つ。

 

「怪異がなんだって?」

「ッ!」

 

 世良さんだ。

 どうやら俺たちの内緒話に耳を傾けていたようだ。

 

 説明に少しだけ困るが、どうせ1ヶ月後には世間に公開されることだ。

 言い訳しようとするコナン君を手で制して、俺は正直に話をした。

 

「怪異ってのは、うん。ホラー現象だ。この死の文字にそう言うお化けが関わってないか、確認してたんだよ」

「はぁ?」

 

 渾身の「はぁ?」を喰らってしまった。

 俺はめげず落ち込まずの精神で行こうと決意を新たにする。

 

 なお後ろでは俺の言葉を聞いた一般女子高生二人が震え上がっている。

 怖がらせてすまぬ。

 でもそのさらに後ろで現役幽霊の明美さんがしゅんとしているので、彼女らには偏見を持たずに生きてほしいところである。

 

「あー、それで。多分怪異が関わってるけど特に事件に影響はないなと。そんな感じの相談をしてた」

「へぇ。お化けがどんなふうにこの事件に関わってるんだ?まさかこの血文字をお化けが書いたって言うんじゃないだろうな」

 

 振り返るといつのまにか変装を終えた沖矢さんがキッチンの入り口に立っていた。

 じっと中の様子を、正確には世良さんの様子を窺っているようだ。

 

 俺は論より証拠ということで、皆に机を広く開けてもらった。

 小銭を財布から取り出し、赤井さんから回収したタバコ一本と一緒に握り込む。

 

 もう片方の手には水で濃いめに溶いたケチャップを用意。

 

「えーっと、血文字はこう書くんだ」

 

 タバコと小銭を無造作に机に放り、その上に薄めたケチャップをかける。

 そしてあとは、ケチャップの跡をずらさないように小銭を回収するだけ。

 

 小銭は放るときに操作したから簡単に「死」の文字が出来上がるというわけだ。

 

 「っ!!!」と世良さんが息を呑んで、蘭ちゃんが悲鳴をすんでのところで飲み込んだ。

 

「え、なんで、そんな都合よく文字になるなんて…!」

「もう一回やってもいいけど、ケチャップの無駄遣いは良くないのでやめとく。ともかく、こんな感じに怖いことが起きただけかも?みたいな」

 

 しばらく考え込んだ世良さんは、「でも、説明はつく」と言って机から立ち上がる。

 

「偶然に再現性があることを無視すれば、ああ、その事件はつまり窃盗だったってことか。僕は確かめたいことがあるから現場に行くよ」

 

 そのように言って持ってきた鞄を担ぐ。

 怖がりつつも世良さんだけを行かせられないと、蘭ちゃんと園子ちゃんもそれについていくようだ。

 コナン君が「僕も!」と慌てて後を追う。

 

 そうして三人を行ってらっしゃい、と送り出した。

 

 

 残された沖矢さんはニコリと笑った。

 

「それで、あの子供はどんな恐ろしい正体を隠しているんですか?」

 

 タバコを吸おうとする手を止めて、渡したばかりのタバコ型の飴を咥える。

 明美さんがパッと笑顔になった。

 

「恐ろしくはないぞ?というか、怪異でも魔術でもないから俺の領域の話じゃないし」

「ほー」

 

 沖矢さんが片目を開けて興味深そうに首を傾げた。

 

 いや、多少は怪異の領域の話も被ってくるだろうが、大まかには科学の領域である。

 マジで信じられない話ではあるのだが。

 

 そうしていれば、じきに連絡があった。

 

 窃盗犯を撃退した、ということでこれから警察の事情聴取があるとのこと。

 どうやら現場で窃盗犯と鉢合わせして格闘騒ぎになったらしい。

 

 やっぱ絶対事件率高いよなぁ、などとしみじみ思う今日この頃である。

 





•ジンニキ近況
RUMにここのところの成果の提出と報告を行った。
RUMは三度ほど確認した後、「盛ってませんよね?」「本当ですか?」「なんで生きてるんです?」と確認しきてきた。
佐比売党はRUMの方でも下っ端を使って独自に調査するようだ。
どうせ下っぱが無駄に死ぬだけだとは思うが。

「バーボンはどうした」
「彼なら警察組織の掌握にかかりきりですよ。どうも昇進するようですね」
「………」

諸伏高明という男は、おそらく警察関係者だ。
表の気配のする人間なのに、拳銃を持っているからだ。
例えば。
あの燃える三眼の印が、奴隷に焼印をつけるようなものだとしたら。

「奴の昇進はいつだ?」
「来月の組織改変と同時に警視正として警視庁公安部公安総務課の課長になるそうですよ」
「フン。それにしちゃ若く見えるが…バケモノに年齢なんざ関係ねぇか」

上り詰めるのは時間の問題だろう。
そうして手足のように焼印付きのサツを操って、国を手中に収めるのだ。

───解呪の術を、一刻も早く見つけなければならない。
あの男がバーボン如きの傀儡となるのは、我慢ならないから。


•降谷さんのコメント
は?????
僕の昇進は怪異対策課周りの関係で仕方なくだし、あれは焼印でも何でもないが???
あのふざけた銀髪どうしたら死んでくれるんだ?

……………全警官に加護の付与、か。
ふむ。いいかもしれない。
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