ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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服部平次と吸血鬼館〈愉快な吸血鬼〉

 

 本日大阪府警の大滝警部と服部君に連れられてやって来たのは、埼玉と群馬の県境にある洋館であった。

 

 なんでも、これから行く予定の案件にもしかしたら怪異が関わっているかもしれないとのことで。

 大阪府警本部長の服部平蔵警視監に助言を受けて、俺たちが呼ばれたのである。

 

「でな、問題なのはそこで半年前に起こった事件や。女性が杭に逆さに縛り付けられて、血全部抜かれて亡くなったったっちゅーこっちゃ」

「遺産相続の件で話し合うから同席してほしいって話やさかい。儂も断れなくてなぁ」

 

 気軽な調子の服部君に対して、大滝警部の顔色は青白い。

 もしかしたら服部本部長から色々噂を聞かされているのかもしれない。

 

 警官の間で伝説になってる「手が足りる」ようにされた道警の話とか。

 たぶんこの間の赤い夢の話もあったか。

 俺のこともその際に聞いたのかもしれない。

 

 屋敷の前で、今回の依頼人の執事さんと合流。

大きな屋敷なのでシェフと執事さん、それにメイドさんが幾人もいるらしい。

 なんとも豪勢なことだ。

 

 ひとまず俺の方で屋敷周辺のチェックを行う。

 俺が公安に提出した怪異情報の中には存在しなかったが、念のためだ。

 

 ハスターの瞳でざらりと目を通すと、明瞭な反応があった。

 

 俺は少しばかり息を呑んで、その反応源を見つめた。

 「どうしたんだい?」と訝しげな降谷さんが声をかけてくる。

 

「こいつはまずいな。厄介なもんが呼ばれてる。たぶん呼んだのは今朝だ」

『呼んだ?まさか怪異を召喚できるレベルの魔術師がいるのか?』

「ああ。もう魔術の反動で死んでるけど」

 

 本来呼び出して使役できる相手じゃない。

 だから自分を捧げて、契約としてお願いを聞いてもらうという形を取ったのだろう。

 

 俺の言葉で一気に空気が引き締まる。

 怯えるコナン君が俺の足にひしと張り付いた。

 

 皆には説明しておくべきだろうと、俺もゆっくりと口を開く。

 事務所のメンツのみならず、服部君と大滝警部も俺の言葉に耳を傾けている。

 

「ニーオス・コルガイって言うんだけど、ようは宇宙吸血鬼だ」

 

 宇宙船を作るだけの高度な文明を持つ吸血菌類である。

 厄介なのは、彼らが生命体の血を吸った場合、感染性のゾンビとして犠牲者が蘇るところにある。

 放っておけばあっという間にパンデミックになるだろう。

 

 というかすでに二人感染してるし。

 

「危険過ぎるから今すぐ大滝警部と服部君は帰還すること。遺産相続の話は俺たちが聞くよ」

「ええ!?でも儂も仕事で…」

「下手したら死ぬし、命は大事にな」

 

 大滝警部が震え上がった。

 コナン君が難しい顔をして、「すぐに退治できないの?」と問いかけてくる。

 俺は少しだけ唸った。

 

「んー、比較的アイツらは話が通じるから、説得できるなら説得しとこうとかと思ってな」

「危険であることと矛盾していないか?」

「それは退治するならの話ってやつ」

 

 降谷さんの疑問はもっともだ。

 

 彼らは宇宙船を作る技術力があるだけあり、非常に理性的だ。

 昔に地球に彼らの母船が来た時も、俺の縄張りであることを話して撤退してもらった。

 

 だが、交渉が決裂した場合、話は少し違ってくる。

 ニーオス=コルガイは頑丈な菌類であるため、この屋敷に広がった彼らを滅ぼすのは意外と大作業になる。

 いや、屋敷ごと消滅させるんなら一発なんだが、そう言うわけにもいかないし。

 

 その間にうっかり感染したらさらに大変。

 俺なら治療できるとはいえ、被害者にはかなりの苦痛を強いることになる。

 

「まあ、大滝警部と服部君以外は感染無効のパーティだし問題なし。行こう行こう」

「俺も服部と外で待ってる…」

「何言ってんのコナン君は一番安全だからな?」

 

 ビビるコナン君を引きずって、屋敷へと突入する。

 「頑張りや工藤ー!」と服部君が手を振った。

 

 なお、執事さんは大滝警部が来ないことを不満がっていたようだが。

 俺が有名な探偵である黄衣ハスタだと知ると納得した様子を見せた。

 

 屋敷の中は陰鬱な空気が漂っている。

 大きなダイニングに集まるメンバーもどこかドロドロとした欲と陰謀に満ちていて、すこぶる居心地が悪い。

 

 うち一人、羽川条平と名乗った男なんてニーオス=コルガイの擬態だし。

 

 しかしいつまで経ってもこの家の当主が現れない。

 痺れを切らした後継達が、感じ悪く俺たちに呼びに行くよう依頼を出した。

 客人にそんなこと頼むか普通?

 念のため全力戦力を分け、コナン君と降谷さんの二人に行ってもらうことにした。

 

 しかし、今後どう動くべきか。

 

 この食事会が終わったらニーオス=コルガイと接触するとして……。

 おそらく感染者が二人、外の森で彷徨いている。

 近くに民家はないし、ニーオス=コルガイが退去すれば無効化されるため放っておいて良いだろう。

 屋敷に近づいて来たら門番を守るためにも退治、でいいだろう。

 

 しばらくして戻って来た二人は、当主がいなかった旨を説明してくれた。

 

 いかにひとでなしっぽい後継達も、当主が行方不明なのは心配らしい。

 皆で手分けして探すことなった。

 つまりフリータイム、ニーオス=コルガイとの交渉の時がやって来たと言うことだ。

 

 コナン君が「ねぇ、当主の寅倉迫弥さんってどうなったの?」とやや目を伏せて問いかけてくる。

 

「ニーオス=コルガイを呼び出した報いを受けることにはなったんじゃないか?」

「……そっか」

 

 無理やり地球上で神話生物を召喚したんだ。そりゃ、「ハスターの瞳」による神罰を受けることになるだろう。

 そうでなくともニーオス=コルガイに吸血され尽くしたことだろう。

 

 一人で廊下をぶらつく羽川さんへと声をかけ、近場の部屋へと連れ込んだ。

 

 そこは拷問器具の並ぶ、ちょっとどころでなく趣味の悪い部屋だった。

 なんやこの部屋。民家にこんなのがあるのは流石におかしいやろ。

 

 床には魔術式が描かれた痕跡が残っている。

 恐らくはニーオス=コルガイの召喚された場所でもあるのだろう。

 

「あの、なんすか?俺ハニーを探さなくちゃなんないんすけど」

 

 困惑する羽川さんの口ぶりはなんのとも言えば凄く頭の軽そうな印象を受ける。

 実際はニーオス=コルガイの渾身の人間エミュだろう。

 出入り口には降谷さんと諸伏さん。

 俺の隣にはコナン君が頭脳役として付いている。

 

 俺は前置きを省き、率直に本題を切り出した。

 

「地球から退去してくれないか、ニーオス・コルガイ」

「……は、ニーオ…?なんの話っすか?地球って、突然頭大丈夫?」

「煽り性能高いなお前!失礼な菌類は問答無用で地球外に叩き出してやるが!?」

 

俺がぷんぷん怒ると、「冗談っすよ冗談!」とニーオス・コルガイは両手を振った。

 

「いやぁ、俺も困ってるんすよ。突然呼び出されてさぁ。船がなくちゃ帰ることもできねーし」

「なら本物の羽川さんとその妻はどうした?」

「もちろん、ありがたくいただきましたよ。二人分の精神力で腹が満ちてる。これ、どういうことかわかります?」

 

 にやり、とニーオス・コルガイは小物っぽく笑った。

 

 たしかニーオス=コルガイは溜め込んだPOW(精神力)を消費して強烈な衝撃波を撃つことができる。

 それのことを言ってる…のだとは思うが。

 

 旧支配者の俺にその程度で敵うわけなくないか?

 まさか気付いてない?

 こんなに露骨にハスターなのに?

 

 まじでコイツちょっと頭が足りない個体かもしれない、などとちょっと訝しみつつ。

 

 俺はジト目で「やって見れば?」と冷たく言い放った。

 

「はははは!ビビってんの?今なら泣いて土下座すれば許してやらなくもないっすけど!」

「俗っぽいの極みかよ。はよ撃てや」

「は?生意気な口利くとホントに撃っちまうけどいいの?」

「この個体マジで菌類の面汚しだろ……」

 

 この無駄にオラついてるチンピラはどうしてやろうか。

 

 仕方ないのでこの個室そのものを異空間へと改造。

 コナン君を抱き上げて、領域表象を張り直す。

 

 瞬時に広がるSFじみた真っ白な空間に、パリパリとひび割れが広がっていく。

 

 割れ目を突き破ったのは、巨木が如き太さの触手だった。

 それらは幾重にも垂れ下がり、ひび割れた空間の裂け目から露出していく。

 俺の存在規模に押されて、ビリビリと大気が震える。

 

 その奥から覗く無数の瞳は黄色く、ただその視線のみで存在を歪めるのだ。

 

 俺は折り畳んでいた空間から俺自身の半身を露出させ、一斉にギロリとニーオス=コルガイを睨みつけた。

 

【今すぐ土下座。オーケー?】

「命だけはお助けください」

 

 ニーオス=コルガイはその場で綺麗な土下座をして見せた。

 たぶん羽川さん本人の性質を写し取った上での性格なのだろうが。

 なんともこう、神話生物とは…?という疑念を抱かざるを得ない小物っぽさである。

 

 コナン君が「これなら怖くない」などと深く納得した様子を見せた。

 これはギャグの領域だから怖くないのも当然なんだよなぁ。

 

 その場で魔術を形成。

 ニーオス=コルガイの母星へとこの不届きものを射出しておく。

 多少術式が荒っぽくなってしまったのは仕方あるまい。

 

 ニーオス=コルガイは「ひょえええええ!」と叫びなら射出されていったのだった。

 

 

 その後異空間を解除。

 「どうだった!?」と駆け寄る二人に返事をした。

 

「なんかどっと疲れたな…なんにせよ地球から退去して、ゾンビ化していた死体も戻ったみたいだから大丈夫」

『お疲れ。あんな変な宇宙生物もいるんだな』

「あれは基になった羽川さんも恐らく相当小物…いや、故人を悪く言うのはよそうか」

 

 降谷さんが眉間に皺を寄せて「君は本当に寛大だな…僕なら初手でサイコロ状にカットしてたかもしれない」などと感想を述べている。

 確かに、ニャルの化身にあんな態度だったら一周回って英雄だったかもしれない。

 

 

 その後、当主は冷凍室に放り込まれた死体として発見された。

 そこには手紙も一緒にあった。

 メイドさんの一人が実子であること。

 そのメイドさんに財産の全てを託すことなどが書かれていて、さらなる一波乱を予感させたが。

 俺たちには関係のない話だ。

 

 行方不明だった羽川さんとその妻は、森で干からびた死体として発見された。

 

 服部君には「なんやあっさり終わったもんやな」などと言われたが、とんでもない。

 俺としてはかなりの一大事だったと、胸を撫で下ろしているのである。

 





・ニーオスコルガイ
偶然頭の足りない個体が召喚された。
ニーオス=コルガイ界の面汚し。相手がニャルだったら種族ごとケジメで昇天してた。
呼び出されたらすでにコストで召喚主が死んでたから「命令なんて聞く義理ねーや!」とぶらついてたらしい。
そしたら通りかかった羽川氏を美味しくいただき、その後羽川氏に化けて妻もパクリ。
調子に乗っていたところをハスターに睨まれた模様。
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