ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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現場の隣人は元カレ〈知られぬ激戦〉

 

 18階の現場にたどり着いたら、その玄関先には子供達がたむろしていた。

 

 「あっ黄衣の兄ちゃん達だ!」「事件です!人が亡くなってるんです!」と子供達がわあわあと騒ぎ出す。

 開けっぱなしの玄関からコナン君の声が聞こえてくるから、彼だけは子供達を置いて中に入ったのだろう。

 

 「失礼します!」と言い置いて諸伏さんと降谷さんが駆けていく。

 俺は玄関先で待機して子供達を見守るとともに目暮警部の到着を待つとことにした。

 俺が現場を見ても意味ないしな。

 

 薄っすら笑う志保ちゃんに耳打ちされる。

 

「いいの?現場に行かなくて」

「俺は必要になったら後ろからぬっと登場する役だからいいんだよ」

「そうね。安楽椅子探偵のイメージもすっかり定着したようだし。実際の貴方は割と昼行燈だけれど」

 

 言葉の裏には「昼行燈にみえて重要なキャラ」というよくあるパターンを暗喩する色が滲んでいる。

 俺のINTがそう高くないことを揶揄っているのか、志保ちゃんはやや愉快そうに口元を吊り上げた。

 

 「意地悪しないでくれ」と抗議する。

 志保ちゃんはふふ、と笑って「ごめんなさいね」と謝罪してくれた。

 

 歩美ちゃんがそんな俺たちの様子に遅れて気付いて声を上げる。

 

「あーっ!哀ちゃんと内緒話してる!」

「えっ、事件の話ですか!?仲間外れはひどいです!」

「それよりさ、俺腹減ってきたんだけどよ」

 

 可愛い子供達を志保ちゃんと二人でよしよしと宥めておく。

 でも元太君は食い過ぎなんだよなぁ。

 

 そんなことをしているうちに、目暮警部が部下を引き連れて現場に到着した。

 玄関前で佇む俺を見て、大きなため息をつく。

 

「自宅のあるマンションを現場にするのは流石にどうかと思うがね」

「俺が事件を起こしてるみたいな言い方はどうかと思います」

「同じようなものだろう。それで、事件の方は?」

「ご案内します」

 

 俺も事件の詳細は知らないから、話せることは何もない。

 警部を連れて俺も中へと入っていく。

 

 その際、子供達には一旦帰宅してもらうこととした。

 「寒いし、風邪ひかないうちに帰っててくれ。うな重は奢る。もちろんにょろ屋のうなぎ食べ比べセットだ」と言い置いて帰宅を促す。

 

 にょろ屋は銀座にあるうなぎの名店だ。

 カウンターから焼き立てで提供されるそれらは絶品だ。

 接待にもよく使われる高級価格帯だが、それに見合った極上の味わいを楽しむことができる。

 

 懐は痛むが、子供達が喜ぶなら悪くない選択肢だろう。

 

 元太君が音速で釣られて、「帰るぞ光彦!歩美!」と二人を引き摺り出した。

 不満そうな歩美ちゃんと光彦君を連れて意気揚々と去っていく。

 志保ちゃんも軽く手を振って「楽しみにしてるわ」と言ってくれた。

 

 度々ご迷惑をかけてるし、親御さん用にもテイクアウトの蒸籠蒸しを持たせて帰らせようか。

 

 さて。部屋に入ると、中には、首吊り死体があった。

 

 足元には遺書があり、部屋の住民の他に前に事件で見たことがある家政婦さんが居た。

 あとはコナン君と、何故か警視庁交通部の方が二名いる。

 

 コナン君がとととと走ってきて俺の足元まで来た。

 

「多分違うと思うけど、怪異関係じゃないよね?」

「うん。怪異なし魔術なし。普通の自殺に見えるけど」

「いや、怪しいよこれ。殺人だと思う」

 

 降谷さんも諸伏さんも、遺族から話を聞いて推理の組み立てをはじめているようだ。

 難しい顔をして考え込んでいる。

 

 俺はと言えは、部屋に入った瞬間に何故か交通部の二人に遠巻きに見られて落ち着かない。

 確か名前は三池さんと宮本さんだったか。

 佐藤刑事の友人ということで名前は知っているが、直に言葉を交わしたことはない。

 

 コナン君は事件で少年探偵団と一緒に彼女らと仲良くなっているようだが。

 

 向けられ続ける視線になんとも困って、諸伏さんに助けを求める。

 俺の様子に諸伏さんはクスクスと笑って、視線の理由を教えてくれた。

 

『ファンなんだってさ。三池さん。ぬいぐるみキーホルダーも持ってるって言ってた』

「な、なるほど」

 

 それで三池さんからは熱い視線を、宮本さんからは胡散臭そうな視線を向けられているのか。

 耳をすませば「なんかなよっちくて胡散臭くない?」「そんなことないですよ!」などという会話が途切れ途切れに聞こえてくる。

 

 いよいよ困って、俺は小さく部屋の端の方に身を寄せた。

 

 ひとまず犯人候補の方に集中しよう。

 すでにこれ四人に絞られているらしい。

 

 まず被害者の夫さん。

 現在教習所に行ってる息子さん。

 錯視の事件で証言してくれた家政婦さん。

 そして、謎の無精髭の隣人。

 

 この四人が家の鍵を使って被害者を殺しに部屋へと入ることができたとのこと。

 聞いている限り無精髭の隣人が圧倒的に謎だが、それは探偵達に任せておけばいい

 

 交通部の二人が、ひとまず引っ立ててやろうと隣人の部屋へと突入していく。

 

 連れてこられたのは、どこからどう見ても羽田名人であった。

 

 突如連行されて目を丸くした羽田名人が、俺を見てお、という顔をした。

 

「え、黄衣さんじゃないですか。ということはここで事件があったんですか?」

「どうも羽田さん。少し怪しげな事件がありまして。それにしても、こちらに住んでらっしゃったんですね」

 

 交通部の宮本さんが、俺の言葉に目を白黒させた。

 

「チュウ吉は黄衣探偵と知り合いなの!?」

「まあ…雑談ぐらいはする仲かな」

 

 時々クイズ番組などでご一緒するので、撮影終わりに一緒にご飯を食べたりはしている。

 

 彼の特徴はやはり圧倒的INTの暴力だろう。

 カンスト知性(INT18)から繰り出される凄まじい記憶力と発想力は流石の一言だ。

 

 特にパズル問題はほぼ彼の独壇場だ。

 あまりに解くのが早いので、回答を教えられていない状態で視聴者への説明役を任せられるのが鉄板ネタになっていたりする。

 

 なお俺も本気を出しすぎてクイズ番組の解答権を取り上げられ、解説役に据えられてしまった。

 ネットでは生きたイエローぺディア扱いだった。

 

 この世界のネット百科事典、運営母体がバベッジ・インコーポレイテッドなんだよね……。

 黄色の印の兄弟団のフロント企業の……。

 

 でも、何故か己の職業のことを羽田名人は言うつもりがないようだ。

 警察の質問にも「職業は、えーっと、ゲームとかをやってます」とか「犯行時刻どこに行ってたかは言えません」とか。

 怪しさバリバリの回答を返すのみだ。

 

 疑われてるのに犯行時刻付近にどこに行ってたのか言わないのはかなり致命的だと思うのだが、どういうつもりだろうか。

 たぶん将棋会館かTV局かに行ってたのだと思うのだけれど。

 

 というか何故隠したがってるんだ?別段恥ずかしいことじゃないのに。

 由美さんが「何言ってんのチュウ吉!殺人犯にされちゃうのよ!!」とカンカンに怒っている。

 

 二人は元カレ元カノの仲らしいが、俺は羽田名人から現役で彼女がいるって聞いてたんだけどな…。

 ストーカー羽田名人とかって概念だろうか。

 

 余裕の表情の羽田名人がニコニコと俺に話しかけてくる。

 

「しかし、用意された一着というわけですか。黄衣さんももう犯人はわかっているんでしょう?」

「え゛」

 

 羽田名人の仰天のキラーパスが決まり、部屋中の視線が俺に集まる。

 目暮警部が「そうなのかね!?」とか言い出したので、俺は背中に脂汗をかきながら適当に誤魔化すことにした。

 

「断言するにはまだ時期尚早ですよ。時間の問題では、ありますが」

「そうかね。優作君もそうだが、探偵というのはどうしてこうも勿体ぶるのか…」

「ははは、すみません」

 

 探偵三人の生ぬるい視線が俺に突き刺さる。

 おいその目やめんか全部魔術で見てバラしてもええんやで。

 

 え、え、と羽田名人が動揺している。

 おそらく俺がクイズ番組とかの時のように本気で事件に当たっていると考えていたのだろう。

 

 俺、番組収録中はINT23ぐらいあるからな。

 その人外の領域に興味を持って羽田名人も近付いてきたみたいだし。

 「僕、思考が追えない相手って初めて会いましたよ!」とか言ってたし。

 

 事件もそのノリで解くなら当然あっという間に解決すると思ったのかもしれない。

 

 ……いや普通はクイズ番組で力を抜いて事件で本気出すもんだわな。

 求められるままに振る舞ってたらクイズ番組で本気出さざるを得なくなっちゃったけど。

 コナン君達がいるからって甘え過ぎてたかもしれない。

 

 ひとまず羽田名人にフォローせねば。

 

「俺は探偵の時はあっちの三人に任せてるんです。脳の休養というか」

「ああ!なるほど。たしかに本気出すと凄く疲れますもんね。黄衣さんは僕と違って番組数も多いですし」

「なんだか肩透かしにさせてしまってすみません」

「いえいえ。あの人たちも優秀みたいなので、僕も職業を明かさずに済みそうです」

 

 ほう、と一安心している羽田名人に、俺はやや首を傾げて問いかけてみる。

 

「ところで、どうして隠しているんですか?恋人なんでしょう、四冠王なんて心を射止めるのに十分すぎると思うんですが」

「………四冠じゃだめなんです。全冠制覇しないと、中途半端なまま由美たんの前に立てない」

 

 ごうごうとやる気を燃やしている羽田名人に、おお、と思わず気圧される。

 宮本さん、みる限りそう言うのマジで全然気にしなさそうだけど。

 陰気そうな昔のゲームでトップだから何的なこと思いそうだし。

 バリバリの偏見である。

 

 でも、知り合いとしては応援すべきだろう。

 

「応援してます。そのためにも、早めにこの事件は解決しないといけませんね」

「ええ。解決後また一手、お願いできますか?」

「……もちろん」

 

 初対面。

 相手が羽田名人だと気付かず、本番後で上げっぱなしINTのまま控え室の百均マグネット将棋セットで対戦。

 接戦ののち俺が勝った事件を思い出す。

 

 羽田名人の方は初心者相手にするつもりで立ち上がりが遅かったが故の事故であったが。

 

 

 彼にとって、俺は意外と強力なライバルであるらしかった。

 





・羽田名人の黄衣ハスタ評
難しい局面でも揺さぶりにまるで動じない、どこかAIを相手にしているような感覚を覚えているらしい。
奇怪な手に見えて、信じられない深い読みをしていることも。
最近は空き時間に黄衣とマグネット将棋をしてまったり感想戦をするのがお気に入りのようだ。
新しい風が入った感じがするとのこと。
早指しではなく持ち時間8時間の2日制でやりたい、との願望もあったり。
黄衣本人も、将棋している分には思考がそこに制限されてINTを上げても悲しくないようだ。
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