ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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怪異対策課、運用開始!

 

 ついに、正式に警視庁公安部に怪異対策課が新設された。

 

 発足式には沢山のメディアが参加して、その様子を撮影していたらしい。

 TVでも繰り返し報道され、連日その話題で持ちきりである。

 

 日の丸と旭日章が並んで掲げられた小ホールを背景に、白馬警視総監が訓示を述べている様子がTVに映っている。

 

 夕方のニュース番組の時間だ。

 また同じ映像が流れているのが見えて、つい視線を取られてしまう。

 

 その命を賭して、与えられた使命と責任を果たすことを期待する。

 白馬警視総監が厳かに告げるやや怖めな訓示に字幕が付いている。

 

 警官への一般的な訓示ではあるのだが、今回ばかりは文字通りだからな。

 カメラには映っていないが、配属された警官たちも表情を凍らせていること請け合いだ。

 

 なお、メディアの反応はまちまちだった。

 

 俺のお世話になっている日売テレビに関しては、俺もフォローを入れたため比較的丁寧な報道がされていた。

 現在の未解決事件から分析すると、どうしてもその存在を……怪異の実在を仮定して行動する必要があること。

 元捜査一課警部補のコメント、犯罪社会学者の論文の紹介。

 海外の動向は、特に米国の取り組みを挙げていた。

 

 米国では怪異対策専門部署が昔から設けられている。

AARO(オールドメイン異常解決事務局)だったか。

多くの魔術師が在籍し、ヴルトゥームの件でも動いていたはずだ。

米国では怪異はUAP(未確認異常現象)と言われていて、英国の流れを汲む日本とは少し毛色が違っている。

 

 海外の話はその辺にしておくか。

 

 その他のマスメディアは「性急で迷走した結論」と言って批判したり。

 警視長公安部公安総務課長へと異例な若さのキャリア官僚を任命したことに触れたり。

 どこから嗅ぎつけたのか黄色の印の兄弟団との関係を疑う記事を載せたり。

 結構反応はバラバラであった。

 

 流石に黄色の印の兄弟団との癒着を疑われては事なので、すぐに降谷さんに記事の存在は連絡させてもらった。

 

 向こうも立て込んでいるらしく、一時間もしてから返信のメールがあったが。

 

 俺にも日売テレビからTVでのコメントを求められたので、降谷さんと事前に相談してから出演させてもらった。

 アナウンサーには水無怜奈さんを添えて。

 彼女とは時々TV局内でお茶をする仲である。

 こっそり情報交換したり、組織の愚痴を聞いたり。

 

 そうして昼のワイドショーに出た時は、実際にあったヤバい事例を紹介させてもらった。

 もちろん、あらかじめ許可を取った上で特定されないようぼかして話した。

 

 具体的にはもののけ倉の件だ。

 あらゆるものが4cm四方に折り畳まれた事件。

 警察側で証拠類も押収されており、その実在はきっちりと証明されている。

 

 当初は、流石に無責任に事件を掘り返されるのは辛かろうと思ったのだが。

 あの家のおじさんが、「自分の事例で認知が進んで、悲しい思いをする人が減るのなら」と快諾してくれたのだ。

 

 あまりに凄まじい内容に、事前打ち合わせで話したところディレクターを含めた関係者一同騒然。

 急遽再現VTRまで作られることになったあたり、マスメディアの業を感じてならない。

 

 同席したコメンテーターは冷や汗をかいて「ただの猟奇殺人では?」と疑問を呈した。

 だが、人間を原型を保ったまま4cmに圧縮するには大掛かりかつ特殊な施設が必要だ。

 なにせ4cmの立方体に、体全部が欠けることなく圧縮・折りたたまれて入っていたのだから。

 

 作り物では、と言う意見も出た。

 そちらに関しては、本物と全く同一の、ICチップ入りの実在しない身分証を持ってる遺体もあったため考え辛い。

 死体のDNAももちろん人間のものであった。

 

 あまりに怖い話過ぎたのか、放送後ネットでは悲しげな顔で話す俺の切り抜きがバズり散らかした。

 「唐突にほんとにあった怖い話が始まって憤怒。怖いの苦手だっつってんだろ!」「黄衣探偵平然としてて草」「ホームズの世界観やんけ」などと盛り上がっていた。

 

 同時に、身近なホラー系依頼が全国から黄衣探偵事務所に殺到。

 コナン君が怯えて使い物にならなくなってしまうなどした。

 

 同様の恐怖体験が交番などにも持ち込まれ、警察は現在若干業務がパンク状態になっているらしい。

 

 既にヤバい案件は俺が抽出済みだから、正直市井の目撃証言はあまり当てにならない。

 可能性としては。

 一。気のせい。または普通にトリック。

 二。怪異未満の、弱い怪異を利用してる怖い一般人がいる。

 三。ごくごく最近発生した新たな怪異。

 四。紅子さんなど、俺の探査を掻い潜る在野の凄腕魔術師がいる。

 

 当然だが、そんな凄腕魔術師に警官が突っ込んで行っても死ぬだけである。

 最近発生した怪異だとしても危険度測定がされてない以上、警察が動くのは相当難しいと言わざるを得ない。

 

 まったく、悩みは尽きないということである。

 

 

 俺はTVから目を離し、仕方なくホラー案件に埋もれながら一つずつ処理を再開した。

 

 隣では普通の事件判定されたものをコナン君と降谷さんが捌いていく。

 

 降谷さんは胡散臭い感じの笑顔で次々と「これは自然現象、こっちは錯覚。まともな事件、全然ありませんね!」などと文句を言いながら高速で処理して行っている。

 同じ感想なのか、コナン君もずーっとむすっとしたままだ。

 

 昨日一昨日も同じ感じ感じで、張り付いて仕事をしてもらっている。

 

 なお、降谷さんは今回の人事で警視長公安部公安総務課の課長になっている。

 そのため仕事も爆増。

 我が探偵事務所もいよいよもって人手不足……と思われたのだが。

 

 降谷さんの気遣い(?)で、そうはならなかった。

 

 おととい、唐突に現れた降谷さんはなんともキャラの違う笑顔を引っ提げて探偵事務所に現れた。

 

 しかも「今日から黄衣探偵事務所に常駐する分身『安室透』でーす。よろしくお願いしますね!」などと言ってニコニコと居座る始末。

 

 コナン君が「胡散臭い」とシンプルに糾弾したが、俺も同様の感想だった。

 降谷さんはやっぱり若干キャラ違いの反応で肩をすくめた。

 

「酷いなぁ。僕はこういう仕様なんだよ。降谷零からそれっぽい演技を分離しただけなんだから」

「え、結局化身作ったのか?降谷さん大丈夫か?」

「いやいや。あくまで分身さ」

 

 にっこりと業務用の笑顔を向けられ、ようやく俺もその違いに気づく。

 

 よく見れば、降谷さん本来の存在規模の三分の一しかないのだ。

 恐らくは純粋に自分を三分割したのだろう。

 随分と思い切ったことをするものだ。

 人格もあくまで今までの自分の延長線上にあるため、負担も最低限ということらしい。

 

 というか、魂は本体にある一つだけで、分割してはいないようだ。

 降谷さんが頑張って三つの体を別々に動かしている形に近い。

 

 うわ、かなり目が回りそうだ、と俺は少しばかり引いた。

 仕事のために分身するなんて社畜化身の鑑かな。

 

 降谷さんが探偵事務所に常駐している理由は上記の通り。

 確認しても確認しても終わらないホラー依頼の山にちょっと嫌になり、俺は席を立って軽く背伸びをした。

 

「ちょっと休憩。外でて散歩してくる。それと一個魔術師団体っぽいのあったよ」

「いや待て君。散歩してる場合じゃないぞそれ。ヒロに送るから詳しく」

 

 えー、と文句を言って顔を顰める。

 俺はもう散歩に行きたいのに。

 

「というか星の智慧派だよ。ニャル信仰団体の。降谷さんが一声かければ解決だよ」

「………あー、急に腹痛が」

 

 割と本気で胃の痛そうな顔で黙り込んでしまった。

 隣のコナン君に小突かれているが、降谷さんが復活する気配はない。

 

 しばらくしてから、キリリと表情を変えて話を無かったことにした。

 

「ところでなんだが、最近風見のことで困っていてね。相談してもいいかな?」

「話変えたぞこの化身」

「ゴホン。風見が怪異対策課に行きたいなんて言ってるんだ。この頃ではすっかり松田とも仲良くなって、異動希望調査もそう書いてる」

「え、松田さんって警視庁ではどういう扱いなんだ?」

「風見の私物」

 

 降谷さんの言葉に俺はつい黙り込んだ。

 そのカイリキーみたいな私物は流石にどうにかした方がいいと思う。

 

 給料払うとか、福利厚生に入れるとか色々すべきことはあるだろうに。

 俺の責めるような視線に「僕からポケットマネーで支払ってはいる」と言い訳が繰り出された。

 

 コナン君が手元の書類を睨みつけながら、少し心配そうな声を出した。

 

「異動希望だと通っちゃうかもね。どうせ怪異対策課なんてやりたい人居ないだろうし」

「まあね。やはり仲間が惨たらしく死亡扱いになったことで避けられている実情はある。僕が却下すればいいだけの話とはいえ…悩ましいな」

 

 警視庁ではもうすっかり噂になってしまっているからな。

 怪対(カタイ)に行けば生きて帰っては来られない、とか。

 死んだ方がマシな状態で後続の仲間に見つかることもよくある、とか。

 

 まだそこまでの事故は起きてないとはいえ、間違ってもいないのも困りものだ。

 

 「やっぱり……印を……」とブツブツ降谷さんが漏らすので、つい凝視してしまう。

 

「ああいや、なんでもないから気にしないでくれ」

「俺散歩してくるから、降谷さんはくれぐれも悪巧みはしないようにな」

「奴じゃないんだからそんなことしないが???」

 

 なんとなく心配になって声をかけると、降谷さんに心外そうな返事をもらってしまった。

 

 でもニャルの化身だしなぁ。

 コナン君もチベットスナギツネみたいな顔で降谷さんを見てるし。

 

 拭えぬ心配さを抱えながら、俺は事務所を出たのであった。

 





・ジンキニ近況報告
絵巻物の最後の地点は山であった。
霊山として佐比売党が崇めていた場所だ。
本当の名は異なるが、信者は佐比売山と呼んでいたらしい。
近くには宗教共同体(コミューン)もあったが、現在は廃村してる空き家が残っているのみだ。
諸伏との集合場所は山頂の神社前。

参拝のため古い登山道を登っていく。
草に覆われて非常に道が見辛いため、遭難に注意が必要そうだ。
中腹まで行くと、何故か道の脇に場違いなおでんの屋台があった。
丸椅子には諸伏高明が座っていて、店主と何やら話し込んでいる。
「何やってやがる」
「少し情報収集を。こういうのは虎穴に入らずんば虎児を得ずともいいますし」
店主はのっぺらぼうの顔に、頭に口だけがパクパクと開いていた。

ジンはひとまず無言で銃を構えて、店主と、あと諸伏を道の横に並べて立たせた。


・諸伏兄
ジンにガチ目に叱られて不服。
え?危機管理能力に欠ける?そんなことありませんよ。
別に怖い店主じゃありませんし。ねぇ。
ほら、店主も頷いてます。
ちょっと頭に口がついてるだけで…ああ、威嚇射撃はやめてください!
せっかく噂話も聞けたのに。

・おでん屋台の店主
全然事件と関係ない屋台を開くだけの怪異。
どちらかと言うと古式ゆかしい妖怪に似る。
おでんはきちんと美味しい。値段も相場通り。
なのに客が入らないと嘆いていたら、諸伏兄に「人通りの多い場所での営業も検討に入れた方がいいかと」とアドバイスをもらった。
お礼にこの辺りの噂話と注意を諸伏兄に教えた。
なお、突然拳銃持ちのヤクザがやってきてひょえ!という動きでビビり散らかした模様。
テキヤは怖いんよ…。

・降谷さんのコメント
ヒロのお兄さんはもっと安全運転で行動しましょうね!!!
というかなんだこのおでん屋。
まあいいか。吹けば飛ぶみたいな怪異だし、本番は山頂だし。
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